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2035年問題とは?医療・介護に与える影響や対策を紹介

7 days ago

「2035年問題とは何かよく分からない」という方もいるでしょう。2035年問題とは、少子高齢化に伴い、2035年に起こる可能性がある社会問題のことです。この記事では、2035年問題が医療・介護業界に与える影響やほかの年の問題との違いについて紹介します。2035年問題の対策としてできることについても解説するので、ぜひ参考にしてください。

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2035年問題とは

2035年問題とは、少子高齢化に伴い、2035年の日本社会に起こり得る問題を総称する言葉です。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」によると、2020年の国勢調査の結果を基に算出された、日本の推計人口は以下のとおりです。なお、出生推移および死亡推移が中位の場合の数値となります。

年次 日本の総人口 0~14歳の人口(割合) 65歳以上の人口(割合)
2025年 1億2326万2000人 1363万3000人(11.1%) 3652万9000人(29.6%)
2030年 1億2011万6000人 1239万7000人(10.3%) 3696万2000人(30.8%)
2035年 1億1663万9000人 1169万1000人(10.0%) 3773万2000人(32.3%)

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」

日本の総人口は、2025年から2035年にかけて減少する一方で、65歳以上の高齢者人口は増加することが予想されています。その結果、2035年には高齢者の割合が日本の総人口の32.3%、つまり、約3人に1人が高齢者となる見込みです。

このような人口構造の変化や社会環境の変化により、医療や介護、経済などの面で、さまざまな社会問題が引き起こされる可能性があるといわれています。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(全国)」

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2035年問題が医療・介護業界に与える影響

2035年問題が医療や介護の業界に与える影響には、以下のようなものがあると考えられます。

  • 介護人材の不足
  • 年金の賦課方式の破綻
  • 医療保険制度の崩壊
  • 働き方の変化

ここからは、それぞれの問題について見ていきましょう。

介護の需要が高まり介護人材が不足する

高齢者人口の増加に伴い、2035年には現在よりさらに介護の需要が高まり、介護人材が不足する可能性が高いでしょう。

厚生労働省「介護人材確保の現状について」によると、介護職員の需要は増加傾向にあり、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。
2022年度時点での介護職員数は約215万人であることから、2026年度までに約25万人、2040年度までに約57万人の介護職員の増員が必要です。

現状として、2025年時点ですでに介護職員数は不足しているといわれています。そのため、推計されている介護職員の必要数に達するためには、大幅な人材の確保に向けた取り組みが重要でしょう。

このように、介護の需要が急激に高まる背景には、団塊ジュニア世代が前期高齢者層に突入し始めることが挙げられます。
厚生労働省「我が国の人口について」によると、団塊ジュニア世代とは、第二次ベビーブームにあたる1971~1974年に生まれた世代のことです。団塊ジュニア世代は、その親にあたる団塊世代の次に人口が多い世代となっています。

厚生労働省「2 出生」によると、第二次ベビーブーム中の年間出生数は、200万人を超えていたようです。つまり、2035年以降、団塊ジュニア世代にあたる約800万人が前期高齢者となることから、介護の需要は一気に高まり、さらなる介護人材の不足が予想されています。

参考:厚生労働省「第1回福祉人材確保専門委員会 資料」
厚生労働省「我が国の人口について」
厚生労働省「2 出生」

年金の賦課方式が成立しなくなる

厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~ 第05話 賦課方式と積立方式」によると、年金の賦課方式とは、年金支給のための必要な財源を、現役世代(20~60歳)の保険料収入から用意する方式のことです。つまり、賦課方式の場合、自身が受給する年金は、その下の世代が納めた保険料から支払われることとなります。

現在の日本の公的年金の基本は、賦課方式です。そのため、少子高齢化が加速すると、現役世代の負担が大きくなることが予想されています。また、将来的には年金受給世代と現役世代のバランスがとれなくなり、賦課方式自体が成り立たなくなる可能性もあるでしょう。

