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移乗介助の方法は? 移動時のポイントや注意点について解説

仕事内容a year ago

介護職員への転職を考えていても、身体介護、特に自力で歩くことが困難な方の移乗介助がうまくできるか不安に思っている方も多いのではないでしょうか。安全かつスムーズに移乗介助を行うには、正しい手順や注意点を押さえておくことが大切です。

この記事では、介護職員が日常的に行う移乗介助の方法や注意点を解説します。移乗介助の具体的なイメージをつかみ、実際の介護現場で介助を行う際の参考にしてください。

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移乗介助とは

移乗介助とは、病気やケガ、高齢などの理由により自分一人では歩行が困難な方の、ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座などへの移乗を介助することです。移乗を英語でトランスファー(transfer)というため、移乗介助はトランス介助と呼ばれることもあります。

介護職員が行う身体介護には食事介助や入浴介助などがありますが、中でも移乗介助は介護職員・被介助者(利用者)どちらにとっても負担がかかり、転倒やケガなどのリスクを伴うため注意が必要です。正しい方法を習得して、移乗介助をできるだけ楽に、またスムーズに行えるようにしましょう。

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基本的な移乗介助の手順

ここでは、基本的な移乗介助の方法について、手順を追って紹介します。

ベッドから車椅子へ移乗する際の具体的な手順は、以下の4ステップです。

1. 車椅子を準備する
2. 被介助者が動きやすい姿勢を作る
3. 被介助者を支えて移乗する
4. 被介助者の姿勢を確認する

それぞれのステップを確認していきましょう。

ステップ1:車椅子を準備する

まず被介助者が乗るための車椅子を準備します。事前に車椅子のタイヤの空気圧やブレーキの効き具合、フットレストの動きなどの点検を行っておきましょう。

具体的には以下の点に注意してください。

  • 被介助者にどこに行くかを伝え、同意を得る
  • フットサポート(レスト)を上げ、レッグサポートを外す
  • アームサポートやサイドガードは着脱式であれば外し、跳ね上げ式であれば、上げて邪魔にならないようにする
  • 車椅子をベッドに近づける

ベッドから車椅子への移乗介助をする際は、ベッドに対して20~30度の角度に車椅子を置くと移乗しやすいです。

ステップ2:被介助者が動きやすい姿勢を作る

次に、移乗するために被介助者が動きやすい姿勢を作ります。

具体的には、以下の点に配慮してください。

  • ベッドに浅く座ってもらう
  • 膝よりお尻の位置を上にする
  • 足底が床につくようにする
  • 肩幅程度に足を開いてもらう

ベッドに浅く座ってもらう際は、太ももの中間部がベッドの端にくるイメージで座ってもらいましょう。

ステップ3:被介助者を支えて移乗する

ベッドから車椅子への移乗介助を行う際には、被介助者の状態に合わせてサポートの仕方を変える必要があります。自分で1、2歩程度歩ける一部介助レベルや、まったく歩くことができない全介助レベルでは移乗介助の方法が異なるので注意が必要です。

ここでは、全介助の移乗介助について介護職員の姿勢や動きをもとに解説します。以下の手順で移乗介助を行いましょう。

  • 被介助者の軸足(車椅子に近い方)の延長線上に介護職員の車椅子側の足を置く
  • 介護職員の車椅子から遠い足は、支えたときに被介助者の膝と重なるような位置に置く
  • 被介助者に合わせて腰を落とし、重心を低くする
  • 被介助者の車椅子側の肩甲骨と反対側の骨盤に腕を回して、密着させながらしっかりと支える
  • ベッドから被介助者を前方に誘導し、お尻を浮かせる
  • お尻の高さを変えず、被介助者と一緒に車椅子の座面側にお尻が向くよう回転する
  • 被介助者に密着したまま、ゆっくりと座面に下ろす

移乗介助を行う際、被介助者の顔は前方に向けてもらいましょう。

ステップ4:被介助者の姿勢を確認する

車椅子に移乗できたら、被介助者の姿勢を確認してください。安定した状態で車椅子に座っているかを確認するためのポイントは、以下のとおりです。

  • 顔が正面を向いている
  • 上半身が左右に傾いていない
  • 深く座面に座っている
  • フットレスト(サポート)に足が乗っている

深く座れていないとき、無理に体をうしろに持ち上げることはしないようにしましょう。

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移乗介助前に確認するポイント

ベッドから車椅子への移乗介助を安全に行うためには、事前に確認しておくべきポイントがあります。スムーズに移乗介助を行えるよう、以下のように事前の準備を十分に行ってください。

  • 昇降ベッドの場合、ベッドの高さを車椅子の座面より少し高くしておく
  • 車椅子からベッドに移乗する際は、ベッドの高さを車椅子よりも低くする
  • 車椅子が動かないようブレーキをかけておく
  • 車椅子の座面やベッドのシーツが滑らないか確認する
  • 車椅子とベッドの間に動きやすいスペースを取るため、ベッドに対して30度ぐらいの位置に車椅子を置く

上記を心掛けることで、負担を減らして移乗介助を行えます。

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移乗介助中に注意すべきこと

移乗介助を行うにあたって、どんなトラブルが起きやすいかを知り、移乗介助中にやってはいけないこと、注意すべきことを覚えておきましょう。

  • 膝折れによる転落
  • 表皮剥離
  • ズボンの食い込み

それぞれの注意点を確認しましょう。

膝折れによる転落

膝折れとは、被介助者が立ち上がる際に起立性低血圧、いわゆる立ちくらみやめまいを起こしてふらついたり、気を失ったりして、膝を折って崩れ落ちることです。加齢による筋肉の衰えで体重を支えることができず、膝折れを起こすケースがあります。

