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公認心理師になるには?国家資格の取得方法や試験の概要を紹介
9 days ago

「公認心理師になるにはどうすれば良いかよく分からない」という方もいるでしょう。公認心理師になるには、「公認心理師試験」と呼ばれる国家試験に合格することが必要です。この記事では、公認心理師資格の取得方法や試験の概要について解説します。公認心理師の主な業務内容や必要なスキルについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
公認心理師になるには
厚生労働省「公認心理師」によると、公認心理師とは、保健医療・福祉・教育・そのほかの分野において、心理学に関する専門的知識と技術をもって、心理的な支援業務を行う職種のことです。
厚生労働省「公認心理師法の施行について」によると、公認心理師は、2017年に全面施行された公認心理師法によって、国民の心の健康の保持増進に寄与することを目的とした心理職の国家資格として定められています。
そのため、公認心理師として業務に従事するには、「公認心理師試験」と呼ばれる国家試験に合格し、公認心理師の登録を受けることが必要です。なお、公認心理師資格を保有していない方が「公認心理師」や「心理師」という名称を用いることは、公認心理師法によって禁止されています。
参考:厚生労働省「公認心理師」
公認心理師試験の受験資格を取得する方法
公認心理師試験の受験資格を取得する方法は7つあり、履修科目や実務経験などの条件によって、ルートが異なるのが特徴です。
ここでは、厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」を参考に、それぞれのルートの概要を見ていきましょう。
一般ルート
一般ルートとは、e-Gov法令検索「公認心理師法 第7条」によって定められている一般的な受験資格の取得方法です。ここでは、区分A・区分B・区分Cの3つのルートを紹介します。
区分A
区分Aとは、4年制大学で指定の25科目を履修し卒業した後、大学院において指定の10科目を履修し卒業することで、公認心理師試験の受験資格が得られるルートのことです。公認心理師法では、第7条第1号にあたります。
4年制大学で履修が必要な25科目は、e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則 第1条の2」によって定められています。具体的な科目は以下のとおりです。
- 公認心理師の職責
- 心理学概論
- 臨床心理学概論
- 心理学研究法
- 心理学統計法
- 心理学実験
- 知覚・認知心理学
- 学習・言語心理学
- 感情・人格心理学
- 神経・生理心理学
- 社会・集団・家族心理学
- 発達心理学
- 障害者・障害児心理学
- 心理的アセスメント
- 心理学的支援法
- 健康・医療心理学
- 福祉心理学
- 教育・学校心理学
- 司法・犯罪心理学
- 産業・組織心理学
- 人体の構造と機能及び疾病
- 精神疾患とその治療
- 関係行政論
- 心理演習
- 心理実習(実習の時間が80時間以上のものに限る)
また、大学院で履修が必要な10科目については、同施行規則の第2条によって、以下のとおり定められています。
- 保健医療分野に関する理論と支援の展開
- 福祉分野に関する理論と支援の展開
- 教育分野に関する理論と支援の展開
- 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開
- 産業・労働分野に関する理論と支援の展開
- 心理的アセスメントに関する理論と実践
- 心理支援に関する理論と実践
- 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践
- 心の健康教育に関する理論と実践
- 心理実践実習(実習の時間が450時間以上のものに限る)
区分Aでは、上記科目を履修したうえで、大学および大学院を卒業することが条件となっています。そのため、実務経験は求められないのが、区分Aの特徴です。
区分B
区分Bとは、4年制大学で指定の25科目を履修し卒業した後、特定の施設(プログラム施設)で2年以上の実務経験を積んだ方向けのルートです。公認心理師法では、第7条第2号にあたります。
2025年8月現在、プログラム施設に該当する施設は、以下の12ヶ所です。
- 少年鑑別所および刑事施設(全国)
- 一般財団法人愛成会 弘前愛成会病院(青森県)
- 裁判所職員総合研修所および家庭裁判所(埼玉県および全国)
- 医療法人社団至空会 メンタルクリニック・ダダ(静岡県)
- 医療法人社団心劇会 さっぽろ駅前クリニック(北海道)
- 学校法人川崎学園 川崎医科大学附属病院(岡山県)
- 学校法人川崎学園 川崎医科大学総合医療センター(岡山県)
- 社会福祉法人風と虹 筑後いずみ園(福岡県)
- 社会福祉法人楡の会(北海道)
- 特定非営利活動法人アスペ・エルデの会(愛知県)
- 飯田橋東口内科心療内科診療所(東京都)
- 公益財団法人復康会 沼津中央病院(静岡県)
区分Bでは、区分Aで求められる「大学院での科目履修」に代わり、プログラム施設での2年以上の実務経験が必要となるのが特徴です。
なお、区分Bで求められる「大学で履修が必要な指定科目」は、区分Aのものと同一となります。
区分C