ただし、厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~ 第06話 積立金の役割」によると、年金は現役世代が負担する保険料に加え、基礎年金の給付をまかなうための国庫負担や、保険料と国庫負担でまかないきれない部分を補填する年金積立金から成り立っています。全体の構成は、保険料が約7割、国庫負担が約2割、年金積立金が約1割です。

また、年金積立金は、2004年の年金制度改正によって、約100年をかけて計画的に活用することとなっているほか、5年ごとに行われる財政検証によって、年金給付の水準は調整されています。そのため、経済成長が著しく低下するケースを除くと、将来的に年金積立金がなくなり、年金が受給できなくなる可能性は低いでしょう。

参考:厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~ 第05話 賦課方式と積立方式」
厚生労働省「いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~ 第06話 積立金の役割」

医療保険制度が崩壊するおそれがある

厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」によると、2022年度時点において、65歳以上の高齢者にかかる医療費は、国民医療費全体の約6割です。このように、高齢者医療費が占める割合は高く、高齢化が進むと、高齢者医療費はさらに増加することが予想されます。

また、厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」によると、後期高齢者の医療費は、約4割が現役世代が負担する支援金でまかなわれているのが現状です。

そのため、少子化に伴い医療費を支える労働者人口が減ったり、後期高齢者の割合が高くなったりすると、現役世代一人当たりの負担が大きくなるでしょう。その結果、医療費の需要と供給のバランスがとれなくなり、医療保険制度自体が崩壊する可能性もあると考えられています。

参考:厚生労働省「令和4(2022)年度 国民医療費の概況」
厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」

求められる働き方が変わる可能性がある

2035年には、労働者層が減少する中で十分な労働力を確保するため、これまで以上に女性や高齢者が活躍しやすい職場が増えていくと考えられます。その結果、テレワークの導入がさらに進んだり、育児や介護の休暇制度の取得が推奨されたりと、これまで以上に柔軟な働き方がしやすくなるでしょう。

一方で、AIをはじめとするテクノロジーを導入する企業が増えることも予想されています。その結果、業務内容の見直しが行われたり、AIやロボットでは代用できない業務への需要が高まったりすることで、これまでとは異なるスキルが求められる可能性もあるでしょう。

特に、医療や介護分野では、医師や介護職員が不足している職場も多く、ロボットやAI技術を用いて業務の効率化を図るケースも増えているようです。そのため、医療や介護分野で働くうえでは、テクノロジーに関する知識やツールを扱う技術などが必要となる可能性もあることを視野に入れておく必要があります。

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2035年問題とほかの年の問題の違い

日本では5~10年周期で、大きな社会問題が起こるといわれています。ここからは、「2020年問題」「2025年問題」「2040年問題」と2035年問題の違いを見ていきましょう。

2035年問題と2020年問題の違い

2020年問題は、2035年問題と同様に、「団塊ジュニア世代」の動きが背景にあるのが特徴です。しかし、2035年問題と2020年問題では、団塊ジュニア世代が移行するフェーズが異なります。

そもそも2020年問題とは、団塊ジュニア世代が50代に突入することによる、人件費の高騰や管理職のポスト不足などの諸問題のことを指す言葉です。
50歳前後は一般的に、給与がピークに達しやすいといわれています。そのため、2020年には多くの企業において、人口数が多い団塊ジュニア世代の社員の給与がピークに達することによる人件費の高騰が、経営上の大きな課題となる事態が発生しました。

また、50代になると、昇級などで管理職に就く社員が多くなるものの、団塊ジュニア世代の社員は人数が多いため、管理職のポストが不足し、評価に見合った昇級が受けられない社員もいたようです。

2035年問題には、2020年問題のような、企業の経営に関する大きな問題は含まれていません。一方で、団塊ジュニア世代が労働者層から高齢者層に移行することで生じる可能性が高い、医療費や介護需要などに対する問題が含まれているのが、2035年問題の特徴です。

2035年問題と2025年問題の違い

2035年問題と2025年問題は、社会に影響を及ぼす年齢層が異なります。
2025年問題とは、「団塊世代」と呼ばれる1947~1949年に生まれた世代が、75歳以上の後期高齢者となることで起こり得る、医療費の増加や医療体制の崩壊などの問題のことです。
2025年問題の場合、2035年問題でキーワードとなる「団塊ジュニア世代」の親にあたる「団塊世代」の動きが一つの要因となっています。

