仕事内容・働き方

WOCナースとは?役割や取得のメリット・流れについて解説

仕事内容正看護師a year ago

WOCナースは、褥瘡(じょくそう)などに対する皮膚ケアや、ストーマ・失禁などの排泄ケアに関する専門知識と技術を持った認定看護師のことです。看護師として働いている方や看護師志望者の中には、WOCナースになりたいと考えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、WOCナースを目指す方に向けて、WOCナースになる方法や認定を得るメリット、取得の流れなどを解説します。

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WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)とは

WOCナースとは、患者さんの皮膚ケアと排泄ケアに関して、専門的な知識と高い技術を持っていると認められた看護師のことです。看護師として一定の条件を満たした際に、日本看護協会から認定されます。

皮膚ケアとは、さまざまな種類の創傷、とりわけ褥瘡(じょくそう)・瘻孔(ろうこう)のケアです。排泄ケアについては、ストーマ装具に関連するケアとトラブル予防、尿失禁、便失禁などに対応する看護ケアがWOCナースの専門分野となります。

WOCナースのWOCとは、以下の頭文字を取った言葉です。

  • W:Wound(創傷)
  • O:Ostomy(ストーマ)
  • C:Continence(失禁)

WOCナースはそれぞれの分野で卓越した看護を行う役割を果たします。

WOCナースは当初、WOC看護認定看護師という名称で呼ばれていましたが、2007年7月、一般の方からの理解向上を目指して「皮膚・排泄ケア認定看護師」に名称が変更されました。英語表記はこれまでと変わらず「Certified Nurse in Wound, Ostomy and Continence Nursing」で、看護の分野では引き続きWOCナースと呼ばれることがあります。

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WOCナースの役割

WOCナースは、Wound(創傷)・Ostomy(ストーマ)・Continence(失禁)の各分野でそれぞれ専門的な知識とケアの技術を持ち、患者さんのケアを行います。

ここでは、WOCナースの役割をさらに詳しく紹介します。

W:創傷

Wound(創傷)には、自力で姿勢を変えられなくなった患者さんに起こりやすい血流障害を原因とする褥瘡や、摩擦・ずれによって皮膚が裂ける皮膚裂傷(スキンテア)などがあります。加齢などに伴う皮膚の乾燥(ドライスキン)も創傷の一種です。

こうした皮膚トラブルを専門的な知識を用いて防ぎ、ケアするのがWOCナースの仕事の一つといえます。

たとえば、褥瘡は同じ姿勢を続けたために体重がかかり、圧迫された部分の血流が滞るのが原因です。単に皮膚が損傷するだけではなく、適切なケアをしないと水ぶくれになる、膿が出るなど悪化する可能性が高くなります。

褥瘡から細菌が体内に入り、感染症を引き起こすケースもあります。血液が細菌感染を起こす敗血症、骨が感染を起こす骨髄炎など、いくつもの合併症の可能性が考えられ、最初に罹患した疾患のケアが適切にできない可能性も考慮せざるを得ません。

このような病状の悪化を防ぐため、創傷には専門知識を伴う適切なケアが求められます。褥瘡の場合は、たとえばベッドやマットレスに特殊な機能がついたものを使う、栄養面を改善指導する、皮膚の保護に努めるなどです。

患者さんに合った寝具やスキンケアの選択で、まずは創傷の発生を予防すること。創傷が起こった場合には適切なケアを行って症状の改善を目指すことが、WOCナースの仕事です。

O:ストーマ

Ostomyはオストミーと読み、ストーマ造設手術のことを指す言葉です。転じてストーマ(人工膀胱や人工肛門)自体をOstomyと呼ぶことがあります。

WOCナースはストーマ装具を選択したりストーマの管理方法を紹介したります。装着後にストーマから排泄物が漏れるような場合には、対処方法の検討や皮膚ケアなども行います。

ストーマ器具を装着すると、患者さん(オストメイト)のQOLはストーマ器具と上手に向き合えるかどうかによって大きく左右されます。ストーマ器具のセルフケアがうまくいかず、患者さん本人がストーマ器具を受け入れることができなければ、心理的な負担が大きくなりかねません。また、ケアが行き届かないことが原因で、装着部周辺の皮膚トラブルを起こす可能性もあります。

皮膚トラブルの大きな原因は、装着方法が適切でなかったり、ケアを怠ったりするために、排泄物が漏れて皮膚に付着することです。ほかにも、汗やストーマ装着のためのテープによる刺激などさまざまな原因があります。

いずれにしても、患者さん本人が前向きにストーマと向き合い、丁寧なケアが可能になって初めて、皮膚トラブルを減らしQOLを向上させられるのです。

そこで、WOCナースは、ストーマ装着の手術前から患者さんに対してケア方法を指導し、装着後に皮膚トラブルが起こった場合には適切な対処を行います。

実は、ストーマケアはWOCナースの出発点でもありました。ストーマケアを専門に行う看護師はもともとETナースという資格名称で呼ばれていましたが、ETナースの皮膚ケアの知識や技術が創傷や失禁における皮膚ケアにも応用できることが知られるようになり、WOCナースという資格に発展した経緯があります。その意味で、ストーマのケアはWOCナースの原点となる仕事といえるでしょう。

