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介護難民とは?原因と解決策をご紹介!
2 days ago

「介護難民ってどういう状態のこと?」と疑問に思う方もいるでしょう。介護難民とは、介護を必要とする高齢者や障がいのある方が、適切な介護サービスを受けられない状態を指します。この記事では、介護難民の現状や増加傾向にある主な原因を解説。また、介護難民を防ぐ解決策についてもまとめているので、ぜひご一読ください。
介護難民とは
介護難民とは、介護が必要であるにもかかわらず、必要な介護サービスを受けられない方のことを指します。「施設に空きがない」「経済的な理由で利用できない」「在宅介護を担う人手がいない」など、さまざまな要因から生じるようです。
日本の要介護認定者数や介護職員の必要数
日本では高齢化が進行し、要介護認定者数が増加しています。厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」によれば、2000年4月末時点で218万人だった要介護(要支援)認定者数は、2019年4月末時点で659万人となっており、これは19年間で約3倍に増加していることを示します。
一方、介護職員の確保は課題となっている状況です。厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」によると、2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。しかし、2022年度時点の介護職員数は、約215万人にとどまっており、2026年度までに約25万人、2040年度までに約57万人増加している必要がある点を踏まえると、人材確保が重要な課題であることが分かるでしょう。
このような背景から、必要な介護サービスを受けられない高齢者、いわゆる「介護難民」の増加が懸念されています。
参考:厚生労働省「介護分野をめぐる状況について」
厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」
介護難民の数が増加する主な原因
前述のとおり、日本では「介護難民」といわれる必要な介護サービスを受けられない高齢者の増加が懸念されている現状です。この背景には、高齢化や介護人材の不足、施設の供給不足、介護費用の増加、家族による介護力の低下といった複合的な要因が存在します。これらの要因が絡み合い、介護を必要とする高齢者が適切な支援を受けられない状況が生まれているようです。
高齢者人口の増加
日本は世界で類を見ない速度で高齢化が進行しています。内閣府「高齢化の状況」によれば、2023年時点で65歳以上の高齢者人口は約3623万人で、総人口に占める割合(高齢化率)は29.1%に達しています。
さらに、今後もこの傾向は続き、2070年には高齢化率が38.7%に達すると予測されています。このような高齢者人口の増加は介護サービスの需要を増加させており、施設や人材の不足による介護難民の発生につながっているといえるでしょう。
介護職員の人手不足
介護業界では深刻な人手不足が続いています。レバウェル介護「きらケア介護白書2022」によると、介護事業所における介護職員の過不足状況について「不足している」と回答した事業所が47.3%、「やや不足している」と回答した事業所が36.7%でした。そのため、この調査では84%の事業所が人手不足を感じていることが明らかになりました。
介護職の給与と労働環境
介護職の給与水準や労働環境も、人材確保の難しさに拍車をかけています。厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」によれば、介護職員の平均月収は33万8200円で、看護職員や生活相談員、介護支援専門員などに比べると低くなっています。
職種別 | 常勤の方における平均給与額 |
---|---|
介護職員 | 33万8200円 |
看護職員 | 38万4620円 |
生活相談員・支援相談員 | 35万3950円 |
理学療法士、作業療法士、 言語聴覚士または機能訓練指導員 |
36万2800円 |
介護支援専門員 | 37万5410円 |
事務職員 | 31万7620円 |
調理員 | 27万2240円 |
管理栄養士・栄養士 | 32万3810円 |
参考:厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」
