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地域包括ケアシステムにおける看護師の役割は?今後の課題も紹介

3 days ago

「地域包括ケアシステムにおいて看護師の役割がよく分からない」という方もいるでしょう。地域包括ケアシステムにおいて看護師は、地域やほかの施設と連携しながら看護ケアを行ったり、医療依存度を高めないような予防的ケアを患者に提供したりしています。この記事では、地域包括ケアシステムの概要について紹介します。地域包括ケアシステムにおける看護師の課題についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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地域包括ケアシステムとは

厚生労働省「地域包括ケアシステム」によると、「地域包括ケアシステム」とは、高齢者が住み慣れた地域で最期まで自分らしい生活を続けられるよう、包括的な支援やサービスを提供する体制のことです。
住まいからおよそ30分以内の「日常生活圏域」を一つの地域として捉え、一つの地域で医療や介護、福祉などのサービスを包括的に受けられる体制の構築が進められています。

75歳以上人口の急増が見込まれている大都市部と、高齢者人口の増加は緩やかであるが全体人口の減少が予想される町村部では、高齢者人口の割合や増加率も大きく異なります。そのため、地域包括ケアシステムでは、地域の特性に合わせた運用が必要です。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステム」

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地域包括ケアシステムの背景

地域包括ケアシステムの構築が求められている背景には、現代の人口構造や高齢者の医療・介護に対するニーズの変化が影響していると考えられます。それぞれの詳しい背景は以下のとおりです。

現代の人口構造

総務省統計局「高齢者の人口」によると、2024年9月15日現在推計での65歳以上の人口は3625万人、総人口に占める割合は29.3%です。65歳以上の人口数は過去最多、割合も過去最高で、これは世界200の国と地域と比較しても最も高い結果となっています。

2030年には国内における65歳以上の人口が全体の30%を超えると予想されており、医療や介護を必要とする人数も増加する見込みです。そのため、医療や介護の担い手が不足し、十分な医療・介護サービスが受けられなくなることが懸念されています。
そのため、地域包括ケアシステムでは、自立生活の支援が目的の一つとして掲げられており、必要以上に医療・介護の需要を高めないことを重要視しているようです。

参考:総務省統計局「高齢者の人口」

高齢者の医療・介護に対するニーズ

高齢者人口割合の増加に伴い、高齢者のみの世帯もさらに増えることが予想されています。一方で、高齢者が介護が必要な状態になっても住み慣れた地域での生活を続けるためには、医療・介護・生活支援などのさまざまなサービスが必要です。この現状を受け、地域包括ケアシステムでは、地域が一丸となって高齢者の生活を支える体制が整えられるような取り組みがされています。

また、社会保障の観点では、高齢者人口と比例して社会保障費も増えていくことが見込まれています。そのため、医療や介護への依存度を高めないための予防事業や、かかりつけ医の制度の確立などを行い、限られた供給のなかで必要な人が必要なサービスを受けられる体制を構築することが大切です。

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地域包括ケアシステムの構成要素

厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築における【今後の検討のための論点整理】ー概要版ー」によると、地域包括ケアシステムは、「介護」「医療」「予防」「住まい」「生活支援・福祉サービス」の5つの要素から構成されています。

地域包括ケアシステムの基盤となるのが、住まいや生活支援です。高齢者本人の経済力と希望に合った住まいが確保され、心身の能力が低下した際にも生活に困らないよう、生活に関する必要な支援を受けられる体制の構築が目指されています。
地域包括ケアシステムを推し進めるには、本人・家族の選択と心構えがあり、住まいや生活支援の基盤が確保されていることが前提です。そのうえで必要に応じて、専門職による「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」のケアが受けられる体制が、地域包括ケアシステムの理想構造です。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築における【今後の検討のための論点整理】ー概要版ー」

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地域包括ケアシステムにおける4つの区分

厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築における【今後の検討のための論点整理】ー概要版ー」によると、地域包括ケアシステムが機能するためには、4つの費用負担による区分の連携が大切とされています。費用負担による区分は以下のとおりです。

  • 公助:高齢者福祉事業や生活保護など、税による公の負担
  • 共助:介護保険などの社会保険制度の負担
  • 自助:自らの健康管理、市場サービスの購入
  • 互助:当事者団体による取り組み、ボランティア・住民組織の活動

2025年には、団塊の世代が75歳以上となることもあり、高齢者の一人暮らしや高齢者のみの世帯は増加する見込みです。それに加え、少子高齢化社会であることから「公助」や「共助」が担う役割の供給が不足することが予測されます。そのため、地域包括ケアシステムでは「自助」や「互助」で供給を補うことが非常に重要です。

「自助」の観点では、定期的に健康診断を受けたり、身体の変化を感じたらすぐに診療を受けたりと、高齢者が自らの健康維持のために動くことが大切です。高齢者が自助の主体として活動できるよう、高齢者自身の生活意欲向上と介護予防を目指したサービスや事業の導入が検討されています。

