豆知識

認知症の人を介護する際の注意点3つ|心得や症状について解説

認知症の介護の仕事に携わりたいと考えている方の中には、「症状の種類や接し方のポイントが分からない」という人もいるでしょう。認知症の方を適切にサポートするためには、症状や対応方法について正しい知識を身につけておくことが大切です。

この記事では、認知症の症状や介護する際の注意点のほか、認知症の方をサポートする介護職員の仕事内容を紹介します。介護職への就職・転職を検討している方はぜひ参考にしてください。

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そもそも認知症とは

認知症とは、脳の認知機能が低下したことにより、生活する上で支障をきたす状態です。認知機能の低下は、脳細胞の働きが低下することにより引き起こされます。

認知症が発症する原因はさまざまですが、加齢により発症リスクが高まるといわれています。

認知症の主な種類は、以下のとおりです。

  • アルツハイマー型認知症
  • レビー小体型認知症
  • 脳血管性認知症

それぞれの特徴を紹介します。

アルツハイマー型認知症

政府広報オンラインの「知っておきたい認知症の基本」によると、アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳にたまり、神経細胞が萎縮して発症します。認知症の中で最も患者数の多い種類であり、厚生労働省令和元年6月「認知症施策の総合的な推進について(参考資料)」の発表によると認知症の主な原因疾患のうち67.6%がアルツハイマー型認知症です。

脳の神経細胞が破壊されて記憶力に関係する海馬が萎縮し、初期は最近の出来事を忘れたり、日時や季節を間違えたりといった症状が出るのがアルツハイマー型認知症の特徴です。アルツハイマー型の認知症は徐々に進行していき、物忘れだけでなく徘徊や失禁など、日常生活をする上で支障となる症状が次第に現れます。

レビー小体型認知症

同じく政府広報オンラインによると、レビー小体型認知症は、レビー小体という特殊なタンパク質が脳にたまり、脳の神経細胞が破壊されることで発症します。

物忘れなどの認知機能の低下に加え、実際には存在しない物が見える「幻視」の症状や、手足の震え、筋肉の強ばりなど身体的な症状も出るのが特徴です。
レビー小体型認知症は、「意識がはっきりしているときもあれば、ぼんやりしているときもある」といったように認知機能の変動を繰り返しながら進行していきます。

脳血管性認知症

同じく政府広報オンラインによると、脳血管性認知症は脳梗塞や脳出血など脳の血管障害(脳卒中)によって脳に血液が届かなくなることで発症します。

血液が届かなくなった脳の部位は、本来の機能を失ってしまいます。血管障害が起きた部位によって症状は異なり、、記憶障害や認知機能障害のほか、歩行障害や排尿障害といった身体機能の低下も初期段階から見られることが多いのが特徴です。

脳血管性認知症は、脳血管障害が再発する度に、急激に症状が進行するリスクがある認知症です。

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認知症と加齢による物忘れの違い

人間の記憶力は加齢とともに低下します。そのため、年齢を重ねると物忘れをすることも増えてきます。ただし、同じ記憶のトラブルでも、認知症と加齢による物忘れには異なる特徴があります。

加齢による物忘れは、記憶を想起(思い出す)する機能が低下し、思い出すまでに時間がかかる状態です。たとえば、「昨日の夜何を食べたか思い出せない」など体験の一部を忘れることが挙げられます。

一方、認知症は、記憶自体ができなくなります。そのため、認知症による物忘れは体験の一部ではなく、そもそも体験したこと自体を覚えていない状態になるのです。

たとえば、何を食べたか思い出せないのではなく、食事をしたこと自体を記憶していないのが認知症の物忘れです。思い出す記憶自体がないため、本人が「物忘れが多い」と自覚していないケースも少なくありません。

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認知症による言動

認知症になると、物忘れ以外にも特徴的な症状が現れます。認知症による主な言動は以下のとおりです。

  • 被害妄想
  • 徘徊
  • 暴力・暴言
  • 介護拒否
  • 異食
  • 不眠

物忘れに加えて上記のような言動が見られる方は認知症の可能性が考えられます。

被害妄想

被害妄想は、根拠なく「自分が脅かされている」「危害を加えられている」と感じる症状です。認知機能が低下する中、認知症になったことによる不安や孤独感、恐怖などさまざまな感情が絡み合い被害妄想が生じるとされています。

