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親の介護で必要なことは?自分の生活と両立させるポイントを紹介
3 days ago

「親の介護において必要なことや対応がよく分からない」という方もいるでしょう。親の介護が必要になった際は、介護をする人や場所を決めることが大切です。この記事では、親の介護が必要になったときの対応や事前にしておくべきことについて紹介します。親の介護と自分の生活を両立させるポイントについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
親の介護が必要になったらどうする?
親の介護が必要となるきっかけは、高齢による身体機能の低下だけでなく、認知症や脳卒中などの病気や、転倒によるけがや骨折など、さまざまです。そのため、「親の介護が急に必要になった」というケースも多く見られるでしょう。
では、親の介護が急に必要になった際、子をはじめとする家族は、どのような対応をしなくてはならないのでしょうか。ここでは、親の介護が必要になった際の対応について紹介します。
親の介護をする場所を決める
親の介護が必要になったら、まず、介護をする場所を決めることが必要です。介護を行う場所は、自宅または介護施設の大きく2つがあります。
在宅介護の場合、介護にかかる費用は抑えられるものの、介護をする人の負担が大きくなるのが特徴です。一方、施設介護の場合、介護をする家族の負担は減らせるものの、施設に入居する費用がかかるため、金銭的な負担が大きくなります。このように、在宅介護と施設介護は双方にメリット・デメリットがあるため、親の介護をする場所を決めるに当たっては、介護にかけられる費用や時間、負担などを把握しておくことが大切です。
また、介護の程度も、親の介護をする場所の判断材料の一つとなります。たとえば、日常生活の動作において手助けが必要となる場面はあるものの、比較的自立した生活が送れる状態の場合、費用面を考慮して、在宅介護を選ぶ方もいるでしょう。一方で、同じ状況であっても、家族が遠方に住んでおりすぐに駆けつけられない状態の場合、安全面を考慮して、施設介護を選ぶケースもあると考えられます。
そのため、介護をする場所は、親(利用者)自身や介護を行う家族の意見を聞きながら、さまざまな条件を考慮したうえで決めることが重要です。
介護保険サービスの種類
介護保険サービスには、介護施設に入居して受けるものだけでなく、自宅で受けられるものや、施設に通って受けるものなどもあります。厚生労働省 介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」によると、代表的な介護保険サービスは、以下のとおりです。
| 施設の種類 | 利用の条件 | ||
|---|---|---|---|
| 要支援 | 要介護 | ||
| 入所型 | 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) | × | 要介護3以上 |
| 介護老人保健施設(老健) | × | ◯ | |
| 介護医療院 | × | ◯ | |
| 認知症対応型共同生活介護(グループホーム) | 要支援2以上 | ◯ | |
| 特定施設入居者生活介護 | ◯ | ◯ | |
| 通所型 | 通所介護(デイサービス) | × | ◯ |
| 通所リハビリテーション(デイケア) | ◯ | ◯ | |
| 訪問型 | 訪問介護(ホームヘルプ) | × | ◯ |
| 訪問リハビリテーション | ◯ | ◯ | |
| 訪問入浴介護 | ◯ | ◯ | |
| 宿泊型 | 短期入所生活介護(ショートステイ) | ◯ | ◯ |
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」
介護保険サービスは主に、介護施設で生活を送る入所型や、介護サービスを受けるために施設に通う通所型、居宅でサービスを受けられる訪問型、短期間入所して日常生活上の支援を受ける宿泊型に分けられるのが特徴です。
なお、介護保険サービスのなかには、介護予防や身体機能の維持を目的とした機能訓練などを受けられるものもあります。そのため、自宅で介護をする場合も、通所型や訪問型、宿泊型の介護サービスを適宜活用するのがおすすめです。
親の介護をする人を決める
親の介護では、当人に代わってさまざまな手続きを行ったり、必要に応じて関係機関と連絡を取り合ったりする必要があります。そのため、親の介護が必要となった際には、主として介護に携わる人を決めておくことが大切です。
