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看護師免許を取り消しされる?行政処分について解説

a day ago

「看護師免許が取り消しになることがある?」と疑問に思う方もいるでしょう。看護師が違法行為や犯罪を行った場合は、行政処分として免許取消処分が下されることもあります。この記事では、看護師免許がどのようなときに取り消しされるのかや、行政処分について紹介します。看護師免許取り消しにつながる医療関連の行為や、再教育制度にも触れていますので参考にしてください。

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看護師免許が取り消しになるのはどんなとき?

看護師の免許は、保健師助産師看護師法第14条に基づき、取り消しされることがあります。e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」によると、保健師助産師看護師法第14条は以下のとおりです。

第十四条 保健師、助産師若しくは看護師が第九条各号のいずれかに該当するに至つたとき、又は保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたときは、厚生労働大臣は、次に掲げる処分をすることができる。
一 戒告
二 三年以内の業務の停止
三 免許の取消し

引用:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

上記にある「第九条各号」の内容を確認するために、第9条も見てみましょう。e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」によると、保健師助産師看護師法第9条は以下のとおりです。

第九条 次の各号のいずれかに該当する者には、前二条の規定による免許(以下「免許」という。)を与えないことがある。
一 罰金以上の刑に処せられた者
二 前号に該当する者を除くほか、保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務に関し犯罪又は不正の行為があつた者
三 心身の障害により保健師、助産師、看護師又は准看護師の業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
四 麻薬、大麻又はあへんの中毒者

引用:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

つまり、上記の第9条に該当するとき、もしくは第14条にある「保健師、助産師若しくは看護師としての品位を損するような行為のあつたとき」に該当するときは、看護師免許が取り消しになる場合があります。

厚生労働省「保健師・助産師・看護師の行政処分について」によると、看護師が行政処分の対象となった場合は、厚生労働省の医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会(以下、「医道審議会」と記載)で審議にかけられます。審議の中で、免許取消などの最終的な処分が決定されます。

参考:厚生労働省「保健師・助産師・看護師の行政処分について」

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看護師の行政処分について

e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」によると、看護師が同法の第14条に該当した場合、厚生労働大臣は戒告・3年以内の業務の停止・免許取消の処分ができることが定められています。ここでは、それぞれの行政処分の内容についてみていきましょう。

参考:e-Gov法令検索「保健師助産師看護師法」

戒告

戒告は、行政処分の中では最も軽く、厳重注意の処分です。注意されるのみの処分となり、業務の継続や免許などにただちに影響するわけではありません。

業務停止

業務停止とは文字どおり、看護師としての業務を決められた期間、停止させられる処分のことです。厚生労働省の医道審議会の審議の中では処分内容だけでなく、業務停止期間も数ヶ月~数年単位で決められます。
 
厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」によると、同部会において実際に下された業務停止処分の期間と詳細は以下のとおりです。

業務停止期間
詳細
2ヶ月 - 運転過失致傷、道路交通法違反
- 道路交通法違反
- 業務上過失傷害
3ヶ月 - 過失運転致死
- 道路交通法違反
- 名誉毀損
- 国際的な協力の下に規制薬物に係る不正故意を助長する行為等の防止を図るための麻薬取締法及び向精神薬取締法等の特例等に関する法律違反
- 業務上過失致死
- 北海道迷惑行為防止条例違反、邸宅侵入
- 公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反
2年 - 過失運転致死、道路交通法違反
3年 - 危険運転致傷、道路交通法違反

参考:厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」

事例を見てわかるように、業務中に起こした事案だけでなく、過失運転致死や迷惑行為防止条例違反など、業務外の事案であっても処分の対象となります。業務停止の上限は3年とされており、それ以上の処分が必要な事案であれば免許取消処分にすべき、という考え方にのっとり、処分が決められているようです。

免許取消

免許取消は看護師免許を取り消す行政処分で、看護師の行政処分の中では最も重いものです。厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」によると、同部会において実際に免許取消処分が下された事例の詳細は以下のとおりです。

  • 窃盗、常習累犯窃盗
  • 有印私文書偽造、同行使、詐欺
  • 詐欺
  • 覚せい剤取締法違反、麻薬及び向精神薬取締法違反、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律違反、関税法違反
  • 強制わいせつ
  • 監禁、強制わいせつ、職業安定法違反、傷害、窃盗

保健師助産師看護師法(以下、「保助看法」と記載)に抵触する行為の中でも、窃盗や傷害など「罰金以上の刑に処された者」の中で重い刑のものが免許取消とされることが多いようです。

参考:厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」

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看護師免許取り消しにつながる医療関連の行為

前項でもわかるとおり、看護師が免許取消の処分を受ける場合は「罰金以上の刑」に処された場合が多く、「自分には関係ない」と感じる人もいるかもしれません。しかし、看護師の日常業務の中にも、注意を怠ったり不正を行ったりすると、免許取り消しにつながる行為があります。

ここでは、看護師免許の取り消しにつながる可能性がある医療関連の行為についてみていきましょう。

薬物事犯

麻薬や覚せい剤、大麻などの所持や売買、使用、違法栽培など、薬物に関わる犯罪は厳重な行政処分の対象となります。
医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」では、下記のように言及されています。

