豆知識
老老介護とは?問題点や解決策を解説!
14 days ago

「老老介護という言葉を聞いたことはあるものの、具体的にどういったものかは分からない」という方もいるかもしれません。老老介護は高齢者が高齢の家族などを介護する状況を指します。本記事では、老老介護が増える原因や問題点、解決策を紹介します。また、老老介護の予防法についても触れているので、ぜひ参考にしてみてください。
老老介護とは
老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく高齢の家族を支える状況を指します。夫婦や親子、兄弟姉妹など形はさまざまですが、老老介護は介護する側・される側の双方に心身の負担がのしかかる問題です。
特に75歳を超えた高齢者同士の場合は「超老老介護」とされ、より身体的負担を抱えることになります。
内閣府「令和7年版 高齢社会白書(全文)1高齢化の現状と将来像」によると、1950年には総人口の5%に満たなかった高齢化率が1970年には7%を超え、1994年には14%を超えました。
同資料によると、2025年現在では日本の65歳以上の人口は3624万人で、高齢化率は29.3%となっています。高齢化率の増加とともに老老介護も拡大しているのが現状です。
参考:内閣府「令和7年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」
認認介護との主な違い
老老介護は高齢者同士の介護を指すのに対し、認認介護は介護者・要介護者の両方に認知症の症状がある点が主な違いです。老老介護の場合は体力や健康面の負担が中心です。一方、認認介護では介護者・要介護者の両方の判断力や理解力が低下しているため、服薬や体調の管理が難しく、事故や健康被害のリスクが一層高まります。
さらに、認知症同士では周囲に助けを求めることも困難になりやすいのが特徴です。
老老介護の現状
厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、要介護者から見た同居する主な介護者の続柄は配偶者が最も多く22.9%、次いで子が16.2%でした。
同資料によると、2001年における要介護者と同居する主な介護者の年齢の組み合わせは、60歳以上同士が54.4%、65歳以上同士が40.6%、75歳以上同士が18.7%です。
2022年の要介護者と同居する主な介護者の年齢の組み合わせは、60歳以上同士の割合が77.1%、65歳以上同士が63.5%、75歳以上同士が35.7%となっています。このように、老老介護の割合は約20年間で20%以上増加しています。
参考:厚生労働省「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」
老老介護が増える主な原因
老老介護が増える原因は何か気になる方もいるでしょう。老老介護の割合が上昇傾向にある主な原因は以下のとおりです。
- 平均寿命と健康寿命の差
- 核家族化の増加
- 介護サービスの経済的な負担
ここでは、上記3つの老老介護が増える主な原因についてそれぞれ解説します。
平均寿命と健康寿命の差
平均寿命が延びる一方で健康寿命との差が大きいことが、老老介護の要因の一つとなっています。健康寿命とは、日常生活に制限がなく自立して暮らせる期間のことです。
厚生労働省「健康日本21アクション支援システム 平均寿命と健康寿命」によると、2001年における男性の平均寿命は78.07歳で健康寿命は69.4歳、女性の平均寿命は84.93歳で健康寿命は72.65歳です。このことから、2001年の平均寿命と健康寿命の差は男性が8.67年、女性が12.28年であることが分かります。
また、2022年における男性の平均寿命が81.05歳で健康寿命は72.57歳、女性は平均寿命が87.09歳で健康寿命は75.45歳です。このことから、平均寿命と健康寿命の差は男性が8.48年、女性が11.64年であることが分かります。
男女ともに平均寿命が伸びるとともに健康寿命も伸びており、両者の差が縮まらないことが老老介護の一因と考えられます。
参考:厚生労働省「健康日本21アクション支援システム 平均寿命と健康寿命」
核家族化の増加
核家族化の増加も老老介護が増えている要因の一つです。厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」によると、65歳以上の者のいる世帯は2760万4000世帯で全世帯の50.3%を占めています。
以下に65歳以上の者のいる夫婦のみの世帯と親と未婚の子のみの世帯、三世代世帯の年次推移(全世帯に占める割合)をまとめました。
| 年次推移 | 夫婦のみの世帯 | 親と未婚の子のみの世帯 | 三世代世帯 |
|---|---|---|---|
| 1986年 | 18.2% | 11.1% | 44.8% |
| 1989年 | 20.9% | 11.7% | 40.7% |
| 1992年 | 22.8% | 12.1% | 36.6% |
| 1995年 | 24.2% | 12.9% | 33.3% |
| 1998年 | 26.7% | 13.7% | 29.7% |
