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変則勤務とは?固定就労やシフト制などとの違いやメリットを紹介
2 days ago

「変則勤務とはどのような勤務形態かよく分からない」という方もいるでしょう。変則勤務とは、一定の範囲内において、変則的な勤務時間で働く勤務形態のことです。この記事では、変則勤務の仕組みやほかの労働時間制度との違いについて紹介します。変則勤務によるメリット・デメリットについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
変則勤務とは?
変則勤務とは、一定の範囲内において、変則的な勤務時間で働く勤務形態のことです。変則勤務は、「変形労働時間制」に基づく働き方のことで、「変則就労」と呼ばれることもあります。
厚生労働省「労働時間・休日」によると、変形労働時間制とは、一定期間を平均し、1週間当たりの労働時間が法定の労働時間を超えない範囲内であれば、特定の日や週に法定労働時間を超えて労働できる制度のことです。
変形労働時間制では、業務量の変動に合わせて、従業員の労働時間を調整できます。そのため、主に時期によって繁閑の差がある企業などで導入されているのが特徴です。
労働者の就業時間については、労働基準法により、原則として1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはならないと定められています。つまり、変形労働時間制の場合、一定期間内における1週間当たりの労働時間が40時間を超えなければ、1日8時間、1週間で40時間の基準を超えて働くことが可能です。
変形労働時間制には、1ヶ月単位・1年単位・1週間単位と労働時間を算出する期間が異なる3種と、フレックスタイム制の計4種があります。
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」によると、変形労働時間制を導入している企業の割合は60.9%となっており、変形労働時間制の種類別の割合は、以下のとおりです。
変形労働時間制の種類 | 導入企業の割合(複数回答) |
---|---|
1年単位の変形労働時間制 | 32.3% |
1ヶ月単位の変形労働時間制 | 25.2% |
1週間単位の非定型的変形労働時間制 | 1.4% |
フレックスタイム制 | 7.2% |
参考:厚生労働省「令和6年就労条件総合調査の概況」
変形労働時間制のなかでは、1年単位もしくは1ヶ月単位の変形労働時間制が主流となっています。なお、1週間単位の変形労働時間制は、導入するための条件が設けられているため、導入が限定的となっているようです。
それぞれの種類の特徴については、以下で紹介します。
1ヶ月単位の変則勤務
厚生労働省 兵庫労働局ホームページ「1か月単位の変形労働時間制」によると、1ヶ月単位の変則勤務とは、1ヶ月以内の期間における総労働時間を定め、その枠内で働く働き方のことです。1ヶ月単位の変形労働時間制は、労働基準法32条の2によって定められています。
1ヶ月単位の変則勤務は、月初や月末に業務が集中する職場や、特定の曜日がきまって忙しくなる職場などで導入されることが多いようです。
1ヶ月単位の変形労働時間制の場合、1ヶ月以内の期間を平均して、1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象の場合は44時間)以内になることが条件となっています。
31日まである月の場合を例に挙げると、具体的には、以下のような勤務スケジュールでの働き方が可能です。
勤務スケジュール | 所定労働時間 | 勤務日数 | 勤務時間の内訳 |
---|---|---|---|
第1週 | 40時間 | 5日 | - 8時間×5日 |
第2週 | 38時間 | 6日 | - 4時間×1日 - 6時間×2日 - 7時間×2日 - 8時間×1日 |
第3週 | 42時間 | 5日 | - 6時間×1日 - 8時間×2日 - 10時間×2日 |
第4週 | 36時間 | 6日 | - 4時間×2日 - 6時間×2日 - 8時間×2日 |
第5週 | 16時間 | 2日 | - 8時間×2日 |
合計 | 172時間 | 24日 | - |
