転職ガイド
退職手続きには何が必要?流れや提出書類を解説
a year ago
退職したいものの、どのような手続きが必要なのかイメージが湧かないという人も多いでしょう。
この記事では、退職を決意した人に向けて、社内で必要な手続きや辞めるまでの流れについて説明します。また、退職したあとにすぐに転職する人と、ある程度時間をおいてから転職する人に分けて、健康保険、年金、住民税、失業保険などの公的な手続きの方法もご紹介します。
退職時に必要な社内の手続き
退職時には会社に返却・提出するものと、会社から受け取るものがあります。次の転職先で必要となる書類などもありますので、準備に漏れがないようにチェックリストなどを作成しておくと良いでしょう。
会社へ返却・提出するもの一覧
退職が決まったら、会社に返却するものや提出するものが多くあります。以下に、主な提出物と返却日を一覧化したので、退職前に一つずつ確認しましょう。
健康保険被保険者証 | 会社が加入している健康保険組合の保険証 | 退職日 |
身分証・IDカード・鍵 | 会社の身分証明書やタイムカード、カードキーなどを兼ねたIDカードやロッカー、机の鍵など | 退職日 |
名刺 | 自分の名刺や受け取った名刺も返却 | 退職日 |
通勤定期券 | 交通機関の通勤定期は清算して返却 | 退職日 |
社費で購入した機器や書籍 | 会社の所有物にあたるため返却 | 退職までに |
業務で利用した書類やデータ | 機密情報に関する資料はすべて返却 安全に保管したうえで、上司や後任に引き継ぐ |
退職までに |
制服・ユニフォーム | 会社から貸与されている制服類 | 退職までに |
ID・パスワード | 会社費用で取得したクラウドやSNSなどのID・パスワード | 退職までに |
なお、提出日やタイミングは会社によっても異なります。上記のほかにも提出物を指定されることがあるので、会社からの案内もしっかりと確認してください。
健康保険被保険者証
自分の分はもとより、家族を扶養に入れている場合は、被扶養者の分も忘れずに返却しましょう。
身分証
社員証やIDカードはもちろん、社章(バッジ)なども会社に所属していることを明らかにするものですので、返却が必要です。
社費で購入した機器
社費で購入した機器はすべて返却するのが一般的です。パソコンやスマートフォンには、個人情報が含まれていることもあるため、会社のシステム部門などに相談して、データの削除やリセットが必要かどうか、相談を仰ぐと良いでしょう。
クラウドやSNSのID・パスワード
業務で使用していたシステムやSNSなどのアカウントID・パスワード情報についても、基本的には職場に提出します。退職後に後任者が同じアカウントを使用する場合もあるので、正しい情報を共有しましょう。
退職届
退職届も会社に提出するものの一つです。退職願が退職(労働契約の解除)を会社に願い出るための書類であるのに対し、退職届は、退職願が受理され、退職することが確定した際に、会社に提出する書類です。
会社によって、フォーマットが用意されている場合はそれに従って記載し提出します。また、退職願は直属の上司に提出するのが一般的ですが、「退職届は人事部宛」「提出は◯週間前まで」など規定を設ける会社もあります。不明な点は、上司、人事部、総務などに確認して提出するようにしましょう。
会社から受け取るもの一覧
退職日が近くなったら、会社に返却するものばかりではなく会社から受け取るものも多くあります。大切な書類ばかりですので、受け取ったら紛失しないように注意しましょう。
雇用保険被保険者証 | 雇用保険の加入を証明するもの | 退職日 |
年金手帳 | 年金への加入を証明するもので基礎年金番号が記載されている | 退職日 |
源泉徴収票 | その年に支払った給与や社会保険料、控除額が記載されている | 退職日 |
離職票 | 離職したことを証明する公的な書類 | 退職後10日前後 |
雇用保険被保険者証
雇用保険被保険者証とは、雇用保険に加入していることを証明するものです。一般的には会社が保管しているものなので、退職日に会社から受け取ります。転職先でも雇用被保険者番号は引き継がれるため、転職したら転職先企業に提出する必要があります。
また、すぐに転職しない場合も、ハローワークで雇用保険の失業手当の手続きをするために必要です。
年金手帳
年金手帳とは、公的年金制度(国民年金、厚生年金等)の加入者に交付されるものです。