C:失禁

Continence(失禁)に関しては、便失禁と尿失禁、これに伴う皮膚トラブルを総合的にケアするのがWOCナースの仕事です。皮膚炎などの予防ケア、改善方法の検討や提案などが職務内容となります。

失禁の原因は、病気や加齢などさまざまです。いずれの場合であっても、失禁の症状が起こると周辺の皮膚に排泄物が付着し、皮膚炎を起こす可能性が生じます。

失禁からくる皮膚炎は、肌の組織を損傷させ創傷に繋がることもあるため、早期のケアが求められます。皮膚炎が褥瘡になりやすい位置に発生すると、早い段階で褥瘡になってしまうケースも少なくありません。そのため、WOCナースは皮膚炎が起こらないよう、予防やケアに尽力することはもちろん、失禁そのものを予防・改善できるようなアドバイスも行う必要があります。

具体的には、おむつをしている患者さんの皮膚トラブルケアなどが挙げられます。肌に合うおむつを選ぶのはもちろん、おむつの当て方、かぶれ予防の指導などを行います。

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WOCナースの認定を取得するメリット

WOCナースの認定取得、つまり「皮膚・排泄ケア認定看護師」の資格を取得すると、看護師としてスキル面や待遇面でメリットを得られます。メリットの具体例は、以下のとおりです。

  • より専門的な知識が身につく
  • 収入アップを期待できる
  • 転職を有利に進められる

それぞれについて詳しく解説します。

より専門的な知識が身につく

WOCナースの資格を取得すると、より専門的な知識が身につくというメリットがあります。WOCナースになることで得られる専門的な知識は、褥瘡をはじめとする皮膚のケアや排泄・ストーマのケアなどに関するものです。

自分自身のスキルアップにもなりますが、専門的な知識が身につくことで、副次的なメリットも得られるでしょう。皮膚・ストーマ・排泄のケアはいずれも多くの患者さんに必要とされるため、WOCナースになると活躍する機会も自然と増えます。専門知識があるため、同僚の看護師から頼りにされたり、ほかの看護師に対するケアのレクチャーをする立場になったりする可能性もあるでしょう。

将来的には指導者として管理職に昇進する可能性もあるなど、専門的な知識を身につけることのメリットは大きいです。

収入アップを期待できる

WOCナースなど、何らかの認定看護師資格を持っている看護師に対して、資格手当を支給している病院もあります。WOCナースの資格があることにより、勤務する病院によっては収入アップを期待できるでしょう。

日本看護協会の「『2022年度 専門看護師・認定看護師に対する評価・処遇に関する調査』報告書」によると、認定看護師に対する資格手当を整備している病院は、調査対象全体の41.2%でした。

また、同調査によると、認定看護師に対する資格手当の支給金額は、毎月支払われる場合の平均額が8,530円、賞与時に支払われる場合で平均54,059円です。資格取得時に一時金として支払われるケースでは平均238,125円というデータが出ています。

転職を有利に進められる

WOCナースの認定を取得していると、転職を有利に進められる可能性も高まります。

看護師として転職を考える際に、転職先は病院だけではありません。現在は高齢化で福祉分野の需要が増えており、とりわけ介護施設では、皮膚や排泄ケアの専門職を必要としているケースが少なくありません。WOCナースの資格があると、転職先の選択肢の幅が広がるだけでなく、採用される可能性も高まるといえるでしょう。給与面でも、WOCナースの認定がない看護師に比べると優遇される可能性が高まります。

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WOCナースの認定を取得する流れ

WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)になるには認定看護師の教育機関を修了し、審査に合格しなければなりません。WOCナースになるために必要なステップは、以下のとおりです。

  • ステップ1:教育機関の入学要件を満たす
  • ステップ2:教育機関に入学する
  • ステップ3:認定審査を受ける

各ステップの詳細を紹介します。

ステップ1:教育機関の入学要件を満たす

まずは、認定看護師の教育機関の入学要件を満たす必要があります。入学要件には看護師としての実務経験が含まれるため、日本の看護師免許を持っていることは必須条件となります。

その上で、WOCナースの認定を受けるための教育機関の入学要件は、以下のとおりです。

  • 通算5年以上の実務研修を受けている(うち3年以上は皮膚・排泄ケア分野の実務研修)
  • A課程、B課程それぞれの「実施研修内容の基準」を満たしている

WOCナースになるための研修は、教育機関によってA課程もしくはB課程の2種類があります。それぞれ「実施研修内容の基準」が設定されており、これを満たすことも入学要件の一つです。

「実施研修内容の基準」については詳細を次項で紹介するので、合わせて確認してください。

ステップ2:教育機関に入学する

入学要件を満たしている場合は、指定の教育機関に入学することが可能です。A課程またはB課程のどちらかを受講することになりますが、A課程は2026年で閉講が決まっています。B課程は2020年から開講されている課程です。