被害妄想は、認知症の方が抱く現状に対する不満や抗議を表すメッセージでもあります。身近な人に気持ちを訴えようとする際に、無意識に自らを「被害者」、周りを「加害者」としてしまうのです。

不安な気持ちを理解してほしいという感情から被害妄想が現れている場合が多いため、被害妄想を抱いた認知症の方と接する際は否定せず、共感を示すことが大切です。

徘徊

認知症の人には、外を歩き回る「徘徊」の症状が現れることがあります。徘徊する理由や動機はさまざまです。

たとえば、認知機能の低下により、道順や目的地、自分の今いる場所などを忘れて迷ってしまうことが挙げられます。また、自宅にいてもそこが自宅だと認識しておらず、家に帰宅するために外へ出て徘徊するケースや、過去の習慣で昔働いていた会社に出社しようとして徘徊するケース、今いる場所に不満があり衝動的に外出するケースも少なくありません。

レビー小体型認知症の場合、幻視から逃れようとするために徘徊することもあります。

徘徊する認知症の人に対しては、外出を禁止して家に閉じ込めるのではなく、見守りをしながら安全に外出を楽しんでもらうことが望ましいでしょう。

暴力・暴言

認知症が進むと、暴力を振るったり暴言を吐いたりすることもあります。ただし、暴力・暴言は認知症になると必ず起きる症状ではありません。認知症によって不安や混乱が引き起こされていたり、弱い立場になって自尊心を失ったりするなど、複合的な要因によって起きるといわれています。

また、認知症になると感情のコントロールが難しくなるため、興奮しやすくなり暴力や暴言が出てしまうケースも少なくありません。

原因はさまざまあるため、介護をする人は状況を分析して、どのような理由から暴力や暴言に至ったか確認することが重要です。

また、認知症の方の安全を確認したうえで、物理的・感情的に距離をとります。対応方法に迷った場合は、ほかの介護スタッフや医療スタッフに相談しましょう。

介護拒否

認知症の人の介護をしていると、介護拒否が起きることもあります。介護拒否とは、食事や服薬、入浴、着替え、排泄、外出などを拒否することです。

認知症の方に限らず、入浴や排泄などの介助をされることに否定的な感情を抱く人は少なくありません。特に認知症の方の場合、認知機能の低下によって、介護されていても自分が何をされているのか認識できず、混乱することもあります。このような場合には、介護する人は「何のために」「何をするのか」を丁寧に説明しましょう。

また、不安や恐怖、恥ずかしさなどが介護拒否の原因となっているケースもあります。いずれも無理強いせず、気持ちに寄り添う介護をすることが重要です。

異食

認知症の症状のひとつに、食べ物ではないものを口に入れたり飲み込んだりしてしまう「異食」が挙げられます。ティッシュやビニール袋、電池、消しゴム、植物、カギなど何でも目につくものを口に入れてしまう症状です。

異食の原因と考えられるものは、以下のとおりです。

  • 認知機能の低下によって、食べ物ではない物を食べ物と認識している
  • 食卓に座っていて「食事する状況」だと勘違いしている
  • 脳機能の低下によって空腹を感じやすくなっている
  • ストレス解消をしている

口に入れると危険な物は、認知症の人の目につくところには置かないなどの配慮が必要です。空腹を感じやすい場合は、食事を小分けにすることで、改善する場合もあります。危険な物を飲み込んでしまった際には、すぐに吐き出させてあげましょう。吐き出せないときは窒息を防ぐために、本人を横向きにして寝かせ、救急車を呼んでください。

不眠

認知症は、不眠(睡眠障害)を伴うケースが少なくありません。不眠の症状には「寝付きが悪い」「途中で目が覚めてしまう」「早朝に目が覚めてしまう」などがあります。昼夜が逆転してしまうのも睡眠障害の一つです。

