豆知識
クリニカルラダーとは?構成や看護師の評価方法を解説
14 days ago

「クリニカルラダーとは?」と疑問に思う人もいるでしょう。クリニカルラダーとは看護師の経験や熟練度に応じた評価制度のことで、病院内で教育目標や人事評価に用いられることもあります。ここでは、クリニカルラダーのレベルや構成、評価方法をご紹介。キャリアラダーとの違いや、クリニカルラダーを活用するメリット・デメリットも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
クリニカルラダーとは
クリニカルラダーとは、看護師の実践能力を向上させるために用いる評価指標のことで、主に看護師育成のシステムに使用されます。
「ラダー」の意味は「はしご」です。看護師がレベルごとの目標を達成し、はしごを登るように段階的にレベルアップする様子をなぞらえて、「クリニカルラダー」という名称が用いられました。
経験やスキルが異なる看護師が働いていても、クリニカルラダーでレベルに合わせた指標を設定することで、レベルの底上げが行えます。また、指導者が違ってもレベルやケアの質の統一が図れ、各人の目標が明確になるという利点もあります。
キャリアラダーとの違い
看護師の育成の中で、クリニカルラダーと併用されることが多いのが、「キャリアラダー」です。
クリニカルラダーは実践的な経験や能力の向上のための指標ですが、キャリアラダーは看護師のキャリア開発の評価指標を指します。キャリアラダーもクリニカルラダーと同様に経験年数や熟練度によりレベルが分かれていますが、クリニカルラダーよりも「看護主任」「看護師長」というようにキャリアごとの目標設定となっているのが特徴です。
なお、医療機関によってはクリニカルラダーの中にキャリアラダーの要素を含んでいる場合もあります。
クリニカルラダーの5つのレベル
日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」によると、クリニカルラダーは看護師の経験年数や熟練度により、以下のようなレベルに分けられます。
新人 | 必要に応じ助言を得て実践する |
I | 標準的な実践を自立して行う |
II | 個別の状況に応じた判断と実践を行う |
III | 幅広い視野で予測的に判断し実践を行い、ロールモデルとなる |
IV | より複雑な状況において創造的な実践を行い、組織や分野を超えて参画する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
クリニカルラダーのレベルは5つに分けられるのが一般的で、新人から数字が大きくなるにつれて、経験年数の長い、熟練度の高い看護師が対象になっています。
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
クリニカルラダーの構成
ここからは、実際にクリニカルラダーの構成を見ていきましょう。
以下に示すラダーは、日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」より引用したもので、「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」で示していた「看護の核となる実践能力」を拡張し、看護師に求められる能力の全体像として日本看護協会が策定したものです。病院や診療科によっては、独自のクリニカルラダーが作られている場合もあります。
日本看護協会のクリニカルラダーは、「専門的・倫理的・法的な実践能力」「臨床実践能力」「リーダーシップとマネジメント能力」「専門性の開発能力」の4つの能力で構成されているのが特徴です。
専門的・倫理的・法的な実践能力
日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」によると、専門的・倫理的・法的な実践能力とは、「自らの判断や行動に責任を持ち、倫理的・法的規範に基づき看護を実践する能力」のことです。能力全体のラダーは以下のとおりとなっています。
レベル | ラダー(習熟段階) |
---|---|
新人 | 倫理的・法的規範に基づき実践する |
I | |
II | 個別の状況において、倫理的・法的判断に基づく実践を行い、規範からの逸脱に気づき表明する |
III | 倫理的・法的判断に基づき認識した課題や潜在的リスクの解決に向け行動しロールモデルを示す |
IV | より複雑な状況において倫理的・法的判断に基づき行動し、倫理的かつ法律を順守した実践のための体制整備に組織や分野を超えて参画する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
専門的・倫理的・法的な実践能力は、さらに、アカウンタビリティ(責務に基づく実践)・倫理的実践・法的実践の3つの構成要素に分かれます。構成要素ごとの定義は以下のとおりです。