また、レバウェル介護「きらケア介護白書2022」によると、介護の仕事で大変だと感じることとして「腰痛になりやすいなど身体的負担が大きい」が58.7%、「給与水準が低い」が48%、「人手不足で業務量が多い」が42.7%でした。
介護の仕事で大変だと感じること | 割合 |
---|---|
腰痛になりやすいなど身体的負担が大きい | 58.7% |
給与水準が低い | 48% |
人手不足で業務量が多い | 42.7% |
精神的負担が大きい | 34.8% |
不規則な生活で体調管理が大変 | 17.5% |
参考:レバウェル介護「きらケア介護白書2022」
このような状況では、新たな人材の確保や既存職員の定着が難しくなり、介護サービスの提供体制が不安定化しやすいでしょう。
介護施設の不足
介護施設の数が高齢者の増加に追いついていないことも、介護難民を生む一因です。国土交通省「データから見た高齢者住宅・施設の需給バランス」によると、2020年時点における要介護3以上の介護施設等の需要の予測は252万4467戸で、供給過不足数は25万5689戸となっています。
また、2035年には352万2578万戸の供給が必要になり、不足は118万3862戸と推測されているため、今後さらに介護施設の不足が進む恐れがあるでしょう。
介護費用額の増加
厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」によると、2023年度の介護費用額は約11兆5139億円で、前年度から約3227億円増加しました。
年度 | 費用額累計の年次推移 |
---|---|
2019年 | 10兆5095億1700万円 |
2020年 | 10兆7783億3400万円 |
2021年 | 11兆291億3100万円 |
2022年 | 11兆1912億1300万円 |
2023年 | 11兆5139億2100万円 |
参考:厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」
上記の表から、介護費用額の総額は年々増加していることが分かります。2019年から2023年までの5年間でおよそ1兆44億400万円増加しており、介護サービスを利用する方の経済的な負担も増加していると考えられるでしょう。
家族における介護力の低下
内閣府「令和6年版高齢社会白書」によると、要介護者から見た主な介護者の45.9%が同居しています。また、同居する主な介護者の年齢が60歳以上の割合は、以下のとおりです。
性別 | 主たる介護者の年齢が60歳以上の割合 |
---|---|
男性 | 75% |
女性 | 76.5% |
参考:内閣府「令和6年版高齢社会白書」
この表から、在宅で要介護者を支える家族の高齢化が進み、家庭内での介護力が低下していると考えられるでしょう。「老老介護」(介護者と被介護者がどちらも65歳以上)のケースも相当数存在しているとされています。
また、介護と仕事の両立が難しい現状もあるようです。同資料によると、2021年10月~2022年9月に介護のために離職した人は年間で約10万人に上っています。介護の負担は仕事や生活に大きな影響を及ぼしていると考えられるでしょう。
参考:内閣府「高齢化の状況」
レバウェル介護「きらケア介護白書2022」
厚生労働省「介護従事者処遇状況等調査」
国土交通省「データから見た高齢者住宅・施設の需給バランス」
厚生労働省「令和5年度 介護給付費等実態統計の概況」
内閣府「令和6年版高齢社会白書」
介護難民を防ぐ解決策
介護難民の問題を解決するためには、個別の取り組みだけでなく社会全体での包括的なアプローチが必要です。介護職の待遇改善や地域社会での協力体制強化、技術の活用、予防介護の推進など、さまざまな視点からの解決策が求められるでしょう。
介護職の待遇改善
介護職は肉体的・精神的に負担のかかる仕事でありながら給与が比較的低く、労働環境も厳しい現状があるようです。これを改善するために、給与水準の引き上げや勤務時間の柔軟化、休暇制度の充実などが必要となるでしょう。
また、介護職員のキャリアパスを明確にし、専門性を高めるための研修や教育を充実させることも効果的です。待遇改善が進めば離職率の低下が見込め、介護難民を減らすことにもつながる可能性があります。
地方への移住
都市部の介護負担を軽減し、介護難民の発生を防ぐ一つの方策として、地方への移住は一定の効果が期待できるでしょう。
都市部では高齢者人口が急増している一方、介護施設やサービスの供給が追いつかず、介護難民が発生しやすい状況にあるようです。特に首都圏では施設の空きが少なく、入居待ちが長期化することも考えられます。