なお、1ヶ月単位の変形労働時間制では、対象期間中の労働時間を、「1週間の労働時間×(対象期間の歴日数÷7)」の計算式で算出される上限時間内におさめることが必要です。「1週間の労働時間」は、原則40時間、特例措置対象事業場の場合は44時間となります。
上記の例の場合、1ヶ月の所定労働時間は172時間であり、1ヶ月当たりの労働時間の上限(40時間×(31日÷7)=177.1時間)を超えていません。よって、1ヶ月単位の変形労働時間制の条件を満たしているため、法定労働時間を超えて働く日や週があっても、問題がない働き方となります。
1年単位の変則勤務
厚生労働省「1年単位の変形労働時間制」によると、1年単位の変則勤務とは、1ヶ月を超え1年以内の期間における総労働時間を定め、その枠内で働く働き方のことです。1年単位の変形労働時間制は、労働基準法32条の4によって定められています。
1年単位の変形労働時間制が導入されている企業で働く従業員は、以下のような条件の下、法定労働時間を超えて働くことが可能です。
- 対象期間中の1週間当たりの平均労働時間は、40時間を超えない範囲とする
- 労働日や労働日ごとの労働時間は、あらかじめ労使協定などで定めておく
- 特定の労働日や労働日ごとの労働時間は、任意に変更できない
- 1日の労働時間の限度は10時間、1週間の労働時間の限度は52時間
- 連続して労働できる日数は、原則として6日まで(1週間に1日の休日の確保は必須)
対象期間を1年間として変則勤務を行う場合の働き方の例は、以下のとおりです。
対象月 | 所定労働時間 | 勤務時間 |
---|---|---|
4月~11月/1月~2月 | 7時間30分 | 午前9時~午後5時30分 (うち1時間休憩) |
12月・3月 | 8時間30分 | 午前8時30分~午後6時 (うち1時間休憩) |
従業員が変則勤務を行う場合、始業・就業時刻や休憩、休日などは、必ず就業規則に記載するよう定められています。そのため、対象期間の長さや、どのように働き方が変化するのかは、就業規則で確認が可能です。
1週間単位の変則勤務
厚生労働省「労働時間制度の概要等について」によると、1週間単位の変則勤務とは、1週40時間以内の範囲で、1日10時間を上限として、その枠内で働く働き方のことです。1週間単位の変形労働時間制は、労働基準法32条の5によって定められています。
なお、1週間単位の変則勤務ができるのは、常時使用する労働者が30人未満の小売業・旅館・料理店・飲食店に限定されるのが特徴です。そのため、1週間単位の変則勤務は、「非定型的変形労働時間制」と表現されることがあります。
1週間単位の変則勤務を行う場合、少なくとも当該1週間の開始する前に、書面によって各日の労働時間を労働者に通知することが必要です。
フレックスタイム制
厚生労働省「労働時間制度の概要等について」によると、フレックスタイム制とは、3ヶ月以内の一定期間(清算期間)と総労働時間を定め、その枠内で働く働き方のことです。フレックスタイム制は、労働基準法32条の3によって定められています。
フレックスタイム制は、1ヶ月・1年・1週間単位の変則勤務とは異なり、労働者自身が始業・終業時間を決められるのが特徴です。
なお、企業側はコアタイムと呼ばれる、労働者が就業しなければならない時間帯を自由に定められます。コアタイムが設けられている場合、労働者はコアタイムを含む形での勤務時間の設定が必要です。
参考:厚生労働省「労働時間・休日」
厚生労働省「令和6年就労条件総合調査 結果の概況」
厚生労働省 兵庫労働局ホームページ「1か月単位の変形労働時間制」
厚生労働省「変形労働時間制の概要」
厚生労働省「第177回労働政策審議会労働条件分科会(資料)」
変則勤務とほかの労働時間制度の違い
労働時間制度には、変則勤務以外にもいろいろなものがあります。ここでは、「固定就労」「シフト制」「みなし労働時間制」と変則勤務の違いを見ていきましょう。
変則勤務(変則就労)と固定就労の違い
変則勤務(変則就労)と固定就労は、日々の始業・終業時刻や、就業する曜日などの変動の有無が異なります。
固定就労とは、就業規則などによって定められた始業時間と就業時間に則って就業する働き方のことです。変形労働時間制に対して、「固定労働時間制」と呼ばれることもあります。
固定就労では、1日8時間、週40時間の法定労働時間内で働くのが基本です。また、固定就労の場合、勤務する曜日や1週間および1ヶ月当たりの勤務時間が決まっている点も、変則就労とは異なります。
