豆知識
看取り介護とは?流れやケアの種類・実施時のポイントを解説
a year ago
「看取り介護」という言葉を聞いたことがあっても、「具体的にどのようなことをするのか知らない」という方もいるでしょう。看取り介護とは、死期が迫った方に対して行う介護のことです。看取り介護にはいくつかの段階やケアの種類があります。
この記事では、看取り介護のケア内容や種類を解説します。看取り介護のポイントや、今後の看取り介護の需要についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
看取り介護とは
そもそも「看取り」とは、人が亡くなるまでの過程を見守ることです。
もともとは、高齢者や病気を抱える患者さんなど、ご本人が亡くなるまでそばにいて見守り看病すること、つまり介護を行うこと自体を指して「看取る」という言葉が使われていました。しかし、近年では亡くなる瞬間に立ち会うことを「看取った」と表現することが多く、亡くなるに至るまでの介護のプロセスを看取り介護、さらに臨終のときが近づいてから亡くなるまでの見守りが「看取り」と考えられるようになっています。
つまり、看取り介護とは、死期が近づいたと判断されてから亡くなるまでの日常生活のケアや介助全般のことです。病状などの状況に対して、医療的な措置が限界であると判断されたあとにも、ご本人が自分自身の尊厳を保ちながらできる限り快適に日々を過ごせるよう、丁寧な介助を行います。
たとえば、食事の介助や排泄の介助なども、看取りケアの範疇です。自分で体を動かすことができない方の場合、床ずれが起こらないように配慮して褥瘡ケアを行うことも、看取り介護の一つとなります。
要介護者は、介護を受ける立場であることや、死を意識する状況であることに精神面でストレスを感じる場合も少なくありません。要介護者に対する精神的ケアも、介護職員が行う看取り介護の一つです。
看取り介護と緩和ケアの違い
「緩和ケア」は、がん治療など命に関わる病気の現場で行われることが多いケアです。生命の危機を伴う医療の現場で、心身の苦痛をできる限り取り除き、ご本人とご家族のQOLを高めることを目的とします。
看取り介護が最期を意識する介護であるのに対し、緩和ケアは生きるためのケア、生活を充実させるためのケアであるともいえるでしょう。命に関わる病気であっても、病状が軽いなどまだ死の危険がある状態ではない患者さんに対しても、心身の負担を軽減するために日々緩和ケアが行われています。
看取り介護とターミナルケアの違い
ターミナルケアは、終末期医療ともいわれています。最期を意識している点で看取り介護に通じる部分がありますが、ターミナルケアがあくまでも医療的ケアであるのに対して、看取り介護は見守りと日常生活のケアに重点が置かれる点が大きな違いです。
ターミナルケアでは、積極的な治療が限界を迎えて余命宣告を受けた患者さんに対し、残された人生をできるだけ自分らしく心地よく過ごせるよう、痛みやストレスの緩和などが行われます。看取り介護と異なり、ターミナルケアには投薬や点滴といった医療的措置が含まれるのが特徴です。
看取り介護の流れ
看取り介護には、ご本人の状況に応じて以下のような段階があります。
- 適応期
- 安定期
- 不安定期
- 終末期
- 看取り
看取りのそれぞれの段階について詳しく解説します。
適応期
看取り介護の中でも、ごく初期の段階を適応期と呼びます。主に介護施設において、入居後約1ヶ月までの期間を適応期と呼んでいます。
適応期は、ご本人あるいはご家族の方が、人生の最期の過ごし方を考え、看取りに対する理解を深める期間です。そのために必要な資料があれば介護職員が提供します。
この段階では、ご本人の生活の介助をしつつ、施設に慣れることができるよう声掛けなどの対応を行うのが介護職員の主な仕事です。施設入居の際にはご本人に施設での過ごし方や人生の最期への向き合い方についての意向を伺っていることが多いですが、介護職員は「日々の過ごし方についていつでも相談してください」と伝えます。
安定期
看取り介護の安定期は、ご本人が介護施設での生活に慣れ、看取りに対してもある程度安定的に向き合えている状態を指します。介護施設への入居後、およそ半年ほど経過すると、生活にも慣れて安定期と呼べる状態になる方が多いでしょう。
