豆知識
入浴介助とは?手順や注意点、仕事内容について解説
a year ago
介護や福祉、医療業界への転職を検討する方の中には、「入浴介助は、具体的にどのようなことをするの?」「入浴介助の具体的な手順や留意点について知りたい」という方もいるでしょう。
入浴介助は、身体を清潔に保ち、生活の質を維持するためにも非常に重要な仕事です。
本記事では入浴介助の目的と具体的な手順について説明します。入浴介助中に起こりやすい事故や防ぐための留意点についても紹介するので参考にしてください。
入浴介助とは
入浴介助とは、 障がいや老化などにより身体の機能が低下し、自力で入浴することが困難な方に対して、入浴のサポートをすることです。
身体を清潔に保ったり、入浴時の事故を防いだりするなど、入浴介助は介護において非常に重要な意味を持ちます。
入浴介助の目的
入浴介助の一番の目的は、大きく分けて2つあります。
1つ目は、身体を清潔に保ち感染症を予防することです。皮膚に雑菌が付着したまま時間が経つと、床ずれや感染症につながるリスクがあるため、一人で入浴するのが困難な方や不安がある方に対して入浴介助を行います。
2つ目は入浴によるリラックス効果です。身体機能の低下により、思うように身体を動かすことができないなか、お風呂に入ることを楽しみにする方も多いでしょう。また、お湯に浸かると血液の流れが良くなり、代謝アップに繋がります。筋肉の緊張がほぐれて疲労が回復したり、膝や腰、肩といった関節の痛みが軽減するといった効果も期待できるでしょう。
入浴介助を行う場面
入浴介助は、主に高齢者向けの通所・入居施設や、障がいのある方を対象とした施設などで行われています。介護サービスを提供する介護保険施設や入院患者のいる病院で働く際に、入浴介助に関わることが多いでしょう。
また、介護を必要とする方のご自宅に訪問して、入浴介助を行うケースもあります。入浴介助に関わる主な職種は、介護士や看護助手、看護師などです。
介護士・看護師が入浴介助を行う際の手順
利用者の多い施設では、決められた時間内に複数人の入浴介助を行うことも多いでしょう。時間通りに全員の身体を綺麗にするには、入浴介助の手順を把握し、効率よく進めることが大切です。
以下で介護施設で入浴介助を行う際の手順をご紹介するので見ていきましょう。なお、要介助者の状態によって、必要な介助や手順は異なるため、あくまで一つの方法としてご覧ください。
入浴前の仕事
入浴前に行う仕事は、以下のとおり主に2つあります。
- 脱衣所・浴室の温度調節
- 必要な道具の準備
実際に入浴介助を行う前に、脱衣所と浴室を温めておきましょう。温度差が大きいと、ヒートショックの原因になりかねません。ヒートショックとは急激な温度変化により血圧が乱高下して、さまざまな症状を引き起こす現象です。脳や心臓に持病がある高齢者の場合は、命に関わる恐れもあるため、注意しなければなりません。
また、入浴介助に必要な道具は、手の届く範囲内に置いておくことが大切です。入浴中に忘れ物を取りに行き、介助対象者から目を離すような状況があると、転倒などの事故につながる危険性があります。
入浴中の仕事
入浴中は介助対象者の身体を綺麗に洗うことが主な仕事です。床や椅子など肌が触れるところにはあらかじめお湯をかけて温めておき、足元に気を付けながらゆっくりと椅子に座ってもらいます。
シャワーの温度を確認したら、「お湯をかけますね」と声をかけ、まずは心臓から遠い足元にお湯を掛けます。その後、髪、顔、上半身、下半身の順番で洗います。ただし、順番は本人の希望も確認しながら、必要に応じて調整しましょう。
体に負担をかけないよう注意しながら、やさしく丁寧に洗います。身体を洗うのと同時に、皮膚に異常がないか確認するのも大事な仕事の一つです。
全身を洗い終えたら、転倒しないように身体を支えながら浴槽へ誘導します。長時間の入浴はめまいや脱水症状の原因となり得るため、入浴時間は5分程度にしておきましょう。入浴後は足元に気を付けながら、ゆっくりと浴槽から出て脱衣所に向かいます。
入浴後の仕事
入浴後は、清潔なタオルで髪や身体の水分をしっかりと拭き取りましょう。特に、足の裏が濡れていると滑って転ぶ原因になるため、水分を丁寧に拭き取る必要があります。
服を着せる際は、介助対象者に無理のないよう、椅子に腰掛けてもらうのがおすすめです。着替え終わったらしっかりと水分補給してもらい、体調に異常がないかチェックしましょう。
入浴介助の流れ
入浴介助は次の流れをまとめると、次のとおりです。
1.脱衣所と浴室の温度調節
2.必要な道具の準備
3.服を脱がせて浴室内の椅子に座らせる
4.シャワーの温度に注意して全身を洗う
5.足元に気をつけながら浴槽へと誘導する
6.5分を目安にしてお湯に浸かってもらう
7.転倒しないように支えながら脱衣所へと向かう
8.身体の水分をしっかりと拭き取る
