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産業看護師とは?仕事内容や向いている人の特徴を解説
a year ago
「産業看護師になるにはどうすればいいの?」「産業看護師の仕事内容について詳しく知りたい」と気になる方もいるでしょう。
産業看護師は、医療機関以外の場所で看護師として働きたい方におすすめの職種の一つです。場合によっては病院より収入が高く、ワークライフバランスを調整しやすいこともあります。
本記事では産業看護師がどのような仕事なのか、転職するために必要なスキルやメリット、デメリットなどについて解説します。
産業看護師とは
産業看護師とは、企業で活躍する看護師のことです。産業看護師は、従業員の健康を維持し、労働力を向上させるという産業保健の目的を達成させるため、個人や組織を支援します。
産業看護師の勤務先として多いのは、企業内の診療所や医務室、健康管理室などです。企業で勤務する方が体調不良になったり、ケガをしたりしたときにサポートします。
また、産業保健師などと連携し、従業員の健康管理全般の業務を行ったり、メンタルヘルスケアの業務に携わったりすることも少なくありません。勤務する業界は、医療・福祉業界をはじめ、製造業や運輸業、サービス業、卸売業などさまざまです。
産業保健師との違い
産業看護師と産業保健師は、実務の面でいうと基本的に大きな違いはありません。ただし、法律で定められている役割は異なることを知っておきましょう。
保健師助産師看護師法においては、次のように定義されています。
「第二条 この法律において『保健師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、保健師の名称を用いて、保健指導に従事することを業とする者をいう。」
「第五条 この法律において『看護師』とは、厚生労働大臣の免許を受けて、傷病者若しくはじよく婦に対する療養上の世話又は診療の補助を行うことを業とする者をいう。」
引用:保健師助産師看護師法
保健師の主な役割は、「保健指導に従事すること」です。企業においては、2015年から実施が義務化されているストレスチェックの実施者となるケースが多いでしょう。
しかし、保健師になるには看護師の資格が必須であるほか、看護師は療養上の世話の一環として、保健指導を行うことがあるため、企業における両者の実質的な業務は基本的には同じであることがほとんどです。
産業看護師の主な仕事内容
産業看護師と一言でいっても、その仕事内容や働く場所はさまざまです。以下で、産業看護師の働き方について5種類紹介します。仕事内容と勤務先を見ていきましょう。
従業員の健康管理を行う
企業の医務室や健康管理室と呼ばれる部署で、社員など企業に勤める方の健康管理を行います。具体的な仕事は次の通りです。
- 従業員のケガの応急処置
- 健康診断の実施
- 健康相談
- 感染症対策や指導
- 保健事業に関する年間計画の作成
- 体調が優れない人に対するサポート
また、社内に在中するだけでなく、衛生管理委員会に出席したりさまざまな機関と意見を交換したりすることもあります。
治験コーディネーターの業務を行う
治験コーディネーターとは、治験を円滑に進行するための準備や調整、運営の支援を行う仕事です。CRC(Clinical Research Coordinator)と呼ばれることもあります。治験を実施する病院やクリニックなどの医療機関に務めるケースが多いでしょう。
基本的な役割は次の3つです。
- 治験の事前準備
- 治験実施中の補助
- 治験の結果報告
まず、治験の実施計画書を読み、説明会に参加したり検査キットを受け取ったりして、被験者が来院する準備をします。治験の実施期間中に、服薬状況や有害事象などを記録するのも仕事の一つです。
治験が終了したら報告書を製薬会社と病院に提出します。このように、治験を実施するうえでなくてはならない存在です。
臨床開発モニターの業務を行う
臨床開発モニターとはCRA(Clinical Research Associate)とも呼ばれ、治験の準備や医療機関等との調整などを行う仕事です。製薬会社や医療品開発業務受託機関(CRO:Contract Research Organization)が主な勤務先になるでしょう。
具体的な仕事は次の通りです。
- 治験に関するSOP(標準業務手順書)の確認
- プロトコール(治験実施計画書)の策定準備
- 治験の依頼先選定
- 治験参加の依頼や契約締結
- 治験薬の交付や管理など
このように、治験を実施する医療機関への指示や、治験の実施に関する確認などが主な仕事です。基本的に、1回の治験における開始から終了(数ヶ月〜数年)までを担当します。後半になると業務量が落ち着き、新人等に交代するケースもあるでしょう。