また、厚生労働省「地域包括ケアシステム構築へ向けた取組事例~鹿児島県大和村の取組~」では、「互助」の取り組みが紹介されています。自治体や住民が主体となって高齢者の野菜作り支援を行ったり、要介護者を喫茶店のマスターとして抜擢したりと、高齢者が主体的に取り組める活動が広がっているようです。このような活動は、高齢者の自立した生活につながるだけでなく、高齢者の住民同士が関わる機会の増加にもつながります。

「互助」がうまく機能するためには、行政のみが取り組みを推し進めていくのではなく、当事者である住民も主体となって「暮らしたい地域づくり」を進めることが、必要といえるでしょう。

参考:厚生労働省「地域包括ケアシステムの構築における【今後の検討のための論点整理】ー概要版ー」
厚生労働省「地域包括ケアシステム構築へ向けた取組事例~鹿児島県大和村の取組~」

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地域包括ケアシステムに関わる職種

厚生労働省「医療と介護の更なる連携の促進に向けて」によると、地域包括ケアシステムには、以下のような職種が関わっています。

  • 医師、歯科医師
  • 看護師、保健師
  • 薬剤師
  • 介護福祉士
  • 介護支援専門員(ケアマネジャー)

前述のとおり、地域包括ケアシステムには「医療・看護」「介護・リハビリテーション」「保健・予防」の分野に関する職種が深く関わっています。
高齢者は医療機関や施設で医療・介護ケアを受けるだけではなく、訪問診療や訪問看護、訪問介護などを利用することで、適切なサービスを自宅で受けられる体制が整えられることも大切です。地域包括ケアシステムがうまく稼働するためには、地域のさまざまな職種が協働して、地域の住民が住みやすい環境づくりに向き合うことが求められるでしょう。

参考:厚生労働省「医療と介護の更なる連携の促進に向けて」

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地域包括ケアシステムを支える看護師の職場

厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き」に基づき、地域包括ケアシステムにおける看護師の職場を4つ紹介します。

病院

地域包括ケアシステムでは、高度急性期病院から急性期病院・回復期病院、慢性期病院からかかりつけ医といった流れで、入院医療から在宅医療や外来医療へ戻れるよう連携がとられています。
地域包括ケアシステムが整備されることによるメリットは、転院先の病院への情報共有が行えるため、転院する度に治療方針が変わることを避けられる可能性があることです。このメリットを活かすため、病院で勤務する看護師は、治療方針や患者の意向を地域の医療機関や施設などと共有する役割を担っています。
地域包括ケアシステムが十分に整備されると、転院先を患者自身が探す必要がなくなり、患者の負担軽減にもつながるでしょう。

介護施設

高齢者が自ら生活管理を行ったり、互いに支え合って活動を行ったりと、介護施設は自助や互助の役割を果たすためにも重要な場の一つとなっています。当事者同士の関わりをもつことで、共通の悩みに対する意見交換ができたり、介護予防につながる活動を行うきっかけとなったりすることもあるでしょう。
介護施設で勤務する看護師は、利用者への看護ケアに加え、利用者の介護予防につながる活動のサポートを行うこともあります。介護施設の看護師は、利用者家族との情報共有も行いながら、利用者が過ごしやすい施設づくりを行うことが重要です。

訪問看護ステーション

地域包括ケアシステムにおける訪問看護ステーションは、地域の医療機関と連携を強める必要があるとされています。訪問看護ステーションと医療機関の連携がとれていると、利用者の身体状況に変化があれば早期に対処を行えたり、かかりつけ医で処方された薬の服薬サポートを行えたりと、訪問看護師によるケアがより適切に行えるでしょう。

地域包括支援センター

厚生労働省「地域包括支援センター」によると、地域包括支援センターとは、住民の健康保持や生活の安定のために必要な支援を行う施設です。地域包括支援センターは市町村に1つ以上設置されており、地域の住民を対象に、医療・介護・福祉について包括的に支援を行っています。地域包括支援センターの看護師は、医療の相談にのったり介護予防事業に携わったりすることが役割です。

参考:厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き」
厚生労働省「地域包括支援センター」

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地域包括ケアシステムでの看護師の役割

地域包括ケアシステムでの看護師の役割を紹介します。

地域やほかの施設との連携を行う

地域包括ケアシステムにおける看護師の役割は、同じく地域包括ケアシステムに取り組むほかの施設との連携をとることです。厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き」によると、看護師をはじめとする看護職は医療から生活支援まで幅広い専門性を有しており、多くの機関で活躍しているため、連携の中心となることが期待されています。

地域包括ケアにおいては、地域の看護師・看護職同士が連携し、対等の立場で協働することが重要です。たとえば看護師は、患者の入退院時にかかりつけ医と入院している病院とで情報を共有したり、介護施設入所者の入院時に施設の看護師と連携をとりながら治療方針を立てたりしています。