麻薬等の害の大きさを十分認識している看護師等が違法行為を行ったこと、麻薬等を施用して看護業務を行った場合には患者の安全性が脅かされること、さらにほかの不特定の者へ伝播する危険があること等を考慮して重い処分を検討するべきである。

引用:医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」(p.3)

乱用目的がなくても、看護師として働いていると医療用麻薬や向精神薬を取り扱う機会があるでしょう。決められた保管庫で鍵をかけて保存する、使用・補充管理を厳重に行うなど、仕事上のルールを守っていないと、薬物事犯となることも考えられます。

医療過誤

医療過誤も行政処分の対象となりますが、ヒヤリハットやインシデントレベルのものが行政処分へ発展するケースは少ないでしょう。故意行為や明らかな過失が認められる場合、繰り返し行われた場合、業務上過失致死傷となる場合などは免許取り消しも視野に入る重い処分となります。

医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」では、下記のように言及されています。

看護師等が国民に信頼に応えず、当然要求される注意義務を怠り、医療過誤を起こした事案については、専門職としての責任を問う処分がなされるべきである。

引用:医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」(p.4)

看護師の義務である危険予知や危険回避ができなかった場合は、看護師の責任が強く問われる処分になると思っておきましょう。

わいせつ行為

わいせつ行為や性犯罪も厳しく処分される行為です。
医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」では、下記のように言及されています。

看護師等がわいせつ行為を行うことは、専門職としての品位を貶め、看護師等に対する社会的信用を失墜させるだけではなく、看護師等としての倫理性が欠落している、あるいは看護師等として不適格であると判断すべきである。

引用:医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」(p.4)

看護師は患者の身体に触れるケアを行う機会が多く、入浴や排泄、更衣の介助を行うこともあります。立場やケアを利用して患者へそのような行為におよぶ看護師には、厳しい処分が下るケースが多いようです。

診療報酬・介護報酬の不正請求

診療報酬・介護報酬の不正請求も行政処分の対象になります。医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」では、以下のように言及されています。

診療報酬及び介護報酬は、医療・介護等のサービスの提供の対価として受ける報酬であり、我が国の医療・介護保険制度において重要な位置を占めており、これを適正に受領することは、看護師等に求められる職業倫理においても遵守しなければならない基本的なものである。

引用:医道審議会保健師助産師看護師分科会「保健師助産師看護師に対する行政処分の考え方」(p.5)

実際に行っていない投薬や処置について看護記録に記載したり、オーダーを入力したりと診療記録に嘘の記載をする行為は、不正請求につながる行為です。たとえ誰かから指示されたとしても、不正とわかっていて業務に加担すれば、看護師にも重い責任が問われるでしょう。

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看護師免許が取り消されたらどうなる?

免許取消処分を受けたら、看護師として働けなくなります。ただし、「また看護師として働きたい」という方は、再免許付与の申請を行い、再教育制度を修了することで、再度看護師として働くことが可能です。

免許取消処分には欠格期間が設けられるため、欠格期間中は免許の再取得を申請できません。また、欠格期間が明けても必ず免許の再取得ができるとは限らない決まりです。免許取消者から再免許付与の申請があった場合、免許を再取得させるかどうかも厚生労働省の医道審議会で審議されます。審議結果により、再取得を拒否されるケースも珍しくありません。

実際に、厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」において、元看護師・元助産師3名に対する再免許付与について審議がなされましたが、全員に対し「再免許の付与は不適当である」との答申がなされています。

参考:厚生労働省「2023年11月27日 医道審議会保健師助産師看護師分科会看護倫理部会議事要旨」

再教育制度について

行政処分を受けた看護師は処分の重さに関わらず、再教育を受けなければ現場に復帰できないことになっています。再教育の研修形態は、講義やグループワークが行われる集合研修と、個人の処分事由に配慮した研修が行われる個別研修の2種類です。処分の重さにより、研修の内容や長さが異なります。

厚生労働省「行政処分を受けた保健師・助産師・看護師に対する再教育に関する検討会報告書(案)」によると、行政処分内容と再教育内容は以下のとおりです。

行政処分の内容 集合研修 個別研修
戒告 1日程度 なし
業務停止1年未満 2日程度 20時間程度または課題研究および記述による課題報告
業務停止1年以上2年未満 2日程度 80時間程度
業務停止2年以上 2日程度 120時間程度

参考:厚生労働省「行政処分を受けた保健師・助産師・看護師に対する再教育に関する検討会報告書(案)」

集合研修はすべてのケースで実施され、戒告や数ヶ月の業務停止の人が研修を受けてすぐに現場復帰できるよう、行政処分後1ヶ月以内をめどに速やかに行われることが望ましいとされています。

業務停止処分を受けた人は、再教育研修をすべて修了し、業務停止期間が明けると再度看護師として勤務可能です。免許取消処分を受けた人は前述のとおり、厚生労働省の医道審議会で再取得の申し立てが許可された場合のみ、再教育研修に進めます。

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看護師免許の取り消し処分は行政処分の中で最も重い

  • 看護師免許は保助看法第14条に抵触すると取消処分を受けることもある
  • 看護師が保助看法に抵触した場合は厚生労働省の医道審議会で処分を審議される
  • 看護師の行政処分には戒告・業務停止・免許取消の3種類がある
  • 免許取り消しになった看護師は再免許取得を申請できるが、申請が拒否されることもある

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