会社に勤める際は厚生年金に加入するため、年金手帳の提出を求められます。そして退職時に返却を受け、転職する場合には転職先の企業に再び提出します。
すぐに転職しない場合は、市役所や区役所に出向いて国民年金への切り替え手続きを行います。年金手帳は将来年金を受け取るための大切な資料になるため、紛失などしないようにしましょう。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、退職する年の1月から退職日までの所得や納めた社会保険料などが記された書類のことです。退職日に会社から受け取ります。
源泉徴収票は転職先に提出し、所得税の年末調整に利用されます。なお、年をまたいで転職する際は、受け取った源泉徴収票をもとに自分で確定申告をする必要がありますので注意してください。
離職票
離職票は、正式には「雇用保険被保険者離職票」と呼ばれる公式な書類のことです。退職時に転職先が決まっていない場合、ハローワークで失業手当の受給手続きを行うのに必要となります。準備に時間がかかることから退職日には受け取れず、後日自宅に郵送されることが多いようです。なお、転職が決まっている場合や失業保険を受給しない場合は必要ありません。
退職時に必要な公的な手続き
この項では、退職時に必要な公的手続きについてご説明します。
健康保険の手続き
日本は国民皆保険といわれ、すべての国民がなんらかの健康保険に加入しています。
転職した場合は、健康保険の切り替えが必要になりますが、いくつかパターンがありますので、覚えておきましょう。
退職後すぐに転職先の企業に入社が決まっている場合と、入社までに時間が空く人および転職先が決まってない人では、以下のように手続き方法が異なります。
すぐに転職をする人 | 入社した会社で新しい健康保険に加入 |
転職先への入社まで時間が空く人 転職先が決まっていない人 |
下記3種類の保険から選択 任意継続・国民健康保険に加入・家族の扶養 |
すぐに転職する人は、基本的に次の職場の案内に従って手続きをします。それ以外の人は3つの選択肢から選んで手続きを行いましょう。
健康保険の任意継続被保険者制度を利用する
任意継続被保険者制度とは、退職後も在職中と同じ健康保険の被保険者資格を維持できる制度のことです。退職前の被保険者期間が継続して2カ月以上あれば、最長で2年間継続できます。
提出までの期間 | 退職の翌日から20日以内 |
提出先・場所 | 加入していた健康保険組合、または、居住地域の社会保険事務所 |
手続きに必要な書類 | 健康保険任意継続被保険者資格取得申出書、住民票、印鑑など |
手続きは退職日の翌日から20日以内に行う必要があるため、注意が必要です。保険料はそれまで負担していた保険料の倍程度(上限あり)になります。
国民健康保険と任意継続を選ぶかどうかは、それぞれのメリット・デメリットを踏まえて決めると良いでしょう。
国民健康保険に加入する
企業に所属していない人や自営業の人が加入する国民健康保険に加入するための手続き方法について説明します。
提出までの期間 | 退職の翌日から14日以内 |
提出先・場所 | 住民票のある市区町村役所の国民健康保険担当窓口 |
手続きに必要な書類 | 健康保険の資格喪失が分かる証明書(健康保険被保険者喪失証明書、退職証明書、離職票など)、各市町村で定められた届出書、印鑑、身分証明書など |
国民健康保険の保険料は、前年の所得、世帯の資産、家族の人数などで決まります。算出方法は自治体によって異なり、所得が同じでも住んでいる市区町村によって支払う保険料が異なりますので、任意継続とどちらがメリットがあるのか確認するようにしましょう。
家族の扶養に入る
家族の扶養に入るための手続き方法は次のとおりです。
提出までの期間 | 退職後なるべく早く |
提出先・場所 | 扶養者の勤務先 |
手続きに必要な書類 | 課税証明書のほか、健康保険組合から提出を求められた書類、退職証明書や離職票のコピーなど |
なお、家族の健康保険に被扶養者として加入できるかどうかは一定の基準を満たす必要があります。
年金の手続き
退職する際は、年金の切り替え手続きも必要です。
年金制度における被保険者は、「第1号被保険者」「第2号被保険者」「第3号被保険者」の3種類に分けられ、会社員や公務員などの厚生年金に加入している人は「第2号被保険者」にあたります。
「第2号被保険者」が、退職後すぐに転職しない場合や、フリーランスとして活動する場合は、それまで加入していた厚生年金から脱退します。さらに、第1号被保険者や第3号保険者として国民年金への切り替え手続きが必要になります。
