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薬剤師は将来性がない?心配される理由や職場別のニーズを紹介

働き方薬剤師19 days ago

「薬剤師は将来性がないと聞いたけど本当?」と不安に思う方もいるでしょう。実際に医療現場ではIT化やAI導入などが始まっており、薬剤師の業務軽減は進んでいますが、「将来性がない」とまではいえません。この記事では、薬剤師は将来性がないと言われる理由や求人の現状、職場別のニーズについて解説しています。薬剤師が将来性を高めるためにどうすればよいかについても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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薬剤師は将来性がないといわれる理由は?

昨今、「薬剤師は将来性がない」という言葉を耳にする方もいるのではないでしょうか。大学で6年間勉強し、苦労して薬剤師国家資格を取得したにもかかわらず将来性がないのであれば、残念な気持ちになってしまうでしょう。ここでは薬剤師は将来性がないといわれる理由と、実際に薬剤師の将来性はないのかどうかについて解説します。

AIやITによる調剤業務が台頭してきている

近年ではコンピューター技術の革新速度が早まっており、幅広い分野でAI導入やITによる自動化が進んでいます。例外なく、医療機関や薬局にもAIやITの導入が始まっているケースがみられるようです。

AIが調剤を担うのはまだ先になりそうですが、すでにICT(情報通信技術)を導入し、調剤機器・システムが導入されている現場はあります。全自動錠剤分包機やPTPシート払い出し装置、自動調製機器などがICTを利用した機器の例です。
 
なかでもバーコード読み取りによる薬の監査システムは、ヒューマンエラーが防げるとともに人員削減に繋がります。薬の在庫管理もシステム化され、以前より日常的な在庫管理や棚卸も楽になっているようです。また、今まで薬剤師の知識にゆだねていた飲み合わせ・禁忌薬のチェックはデータベース化され、調剤過誤が見逃されないようになったという利点もあります。

機械が介入する業務が増えることで、薬剤師の業務がなくなって将来性が危ぶまれるのではと思う方もいるかもしれませんが、そのようなことはありません。これらの技術は薬剤師の人員を削減するためではなく、薬剤師の業務負担軽減のために導入される技術だからです。

患者ごとの個別対応や複雑な判断が必要な処方、医師との連携などはAIには難しい業務でしょう。とはいえ、機械ができる業務はAIやデータベースに任せきりで良いというわけでありません。専門知識をもった薬剤師と正確性が担保されている機械がタッグを組むことで、安全かつ効率的に薬を処方できます。技術が進んでも、人の対応が必要な業務はなくならないため、薬剤師はこれからも現場に不可欠です。

第二類・第三類医薬品は登録販売者が販売できる

登録販売者は、ドラッグストアやスーパーなどで第二類・第三類医薬品を販売できる専門職です。
販売に処方箋を必要としない一般用医薬品のうち、第一類医薬品は薬剤師しか取り扱えません。第二類・第三類医薬品は、一般用医薬品の約9割を占めるため、登録販売者がいればほとんどの一般用医薬品が販売可能です。そのため、近年では薬剤師を配置しないドラッグストアも増えてきました。

このように「薬剤師がいなくても薬が販売できる」という点から、薬剤師の将来性が懸念されたようです。しかし、登録販売者が増えたからといって、薬剤師の仕事がなくなるわけではありません。

近年ではドラッグストアに調剤薬局が併設されている店舗や、要指導医薬品・第一類医薬品を取り扱うドラッグストアもあります。これらの店舗には薬剤師の配置が必要で、登録販売者のみではすべての薬を販売できません。

現在、医療現場では高齢化が進み、医療需要が逼迫しています。そのため、軽度なケガや病気は市販薬を使用し、自分で手当てを行って回復に努める「セルフメディケーション」について、国をあげて推進されているのが現状です。

ドラッグストアはセルフメディケーション体制の中心機関として、販売できる薬の幅を広げたり、ほかの店舗との差別化を行ったりしています。今後もお客様の幅広いニーズに応えるため、登録販売者だけでなく、薬剤師の配置も需要があるでしょう。

リフィル処方箋により薬剤師の業務が減ると思われた

リフィル処方箋とは、一定期間、医療機関の受診を必要とせず反復利用できる処方箋のことです。リフィル処方箋は、2022年度の診療報酬改定により利用開始となりました。厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」によると、リフィル処方箋は「症状が安定している患者について、医師の処方により、医療機関に行かずとも、医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる」と定義されています。

薬剤師が取り扱う処方箋が反復利用できることから、一部では薬剤師の仕事が減るのではといわれることもあったようです。しかし、処方のために患者が医療機関で受診する回数が減るため、リフィル処方箋により業務量が減るのは薬剤師ではなく医師となります。

リフィル処方箋が利用されても、患者に薬を渡す度、薬剤師の調剤・説明は必要です。また、医師の診察がない分、患者の病状に変化がないか、薬剤師が観察を行うことも求められるでしょう。