患者へ予防的なケアを行う

医療依存度を高めないような予防的ケアを患者へ提供することも、地域包括ケアシステムにおける看護師の重要な役割の一つです。医療機関での入院時や訪問看護利用時など、看護師のアセスメントが異常の早期発見や予防につながることもあります。

看護師は、患者や利用者の心身の変化に気付き、早期にケアを行うことで、地域包括ケアシステムに貢献しています。

参考:厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き」

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地域包括ケアシステムに関わる看護師に求められること

地域包括ケアシステムに関わる看護師は、どのようなことが求められるでしょうか。厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引きー地域包括ケアを実現するためにー」を基に、地域包括ケアシステムにおける看護師に求められることを4つのケース別に紹介します。

退院支援

退院支援において看護師には、ほかの施設の看護師や介護職員と連携を行うための関係づくりが求められます。退院支援の目標は、入院している医療機関とかかりつけ医・在宅医療との連携を行い、高齢者が継続的に治療が行えるようにすることです。患者のニーズに近い治療方針をたてるためにも、病棟看護師は入退院時に在宅支援者と情報共有を行い、患者のこれまでの生活状況や暮らしの様子を把握することが求められるでしょう。

日常の療養支援

日常の療養支援として看護師は、医療機関と訪問看護や通所サービス、地域包括支援センターとの連携を行うことが求められます。病棟看護師の役割は、患者が外来通院する際に疾患の重度化予防の指導を行ったり、必要に応じて訪問看護の導入を行ったりすることです。暮らしの変化を把握し、早期に生活支援の体制を整えるために、地域の相談窓口との連携も求められるでしょう。病院の認定・専門看護師は、看護師の質向上のための活動を地域で行うこともあるようです。

急変時の対応

看護師は、在宅で療養している患者の病状の急変時に対応するため、在宅療養を担う病院・訪問看護事業所・入院可能な医療機関との間で連携をとり、受け入れ体制を整えておく必要があります。訪問看護師では対応できない身体の異常を発見した際、在宅療養を担う病院から認定・専門看護師が訪問する体制を整えていたことで、入院せずに対処できた例もあるようです。

看護や介護の業界では人手が不足している問題もあるため、医療機関や各施設とで連携をとり、事前に適切なプロセスを確立しておくことが求められるでしょう。

看取り

看護師は、地域での看取りに関する情報を患者や家族に共有したり、終末期の症状に対する患者や家族の不安を解消したりすることが求められるでしょう。地域包括ケアシステムでは、患者が望む場所での看取り体制を整えることを目標としています。そのため、患者や家族の意向を医療機関・施設間で共有し、各施設でどのような対応が必要か確認しておくことが大切です。

また、病院看護職には、患者の望む場所で看取りを行った体験を地域全体に共有することで、自分の住み慣れた地域で最期まで暮らす意識を高める働きかけも求められています。

参考:厚生労働省「病院看護管理者のための看看連携体制の構築に向けた手引き」

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地域包括ケアシステムに関わる看護師の課題

前述のとおり、地域包括ケアシステムは2025年を目途に整備・構築されることを目指していますが、まだ課題が残っているのが現状です。地域包括ケアシステムの課題を2点紹介します。

看護師の負担が大きくなる

地域包括ケアシステムにおける看護師の課題には、看護師の負担が大きくなることが挙げられるでしょう。前述のとおり、高齢者増加に伴い医療や介護のニーズは高まる見込みです。地域包括ケアシステムにおける看護師には、ほかの施設との連携や情報共有が求められるため、看護師の業務量が増大することも考えられます。

看護師一人ひとりの負担が大きくなることは離職の要因にもなり得るため、昨今課題となっている看護師不足に拍車をかける可能性もあるでしょう。看護師不足により、十分な看護ケアが行えなくなることを避けるためにも、各施設の看護師の負担が大きくならない体制を整えることも課題の一つです。

地域包括ケアシステムへの認知が広まっていない

地域包括ケアシステムにおいては、高齢者自身や自治体にシステムの目的や役割が十分に認知されていないことも課題の一つです。地域包括ケアシステムは地域単位で取り組みがされていることから、地域の特性によって内容の充実度や運用の構築度合いに差が出てしまいます。そのため、都市部での事例を町村部で取り入れてみてもうまく稼働しなかったり、人手不足のため連携自体がうまくとれなかったりすることも考えられるでしょう。

地域包括ケアシステム構築予定である2025年までに、住民を含む地域全体が地域包括ケアシステムの目的を知り、地域ごとの問題を踏まえて何をしていくべきか考え取り組むことが大切です。

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地域包括ケアシステムで看護師は多職種連携の役割を担う

  • 地域包括ケアシステムでは、看護師同士の関わりも大切な役割を果たす
  • 地域包括ケアシステムに関わる看護師は、予防的ケアを患者に提供することもある
  • 地域包括ケアシステムでは、看護師の負担増大の可能性があることが課題

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