第1号被保険者に切り替える
第1号被保険者は、自営業やフリーランス、無職の人が該当します。
提出までの期間 | 退職の翌日から14日以内 |
提出先・場所 | 住民票のある市区町村の国民年金担当窓口 |
手続きに必要な書類 | 年金手帳、印鑑、離職票や退職証明書など退職日の確認できる書類など |
転職してすぐに就職せず扶養に入らない人は、国民年金の第1号被保険者に加入する必要があります。年金が未納の期間があると将来基礎年金を満額もらえなくなる可能性もあるので、期間内に手続きをするようにしましょう。
第3号被保険者に切り替える
第3号被保険者は、厚生年金、共済組合に加入している第2号保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者(年収130万円未満)が対象です。
提出までの期間 | 退職の翌日から14日以内 |
提出先・場所 | 配偶者の勤務先 |
手続きに必要な書類 | 第3号被保険者関係届、被扶養配偶者であることが分かる書類、被扶養者のマイナンバーカードのコピーなど |
手続きには、配偶者であることが分かる住民票や戸籍謄本、被扶養者の課税状況が分かるマイナンバーカードのコピーなどが必要になります。
失業保険の手続き
失業保険とは、一定期間雇用保険に加入していた人を対象に、安定した生活を送りつつ再就職ができるように経済的な支援を行う制度です。
退職した人が失業保険を受け取るには条件があり、退職理由や離職時の年齢、被保険者であった期間によって給付日数が異なります。また、受け取る保険金額についても、退職前の賃金や離職時の年齢によって異なります。
提出までの期間 | 離職票が交付され次第、できるだけ早めに。ただし、退職日翌日から2年以内まで申請可能 |
提出先・場所 | 居住先を管轄するハローワーク |
手続きに必要な書類 | 雇用保険被保険者離職票(1・2)、個人番号が確認できる書類、身元確認書類、証明写真2枚(縦3.0cm×横2.5cm)、印鑑、本人名義の預金通帳やキャッシュカードなど |
退職理由は、自分の意思で退職する自己都合と、倒産や解雇といった事由による会社都合のいずれかに分けられます。
自己都合退職の場合、失業給付を受けるには、原則として受給手続きの日から7日+2ヵ月の期間待たなくてはなりません。
一方、会社都合退職の場合は、手続きから7日経過したあと、給付を受けることができます。
住民税の手続き
住民税とは、行政サービスを維持できるように住民が支払う税金のことです。道府県民税と市町村民税に分かれており、税金額は前年の所得に応じて異なります。
退職後、間を空けずに転職する場合は、一般的に現職と転職先の会社が手続きをしてくれます。その場合、住民税は給与から天引きされる特別徴収という方法が継続されます。
ただし、次の退職までに期間が空く場合や、移行手続きができない場合などは、一度「退職に伴う普通徴収への切り替え」を申請し、転職先で「特別徴収への切り替え」を行います。
なお、すぐに転職しない場合は退職月によって納付方法が異なるため、以下をご覧ください。
1〜5月に退職した場合
1月から5月に退職すると、5月までの住民税が一括で天引きされます。退職後の仕事が決まっておらず、貯蓄額に余裕のない方は注意が必要です。
6〜12月に退職した場合
6月から12月に退職した場合は退職月の住民税は給与から天引きされます。退職月の翌月以降は、自治体から送付される納税通知書に従って自分で納める普通徴収になります。
所得税の手続き
所得税とは、会社から支払われる給料や賞与のお金に対して発生する税金です。通常は給料や賞与から天引きされ、年末調整なども会社で行ってくれます。
退職した年に再就職した場合は、源泉徴収票や生命保険、住宅ローン減税に関する書類などを転職先に提出すると、年末調整が受けられます。
退職した年に再就職しなかった場合は、源泉徴収票をもとに確定申告をして必要な税金を納めたり、医療費控除を受けたりすることになります。
退職までの流れ
職場を退職する際は、辞めるまでの基本的な流れを把握しておくことも大切です。
この項では、退職するにあたって、いつ・どのような手続きが必要なのかを解説します。
退職日の2カ月前、1カ月前、2週間前、1週間前~退職日と、順を追って紹介するので、全体の流れを把握して、円満な退職を目指しましょう。
2カ月前:退職の意思表示・退職日の相談
退職を決断したら、まず退職の意思を直属の上司に口頭で伝えます。
