豆知識
タスクシフトとは?看護師ができる業務の例を知ろう!
9 months ago
「タスクシフトとは?」「タスクシェアと何が違うの?」と疑問に思う方もいるでしょう。タスクシフトとは、多忙な医師の業務軽減を目的とし、看護師や薬剤師などに医師の業務の一部を移管する仕組みのことです。この記事では、タスクシフト・タスクシェアや移管される業務内容について解説します。タスクシフト・シェアが始まった背景や、看護師から看護補助者へのタスクシフト・シェアの例も紹介するので、ぜひご覧ください。
タスクシフトとは
タスクシフトとは、医師の業務の一部を、看護師や薬剤師などの医療従事者に業務移管することです。
医療機関でタスクシフトを行うときは、まず、医師の業務の中でほかの医療従事者が担当できる業務を選定します。業務の専門性・資格によってできる医療行為などを加味し、どの医療従事者に業務移管するかを決定するようです。
タスクシェアとは
タスクシェアとは、医師の業務の一部を医療従事者で分け合う、業務の共同化のことです。
タスクシフトは業務をまるごと移管するのに対し、タスクシェアは医師をはじめ、ほかの職種と仕事を分け合うという違いがあります。仕事が溜まっている人の残りの仕事を、ほかの人で分けてこなすという仕事のやり方はどの職種でも日常的にみられますが、これがタスクシェアの考え方です。
タスクシフトとタスクシェアは医師の業務軽減に有効な対策とされており、まとめて「タスクシフト・シェア」と呼ばれることもあります。
タスクシフト・シェアが始まった背景
タスクシフト・シェアが始まった背景には、「働き方改革」の推進があります。
長年、医師は長時間労働や業務量の多さが問題視されていました。そこで、国は複数の法律を改正し、医師をはじめとした医療従事者の働き方改革を進めていったという背景があります。
厚生労働省「医師の働き方改革について」によると、いままで上限がなかった医師の時間外労働について、2024年4月から医療機関の種類ごとに上限が設けられます。もし月の上限を超える場合は面接指導が行われるとともに、連続勤務時間28時間までの制限と勤務間インターバル9時間の確保、代償休息のセットが義務付けられる仕組みです。
ほかにも、医療関係職種の業務範囲の見直しとして、「タスクシフト/シェアを推進し、医師の負担を軽減しつつ、医療関係職種がより専門性を活かせるよう、各職種の業務範囲の拡大等を行う」との提言がなされています。
このように、タスクシフト・シェアは、医師の業務負担軽減や労働時間削減のために提言された新しいシステムです。
看護師のタスクシフト・シェア業務の例
医療機関では薬剤師や診療放射線技師など多くの医療従事者が、医師とタスクシフト・シェアを行っています。ここでは、看護師に関係するタスクシフト・シェアの例についてみていきましょう。
看護師が請け負うタスクシフトの例
看護師による医師のタスクシフト・シェアで最も代表的なものは、「特定行為」です。
公益社団法人日本看護協会「看護師の特定行為研修制度ポータルサイト」によると、特定行為に係る看護師の研修制度は、2015年10月に開始しました。研修を修了した看護師は、医師があらかじめ準備した手順書に基づいて特定行為が行えるという研修です。
厚生労働省「特定行為とは」によると、特定行為とは、「診療の補助であり、看護師が手順書により行う場合には、実践的な理解力、思考力及び判断力並びに高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされる38行為」と定義されています。
特定行為は、通常では医師が担当する医療行為ですが、研修を受けた看護師がいれば看護師へのタスクシフトが可能な行為です。特定行為は38行為あり、一例として下記が挙げられます。
- 経口用気管チューブまたは経鼻用気管チューブの位置の調整
- 人工呼吸器からの離脱
- 気管カニューレの交換
- 心嚢ドレーン・胸腔ドレーンの抜去
- 中心静脈カテーテルの抜去
- 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入
- インスリンの投与量の調整
- 持続点滴中の降圧剤の投与量の調整
- 抗けいれん剤の臨時の投与
特定行為が必要な患者がいる場合のタスクシフト・シェアについては、あらかじめ手順書を定めておくのが決まりです。医師が患者の対応についてあらかじめ手順書を作っておき、特定行為を行う際は看護師が手順書に従って行為を行います。
特定行為をタスクシフト・シェアするメリットとしては、医師の個別の指示が不要な点や看護師が施行できることがあげられます。また、医師は診療の負担が軽減され、看護師は医師へ度々指示を貰わずに済み、患者は迅速に的確な処置を受けられるという三者三様のメリットも得られるようです。
看護師の業務を看護補助者にタスクシフト・シェアする例
看護師は医師の一部業務を請け負うだけでなく、看護師自身の業務をほかの職種にタスクシフト・シェアすることもあります。
厚生労働省「医療機関の勤務環境改善の好事例の取組の体系」には、看護師の業務軽減のため、看護補助者が配置されることについて記載されています。看護補助者が行う看護業務は以下のとおりです。
- 療養生活の世話(食事、清潔、排泄、入浴、移動等)
- 病室内の環境整備
- ベッドメーキング
- 看護用品および消耗品の整理整頓
看護補助者は看護助手やナースエイドとも呼ばれます。看護師の業務負担軽減を目的に看護補助者を導入し、看護師にもタスクシフト・シェアを適応する医療機関は年々増加しているようです。
タスクシフト・シェア業務を行うときの注意点
タスクシフト・シェアを行う際は、施行前に十分な検討と準備が必要です。移管する業務・シェアする業務は誰が行っても業務の質を担保できるよう、マニュアルを必ず作成し、業務を標準化させましょう。不測の事態にも備え、状況に応じた対応の仕方を細かく決めておくことで、医療ミスやインシデントの予防に繋がります。
タスクシフト・シェア導入時や新人職員が入職してきたときは、マニュアルどおりの対応ができるように教育を行いましょう。
また、業務を請け負ってばかりでは、請け負う側の業務が逼迫する危険もあります。特定の職種・人に仕事が集中しないよう、特に同職種間ではタスクシェアを意識しながら仕事を進めていくことが大切です。
タスクシフトとは医師の業務負担軽減を目的とした業務移管のこと
- タスクシフトとは、医師の一部業務をほかの医療従事者へ業務移管すること
- タスクシェアとは、医師の一部業務をほかの医療従事者と分け合って進めること
- 看護師は医師のタスクシフト・シェアとして特定行為を行うことがある
- 看護師業務のタスクシフト・シェアとして看護補助者が看護業務の一部を行っている
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