なお、こども家庭庁「就労証明書の標準的な様式について(周知)」のように、「固定就労」や「変則就労」という表現は、就労証明書などの書類で使用されていることが多いようです。
参考:こども家庭庁「保育」
変則勤務とシフト制の違い
変則勤務とシフト制は、勤務日によって労働時間が変わることがある点は共通していますが、制度を取り入れる目的や条件が異なります。
厚生労働省「いわゆる『シフト制』により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」によると、シフト制とは、一定期間(1週間や1ヶ月)ごとに作成される勤務シフトによって、具体的な労働日や労働時間が確定する勤務形態のことです。
変則勤務は、フルタイムで働くケースで多く取り入れられているのに対して、シフト制は主に、パートやアルバイトなどの勤務形態で多く取り入れられています。
また、シフト制は、従業員の労働時間を管理することを目的とした制度です。一方で、変則勤務(変形労働時間制)は、法定労働時間を超えて働くことを可能にする仕組みであり、制度を導入する目的が異なります。
ほかにも、シフト制の場合、企業側が決めたいくつかの就業パターンに沿って従業員が交代制で働く点も、変則勤務との違いの一つです。
参考:厚生労働省「いわゆる『シフト制』について」
変則勤務とみなし労働時間制の違い
変則勤務とみなし労働時間制では、対象業務の制限の有無が異なります。
みなし労働時間制とは、労働時間の算定が難しい場合に、定められた労働時間数を働いたものとみなす制度のことです。
厚生労働省「労働時間・休日」によると、みなし労働時間制には、「事業場外みなし労働時間制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」の3種があります。
事業場外みなし労働時間制とは、事業外で労働するために労働時間の算定が困難である場合において、所定労働時間の労働をしたものとみなす制度のことです。外回りの営業や出張など、具体的な指示を受けずに業務を行うケースでは、労働時間算定が難しいため、事業場外みなし労働時間制の対象となることがあります。
一方、専門業務型裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間配分などに関して、使用者が具体的な指示をしない20の業務について、労使協定で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度です。20の業務には、情報処理システムの分析・設計やデザイナー業務、建築士や弁護士の業務などが該当します。
また、企画業務型裁量労働制とは、業務遂行の手段や時間配分などに関して、使用者が具体的な指示をしない業務について、労使委員会で定めた労働時間数を働いたものとみなす制度のことです。企画業務型裁量労働制では、事業運営に関する企画や立案、調査、分析の業務が対象となります。
参考:厚生労働省「労働時間・休日」
変則勤務によるメリット
労働者が変則勤務で働くメリットは、業務量に合った労働時間で働けることです。変則勤務では、業務が多くなる繁忙期の就業時間は長くなるものの、閑散期にはその分就業時間が短くなります。そのため、時期によってメリハリをつけて働けるうえ、閑散期にはプライベートの時間も確保しやすくなる点が、労働者が変則勤務で働くメリットの一つです。
また、変則勤務には、従業員の残業代や人件費を抑えられたり、業務を効率的に進めやすくなったりと、導入する企業側にとってのメリットも複数あります。
変則勤務によるデメリット
変則勤務の場合、時期によって労働時間にばらつきがある点がデメリットだと感じる方もいるでしょう。繁忙期などで所定労働時間が長く設定されている期間では、法定労働時間を超えても残業代が発生しないことがあります。そのため、「勤務時間に対して給料が低い」と感じやすい点が、変則勤務で働くデメリットの一つです。
また、企業側には、従業員の勤怠管理が煩雑になることや、労使協定の締結や就業規則の整備などの事務処理の手間が増えることなどのデメリットがあると考えられます。
変則勤務とは勤務時間が変則的である勤務形態のこと
- 変則勤務とは特定の日・週において、法定労働時間を超えて労働できる働き方のこと
- 変則勤務には、週・月・年と期間の範囲が異なるものとフレックスタイム制がある
- 変則勤務で働くメリットの一つは、業務量に合った労働時間で働けること