一部の調剤業務の補佐を一定の条件下で薬剤師以外が行える

2019年に通知された厚生労働省「調剤業務のあり方について」によると、薬剤師の業務効率化・対人業務の充実化を図るため、薬剤師の目が届く範囲であれば、薬剤師以外の職員が薬のピッキングや数量確認を行っても差し支えないとしました。

薬剤師の一部業務を薬剤師以外の人が補佐できることから、薬剤師の仕事量が減ると考える方もいるでしょう。しかし、ピッキングや数量確認が行われる調剤室には薬剤師がおり、最終的な確認は薬剤師が行うことが条件です。また、薬剤師がピッキング業務などを行う必要がほぼなくなっても、患者への説明・相談業務は薬剤師しかできません。そのため、この通知により状況が変わったとしても、薬剤師の将来性はないとはいい切れないでしょう。

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薬剤師は増えすぎた?求人の現状

「薬剤師の数が増えすぎたので、今後薬剤師になる人がいても将来性がない」という声も一部で聞かれます。薬剤師の需要は本当にないのか、ここでは有効求人倍率と需要についてみていきましょう。

有効求人倍率は減少気味

有効求人倍率とは、求職者に対し求人数がどれくらいあるのかが分かる指数のことです。倍率が高いほど、求職者1人あたりの求人数が多い、つまり需要が高いといえます。

厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年12月分及び令和5年分)について」によると、医師・歯科医師・獣医師・薬剤師(パート含む)の有効求人倍率は、2023年12月で2.43倍でした。

また、同じく厚生労働省の一般職業紹介状況の調査結果を過去にさかのぼってみていくと、医師、薬剤師等(パート含む)の有効求人倍率は、2013年12月で7.56倍、2019年12月で4.9倍、2021年12月で1.98倍でした。

2021年12月の有効求人倍率は、新型コロナウイルス感染症の影響で職種を問わず全体的に下がっており、薬剤師は過去10年で見ても有効求人倍率が低下傾向にあります。

とはいえ、2023年12月時点で有効求人倍率は2倍以上となっており、薬剤師の需要は依然あるといえるでしょう。

都市部では飽和傾向だが地方では需要が高い

厚生労働省「薬剤師の養成及び資質向上等に関する検討会」によると、薬剤師の供給は次第に需要を上回り、2045年には供給が需要を約3~10万人超えてしまうのではと予測されています。薬剤師の資格をもつ人が供給過多となってしまい、薬剤師として働ける場所がなくなってしまう現象が懸念されているのです。

一方、厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、2020年12月31日時点で、薬局・医療機関に従事する人口10万人に対する薬剤師数は198.6人でした。人口10万人に対する薬剤師数が全国平均を上回っている県は徳島県や東京都、兵庫県などで、47都道府県のうち半数以上の都道府県が全国平均を下回っています。東京都や神奈川県、大阪府などの都市部では薬剤師の数が多く、地方部では少ない結果です。

有効求人倍率の減少や厚生労働省の予測から、薬剤師の求人数は年々減少してしまうことが考えられます。しかし、地方では薬剤師の数が足りていない県も多く、全国的に見て需要がなくなることは考えにくいでしょう。

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薬剤師の職場別のニーズ

薬剤師は、医療機関や薬局をはじめさまざまな場所で働いています。薬剤師のそれぞれの職場におけるニーズと、求められるスキルなどについてみていきましょう。

病院

病院で働く薬剤師のニーズは、当面なくならないと考えられます。今後も高齢化が進むにつれて医療の需要は高まっていくため、院内処方への対応や患者への服薬指導など、業務量は増えていくでしょう。

しかし、医療の需要が高まるほど、医療費も増大していることが問題になっています。そのため、国主体でAIやIT化を推し進めて人件費を減らし、医療費を削減する動きが今後活発になっていくでしょう。

今後も病院で勤務していくには、専門性を高めるなどスキルアップやほかの薬剤師との差別化を図る必要があります。専門薬剤師や認定薬剤師の資格を取り、専門分野に強い薬剤師になるのもおすすめです。

調剤薬局

厚生労働省「薬局薬剤師に関する基礎資料」によると、全国(宮城県、福島県の一部は除く)の薬局数は2020年度で約6万1,000件あり、年々増加傾向です。しかし、前述したとおり、今後は医療費削減に向けての動きの中で医療体制の整備が進み、薬局が減ってくることが考えられます。調剤業務の一部自動化なども進んでいるため、薬剤師の需要も減ってくるかもしれません。
 
調剤薬局に必要とされる薬剤師になるには、かかりつけ薬剤師の資格を取得するのが良いでしょう。かかりつけ薬剤師とは、薬や健康、介護に関する相談にのり、地域住民の健康を支える薬剤師です。かかりつけ薬剤師については、後述にて詳しく解説します。

ドラッグストア

ドラッグストアは、近年出店数が増加傾向にあるようです。セルフメディケーションにより一般用医薬品の需要も年々高まっており、販売のために薬剤師の需要が高まるでしょう。

また、単にドラッグストアの店舗数が増えているだけでなく、前述のとおり調剤薬局併設型の店舗も増えています。早朝・深夜営業や24時間営業などの店舗もあり、薬剤師の人員確保の動きが活発化しているようです。