膝折れによる転落を防ぐためには、移乗介助時にしっかりと被介助者の体を支えることが大切です。

表皮剥離

表皮剥離とは、移乗時に車椅子のフットレストやベッドの柵に被介助者の皮膚が直接当たって、皮膚を傷つけてしまうことです。特に高齢者の場合は表皮が薄く、ちょっとした摩擦やずれでも皮膚のトラブルが起きやすくなっています。

表皮剥離を防ぐためには、被介助者の皮膚の状態を確認する、移乗しやすい車椅子を使う、移乗時に肌が車椅子などに触れないように注意することなどが挙げられます。また、皮膚がむき出しにならないよう靴下を履いてもらう、膝から腿裏や肘から前腕にタオルを巻くなど、皮膚を保護することも大切です。

ズボンの食い込み

移乗介助の際に、安全だと思い被介助者のパジャマなどのズボンを持ち上げてしまうと、ズボンが食い込んでしまいます。同時に下着やオムツなども食い込んでしまい、不快感を与えてしまうので注意が必要です。被介助者は不快感からズボンを直すために立ち上がろうとすることがあり、その際に転倒するリスクがあります。

移乗介助時は衣服を持ったり引っ張ったりすることはやめましょう。

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ボディメカニクスを理解し移乗介助の負担を減らそう

ボディメカニクスとは、人間が体を動かすとき、骨や筋肉、関節が相互にどのように作用しているかという力学的関係を活用し、より少ない力で介護を行うための技法です。介護職員がボディメカニクスを理解しておくことで、移乗介助時の身体的な負担や腰痛のリスクを減らせると考えられます。

ボディメカニクスには以下の8つの原則があります。

  • 支持基底面積を広くする
  • 重心を低く保つ
  • 被介助者と介護職員の重心を近づける
  • 被介助者の体を小さくまとめる
  • 大きな筋群を使う
  • 身体をひねらずに水平移動する
  • 押すのではなく手前に引く
  • てこの原理を活用する

それぞれについて確認していきましょう。

支持基底面積を広くする

支持基底面積とは、自分の体重を支える床面積のことです。足を閉じままだと狭くなりますが、足を開くことで面積を広げることができます。

介助の動きに合わせて、前後左右に足を開くことで、介護職員の体が安定し腰痛予防につながります。そして、足を開いてしっかりと踏ん張ることで安定感が増すので意識してみてください。

重心を低く保つ

重心が高いと、重いものを持ったときにふらつきやすくなりますが、腰を落として重心を低く保つことで、バランスが取りやすくなり安定感が生まれます。このような姿勢で移乗介助を行うことによって、腰への負担を軽減でき、腰痛やぎっくり腰対策に繋がります。

腰痛の不安がある方は、腰椎用サポーターなどを活用しても良いでしょう。

被介助者と介助職員の重心を近づける

車椅子やベッドからの移乗介助を行う際には、介護職員は被介助者に体を密着させ、お互いの重心を近づけるようにしましょう。

お互いの重心が離れていると、体全体で支えることできず介護職員の身体的な負担が大きくなってしまうので注意が必要です。

安定した姿勢を保つため、お互いの重心を前述の支持基底面積内に入れることを意識してみてください。

被介助者の体を小さくまとめる

被介助者をベッドから移乗する際には、腕や足を伸ばしたままにせず、腕や足を組んでもらったほうが移乗介助が楽になります。重さは同じでも、小さくまとまっている方が力の分散を防ぐことができ、軽く感じるからです。

大きな筋群を使う

人間の筋肉には、大胸筋、広背筋、大腿四頭筋、大臀筋、脊柱起立筋など、大きな力を出せる大筋群があります。腕や手だけの力で移乗介助をするのではなく、胴体に近い大筋群を使って介助を行うと、力が出しやすいだけでなく疲れにくくなり、負担を減らすことが可能です。

身体をひねらずに水平移動する

被介助者を垂直方向に持ち上げようとすると、大きな力が必要になります。水平のほうが小さな力で動かせるため、移乗介助の際は極力持ち上げることはせず、水平移動を心掛けましょう。
また、体をひねって移乗介助をすると姿勢が不安定になるほか、腰痛を起こしてしまいます。介護職員はつま先を移乗先に向け、膝の屈伸を利用して移乗介助を行いましょう。

押すのではなく手前に引く

何かを押すときは、手前に引くときよりも負荷がかかります。押す動作が多くなると腰への負担が大きくなり、腰痛やぎっくり腰を引き起こす可能性があるでしょう。

ベッドの上で体位移動を行う際にも、押すのではなく移動させたい方向から手前に引くのが原則です。介護職員だけでなく被介助者にとっても、引いた方が負担は減らせます。

てこの原理を活用する

てこの原理とは、小さな力で大きな力を生み出すことができる原理のこと。力点に力を加え、支点を中心とした回転運動によって、作用点に大きな力を加えられるという原理です。

これを介助に応用すると、たとえば仰向き(仰臥位)に寝ている被介助者を横向き(側臥位)に変える際に、被介助者を抱きかかえた肘を支点として自分の体重をかけることで、負担を減らして被介助者を動かすことができます。

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基本の手順を理解して安全に移乗介助をしよう

  • 移乗介助は、ベッドから車椅子、車椅子からトイレの便座などへの移乗を介助すること
  • ベッドから車椅子への移乗介助をする際は、ベッドの高さや車椅子の位置を調整する
  • 移乗介助の際は膝折れによる転落や表皮剝離に気を付けよう
  • ボディメカニクスを理解し、移乗介助による腰痛を予防しよう

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