9.服を着せて水分補給してもらう
10.体調に異常がないかチェックする
上記の流れを頭に入れて、スムーズに介助できるように準備しておきましょう。
入浴介助中に起こりやすい事故
入浴を楽しみにしている高齢者も多い一方で、入浴中は事故が起こりやすいのも事実です。入浴介助中に起こりやすい事故と、その対処法について説明します。
溺れる
入浴中は、介助対象者が溺れないように注意しなければなりません。入浴中に意識を失うとそのまま溺れて命に関わる可能性もあるため、目を離さないように注意して介助しましょう。消費者庁の資料によると、2021年の65歳以上の浴槽における不慮の溺死・溺水は5,097人で、交通事故(2,150人)の2倍以上あったことが分かります。
入浴中に溺れる原因の一つに、お湯の温度が高すぎることによる、のぼせが挙げられます。適切なお湯の温度は、要介助者の体調や天候などによっても変わるため、その都度調節しつつ、のぼせないように5分ほど経ったら浴槽から出てもらうことも大切です。
脱水症状
入浴中は汗をかくため、脱水症状にも気をつけなければなりません。身体の中の水分が失われると、倦怠感や立ちくらみなどが起こる可能性があります。
入浴前後にはしっかりと水分補給させましょう。入浴後にはコップ1杯分の水を飲むなど、ルールとして決めておくと水分補給の習慣を付けるのに役立ちます。
火傷
入浴介助中は火傷にも注意しなければなりません。特に皮膚が薄く刺激に弱い高齢者は、若い人と比べて火傷しやすい傾向にあります。シャワーの温度は要介助者に合わせて調整しつつ、38〜40度程度を目安に設定すると良いでしょう。お湯をかける前に温度を確認することも大切です。
また、お風呂によっては蛇口部分が高温になるタイプも少なくありません。誤って触れて火傷するといった事故も考えられるため、断熱カバーを付けるなどの工夫をするとよいでしょう。
転倒
浴室は床が濡れているため、転倒事故が起きやすい状況です。転倒は打ち身や骨折の原因となるだけでなく、打ちどころが悪いと命に関わるリスクもあります。
転倒を防ぐためには、常に身体を支えてあげるのはもちろん環境を整えることも大切です。たとえば、滑り止めマットを敷いたり、浴室に手すりを付けたりするという対策が挙げられます。入浴後に足の裏が濡れていると脱衣所での転倒リスクが高まるため、乾いたタオルでしっかりと水分を拭き取るように意識しましょう。
ヒートショック
特に気温が低い時期に注意したいのが、ヒートショックによる事故です。政府広報オンラインによれば、入浴事故は毎年11月から4月にかけて多く発生しています。
ヒートショックが起きると、めまいや立ちくらみが発生する恐れがあるほか、気を失ったり転倒したりする可能性もあります。
ヒートショックを防ぐためには、温度変化をなるべく小さくするのがポイントです。入浴介助前に脱衣所を温めておいたり、シャワーで要介助者の体を洗い流す際もぬるま湯からかけていったり、徐々に温度を高めるような工夫をすると良いでしょう。
表皮剥離
表皮剥離とは、皮膚を擦る際の摩擦により皮が剥けてしまう事故のことです。高齢者の皮膚は薄く、乾燥している場合が多く、強く擦ることが表皮剥離の原因になりえます。
表皮剥離の対処法としては、優しく撫でるように身体を洗ってあげることが大切です。入浴後に保湿クリームを塗って肌の潤いをキープすると、表皮剥離の予防にもなるでしょう。
入浴介助を行う際の留意点
入浴介助を行う際の留意点は、主に次の3つです。
- 事前準備を怠らない
- 介助対象者から目を離さない
- 異変に気づいたら早めに対処する
入浴介助中の事故には、準備不足が原因で発生するものも少なくありません。事故が起きてから後悔することのないように、足りないものがないか確認する癖をつけましょう。
入浴中に介助対象者から目を離すと、いざというときに助けることができません。特に持病のある方の入浴介助をする際は、容態の急変に注意しながら慎重に行うことが大切です。
介助対象者の体調がすぐれない場合には、無理して入浴させる必要はありません。入浴前と入浴後にはしっかりと健康チェックをし、異変があれば早めに対処するようにしましょう。
入浴介助の仕事内容について理解しよう
- 入浴介助とは、自力での入浴が困難な方に対して入浴時のサポートをすること
- 入浴前には脱衣所や浴室の温度調節と入浴介助に必要な道具の準備をしておく
- 入浴中はお湯の温度や転倒による事故に気をつけて、入浴時間は5分程度にする
- 入浴後は身体の水分を拭き取って、水分補給をさせて脱水症状を防ぐ
- 適切な入浴介助により、感染症予防とリラックス効果が期待できる
入浴介助は介護において非常に重要な仕事の一つです。本記事で紹介したリスクや留意点を把握し、介護の現場に活かしましょう。
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