なお、e-Gov法令検索「民法 第877条」によると、「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。」と定められています。そのため、介護は当人の兄弟姉妹や子、孫などの家族によって行われるのが一般的です。
また、扶養・扶助の義務は、配偶者間でも生じており、e-Gov法令検索「民法 第752条」では、「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」と定められています。よって、配偶者がいる場合は、配偶者が介護を行うケースもあるでしょう。
このように、親の介護をするに当たっては、主となる介護者を決めるものの、家族で協力し、連携をとりながら親の介護に取り組むことも重要です。
介護サービスの利用手続きをする
親の介護について、中心に行う人や場所が決まり、介護サービスの利用を希望することになったら、介護サービスの利用手続きを行うことが必要です。
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」によると、介護保険サービスを利用するまでの大まかな流れは、以下のとおりです。
- 市区町村の窓口で要介護認定の申請を行う
- ケアプランの作成依頼を行う
- 介護サービス事業所と契約を結ぶ
- 介護サービスの利用開始
介護サービスを利用するには、まず要介護認定を受ける必要があります。要介護認定の詳細は次項で紹介しているので、そちらをあわせてご覧ください。
要介護認定を受けた後は、要介護度に合わせた介護(予防)サービスを受けるためのケアプランの作成が必要となります。要支援1・2の認定を受けた場合は、地域包括支援センターに相談し、介護予防サービス計画書の作成を依頼するのが一般的です。一方で、要介護1~5の認定を受けた場合は、居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)で、介護サービス計画書の作成を依頼できます。
そして、作成したケアプランに基づき、介護サービス事業所と契約を結ぶことで、介護サービスの利用が開始されるのが、基本の流れです。
参考:厚生労働省 介護サービス情報公表システム「公表されている介護サービスについて」
e-Gov法令検索「民法」
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
親の介護はいつから必要?
介護が必要となるきっかけは、病気やけがなどにより心身に影響が出たことや、老衰などにより、日常生活において手助けが必要な場面が増えたことなど、人によってさまざまです。また、心身の不調や以前との変化を感じ、地域の窓口で相談した結果、要介護認定を受けたというようなケースもあるでしょう。
そのため、高齢者にあたる65歳を過ぎたら、いつでも介護が必要となる可能性があると考え、早めに対策をとっておくことが大切です。
要介護認定について
要介護認定とは、介護の要否や介護を要する度合いを表したもので、要支援1・2と要介護1~5の7段階および非該当の区分があります。要介護認定では、調査員による審査や主治医による意見書などを基に認定が行われるのが特徴です。
また、厚生労働省「参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み」によると、要介護認定は、介護の手間を表すものさしとしての時間である「要介護認定等基準時間」に基づいて、審査が行われます。具体的には、以下の5分野に該当する支援・介助を要する時間の長さから、要介護度が判定される仕組みです。
- 直接生活介助:入浴や排泄、食事などの介護
- 間接生活介助:洗濯や掃除などの家事援助など
- 問題行為関連行為:徘徊に対する探索や、不潔な行為に対する後始末など
- 機能訓練関連行為:歩行訓練や日常生活訓練などの機能訓練
- 医療関連行為:輸液の管理や褥瘡の処置などの診療の補助
要介護認定では、要介護認定等基準時間の長さが長くなるにつれて、高い要介護度の区分に認定されます。たとえば、要支援の場合、要介護認定等基準時間は、25分以上32分未満(またはこれに相当する状態)です。一方で、要介護5の場合の要介護認定等基準時間は、110分以上(またはこれに相当する状態)となっています。
なお、同資料によると、要支援・要介護の段階ごとの状態像は、以下のように整理されています。
| 自立 (非該当) |
- 日常生活上の基本的動作を自分で行うことが可能 - 薬の内服や電話の利用などの手段的日常生活動作を行う能力もある |
| 要支援 (1・2) |
- 日常生活上の基本的動作は、ほぼ自分で行うことが可能 - 手段的日常生活動作について、何らかの支援を要する |