認定看護師の皮膚・排泄ケア分野におけるA課程とB課程の実施研修内容基準や、受講時間及び開講期間は以下のとおりです。

研修内容の基準
受講時間
開講期間
A課程 ・外科系領域あるいはストーマケア領域での、通算3年以上の看護実績
・1例以上の、ストーマ造設患者の看護経験
・4例以上の、創傷もしくは失禁ケア領域の看護実績
・現在、ストーマケア・創傷ケア・失禁ケアをおこなう施設で勤務している
・600時間以上 ・6カ月以上1年以内
B課程 ・皮膚・排泄ケア領域での、通算3年以上の看護実績
・5例以上の、皮膚ケア・排泄ケア領域における看護実績
・各1例以上の、創傷・ストーマ・排泄管理の実績(ただし、上の5例のなかに含めることができる)
・現在、皮膚・排泄ケア領域で看護を行う臨床現場に勤務している
・800時間程度 ・1年以内

2023年7月時点で、認定看護師の皮膚・排泄ケア分野のA課程が開設されているのは福岡県看護協会のみです。B課程は、日本看護協会看護研修学校や静岡県立静岡がんセンター認定看護師教育課程、京都橘大学看護教育研修センターのいずれかで受講できます。

ステップ3:認定審査を受ける

A課程もしくはB課程を修了したら、「認定看護師認定審査」に合格しなければなりません。WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)としての認定登録は、合格後の登録作業をもって完了します。

認定審査は、日本看護協会において年1回のみの実施です。審査の申請は、以下の流れで行います。

  • 「資格認定制度審査・申請システム]」でWeb申請する
  • 審査料(51,700円)を振り込む
  • 審査書類をオンラインで提出する
  • 筆記試験を受験する
  • 合格の場合、認定料(51,700円)を振り込む

Web申請から審査書類のオンライン提出までは、10日間ほどの期間が設けられています。
審査書類をオンラインで提出したあと、同サイトにて受験資格の有無が確認できるようになります。受験が認められた場合、オンラインで交付される受験票を印刷し、署名後、試験当日に試験会場へ持参してください。

筆記試験は100分のマークシート方式です。合否は日本看護協会の指定日にWeb上で確認できます。合格した場合、期日までに認定料の振り込みを忘れずに行いましょう。

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WOCナースの認定の取得にかかる費用

WOCナース(皮膚・排泄ケア認定看護師)の認定にはどのくらいの費用が必要なのか紹介します。

  • 認定看護師教育機関の入学検定料:約5万円
  • 認定看護師教育機関の入学金:約10万円
  • 認定看護師教育機関の授業料:約100万円
  • 認定看護師の認定審査料:51,700円
  • 認定看護師の認定料:51,700円

認定看護師の資格を得るためには、大体120万円以上の費用がかかると考えられます。上記に記載した教育機関にかかる費用は会員価格(日本看護協会の会員で、会費を納めている場合の金額)を目安にしており、会員でない場合はさらに費用がかかります。

また、認定看護師教育機関に通うにあたって、通学のために引っ越しをする場合もあるでしょう。入学金や授業料などのほかに、引っ越し代や家賃などがかかることも想定しておく必要があります。また、書籍代や実習にあたっての交通費が必要になることも念頭に置きましょう。

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WOCナースが働く場所

WOCナースは次のような場所で働くことができます。

  • 医療施設
  • 訪問看護ステーション
  • 老人ホーム
  • 学校(大学など)

訪問看護ステーションや老人ホームで働く場合は、皮膚・排泄ケアや利用者の健康管理のほか、食事・排泄介助など介護領域にも携わる場合があります。

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WOCナースに向いている人の特徴

WOCナースに向いている人の特徴は、以下のとおりです。

  • スペシャリストとして知識や技術を活かしたい
  • 困っている人の役に立ちたい
  • 患者さんや家族から感謝されることにやりがいを感じる

WOCナースは、教育機関での学びや日本看護協会の審査を経て認定を得られる専門職です。WOCナースの認定を得ることで、プロフェッショナルとしてのプライドを持ちながら仕事ができるでしょう。

また、WOCナースは、ストーマや失禁などを原因とした皮膚疾患をもつ人など、困った状況にある人の役に立てる仕事でもあります。直接患者さんや家族と接するため、お礼を言われることも多く、やりがいを感じながら働けるでしょう。

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WOCナースは皮膚・排泄ケアのスペシャリスト

  • WOCナースとは、皮膚と排泄ケアに関して専門的な知識をもつ看護師
  • WOCとはWound、Ostomy、Continenceのこと
  • WOCナースの認定を取得するとスキルアップや収入アップにつながる
  • WOCナースの認定を受けるには教育機関を修了して審査に合格する必要がある
  • WOCナースに向いているのはスペシャリストになりたい人や誰かの役に立ちたい人

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