総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)4月確定値、2025年(令和7年)9月概算値) (2025年9月19日公表)」によると、2025年4月1日時点での、75歳以上の人口は2105万3000人です。同時点での日本の総人口は1億2339万7000人であるため、75歳以上の人口は、全体の約17%を占めることとなります。

また、同調査によると、日本の総人口は前年同月に比べ約60万5000人減少しているのに対して、75歳以上人口は、前年同月に比べ約59万6000人増加しているようです。このように、団塊世代が75歳以上になることで、後期高齢者層は急激に増加しています。

後期高齢者が急増することで引き起こされる問題の一つが、医療保険制度の破綻です。前述のとおり、現状として、後期高齢者の医療費の約4割は現役世代が負担しており、今後も後期高齢者の医療費は増加すると見込まれています。

なお、厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」によると、これ以上現役世代の負担が大きくならないよう、制度改正が行われました。しかし、今後さらに後期高齢者が増えると、新たな対策が必要となる可能性もあるでしょう。

この問題は、2025年問題から10年を経た2035年問題においても引き続き、大きな課題の一つとなっています。

参考:総務省統計局「人口推計(2025年(令和7年)4月確定値、2025年(令和7年)9月概算値) (2025年9月19日公表)」
厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」

2035年問題と2040年問題の違い

2035年問題と2040年問題の違いは、団塊ジュニア世代が65歳以上の高齢者層に突入する前か後か、という点です。2040年になると、団塊ジュニア世代は65歳以上となり、現役世代の医療保険や年金の負担の増加や運営体制の崩壊が加速することが予想されています。

国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)結果の概要」によると、2040年の65歳以上の推計人口割合は、全体の34.8%です。前述のとおり、2035年時点での65歳以上の推計人口割合は全体の32.3%となっており、5年でさらに高齢者層が増加することが見込まれています。

そのため、2040年問題では2035年問題と同様に、労働者層と高齢者層の割合が変わることで引き起こされる医療保険・年金などの制度の仕組みや介護人材の確保などに対する対策が必要となるでしょう。

参考:国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(全国)」

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国や企業による2035年問題への対策

ここまで、2035年問題が社会に与える影響を見てきました。では、国や企業は2035年問題に向けて、どのような対策を行っているのでしょうか。ここでは、代表的な2つの取り組みを紹介します。

離職防止のための対策

企業では、労働力確保の観点から、離職防止のための対策が積極的に行われています。具体的には、以下のようなものが挙げられるでしょう。

  • 処遇の改善
  • テレワークやフレックス制など、柔軟な働き方の導入
  • 出産や育児、介護に関する休暇の取得の促進
  • 社内研修やOJTなどの教育の場の充実
  • 最先端技術の導入による、業務の効率化

特に、働き手の不足が課題となっている介護の分野においては、介護報酬改定によって、介護職員の処遇改善に関する取り組みが行われています。

ほかにも、ライフスタイルに合った働き方ができる職場や休暇制度の取得を促進することで、従業員の離職防止を図る企業もあるようです。また、AIやロボットなどのテクノロジーを導入することで、業務の効率化を図り、従業員一人ひとりの業務負担を軽減する取り組みを行う企業も増えています。

各種制度の見直し

2035年問題への対策として、さまざまな分野で制度の見直しが行われています。そのうちの一つが、後期高齢者医療制度です。
厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」によると、2024年4月、後期高齢者医療の保険料の見直しとして、制度が改正されています。

それまで、現役世代1人当たりの後期高齢者支援金は、後期高齢者1人当たりの保険料より多く、負担が大きいものでした。しかし、制度の改正により、後期高齢者の保険料と現役世代の支援金の伸び率が同じになるよう調整されています。

また、出産育児一時金の一部を、後期高齢者の保険料から支援する仕組みも同時に導入されました。そのため、この制度改正は、少子化問題の要因の一つといわれている「出産・育児に関わる経済的な負担」の軽減にもつながるものとなっています。