認知症、特にアルツハイマー型認知症になると体内時計の調整ができなくなり、朝まで入眠できず生活リズムが崩れてしまうケースがあります。また、レビー小体型認知症の場合は脳がレム睡眠を調整できず、夢の内容に対して叫んだり、暴れたりすることがあります。

不眠の症状がある場合には、寝る数時間前には部屋を暗くしたり、就寝前に体を温めたりするなど、眠りやすい環境を作ってあげましょう。また、体内時計を整えるために朝に日光を浴びることも効果的です。

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認知症の人を介護する際の注意点

認知症の人を介護する際には注意するべきことがあります。具体的には、以下の3点に注意してください。

  • 相手のペースに合わせる
  • 話を簡潔にまとめる
  • スキンシップを意識する

それぞれについて解説します。

相手のペースに合わせる

認知症の人の動作が遅くても、相手のペースに合わせながら介護することが重要です。認知症の人は自分のペースを乱されると、混乱状態に陥る可能性があります。また、急かさせるとご本人の自尊心も傷つき、ストレスとなりかねません。

そのため、介護する際には急かしたり、やろうとしていることをこちらがやってしまったりせず、本人がやれることはゆっくりでも自分のペースに合わせてできるようサポートしましょう。また、認知症の人が作業をしているときには、突然話しかけるとペースを乱してしまうため、本人の視界に入ってから声をかけることが大切です。

話を簡潔にまとめる

認知症になると、聞いた話を頭の中で整理するのが難しくなります。そのため、介護をする人が話をする際には、簡潔にまとめて分かりやすく伝えましょう。

たとえば、「外から帰ってきたから、手を洗ってから食事をしましょう」と伝えると、1つのフレーズに「外から帰ってきた」「手を洗う」「食事をする」という3つの情報が入っているため、認知症の人が混乱してしまう可能性があります。簡潔に「手を洗いましょう」と伝え、手を洗い終わってから「食事をしましょう」と声をかけると、混乱を防ぐことが可能です。

また、話す際には、早口にならないよう、ゆっくりと聞き取りやすく話すことを心がけてください。

スキンシップを意識する

認知機能が低下していくことにより、言葉のみでの意思疎通が難しくなっていく傾向があります。

認知症の人は不安を抱いていることも多いため、スキンシップは重要なコミュニケーションの手段です。認知症の人が不安や混乱を感じている際には、正面から目を合わせ、優しいトーンで「大丈夫ですよ」と声がけしながら肩や腕に触れてスキンシップを図りましょう。優しく触れることにより、安心感を与えることができます。

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認知症の人を介護する職場は?

仕事で認知症の人を介護する場合、主な職場としてグループホームが挙げられます。

グループホームの正式名称は、「認知症対応型共同生活介護」です。要介護支援2または要介護1以上の65歳以上の認知症の人が入居でき、介護職員やケアマネジャーなどからサポートを受けて共同生活を送ります。

グループホームで働く介護職員の仕事内容は、以下のとおりです。

  • 身体介助
  • 生活援助
  • レクリエーションの企画・運営
  • バイタルチェック
  • 服薬管理
  • 夜間の見守り

グループホームは入居者の自立した生活を支援する施設のため、介護職員は「できることは自分で取り組んでもらう」というスタンスで入浴や排泄、食事、掃除などをサポートします。そのほか、レクリエーションの企画・運営や体温・脈拍・血圧などを測定するバイタルチェック、服薬管理も行います。夜間の主な業務は、施設内の見回りや入居者のお手洗いの付き添いなどです。

グループホームの介護職員に必須となる資格はなく、未経験OKの求人もあるため、介護の仕事が初めての方もチャレンジしやすいでしょう。

介護職員初任者研修・介護福祉士などの資格や介護職の実務経験がある場合は、知識・スキルを活かせることをアピールでき、転職の際に有利に働くと考えられます。

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認知症の介護について正しい知識を身につけよう

  • 認知症にはアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症、脳血管性認知症などがある
  • 認知症になると認知機能の低下に加えて徘徊や介護拒否、不眠などさまざまな症状が出る
  • 認知症の人を介護する際は、「相手のペースに合わせる」「スキンシップを取る」などを心掛けよう
  • 認知症の方を介護する職場としてグループホームが挙げられる

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