アカウンタビリティ (責務に基づく実践) |
看護師としての責務と職業倫理に基づき、自らの判断や行為、行ったことの結果に責任を負い、自身の役割や能力に応じた看護実践を行う。 |
倫理的実践 | 看護師として倫理的に意思決定、行動し、人々の生命や権利、多様性、プライバシーなどを尊重し看護実践を行う。 |
法的実践 | 看護師として法令遵守が定められている行動は何かを認識し、法令やガイドライン、所属組織等の規範に基づき看護実践を行う。 |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
構成要素について理解したうえで、レベル別のラダーをみていきましょう。
レベル | ラダー(習熟段階) | ||
---|---|---|---|
アカウンタビリティ (責務に基づく実践) |
倫理的実践 | 法的実践 | |
新人 | 自身の役割や能力の範囲を認識し、自立して行動・説明し実践への責任を持つ | 倫理指針等と目の前の実践を紐づけて理解し、倫理的指針に基づき行動する | 法令に基づき取るべき行動・取ってはいけない行動を知り、法令を順守し行動する |
I | |||
II | 状況に応じ自ら判断して行動・説明し実践への責任を持つとともに、責任を果たす行動における自身の課題に気づき他者に共有する | 個別的な状況においても自身で判断し倫理的に行動するとともに、倫理的問題が生じている可能性に気づき他者に共有する | 個別的な状況においても法令を遵守し行動するとともに、法令に違反する可能性がある行動に気づき他者に共有する |
III | 責任を果たすことについて同僚や組織における課題やリスクに気づき、解決に向けて行動する | 顕在的・潜在的な倫理的問題について問題提起し、同僚に働きかけモデルを示す | 法令に違反するリスクがある同僚の行動や組織の状況に対し問題提起する |
IV | より複雑で関係者が多様な場面においても責任を果たし、組織や分野を超えて参画する | より複雑かつ多重な顕在的・潜在的な倫理的問題について、解消のために組織や分野を超えて参画する | より複雑な状況においても法令を遵守し、法令に違反するリスクがある行動や状況に対し組織を超えて参画する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
専門的・倫理的・法的な実践能力では、看護業務を行ううえで必要な心構えとどのような実践が必要かが述べられています。
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
臨床実践能力
日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」によると、臨床実践能力とは、「個別性に応じた適切な看護を実践し、状況に応じて判断し行動する能力」のことです。能力全体のラダーは以下のとおりとなっています。
新人 | 基本的な看護手順に従い、必要に応じ助言を得て看護を実践する |
I | 標準的な看護計画に基づき自立して看護を実践する |
II | ケアの受け手に合う個別的な看護を実践する |
III | 幅広い視野で予測的判断をもち看護を実践する |
IV | より複雑な状況において、ケアの受け手にとっての最適な手段を選択しQOLを高めるための看護を実践する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
臨床実践能力は、さらにニーズをとらえる力・ケアする力・意思決定を支える力・協働する力の4つの構成要素に分かれます。構成要素ごとの定義は以下のとおりです。
ニーズをとらえる力 | 体系的な情報収集とアセスメント(整理・分析・解釈・統合)を行い、看護問題の優先順位を判断し、記録共有する。 |
ケアする力 | ケアの受け手とのパートナーシップのもと、それぞれの状況に合わせた看護計画を立案・実施・評価し、実施した看護への対応を行う。 |
意思決定を支える力 | ケアの受け手や関係者との信頼関係と対話、正確かつ一貫した情報提供のもと、ケアの受け手がその人らしく生きるための意思決定を支援する |
協働する力 | ケアの受け手や保健・医療・福祉および生活に関わる職種・組織と相互理解し、知識・技術を活かし合いながら、情報共有や相談・提案等の連携を図り看護を実践する。 |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
構成要素ごとのレベル別ラダーは、以下のとおりです。
レベル | ラダー(習熟段階) | |||
---|---|---|---|---|
ニーズをとらえる力 | ケアする力 | 意思決定を支える力 | 協働する力 | |
新人 | 助言を得てケアの受け手や状況(場)のニーズをとらえる | 助言を得ながら、安全な看護を実践する | ケアの受け手や周囲の人々の意向を知る | 関係者と情報共有ができる |