| 要介護1 | - 要支援状態から、手段的日常生活動作を行う能力がさらに低下し、部分的な介護が必要 |
| 要介護2 | - 要介護1の状態に加え、日常生活動作についても部分的な介護が必要 |
| 要介護3 | - 要介護2の状態と比較して、日常生活動作・手段的日常生活動作の両方の観点からも著しく低下し、ほぼ全面的な介護が必要 |
| 要介護4 | - 要介護3の状態に加え、さらに動作能力が低下し、介護なしには日常生活を営むことが困難 |
| 要介護5 | - 要介護4の状態よりさらに動作能力が低下しており、介護なしには日常生活を営むことがほぼ不可能 |
参考:厚生労働省「参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み」
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」によると、要介護認定には有効期限が設けられているため、更新の際には心身の状況に応じて、要介護度が変更されるケースもあります。なお、身体の状態が著しく変化した場合などは、更新時期を待たずに変更の申請を行うことも可能です。
参考:厚生労働省「参考(3) 介護保険制度における要介護認定の仕組み」
厚生労働省 介護サービス情報公表システム「サービス利用までの流れ」
親の介護が必要になる前にしておくべきこと
ここからは、親の介護が必要になる前にしておくべきことを4つ紹介します。
介護に対する親の意思や要望の確認
親の介護が必要になる前にしておくべきことの一つは、介護に対する親自身の意思や要望を確認しておくことです。
人によっては、自身の介護を行う場所や人などに関する希望がある場合も。しかし、実際に介護が必要になった際には、細かい要望を確認する時間がなかったり、認知症などにより、自身の考えをうまく伝えられなかったりするケースも起こり得ます。
このような状況を防ぐためには、親が元気なうちに将来のことについて意見を聞いておく場を作り、大まかな介護の方針を決めておくことが重要です。
家族・親戚との話し合い
親の介護を行うにあたっては、ほかの家族や親戚の意見や状況を把握しておくことも大切です。親族間の話し合いでは、それぞれが親の介護に対してもっている意見を共有し、介護の方針を決めておくと良いでしょう。
その際には、各々の健康状態や生活状況、居住地などの情報を交換しながら、現状としてできる介護の形と、親本人が希望する介護の形をすり合わせておくことも必要です。
なお、介護では、利用者の意思決定の確認を行ったり、本人に代わり物事の決めたりする人のことを「キーパーソン」と呼ぶことがあります。介護サービスの利用申請をする際には、キーパーソンの有無について尋ねられることもあるようです。そのため、親族間での話し合いの場では、キーパーソンをはじめとする、それぞれの役割についても決めておくと良いでしょう。
介護サービスに関する情報の収集
事前に介護サービスに関する情報を集めておくことも、親の介護をスムーズに行ううえで重要なポイントの一つです。たとえば、介護施設では、施設ごとに特色が異なります。そのため、親や自身を含めた家族の状況に合った施設を選ぶには、複数の施設を比較することが必要でしょう。
また、利用できる介護サービス・事業の内容は、地域によって異なる場合もあります。実際に親の介護が必要となってからでは、十分に情報収集できない可能性も。そのため、親の介護が必要となる前に、親の自宅がある地域を中心に、利用できる介護サービスや介護施設などの情報を収集しておくと良いでしょう。
金銭面での準備
親の介護を行うに当たっては、事前に金銭面の準備をしておくことも大切です。親の介護が必要になると、介護サービスの利用や介護用品の購入など、費用がかかる場面が多くあります。突然、親の介護が必要な状況になった場合には、費用はどこから支払うのか、誰が管理するのかなどの金銭面での問題で、家族間でのトラブルが起こる可能性もあるでしょう。
そのため、介護にかかる費用の管理などについては、親の介護が必要になった場合に備えて、当人を含めた家族間で事前に話し合いをしておくことが重要です。
なお、場合によっては、親の介護に伴い、休職や離職をしなければならない状況になることもあります。そのため、突然親の介護が必要になった際に、一時的な休職や離職などの選択もできるよう、自身の金銭面の備えもしておくと良いでしょう。
親の介護と自分の生活を両立させるポイント
親の介護を行う際には、自分の生活との両立が難しいと感じることもあるでしょう。ここでは、親の介護と自分の生活を両立させるポイントを4つ紹介します。