心身共に大きなトラブルが起こることは比較的少ない時期ですが、ご本人やご家族の意向をできるだけ聞き取ったり汲み取ったりして介助に活かすことが大切です。ご本人やご家族へのヒアリング、日々のケアなどは介護職員が主に行い、ご本人の生活に反映させます。
不安定期
看取り介護の不安定期は、低下期と呼ばれることもあります。安定期のあとに心身が衰弱する、またその衰弱傾向が進行する時期です。
不安定期を迎えると、食事の量が減ったり体力が落ちたりするなどの変化が見られるようになります。日々の過ごし方を考えるために、ご本人やご家族が医師からの説明や助言を必要とすることもあるでしょう。
看取り介護の不安定期では、介護職員はご本人の心身のケアに努めます。できる限り快適に過ごせるよう食事や排泄などの介助を行うだけでなく、日々の生活に歌や花などを取り入れてご本人の心がやすらぐような環境を作ることも大切です。
終末期
看取り介護の終末期は、看取り期と呼ばれることもあります。
ご本人は徐々に衰弱傾向となり、医師からは回復の見込みがないとの診断を告げられます。看取り介護の終末期に、ご本人やご家族を不安にさせないよう、心身に寄り添うのも介護職員の役割です。終末期になると食事の摂取量が落ちますが、自然の変化であることをご家族に説明し、ご本人の快適な生活支援に努めます。
看取り
看取り介護の中でも、ご逝去の瞬間が近づいた段階が看取りです。
ご家族と悔いの無い時間を過ごしてもらえるような配慮をすることが、看取りにおける介護職員の重要な仕事となります。
看取り介護で実施するケアの種類
看取り介護では、大きく分けて以下の3種類のケアが必要とされます。
- 身体のケア
- 精神のケア
- 家族のケア
看取り介護のそれぞれのケア内容を確認していきましょう。
身体のケア
看取り介護の主軸となるのが、身体のケアです。看取り介護においては、ご本人の意向を汲み取りつつ、きめ細やかな身体ケアを行うことが求められます。
看取り介護の具体的な身体のケアは、以下のとおりです。
- 食事ケア
- 排泄介助
- 体位交換など褥瘡の予防、ケア
まず、食事のケアに関してですが、終末期の方の食事の量が減ることは自然の流れであるため、無理強いにならないよう配慮することが大切です。食べることが苦痛にならず、楽に食事をとれるよう工夫することも求められます。
特に、嚥下機能に問題が生じている場合は、誤嚥性肺炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。介護職員は担当の医師や栄養士と連携をとることが大切になります。
排泄介助では、尊厳を傷つけないような配慮をしつつ、ご本人の状態に合わせて清潔を保つための介助を行います。おむつやポータブルトイレの使用など、ご本人の希望を尊重しつつ必要なケアを選択しましょう。清潔さを保つために入浴もしくは部分浴、清拭、洗髪などを適宜行います。
ご本人が自分で動けない場合は、褥瘡の予防に努めることも看取り介護において重要です。痛みなどが出ないよう、体位交換を行いましょう。
精神のケア
看取り介護においては、身体だけでなく精神のケアも非常に重要です。精神のケアができているかどうかで、要介護者ご本人の生活感覚は大きく左右されます。精神面が適切にケアされていることで、スムーズに食事がとれる、排泄介助への抵抗感が薄れるなど、身体のケアの質にも影響を与えます。
看取り介護の精神のケアでは、具体的に以下のようなことが行われます。
- 丁寧な声掛け
- 孤独感の緩和
- 話を聞く
具体的に話す用件がないときでもこまめにご本人に対して声をかけることは、孤独感の緩和に繋がります。施設での生活では、気になることがあっても質問するのをためらってしまうこともあるでしょう。介護職員が「気がかりなことはないですか?」と頻繁にヒアリングすることで、ご本人の不便を解消するだけでなく、不安を和らげる効果をもたらします。
介護職員は日々の仕事でやるべきことが多くありますが、要介護者ご本人の話を聞くことは重要な精神ケアの一環であると考え、できる限り時間を確保してご本人とじっくり向き合うことが大切です。
家族のケア
看取り介護においては、要介護者ご本人だけではなく、ご家族もケアを必要とすることが多くあります。