I | ケアの受け手や状況(場)のニーズを自らとらえる | ケアの受け手や状況(場)に応じた看護を実践する | ケアの受け手や周囲の人々の意向を看護に活かせる | 看護の展開に必要な関係者を特定し、情報交換ができる |
II | ケアの受け手や状況(場)の特性をふまえたニーズをとらえる | ケアの受け手や状況(場)の特性をふまえた看護を実践する | ケアの受け手や周囲の人々の意思決定に必要な情報提供や場の設定ができる | ケアの受け手やその関係者、多職種と連携できる |
III | ケアの受け手や状況(場)を統合しニーズをとらえる | さまざまな技術を選択・応用し看護を実践する | ケアの受け手や周囲の人々の意思決定に伴う揺らぎを共有でき、選択を尊重できる | ケアの受け手を取り巻く多職種の力を調整し連携できる |
IV | ケアの受け手や状況(場)の関連や意味をふまえニーズをとらえる | 最新の知見を取り入れた創造的な看護を実践する | 複雑な意思決定プロセスにおいて、多職種も含めた調整的役割を担える | ケアの受け手の複雑なニーズに対応できるように、多職種の力を引き出し連携に活かす |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
臨床実践能力では、実際に看護ケアを進めていくうえで、具体的に実践できる目標が多く掲げられています。看護業務は成果が目に見えにくいものですので、ラダーを参考に業務を進めることで目標を明確にできたり、ステップアップの実感が得られたりするでしょう。
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
リーダーシップとマネジメント能力
日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」によると、リーダーシップとマネジメント能力とは、「組織の一員として看護・医療の提供を効率的・効果的に行うために、状況や役割に応じたリーダーシップを発揮しマネジメントを行う能力」のことです。能力全体のラダーは以下のとおりとなっています。
新人 | 基本的な業務手順に従い、必要に応じ助言を得て実践する |
I | 業務手順や組織における標準的な計画に基づき自立して実践する |
II | 個別的かつ一時的な状況における判断と実践を行う |
III | 組織における安全かつ効率的・安定的な実践のための体制整備に主体的に参画し、同僚を支援する |
IV | 安全で効率的・安定的な実践を常に提供できるよう、組織や職種を超えた調整や教育に主体的に参画する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
リーダーシップとマネジメント能力は、業務の委譲/移譲と管理監督・安全な環境の整備・組織の一員としての役割発揮の3つの構成要素に分けられます。3つの構成要素の詳細は以下のとおりです。
業務の委譲/移譲と管理監督 | 法的権限や役割等に応じて、看護チーム(看護師・准看護師・看護補助者)における業務委譲および他職種への業務移譲と、業務遂行の管理・監督を適切に行う。 |
安全な環境の整備 | 安全な看護・医療提供環境の維持・実現のため、リスクの評価や適切なマネジメント方法の検討を行い、医療安全、感染予防、災害対応等を行う。 |
組織の一員としての役割発揮 | 組織(チーム等)の中で、業務改善やチームワーク向上のために行動し、担う業務の優先度を考え、時間等の適切な管理のもと実施する。 |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
では、構成要素ごとのレベル別ラダーをみてみましょう。
レベル | ラダー(習熟段階) | ||
---|---|---|---|
業務の委譲/移譲と管理監督 | 安全な環境の整備 | 組織の一員としての役割発揮 | |
新人 | 看護チーム内の他職種の法的権限や役割を知り、助言を得て、業務を委譲し、委譲した業務の実施確認をする | 助言を得て、安全な環境整備に関わるルールに基づき行動する | 自身の業務を時間内・時間通りに行うとともに、組織(チーム等)の一員としての役割を理解する |
I | 看護チーム内の他職種の法的な権限や役割を理解し、自立して業務を委譲し、委譲した業務の実施確認をする | 安全な環境整備に関わるルールに基づき自立して行動する | 組織や業務実施の標準的な計画に基づき、業務の優先順位の判断や効率的な時間管理を自立して行うとともに、組織(チーム等)の活動に参加し同僚と協力する |
II | イレギュラーな状況においても看護チーム内で適切な業務の委譲および実施確認をするとともに、他職種の法的権限や役割を理解し、必要時業務を移譲する | 事故や問題の発生時、人々や同僚の安全を確保し影響を最小限にする行動を取る | 業務の実施の中で一時的にリーダーとしての役割を担い組織(チーム等)の目標達成のための業務の管理や改善を行う |