介護休暇や介護休業の制度を活用する
親の介護と自分の生活を両立させるには、介護休暇や介護休業の制度を活用するのがポイントです。
厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休暇について」によると、介護休暇とは、労働者が要介護状態にある対象家族の介護や世話をするための休暇のことを指します。
介護休暇は、対象家族が1人の場合は年5日、対象家族が2人以上の場合は年10日を上限とし、1日または時間単位で取得可能です。そのため、介護休暇は、通院の付き添いや介護サービスの手続きの代行、ケアマネジャーとの打合せなど、短時間や1日の休暇が必要な際に活用できるでしょう。
一方、介護休暇より長い日数の休業を取得できる制度が「介護休業」です。厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休業について」によると、介護休業制度を利用すると、対象家族1人につき3回、かつ通算93日まで休業できます。よって、30日・30日・33日に分割して介護休業を取得することも可能です。
親の介護が必要になると、市区町村や地域包括支援センターなどへの相談や、家族間での話し合い、利用できるサービスの手配など、多くの手続きが必要となります。このように、仕事と介護を両立できる体制を整えるために、ある程度まとまった期間の休みが必要な場合は、介護休業制度を活用するのがおすすめです。
参考:厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休暇について」
厚生労働省 介護休業制度特設サイト「介護休業について」
ほかの親族と協力して親の介護をする
親の介護と自分の生活を両立させるうえでは、ほかの家族と協力して親の介護に取り組むことも重要です。自身が中心となって親の介護を行うことになった場合、親の介護を最優先に考え、行動した結果、自身の生活がおろそかになったり、体調を崩したりすることも。その場合、親の介護が十分にできなくなるだけでなく、自身の生活を元どおりにするために時間を要する可能性もあります。
そのため、自身が中心に親の介護をする際は1人で背負わず、必要に応じて、ほかの家族に協力を仰ぐことが大切です。また、家族全体で介護に取り組む意識をもち、常に連絡をとれるように関係を構築しておくことも重要でしょう。
介護・福祉サービスを利用する
親の介護と自分の生活を両立させるには、介護・福祉サービスを有効活用することも大切です。自治体によっては、独自の介護・福祉サービスを行っていることもあるようです。たとえば、港区「トップページ」によると、東京都港区では、以下のような介護・福祉サービスが実施されています。
- 高齢者日常生活用具給付事業:歩行補助用具や入浴補助用具の給付
- 高齢者配食サービス:自宅への食事の配送や安否確認
- 高齢者家事援助サービス:ホームヘルパーによる家事の援助
- 高齢者紙おむつの給付・高齢者おむつ代の助成
事業によっては、生活や身体の状況、要介護度など、利用条件が定められているものもあります。そのため、まずは各自治体のWebサイトなどをチェックし、利用できる事業はないか探してみるのもおすすめです。
親の介護に関する相談先を見つける
親の介護に関する相談先をいくつか見つけておくことも、親の介護を行ううえで大切なポイントの一つです。自分の生活を送りながら親の介護を行う場合、介護自体に関する悩みだけでなく、自身の生活に関する悩みが生じることもあるでしょう。
自治体によっては、そのような状況において、利用できる事業が実施されていることも。港区「トップページ」によると、港区では「介護家族の会」として、介護についての思いや悩みを話せる場が設けられています。同じような境遇の方と話すことで、悩みを解消するきっかけが見つかったり、不安が軽減されたりすることもあるでしょう。
また、同区では、介護家族の支援に携わったことのある人を対象とした「介護家族サポーターフォローアップ講座」が開かれています。このような講座に参加することで、介護家族の支援に携わったことのある方とのつながりができることも。さらに、介護に対する基本的な知識を身に付けられるため、親の介護に対するハードルが下がったり、よりスムーズに介護を行える場面が増えたりするでしょう。
参考:港区「トップページ」
親の介護に対する準備は早めにしておくのがポイント
- 親の介護が必要になったら、介護をする人や場所を決めることが大切
- 親の介護が必要になる前に、本人の思いや希望を聞いておくことがポイント
- 親の介護をする際には、自治体による介護・福祉事業を調べてみるのもおすすめ