| 2001年 | 27.8% | 15.7% | 25.5% |
| 2004年 | 29.4% | 16.4% | 21.9% |
| 2007年 | 29.8% | 17.7% | 18.3% |
| 2010年 | 29.9% | 18.5% | 16.2% |
| 2013年 | 31.1% | 19.8% | 13.2% |
| 2016年 | 31.1% | 20.7% | 11% |
| 2019年 | 32.3% | 20.0% | 9.4% |
| 2022年 | 32.1% | 20.1% | 7.1% |
| 2023年 | 32% | 20.2% | 7% |
| 2024年 | 31.8% | 20.4% | 6.3% |
上記を見ると、夫婦のみの世帯や親と未婚の子のみの世帯の割合は増加傾向にあるのに対し、三世代世帯の割合は減少していることから、核家族が増加していることが分かるでしょう。
参考:厚生労働省「2024(令和6)年 国民生活基礎調査の概況」
介護サービスの経済的な負担
介護サービスにかかる費用が経済的な負担となることも、老老介護が増える要因の一つです。高齢者の多くは年金を収入の柱としており、年金の範囲で生活費や医療費に加え、介護サービスの利用料まで賄うのは容易ではありません。
特に、民間の有料老人ホームや介護施設は費用が高額な場合もあるため、年金収入だけで入居費用を賄うのは難しいでしょう。その結果、施設に頼れず在宅での介護を続けざるを得ず、配偶者同士で支え合う老老介護が増える一因となっています。
老老介護の問題点
老老介護にはどのような問題点があるのか気になる方もいるでしょう。ここでは、老老介護によって起こる問題点を3つ紹介します。
精神的・身体的な疲労を感じる
老老介護では介護者自身も高齢のため、心身に負担がかかりやすいのが問題です。介護者自身の体力の低下により入浴や移動の介助で腰や膝を痛めたり、夜間の見守りで睡眠不足に陥ったりすることも珍しくありません。
また、「自分が支えなければならない」という心理的な重圧や、要介護者の言動に対するストレスも積み重なり、精神的な疲弊を招くこともあるでしょう。介護の時間が長いほど介護者と要介護者の両方に疲れが増す傾向があります。
社会的孤立につながる
老老介護は介護に多くの時間と体力を使うため、外出や人との交流が減り、社会とのつながりを失いやすいという問題があります。介護者は家にいることが増え、趣味や地域活動に参加する余裕を失うことで、心身をリフレッシュさせる機会が減るためです。
孤立状態が続くと相談できる相手がいなくなり、悩みを抱え込みやすくなったりうつ症状につながりやすくなったりする場合があります。さらに、介護生活で外部からの刺激が乏しくなると筋力や認知機能の低下を招き、結果的に介護する側・される側の双方が支援を必要とする認認介護に発展するリスクもあります。
共倒れが起こる
老老介護は要介護者だけでなく介護者も高齢であるため、双方が心身の限界を迎えやすいのが問題です。場合によっては、介護者と要介護者が同時に生活困難に陥る共倒れに発展する恐れもあります。介護を担う側が病気や体調不良で倒れてしまうと、介護を受ける人の生活も成り立たなくなります。
さらに、孤立した高齢世帯では外部からの支援が届きにくいため、介護者の疲労が限界に達すると介護放棄や虐待に至るケースも少なくありません。
老老介護の解決策
老老介護の解決策は以下の4つです。
- 介護サービスを利用する
- 地域の支援体制を活用する
- 地域包括支援センターに相談する
- 介護施設に入所する
ここでは、上記4つの老老介護の解決策について見ていきます。
介護サービスを利用する
老老介護の問題点の一つである介護者の心身の疲労は、介護サービスを利用することで軽減できる可能性があります。
介護サービスには介護保険を使える介護保険サービスと、自費で利用する介護保険外サービスがあります。介護保険サービスを利用するには、まず自治体に申請して要支援・要介護認定を受けなければなりません。要支援・要介護認定を受ければ認定区分に応じて訪問介護やデイサービス、短期入所(ショートステイ)などを原則1割負担で利用できます。そのため、入浴や排泄介助といった身体的負担がかかる介護をプロに任せることが可能です。
また、要支援・要介護認定を受けていない場合も利用できる介護保険外サービスでは、通院の付き添いや買い物代行だけでなく、趣味のための外出介助など幅広いサポートを受けられます。介護保険外サービスの費用は全額自己負担になりますが、柔軟な内容で利用できるのが利点です。
地域の支援体制を活用する
老老介護では介護者・要介護者のどちらも孤立しやすい傾向があるため、地域の支援体制を活用して周囲とつながりをもつことが大切です。
自治体によっては高齢者の見守りや生活支援を目的とした仕組みが整っている所もあります。たとえば、スタッフが定期的に自宅を訪問して安否確認を行う訪問型や、家電やセンサーを利用して異常を検知するセンサー型など、見守りサービスの種類はさまざまです。自治体独自の取り組みを実施している場合もあるため、まずは地域の支援内容を確認してみましょう。