チームで動くことが多く、コミュニケーション能力や業務遂行能力も求められます。新薬開発の最前線に関われるため、社会的な意義ややりがいを感じることができるでしょう。
品質管理を行う
品質管理とはQC(Quality Control)などと称される仕事です。品質管理者、品質管理担当者と呼ばれることもあります。
業務は多岐に渡りますが、「製薬・医療業界」にスポットを当てた場合、次の通りです。
- 品質試験
- 各種試験による分析業務
- 検体の管理
- 原料の受け入れ試験
- 製品の出荷試験など
品質管理の仕事は、試験や薬品に関する深い知識が求められます。さまざまな関係先や取引先と連携するための、高いコミュニケーション能力も必要です。海外の論文を読むことも多いため、ある程度の英語スキルも必要になるでしょう。
クリニカルコーディネーターの業務を行う
クリニカルコーディネーターとは医療機器や薬品について説明する仕事です。医療関係の企業や製薬会社などで、働くことが多いでしょう。
主な仕事は次の通りです。
- 医療機器や薬品の説明
- 学会などにおける発表
- 医療機器や薬品に関する最新情報の収集
クリニカルコーディネーターはたくさんの人と関わることが多いため、コミュニケーション能力に自信のある方におすすめです。最新の医療機器や薬品は海外で作られているものも多く、外国語能力を身に付けている方も強みを発揮できるでしょう。
産業看護師のスケジュール例
産業看護師の勤務スケジュールは勤務先によって異なります。一般企業における産業看護師のスケジュールは次の通りです。
9:00〜10:00 | 出勤 メールチェック 検査結果の入力作業 |
10:00〜12:00 | 集団研修資料の作成 職員の健康相談 企業内の巡回 情報交換等 |
12:00 | 昼食 |
13:00~14:00 | 衛生管理委員会への出席 |
14:00~16:00 | 作業環境管理指導 |
16:00~18:00 | 衛生委員会の資料作成 社内掲示ポスター等の作成 |
あくまで一例に過ぎませんが、基本的に一般企業に務める場合は、従業員と同じように朝から夕方までの日勤帯に働くことが多いでしょう。上記の業務の中に、勤務する方の健康チェックやストレスチェック、健康相談などの業務が入ることもあります。
産業看護師の給料相場
産業看護師の年収相場は、450万円〜500万円ほどといわれています。
一方、厚生労働省が2021年度に行った調査では、従業員10人以上の企業における看護師の所定内給与額は、約32万円でした。年間賞与は約86万円で、単純計算すると平均年収はおよそ470万円となります。
厳密に比較できる公式なデータはありませんが、看護師全体と産業看護師の年収相場に、大きな差はないと考えられます。
ただし、病棟などで働く看護師の年収は、夜勤などの担当回数によっても大きく変わるため、一概にはいえません。
また、産業看護師の給料も、勤務先の業種や業態などで大きく異なります。大手製薬会社などに就職した場合は、スキルや経験年数によっては700万以上稼げるケースもあるでしょう。
産業看護師になるために必要なもの
ここからは産業看護師になるために必要なスキルや資格について説明します。
産業看護師に必要なスキル
産業看護師として一般企業で勤務する場合、次のようなスキルが必要になることが多いです。
- 幅広い医療知識
- コミュニケーションスキル
- PCスキル
- 外国語能力
一般企業の医務室などに勤務する場合、体調不良者やケガを負った方の処置を行う必要があります。医師が常駐していない場合、救急搬送が必要かどうかについて迅速な判断が求められるでしょう。このような判断を円滑に行うため、幅広い医療知識が必要になります。
また、コミュニケーションスキルも重要です。病院勤務の看護師と違ってさまざまな業種、業態の方と関わるため、柔軟な対応力を求められます。業務ではPCを使用することが多いため、一定のPCスキルも必要になるでしょう。
製薬会社等に勤める場合、海外の論文や資料を読み込まなければならないことも多いです。そのため、ある程度の外国語能力も身につけておくことをおすすめします。
産業看護師に必要な資格
産業看護師として働くために特別な資格は必要ありません。看護師資格を有していれば、基本的に働くことは可能です。しかし、産業看護師は勤務時間が安定していることもあり、非常に人気があります。就職を有利に進めるためには、次のような資格の取得がおすすめです。
- 衛生管理者
- 産業カウンセラー
- メンタルヘルス・マネジメント®検定
衛生管理者の資格には、第一種、第二種の2種類があります。
- 第一種衛生管理者:すべての事業場で衛生管理者になれる
- 第二種衛生管理者:一定の業種(有害業務と関連の少ない情報通信業、金融・保険業、卸売・小売業など)の事業場のみにおいて衛生管理者になれる