こうした状況を受けて、介護を必要とする高齢者が、比較的施設に空きがあり、介護サービスにゆとりのある地方への移住を選択する動きも見られます。地方では、人口が都市部ほど密集しておらず、地価が比較的安いため介護施設の整備が進めやすいという側面もあるようです。
また、地域によっては独自の支援策や移住促進制度が用意されており、家族ごと地方に移住して高齢者を支えるといった選択肢もあるでしょう。
ただし、移住には生活環境の変化や医療体制への不安も伴う可能性があります。
在宅介護サービスの拡充
介護施設に依存するのではなく、高齢者が自宅で過ごしながら必要な介護を受けられる、「在宅介護サービス」の充実も介護難民を防ぐ解決策の一つです。訪問介護やデイサービスなど、在宅ケアの質を高めることが、介護難民問題を防ぐための一つの鍵となり得ます。
特に、地域密着型のサービス提供が重要です。地域の介護サービスが活性化することで、介護施設に入所せずとも高齢者が自立した生活を送れる可能性が広がります。ただし、在宅介護を支えるための人材確保が重要であり、介護職員の待遇向上や教育の充実も求められるでしょう。
家族介護者への支援強化
家族介護者の身体的・精神的負担を軽減するために、支援体制の強化が必要です。具体的には、介護休暇の取得促進や相談窓口の設置、介護離職防止策の強化が考えられます。
政府や自治体は家族介護者が社会とのつながりを保ち、介護負担を分担できるような社会制度を構築することが求められるでしょう。介護者の支援が充実すれば、家庭内での介護が持続的に可能となり、介護施設への依存を減らせる可能性があります。
地域包括ケアシステムの構築
地域包括ケアシステムは、高齢者が住み慣れた地域・自宅で生活を続けられるようにするための仕組みです。このシステムは、住まい・医療・介護・予防・生活支援が一体となって提供されることを目指しています。
自治体は地域ごとの特性に合わせた支援体制を構築し、地域包括ケアシステムの運営を推進する必要があります。また、地域住民や医療機関、介護事業者が連携し、高齢者一人ひとりに適切なサービスが提供されるよう、仕組みを整備することが求められるでしょう。
介護ロボットやICTの導入
介護ロボットやICTの活用は、人手不足が深刻化する介護現場を補完し、介護難民の増加を防ぐ手段とされています。
厚生労働省「(5)介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)(案)」によると、「入所・泊まり・居住系」の事業所で「見守り支援機器」を「導入済み」と回答した事業所は30.0%でした。また、「入所・泊まり・居住系」の事業所において「入浴支援機器」は11.1%、「介護業務支援機器」は10.2%が導入済みと回答しています。
同資料によると、記録業務や連絡・通話において、「訪問系」「通所系」「入所・泊まり・居住系」のいずれもICT機器を利用していない事業所は数%~10%台前半にとどまっています。
導入されている主な機器には、見守りセンサーや移乗介助ロボット、介護記録支援システムなどがあります。見守り機器による夜間の安全確保や、ICTによる情報共有の迅速化などは、職員の精神的・身体的負担の軽減や業務の効率化につながり、人材の定着や直接的な介護ケアの時間確保といった効果が期待できるでしょう。
予防介護の推進
予防介護は、介護が必要となる前の段階で、身体的・認知的な機能を維持・向上させるための取り組みです。予防介護には、運動習慣の維持や栄養管理、認知症予防プログラムの実施などがあります。自治体や医療機関は、高齢者向けの予防プログラムを提供し、積極的に予防活動を推進する必要があるでしょう。
また、予防介護を支えるためには、地域住民や家族、介護事業者が一体となって取り組むことが重要です。予防活動が広まることで、介護が必要な高齢者の数が減少し、介護難民問題の緩和につながる可能性があります。
参考:厚生労働省「(5)介護現場でのテクノロジー活用に関する調査研究事業(結果概要)(案)」
介護難民とは必要なサービスを受けられない状況のこと
- 介護難民とは介護を必要としているが、サービスを受けられない方のことを指す
- 高齢化や人手と施設の不足、家族による介護力の低下などが介護難民増加の主な原因
- 介護難民の増加を防ぐには、介護職の待遇改善や地域社会での協力体制強化などが必要
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