民法627条では「退職の2週間前に退職の告知を行えば退職できる」とされています。
しかし、職務の引き継ぎや後任の手配などを考えると、遅くとも退職する2カ月前には伝えて、退職日を相談することをおすすめします。ある程度時間の余裕をもって意思表示をするほうが、職場に残る人への負担を軽減できるでしょう。
上司に話をする際には、業務に支障が出ないタイミングを見計らって、「少しお時間をいただきたいのですが」と声をかけたり、事前に双方の時間を調整して相談の場を設定したりします。会議室など周囲に話がもれないような場所で話をするとよいでしょう。
その際、「退職したい」という相談をするのではなく、「退職することにしたので、今後の引き継ぎや手続きについて相談したい」と退職する意思を固めていることを前提に話を進めることが重要です。
また、上司に話をする前に、職場の同僚や直属ではない上司などに退職や転職の話をすることは避けましょう。退職の噂が広がると、業務に支障が生じたり、退職交渉に悪影響を及ぼしたりする可能性もあるので注意が必要です。
1カ月前:退職願の提出・仕事の引き継ぎ
1カ月前には退職願の提出と仕事の引き継ぎが必要となります。以下でそれぞれ解説します。
退職願の提出
会社の就業規則には、退職手続きに関する項目があるはずです。多くの場合は、「退職希望日の〇カ月前までに退職願を提出すること」といった記載がされているので、規則に従って退職願を提出しましょう。
また、就業先に退職届のフォーマットがある場合は、そのフォーマットを利用します。特にない場合は、インターネットなどに掲載されているテンプレートなどを参考に作成すると良いでしょう。便箋に退職の意志を記載・捺印し、封筒に「退職願」と表書きをして、上長を通じて会社に提出します。退職理由は、「一身上の都合」とするのが一般的で、具体的な理由を書く必要はありません。
また、退職願が受け入れられてから退職願とは別に「退職届」を出すように求められるところもありますので、必要に応じて出すようにしましょう。
仕事の引き継ぎ
次に引き継ぎについて解説します。すでに業務マニュアルがある場合は、それを補足する形で、進捗状況や注意点などを書面に残します。
もしそうしたマニュアルがない場合や、マニュアルだけでは対応できないような場合は、まずは自分の業務を洗い出し、書面にて引き継ぎ用の業務マニュアルを作成します。業務の流れ、担当者や顧客の特徴や注意点、その他資料などを一式にまとめておきます。
後任が決まって時間的に余裕があればそのマニュアルをもとに一緒に仕事をしながら引き継ぐとよいでしょう。
2週間前:取引先への挨拶回り
担当していた顧客への挨拶や外部の関係者への挨拶は、就業先との相談の上で行うようにします。これまでお世話になったことへの感謝を伝え、退職する旨を伝えます。退職2週間ほど前から後任者と一緒に回るのが理想ですが、後任が決まってない場合は「後任のものは改めて挨拶に伺います」と一言添えるようにします。
相手に退職理由を聞かれた場合は、必ずしも具体的に話す必要はありません。また、職場のイメージダウンにならないよう、ネガティブな理由を伝えるのは避けましょう。よほど親しい人や、今後も関係を続けたい人には、転職が済んでから連絡を取るのも一つの方法です。
また、仕事でお世話になった患者さまや利用者さま、そのご家族などに対しても、退職の旨を話すタイミングを職場と相談したうえで伝えましょう。
1週間前〜退職日:社内挨拶
退職日が近くなったら、現在の職場はもちろんこれまでお世話になった部署へ挨拶に回ります。もし仕事の進捗状況で連絡事項や後任への引き継ぎがあったら、一緒に伝えるようにします。
また、外出のため退職の挨拶ができなかった取引先の方や、社内の人にも、メールで退職の挨拶を送るようにしましょう。
最終日までには、ロッカーや机周りを片付け、私物などがあれば処分したり、自宅に送付したりするなどしておきます。
退職手続きをスムーズに手続きを進めよう
- 退職は上司に退職の意思を伝えることから始まり、退職願を提出する。
- 退職にあたっては、会社に提出・返却するものと、会社から受け取るものが数多くある。
- 退職後は、健康保険・年金・失業保険・住民税・所得税などの手続きを忘れずに行う。
退職をスムーズに進めるためにも、事前に退職までの流れややるべきことを把握し、必要となる手続きについて理解を深めておきましょう。
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