III | 組織において、看護チーム内および他職種への業務の委譲・移譲や業務遂行のプロセスが安全かつ効率的に行われるよう、マニュアル等の見直しに参画する | 事故や問題の発生時にも主体的に行動し同僚を支援するとともに、潜在的なリスクに対する平常時からの危機管理体制整備に参画する | 組織の目標達成のための業務改善や同僚の支援を行う組織のリーダーとしての役割を担い、改善すべき点は同僚にフィードバックする |
IV | 業務の委譲・移譲や業務遂行のプロセスが安全かつ効率的に行われるよう、組織や職種を超えた調整による体制整備に主体的に参画する | 事故や問題の発生時・平常時の危機管理体制の整備や見直しに、組織や職種を超えて主体的に参画する | 業務改善や人材育成のためにリーダーとしての役割を担い目標達成に参画するとともに、組織を超えた変革や人材育成に役割を発揮する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
リーダーシップとマネジメント能力は、経験のある看護師だけが発揮するものと思われがちですが、新人レベルでもラダー目標が存在します。新人も先輩や上司とコミュニケーションを取りながら協力して業務にあたることで、リーダーシップとマネジメント能力が身につく第一歩となるでしょう。
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
専門性の開発能力
日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」によると、専門性の開発能力とは、「看護師としての資質・能力を向上し、適切かつ質の高い看護実践を通じて、看護の価値を人々や社会に提供し貢献する能力」のことです。能力全体のラダーは以下のとおりとなっています。
レベル | ラダー(習熟段階) |
---|---|
新人 | 専門職としての自身の質の向上を図る |
I | |
II | 自身の質の向上を継続するとともに、組織の看護の質向上や組織の新人・学生の指導に関わる |
III | 幅広い視野と予測に基づき自身と組織の質をさらに向上するとともに看護の専門職組織の活動に関わる |
IV | 未来を志向し、看護の専門職として組織や看護・医療を超えて社会の変革創造や人材の能力開発に貢献する |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
専門性の開発能力は、看護の専門性の強化と社会貢献・看護実践の質の改善・生涯学習・自身のウェルビーイングの向上の4つの構成要素に分かれます。構成要素の定義は以下のとおりです。
看護の専門性の強化と社会貢献 | 看護の専門職として、制度・政策の提言や看護学の発展等の看護の効率・効果を高める活動に、専門組織を通じて関わり社会に貢献する。 |
看護実践の質の改善 | 看護の成果を可視化、分析することで、自身や組織の看護の改善プロセスに関わるとともに、同僚や学生の学習支援・指導に関わる。 |
生涯学習 | 自身の能力の開発・維持・向上に責任を持ち、生涯にわたり自己研鑽を行い、ほかの看護師や保健・医療・福祉に関わる多様な人々とともに学び合う。 |
自身のウェルビーイングの向上 | 適切で質の高い看護を実践するため、看護師自身のウェルビーイングを向上する。 |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
構成要素ごとのレベル別ラダーは以下のとおりです。
レベル | ラダー(習熟段階) | |||
---|---|---|---|---|
看護の専門性の強化と社会貢献 | 看護実践の質の改善 | 生涯学習 | 自身のウェルビーイングの向上 | |
新人 | 看護の専門職としての自覚と社会から求められている役割の認識に基づき行動する | 科学的根拠に基づき行動し、自身の看護実践を定期的に見直し質向上を図る | 自身の実践や能力の内省・評価や課題の整理を行い、適宜同僚等からのフィードバックも得ながら、学習を自ら計画的に行う | 自身のウェルビーイングの維持を図る |
I | ||||
II | 保健・医療・福祉に関わる専門職としての自覚を持って行動し、組織の新人・学生のロールモデルとなる | エビデンスに基づき自身や組織の看護実践の質の評価と改善を行うとともに、組織の新人・学生の指導を行う | 自身に必要な知識や経験等を判断し多職種と共に学び合い、自身の今後のキャリアを描く | 心身の状況を判断してセルフケアを行い、自身のウェルビーイングを維持向上する |