区分Cとは、主に外国の大学や大学院を卒業した方向けのルートです。区分Cは、公認心理師法の第7条第3号において、区分A・区分Bと同等以上の知識および技術を有すると認定された方が対象になると定められています。そのため、区分Cのルートで公認心理師試験の受験資格を取得するには、受験資格認定に関する審査を受けることが必要です。
厚生労働省「公認心理師法第7条第3号(区分C)の公認心理師試験の受験資格認定について」によると、以下のいずれかに該当する方が、受験資格認定審査の対象者となります。
- 日本の大学などで25科目を履修し、卒業+外国の大学院を卒業
- 外国の大学を卒業+日本の大学院で10科目を履修し、卒業
- 外国の大学を卒業+日本のプログラム施設でプログラムを修了
- 外国の大学を卒業+外国の大学院を卒業
- 外国の大学院を卒業+外国の心理職資格を保有
上記に加え、過去に大学および大学院を卒業しているものの、カリキュラムの関係で履修科目が一部不足している方についても、審査の対象となる場合があります。ただし、その場合、申請日時点において、心理的支援業務に1ヶ月以上従事していることが必要です。
特例措置ルート
公認心理師法が全面施行される2017年9月15日より前に、大学および大学院に入学した方に対しては、履修科目の読替えを行うなどの特例措置が設けられています。
ここからは、特例措置を利用して受験資格を取得するルートを「特例措置ルート」として、区分D1・D2・E・Fの4つのルートの概要を見ていきましょう。
区分D1・D2
区分D1とは、2017年9月15日より前に、大学院において指定科目を履修した方向けのルートです。一方、区分D2では、公認心理師法の施行日より前に大学院に入学し、当該日以降に指定科目を履修した方が該当となります。
e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則 附則第2条」によると、区分D1およびD2で履修が必要となる科目は、以下のとおりです。
- 保健医療分野に関する理論と支援の展開 | 1科目 |
- 福祉分野に関する理論と支援の展開 - 教育分野に関する理論と支援の展開 - 司法・犯罪分野に関する理論と支援の展開 - 産業・労働分野に関する理論と支援の展開 |
左記のうち2科目 |
- 心理的アセスメントに関する理論と実践 - 心理支援に関する理論と実践 - 家族関係・集団・地域社会における心理支援に関する理論と実践 - 心の健康教育に関する理論と実践 |
左記のうち2科目 |
- 心理実践実習 | 1科目 |
参考:e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則 附則第2条」
区分D1とD2は、2017年9月15日より前に大学院に入学していることが条件となります。履修科目を修了した時期によって、D1かD2に区分されますが、履修が必要な科目は共通しているのが特徴です。
区分E
区分Eとは、2017年9月15日より前に、4年制大学および大学院で指定の科目を履修した方向けのルートです。
区分Eでは、区分Aや区分Bで履修が求められる「4年制大学での履修科目」のうち12科目の履修が必要となります。e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則 附則第3条」によると、4年制大学で履修が必要な科目は、以下のとおりです。
- 心理学概論 - 臨床心理学概論 - 心理学研究法 - 心理学統計法 - 心理学実験 |
左記のうち3科目 |
- 知覚・認知心理学 - 学習・言語心理学 - 感情・人格心理学 - 神経・生理心理学 - 社会・集団・家族心理学 - 発達心理学 - 障害者・障害児心理学 |
左記のうち4科目 |
- 心理的アセスメント - 心理学的支援法 - 心理演習 - 心理実習 |
左記のうち2科目 |
- 健康・医療心理学 - 福祉心理学 - 教育・学校心理学 - 司法・犯罪心理学 - 産業・組織心理学 |
左記のうち2科目 |
- 健康・医療心理学 - 人体の構造と機能及び疾病 - 精神疾患とその治療 |
左記のうち1科目 (前項で「健康・医療心理学」を含む場合は、当項ではそれ以外の科目の履修が必要) |
参考:e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則 附則第3条」
なお、大学院での履修が必要な科目については、読替えの措置が適用されません。そのため、大学院で履修が必要な科目は、区分Aと同様の10科目となります。
区分F
区分Fとは、2017年9月15日より前に、4年制大学で指定の科目を履修しており、かつプログラム施設での実務経験が2年以上ある方向けのルートです。
区分Fでは、区分Eと同様に、2017年9月15日より前に4年制大学に入学し、指定の12科目を履修する必要があります。また、大学卒業後に実務経験を積むプログラム施設については、区分Bと同じ施設が対象です。
参考:厚生労働省「公認心理師試験の受験を検討されている皆さまへ」
e-Gov法令検索「公認心理師法」
e-Gov法令検索「公認心理師法施行規則」
厚生労働省「公認心理師法第7条第3号に基づく受験資格認定 (審査対象者第1の6提出書類、様式、確認点)」
公認心理師試験の概要
一般財団法人公認心理師試験研修センター「第8回公認心理師試験 受験の手引」によると、2024年度に実施された第8回公認心理師試験の概要は、以下のとおりです。