ご家族は看取り介護をとおして、大切な家族(要介護者ご本人)を失う日が近いことを感じ取り、不安や苦痛を感じやすくなります。このようなご家族に対して、適切な対応で不安を取り除くのも介護職員の役割の一つです。
ご家族のケアとしては、具体的に以下のようなことが挙げられます。
- ご本人の普段の様子を伝える
- ご本人の意向を伝え、ご家族との橋渡しとなる
- 喪失の悲しみをサポートするグリーフケアを行う
介護職員は、要介護者ご本人と長時間を共にし、普段の様子をよく知る存在です。ご本人の普段の過ごし方をご家族に伝えることで、「施設でどう過ごしているのか」が気になっているご家族の不安を和らげることができます。
また、介護職員はご本人の意向を直接聞く機会も多く、場合によってはご家族よりも詳細に要介護者の意向を把握できていることがあります。ご家族の要望もある中、ご本人の要望を介護職員が橋渡しとなってご家族に伝えることも、大切な役割の一つです。
要介護者がご逝去されることは、ご家族に大きな悲しみをもたらします。ご本人の生前の様子や看取り介護の様子を最期にお伝えすることは、悲しみの中にあるご家族にとって大きな心の支えに繋がる可能性があります。
こうしたケアは「グリーフケア」と呼ばれ、通常はご本人の亡くなったあとに行われます。適切なグリーフケアを行うために、介護職員は看取り介護が始まった段階で準備を始めておく必要があるでしょう。
看取り介護のポイント
看取り介護をスムーズに行うポイントは、以下の3つです。
- 看取りの知識を身につける
- チームで支え合う
- 看取り後に情報を共有する
それぞれ、どのような内容なのか解説します。
看取りの知識を身につける
看取り介護では、看取りに関する知識を必要とします。
たとえば、看取りに伴うご本人や家族の精神的ケアは欠かせません。ご本人の逝去後に必要とされるお別れやお見送りなどの処置(エンゼルケア)は、看取り介護ならではの知識です。
看取りの知識は、先輩の介護職員に教えてもらうほか、書籍やインターネットなどを積極的に活用して身につけましょう。介護職員として多くの知識を持つことは、看取り介護を行うことに対する不安の軽減にも繋がります。
チームで支え合う
看取り介護の現場でも、通常の介護と同様、医師や看護師などとしっかりと連携をとり、チームで支え合う必要があります。
介護の現場では、近年チームケアが注目されています。看取り介護でも同様に、要介護者の情報をこまめに記録し伝達し合うほか、ご家族とも一つのチームであると考え連携をとることが大切です。看取り介護に関して不安があるときは周りの職員から協力を得ることで、より良い対応ができるようになるでしょう。
看取り後に情報を共有する
看取り後に必要とされているのが、チームでの情報共有です。
看取り後の情報共有が必要とされる理由は、ひとつにはその後の看取り介護に活かすためですが、介護職員のメンタルケアの意味合いもあります。
要介護者の逝去に伴い、担当の介護職員は「もっとできることがあったのでは」と考えてしまいがちです。これまで何をしてきたか、辛かったことや良かったことなどをチーム間で共有することで、介護職員として尽力してきたことを振り返れます。気持ちの整理がしやすくなるとともに、その経験を後々の看取り介護に活かすことが可能です。
看取り介護の今後
看取り介護は今後、ますます需要が増えると想定されます。日本では超高齢社会を迎え、介護施設における看取りの機会も自ずと増えていくためです。
また、人生の最期の時期をいかに過ごすかという意味でも、看取り介護は注目を集めています。
少し前まで、高齢者介護や看取りの現場は「少しでも長く生きてもらう」という方向性が主流でした。しかし現在では、「最期に自分らしい時間を過ごす」という考え方にシフトしつつあります。ご家族ももちろん「長く生きてほしい」という思いはありますが、ご本人が人間としての尊厳を保ち、望むように最期を迎えることを大切にするようになってきています。
看取り介護の考え方やケア内容をを理解しよう
- 看取り介護とは亡くなるまでの日常生活のケアや介助全般のこと
- 看取り介護には適応期や安定期、不安定期、終末期といった段階がある
- 看取り介護では身体面や精神面、家族のケアを行う
- 看取り介護を行う際はチームで支え合うことを大切にしよう
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