III | 保健・医療・福祉の制度や政策に広く視野を持って専門職組織(職能団体や学会等)の活動を通じた提言活動や看護学の発展に関わる | 新たな知見や技術を取り入れ実践し、成果を可視化することでエビデンス構築に貢献するとともに、同僚の学習や能力開発を支援する | 自身のキャリアの中長期的展望を描き、その展望に応じた多様な学びを継続し同僚のモデルとなる | 自身や周囲の状況の変化を予測しながら自身のウェルビーイングの維持向上を継続し、同僚のモデルとなる |
IV | 専門職組織(職能団体や学会等)に参画し、未来を見据えた制度・政策の改善・決定や、組織や看護・医療を超えた能力開発に関わる | 看護・医療を超え新たな知見や技術を活用し組織を超え未来を見据えた変革・創造を主導・発信するとともに、看護実践の質向上を支援する | 自身のキャリアに応じた学び直しや学習棄却を必要に応じて行うとともに、組織や看護・医療を超えて人材の生涯学習を支援する | 自身のウェルビーイングの維持向上を継続するとともに、組織や看護・医療を超えて人材のウェルビーイングに創造的に関わる |
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
専門性の開発能力では、看護師という仕事の専門性を高めるための目標だけでなく、生涯学習やウェルビーイングの向上など、看護師個人の価値を高めるための目標が定められています。日々の業務に取り組むだけでなく、自分自身の価値の向上や後輩育成にも取り組む目標にも目を向けられるようにラダーが設定されているのが特徴です。
参考:日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」
クリニカルラダーの評価方法
クリニカルラダーの評価方法は、多くの病院で以下の5段階です。
- S:非常に良い
- A:良い
- B:普通
- C:努力が必要
- D:非常に努力が必要
クリニカルラダーは、入職1年目の看護師であればレベル「新人」、看護師長であればレベル「IV」というように、自分の経験や熟練度、役職に当てはまるレベルの指標をみて、5段階で自己評価を行います。併せて、教育担当の看護師や看護師長から他者評価もしてもらうのが一般的です。自己評価と他者評価を比較することで、自身に足りない要素やステップアップできそうな要素を把握できる仕組みになっています。
クリニカルラダーを活用するメリット
クリニカルラダーを活用することで、評価対象となる看護師自身にも医療機関側にもメリットがあります。
看護師側のメリットは、自分の実情を理解して目標を定めやすいことや、モチベーションアップにつながる点です。看護師の仕事は、仕事の成果が数字や成績といった目に見える形で見えにくいといわれます。そこで、クリニカルラダーを活用することで、自分の看護が今どのレベルなのか把握しやすいでしょう。
また、ラダーは熟練度順に並んでいるので、次のレベルの目標を見て、レベルアップに努めようと意識でき、経験を経るとレベルが上がるのが目に見えてわかります。医療機関によってはラダーのレベルと達成度を人事評価に絡めて、昇給・昇進の根拠とする場合もあるため、仕事へのモチベーションもアップするでしょう。
医療機関側のメリットは、病棟や外来など部署を多く抱える病院でも、統一したクリニカルラダーを使用することで看護師教育の基準を揃えられる点です。病院全体の看護師の質を高められるうえ、オリジナルのラダーを採用することで医療機関が求める人材の育成が行えます。また、先述のとおり、評価結果を人事評価に活用することも可能です。
クリニカルラダーにおけるデメリット
クリニカルラダーにはメリットだけでなく、デメリットも存在します。
看護師にとっては、ラダーの内容ばかりを意識しすぎてしまい、ラダーに書いていない点が疎かになってしまうというデメリットがあります。クリニカルラダーは看護師の技能やスキル的な部分に着目した内容が多く、患者との具体的なコミュニケーション方法などについての記載はありません。また、評価が人事評価に関わる場合は、評価ばかりを意識して業務に取り組む看護師も出てきてしまうことが考えられます。
医療機関側にとっては、評価の手間がかかるというデメリットがあるようです。前述のとおり、クリニカルラダーは項目が多く、評価をするのも時間がかかるため、業務時間の圧迫につながります。また、病院独自のラダーを作成する場合は、検討に何か月も時間がかかることも。そのため、クリニカルラダーを新たに導入したくても、現場の看護師から理解が得られないこともあるようです。
クリニカルラダーは看護師の熟練度に応じた評価システム
- クリニカルラダーとは看護師の実践能力を測る評価指標でレベル別に分かれている
- キャリアラダーとは看護師のキャリア開発に関する評価指標のこと
- クリニカルラダーは実践能力だけでなく生涯学習やウェルビーイングにも触れている
- クリニカルラダーを活用することで看護師は業務目標や到達度が分かりやすくなる
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