事業場は、従業員が50名以上になると、衛生管理者の資格を持った職員を配置するよう義務付けられています。そのため、産業看護師として働きたい方は、衛生管理者の免許を取得しておいて損になることはないでしょう。
産業カウンセラーとメンタルヘルス・マネジメント®検定もおすすめです。産業カウンセラーの資格では、産業看護師にとって重要な傾聴力が身に付きます。また、メンタルヘルス・マネジメント®検定に合格すると、メンタルヘルスケアに関する知識や、不調への対処方法を習得していることを証明できます。精神に不調を感じている方に対して「どのように接するべきか」を学び、対応スキルを身につけられるでしょう。
産業看護師として働くメリット
産業看護師として働くことには、さまざまなメリットがあります。主なメリットは次の3つです。
- 休日が安定している
- 体力仕事が少ない
- 就職先によっては給料が多くなる
病院等で働く場合、休みが不定期になりかねません。日本看護協会調査研究報告によると、48.9%が4週8休制を取っています。4週8休制では基本的にシフト制の勤務となります。一方で企業で働く場合は、土・日・祝日が休みになることが多いです。
体力仕事が少ないのも産業看護師のメリットといえます。看護業務よりも事務作業が多くなるため、体力面にゆとりが生まれるでしょう。
給料に関しては、前述したとおり、産業看護師になると一概に高くなるとはいえません。しかし、大手企業などで従業員全体の給与水準が高い職場などでは、医療機関で勤務する場合と比べて収入がアップする可能性もあります。
産業看護師として働くデメリット
産業看護師はメリットばかりではありません。次のようなデメリットもあります。
- 看護以外のスキルや知識を身に付ける必要がある
- 医療現場から離れてしまうことになる
- 一緒に働く同業種が少ない
産業看護師は一般企業で働くことになるため、看護以外のスキルや知識を身に付けなければなりません。新しい資格の取得を求められたり、畑違いのスキルを要求されたりすることもあるでしょう。
医療現場から離れてしまうことになるのも、人によってはデメリットになります。場合によっては、看護師として現場で必要となる能力が低下してしまう可能性もあるでしょう。
また、中には産業保健師もしくは産業看護師が1人しか在籍していない職場も多くあります。一緒に働く仲間がほとんどいないため、人によっては孤独感を抱いてしまうかもしれません。
産業看護師が向いている人の特徴
メリット・デメリットを踏まえて、産業看護師に向いている人の特徴は次の通りです。
- 積極的に挑戦したい人
- 異業種と関わりたい人
- ワークライフバランスを重視したい人
産業看護師は挑戦することが好きな人におすすめです。多くの企業は発展に向けて従業員に日々の成長を求めるため、業務においてはスピーディーな情報収集や作業が重要となります。このような特徴から「どんどん新しいことに挑戦していきたい」という方に向いているでしょう。
異業種と関われるのも産業看護師の特徴です。病院勤務では、基本的に病院の関係者としか関われません。しかし、一般企業の場合、さまざまな業種や業態の方と接することができるでしょう。
土日祝が休みになることが多いため、ワークライフバランスを重視したい人にもおすすめです。家族や友人と休みを合わせることができたり、生活リズムが整ったりするでしょう。
産業看護師に転職するコツ
産業看護師は求人情報が少ない一方で人気があり、非常に高倍率とされています。このような状況で転職を勝ち取るためには、次の2つが大切です。
- スキルや経験を積み上げ、自分の価値を高めること
- 常に情報収集を怠らないこと
まずは本記事で紹介したスキルや経験を積み上げて、自分の価値を高めましょう。一般企業では、いわゆる現場のスキルよりも幅広い知識や専門的な能力が重要視されます。興味のある分野や業種で「どのような能力が求められているか」を把握しておくことが大切です。
また、産業看護師は求人情報が非常に少ないという特徴があります。日々、しっかりと情報収集し、チャンスがあれば思い切って応募してみることをおすすめします。
コツを理解して産業看護師への転職を成功させよう
- 産業看護師は一般企業で働く看護師のことを意味する
- 産業看護師の活躍の場は、一般企業の医務室や製薬会社、治験を行う医療機関などさまざま
- 産業看護師として働くとワークライフバランスが整う可能性がある
- 産業看護師として働くには、看護以外のスキルを身に付けなければならない
- 求人情報が少ないため、準備を怠らず常に情報収集することを心がけることが大切
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