また、近隣住民とのつながりを築くことも老老介護をするうえで重要です。町内会の集まりや高齢者サロンへの参加などを通じて近隣住民と日常的に交流をもっておくことで、緊急時に助けを求めやすくなるためです。
地域とのつながりは老老介護の負担を分散させるだけでなく、介護をする側とされる側の精神的な支えにもなり得ます。身近な支援の手を借りながら、安心して介護を続けられる環境を整えていきましょう。
地域包括支援センターに相談する
老老介護に負担や不安を感じたときは、一人で抱え込まずに地域包括支援センターへ相談することが大切です。地域包括支援センターは、65歳以上の高齢者やその家族の介護・福祉に関する悩みを総合的に支援する窓口です。
地域包括支援センターには、保健師・社会福祉士・主任介護支援専門員(ケアマネジャー)などが常駐しています。そのため、介護保険の申請手続きや利用可能な福祉サービスの紹介、介護者の心身のサポートなど幅広く対応してもらえるのが特徴です。
たとえば、「介護に疲れて休みたい」「どの制度を使えば費用を抑えられるか分からない」といった相談対応や、必要に応じて福祉用具のレンタルなど具体的な支援策を提案してもらえます。
介護の悩みを一人で抱え込まず、地域包括支援センターに早めに相談することで、安心して介護を続けられる環境を整えられるでしょう。
介護施設に入所する
自宅での介護が限界に近づいている場合は、介護施設への入所を検討することも選択肢の一つです。介護施設を利用すれば専門スタッフによる24時間体制のケアを受けられるため、介護者の身体的・精神的な負担を減らせます。
介護施設には、介護保険が適用される特別養護老人ホーム(特養)や介護老人保健施設(老健)のほか、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などさまざまな種類があります。
たとえば、サ高住は見守りや生活相談などの支援を受けながらも、自宅のように自由度の高い暮らしができる点が特徴です。サ高住を利用する場合は介護スタッフが常駐する介護型や、比較的自立している方向けの一般型など、介護度に応じて選べます。
老老介護や認認介護の状態を放置すると、共倒れのリスクが高まります。そのため、無理を重ねる前に家族やケアマネジャーと相談しながら、本人の希望や要介護度に合わせて最適な施設を検討しておくことが大切です。
老老介護の予防と対策
「老老介護を予防するためには何をしておけば良いの?」と気になる方もいるでしょう。ここでは、老老介護の予防法や対策を紹介します。
健康的な生活を心掛ける
老老介護を防ぐためにはまず自分自身が健康を保ち、自立した生活を続けることが大切です。高齢になっても心身の機能を維持できるよう、日常の中で無理なくできる健康習慣を取り入れましょう。
たとえば、ウォーキングや体操などの軽い運動は、体力低下の予防に役立ちます。また、バランスの取れた食事と十分な睡眠を心掛けることで、心身の健康を支えられます。
さらに、家族や友人と会話を楽しんだり読書や手芸、家庭菜園などの趣味を継続したりすることで、脳の活性化にもつながるでしょう。
健康的な生活を意識して日々を過ごすことが、将来的な介護リスクを減らし、老老介護の予防につながります。
介護に関する知識を身につける
介護が必要になってから慌てないためには、日ごろから介護に関する知識を身につけておくことが重要です。知識がないまま介護を始めると適切なケア方法が分からず、要介護者の安全を損ねたり、介護者自身が腰や膝を痛めたりする場合もあります。
介護保険制度の仕組みやサービスの種類を理解しておくことで、ケアプランの見直しや介護サービスの選択時などに役立つでしょう。また、自治体や社会福祉協議会が主催する介護教室や講座に参加すれば、排泄介助や認知症・介護予防の運動など、実践的な知識を身につけられます。
介護に関する正しい知識を学び、いざというときに落ち着いて対応できる体制を整えておきましょう。
家族間で介護について話し合う
介護が必要になってから慌てないためには、元気なうちから家族全員で介護について話し合っておくことが欠かせません。介護は突然始まる場合もあり、準備がないまま介護を始めると家族間で意見の食い違いや責任の押し付け合いが起こる可能性があります。
「在宅介護を望むのか」「施設への入居を検討するのか」「誰がどのような形で関わるのか」といった点を家族間で共有しておくことで、介護が必要になったときにスムーズに動きやすくなるでしょう。また、要介護者と介護者それぞれの希望や事情を尊重し合うことも大切です。
介護の方針を話し合う際には、介護保険制度や利用できるサービスも一緒に確認しておくと安心です。可能であれば、要介護者本人の意思を文書にまとめておくと、実際に介護が始まったときに家族全員が納得した判断をしやすくなります。
老老介護とは高齢者が高齢者を介護する状況のこと
- 老老介護とは、65歳以上の高齢者が同じく高齢の家族を支える状況のこと
- 老老介護が増える主な原因は、平均寿命と健康寿命の差が縮まらないこと
- 老老介護の主な解決策は、介護サービスや地域支援体制などを利用すること
- 老老介護の対策法は、事前に介護の知識を身につけたり家族間で話し合ったりすること