- 試験日:2025年3月2日(日)
- 試験時間:240分(午前10時~正午、午後1時30分~午後3時30分)
- 試験地:東京都、大阪府
- 合格発表:2025年3月28日(金)
公認心理師試験の問題は、「公認心理師試験出題基準・ブループリント」に基づいて出題されます。「ブループリント(公認心理師試験設計表)」とは、公認心理師試験出題基準の各大項目の出題割合を示した資料のことです。これらの資料は、一般財団法人公認心理師試験研修センターのWebサイトで確認ができるため、試験勉強を行う際に活用すると良いでしょう。
なお、公認心理師試験の合格基準は、総得点の60%程度以上が目安となっています。
公認心理師試験の合格率
厚生労働省「第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について」、厚生労働省「第7回公認心理師試験(令和6年3月3日実施)合格発表について」、厚生労働省「第8回公認心理師試験(令和7年3月2日実施)合格発表について」によると、2023~2025年に実施された過去3回の公認心理師試験の合格率は、以下のとおりです。
実施回(実施年) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第6回(2023年) | 2020人 | 1491人 | 73.8% |
第7回(2024年) | 2089人 | 1592人 | 76.2% |
第8回(2025年) | 2174人 | 1454人 | 66.9% |
参考:厚生労働省「第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について」
厚生労働省「第7回公認心理師試験(令和6年3月3日実施)合格発表について」
厚生労働省「第8回公認心理師試験(令和7年3月2日実施)合格発表について」
2023年からの過去3年間の公認心理師試験の合格率は、6割後半から7割後半の間で推移しています。ただし、公認心理師試験は比較的新しい国家資格であるため、実施回によって、問題の難易度や合格率が変動する可能性もあるでしょう。
参考:一般財団法人公認心理師試験研修センター「公認心理師試験」
参考:厚生労働省「第6回公認心理師試験(令和5年5月14日実施)合格発表について」
厚生労働省「第7回公認心理師試験(令和6年3月3日実施)合格発表について」
厚生労働省「第8回公認心理師試験(令和7年3月2日実施)合格発表について」
公認心理師の主な業務内容
公認心理師は主に、以下のような心理的支援業務を行います。
- 心理に関する支援を要する方に対する、心理状態の観察や結果の分析
- 心理に関する支援を要する方に対する、心理に関する相談や助言、指導、そのほかの援助
- 当事者の家族や周囲の関係者に対する、相談や助言、指導、そのほかの援助
- 心の健康に関する知識の普及を図るための教育・情報の提供
公認心理師の主な業務は、心理に関する悩みをもった相談者に対して、カウンセリングや指導などを行うことです。また、場合によっては、心理的支援に関するマネジメントや関係機関との調整、心理に関する職種の養成・教育などに携わることもあります。
公認心理師の主な就業先
一般財団法人公認心理師試験研修センター「令和5年度公認心理師活動状況等調査 報告書 〔最終版〕」によると、公認心理師の主な就業先には、以下のようなものがあります。
- 保健医療分野:病院や診療所、保健所・保健センターなど
- 福祉分野:児童相談所や児童発達支援、放課後等デイサービス、障害福祉サービス事業所など
- 教育分野:学校や幼稚園、教育相談機関・教育委員会など
- 司法・犯罪分野:家庭裁判所や少年鑑別所、保護観察所など
- 産業・労働分野:組織内の健康管理・相談室や障がい者職業センターなど
- そのほかの分野:私設の心理相談機関や大学、研究所など
公認心理師は、上記のとおり、幅広い分野で活躍しているのが特徴です。
なお、同資料によると、公認心理師の就業先として比較的割合が高い職場は、「公立中学校・高等学校」や「公立幼稚園・小学校など」、「精神科を主とする病院」などが挙げられます。
参考:一般財団法人公認心理師試験研修センター「公認心理師活動状況等調査」
公認心理師になるにはどのようなスキルが必要?
公認心理師になるには、以下のようなスキルが求められます。
- コミュニケーション能力
- 観察力や洞察力
- 言語化能力
公認心理師は、相談者の心の中で生じている問題や課題などを見つけ、適切な支援を行う役割を担っています。そのため、公認心理師として業務を行ううえでは、相談者の考えを引き出せる高いコミュニケーション能力や観察力、洞察力などが求められるでしょう。
また、公認心理師がカウンセリングを行う相談者のなかには、自身の問題が明確になっていない人もいると考えられます。その際に、公認心理師に求められるのが言語化能力です。公認心理師が相談者の考えを汲み取って言語化できると、相談者自身の考えの整理につながったり、問題解決のための課題が把握しやすくなったりするでしょう。
公認心理師になるには国家試験に合格することが必要
- 公認心理師になるには、7つのルートから国家試験の受験資格を取得する必要がある
- 公認心理師になるには、ルートによって大学や大学院での科目履修や実務経験が必要
- 公認心理師になるには、コミュニケーション能力や言語化能力などのスキルが必要