ドラッグストアに勤める薬剤師は調剤の知識・技術だけでなく、市販薬の知識や健康に関する情報など幅広い知識が求められます。また、自らお客様とコミュニケーションを取って、適切な薬選びや健康維持の支援を行う姿勢が大切です。

製薬会社

製薬会社に勤める薬剤師は、減少傾向にあるのが現状です。厚生労働省「平成28年(2016年)医師・歯科医師・薬剤師調査の概況」と厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」によると、薬剤師で医薬品関係企業の従事者として働いている人は2016年末で4万2,024人、2018年末で4万1,303人、2020年末で3万9,044人と年々減っています。

製薬会社に勤める薬剤師が減っている理由は、国の後発医薬品(ジェネリック医薬品)使用促進活動により、新薬が出にくくなったことが原因にあげられます。特許を取得して新しく発売した薬も、特許が切れれば後発品が発売される仕組みです。後発品を販売促進しても売り上げに結びつきにくいという難点も抱えています。そのため、開発に携わる薬剤師や、MR(医薬情報担当者)として働く薬剤師の仕事が減っているようです。

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薬剤師が将来性を高めるには?

薬剤師は将来性がないわけではありませんが、今までどおりに仕事を続けていくだけでは、仕事やニーズが減る可能性があります。薬剤師が自分の価値を上げ、将来性を高めていくにはどうすれば良いのでしょうか。

認定薬剤師になる

薬剤師の中で差別化を図るためには、各分野の専門知識をもった認定薬剤師の資格を取得するのがおすすめです。

認定薬剤師の種類は、がんや緩和ケア、感染症など数十種類あります。取得することで専門的な知識の証明になり、仕事の幅も広がるでしょう。

認定薬剤師は、資格の種類により認定している団体が異なります。認定を受けるには、団体の研修を受けて一定の単位を取ったり試験を受けたりすることになるので、取得したい認定薬剤師ごとに確認すると良いでしょう。

管理薬剤師・管理職になる

薬剤師としての経験が長くなってきたら、経験を活かして管理薬剤師や管理職になり、人材育成や職場内の取りまとめを行うというキャリアプランもあります。

管理薬剤師は、調剤薬局の管理者に必要な資格です。厚生労働省「薬局開設者及び医薬品の販売業者の法令順守に関するガイドラインについて」によると、管理薬剤師になるには、認定薬剤師の資格をもっていることと、薬局での実務経験が5年以上あることが推奨されています。

薬局やドラッグストアに勤めている薬剤師であれば、主任や店長などの管理職へ昇進する道があります。薬剤師として薬の販売に携わりながら、店舗マネジメントも行うことで店舗スタッフとしての付加価値も上がっていくでしょう。

在宅医療・緩和ケアのスキルを身に付ける

厚生労働省「平成28年度調剤報酬改定及び薬剤関連の診療報酬改定の概要」によると、2016年の診療報酬改定で、在宅患者訪問薬剤管理指導料の点数が引き上げられました。今後も高齢化社会は進む見込みであり、薬局や病院が在宅医療に参入する動きは加速すると考えられます。医師や看護師、リハビリ職員だけでなく、薬剤師も在宅医療における業務が増えていくでしょう。

そのため、在宅医療や緩和ケアに対する知識・スキルを身に付けることで、薬剤師としての将来性を見出せる可能性があります。
認定薬剤師の「緩和薬物療法認定薬剤師」「在宅療養支援認定薬剤師」などを取得するのもおすすめです。

かかりつけ薬剤師を目指す

かかりつけ薬剤師は、2016年の診療報酬改定により新設された制度です。調剤薬局に勤務し、薬による治療や健康・介護に関する知識と経験を活かして患者のニーズに沿った相談に応じるのが、かかりつけ薬剤師の役割となっています。

処方箋どおりに薬を処方するだけでなく、患者の病気・健康面なども広くサポートできるのが特徴で、担当の患者から連絡があれば夜間・休日にも対応します。かかりつけ薬剤師は、患者だけでなく職場からのニーズも高いでしょう。

かかりつけ薬剤師になるには、充分な経験が必要です。公益社団法人日本薬剤師会「かかりつけ薬剤師・薬局とは?」には、充分な経験がある薬剤師の基準として、以下の4点があげられています。

  • 薬剤師として薬局での勤務経験が3年以上
  • 薬局に週32時間以上勤め、かつ1年以上在籍している
  • 医療に関する地域活動に参画している
  • 薬剤師研修認定等を取得している

薬剤師研修認定とは「研修認定薬剤師」を指し、かかりつけ薬剤師の条件のひとつになっています。まずは、研修認定薬剤師の取得を目指すことからはじめるのが良いでしょう。

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薬剤師は将来性がある職業でAIや自動化が進んでも需要は高い

  • 薬剤師に将来性がないといわれる理由はAIの台頭や登録販売者制度の開始などのため
  • 薬剤師の有効求人倍率は年々減少しているが、地方での需要は依然として高い
  • 薬剤師が将来性を高めるには、認定薬剤師やかかりつけ薬剤師の資格を取るのが良い

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