参考:厚生労働省「令和6年度からの後期高齢者医療の保険料について」

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2035年問題への対策としてできること

2035年問題への対策としては、社会や企業単位で行うものもあれば、個人でできることもあります。ここからは、2035年問題への対策として個人でできることを見ていきましょう。

健康管理を行う

個人でできる2035年問題への対策の一つは、健康管理を徹底して行うことです。

前述のとおり、2035年以降、高齢者世代が増加することにより、現役世代の医療費負担が大きくなることが予想されています。そのため、若いうちから健康管理を徹底して行い、自身が高齢者世代となった際の医療費を抑える姿勢が大切です。
また、健康管理をしっかりと行うことで、現時点で自身にかかる医療費を抑えることにもつながり、経済的な負担を最小限に留められるでしょう。

介護の分野では、自立した生活を長く続けられるよう、介護予防につながる活動に取り組むことも大切です。厚生労働省「介護予防について」によると、介護予防とは、高齢者が要介護状態となることを防ぐことを目的として行われるもので、日々の健康づくりにもつながります。

たとえば、運動機能向上のための体操や口腔機能を維持するためのトレーニング、社会参加促進のためのボランティア活動なども介護予防の一種です。介護職員不足への対策として、まずは一人ひとりが介護予防に取り組むことで、介護に対する需要を抑えることも大切でしょう。

参考:厚生労働省「介護予防」

医療や介護に関する制度や取り組みをチェックしておく

2035年問題に備えて、医療や介護に関する制度や、国・自治体などによる取り組みをチェックし、情報を仕入れておくことも大切です。2035年に起こり得る問題に対しては、国や自治体、企業でも、新たな対策や取り組みが実施される可能性があります。このような情報に対してアンテナを張っておくことで、社会の流れを把握しやすくなり、事前に対策をとりやすくなるでしょう。

また、国や自治体、企業などによる取り組みや制度のなかには、自身や家族に直接関係するものが含まれている可能性もあります。特に、医療や介護の業界で働いている方は、自身の働き方に関する制度が制定・改正されることも。そのため、医療や介護に関する情報は、積極的に取り入れておくことが、2035年問題への対策として大切なことの一つです。

キャリアや資産形成に関するプランを立てる

キャリアや資産形成に関するプランを立てておくことも、2035年問題の対策として個人でできることの一つです。
前述のとおり、2035年には、AIなどのテクノロジーの導入が進み、企業が求める人材が限定化される可能性があります。その場合に備えて、今のうちからキャリアアップのためのプランを立てたり、AIやロボットなどのテクノロジーでは代用できない高いスキルを身に付けたりすることが大切です。

また、2035年以降は医療保険・年金などの負担が増えたり、働き方の変化により働き口が限定されたりすることが影響し、人によっては経済的な問題が生じることも。そのため、貯蓄や投資などに関する知識を身に付け、将来に備えて資産形成に取り組むのも良いでしょう。

医療・介護職でのスキルを磨く

2035年問題への対策として、医療や介護のスキルを磨いておくことも大切です。2035年以降、高齢化が進むにつれ、医療や介護の需要は高まることが予想されます。そのため、現在、医療や介護の業界で働いている方は、自身のスキルを磨き続けることで、将来的に活躍できる可能性がさらに高まるでしょう。

また、医療や介護に興味がある方は、医療・介護分野への転職を検討してみるのもおすすめです。医療職や介護職として働くには、多くの専門的な知識や技術が必要となるものの、これからの社会における需要は高く、やりがいをもって働けるでしょう。

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2035年問題は少子高齢化による社会問題のこと

  • 2035年問題とは、少子高齢化などにより2035年に起こり得る社会問題の総称
  • 2035年問題により、介護人材の不足や医療保険制度の崩壊が起こる可能性がある
  • 2035年問題への対策として、国や企業は制度の見直しなどの取り組みを行っている
  • 2035年問題の影響を最小限に留めるため、個人でも対策を行うことが大切

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