豆知識
医療的ケア児とは?現状や支援法について解説!
19 days ago

医療的ケア児とは何か気になる方もいるでしょう。日常的に痰の吸引や経管栄養などの医療的ケアを必要とする子どものことを指します。この記事では、医療的ケア児とその家族に対する支援法についてもまとめました。また、どのくらいの数の医療的ケア児がいるのか、「医療的ケア児コーディネーター」とは何かについてもまとめているので、ぜひ参考にしてみてください。
医療的ケア児とは
厚生労働省「医療的ケア児支援センター等の状況について」によると、「医療的ケア児」とは、日常生活を送るうえで医療的なケアを必要とする子どもたちを指します。具体的には、人工呼吸器の使用や胃ろうなどによる経管栄養、痰の吸引など、医療的な処置を継続的に受けながら生活している子どもたちのことです。
年齢については、18歳未満(18歳以上で学校教育法による高等学校や中等教育学校の後期課程、特別支援学校の高等部に在籍する場合も含む)の児童が対象とされており、乳児から高校生までが含まれます。
医療的ケア児が家庭や学校、地域社会での生活を送るためには、医療機関だけでなく教育機関や福祉施設、地域の支援団体などが連携して取り組むことが重要となります。また、家族への支援や情報提供も欠かせません。
参考:厚生労働省「医療的ケア児の地域支援体制構築に係る担当者合同会議 資料1-1」
医療的ケア児の現状
医療的ケア児の数は年々増加しており、地域社会における支援体制の充実が求められています。ここでは、医療的ケア児の数や、利用できる主な施設についてまとめました。
医療的ケア児の数
厚生労働省「医療的ケア児支援センター等の状況について」によると、医療的ケア児の数は2005年時点では約1万人とされていましたが、2021年には約2万人に達し、16年間で倍増していることが分かります。
この増加の背景には医療技術の進歩により、かつては入院治療が必要だった重篤な状態の子どもたちが、在宅での生活を送れるようになったことが挙げられるでしょう。
医療的ケア児が利用できる施設
医療的ケア児の地域生活を支えるためには、保育・福祉・医療・教育など、複数の分野が連携した支援体制が不可欠です。
以下では、こども家庭庁「医療的ケアが必要な子どもと家族が、安心して心地よく暮らすために」を参考にして、医療的ケア児が利用できる主な施設・在宅サービスと、それぞれの対象・内容を一覧で整理したので、ぜひチェックしてみてください。
医療的ケア児が利用できる施設・在宅サービス | 主な対象 | 内容 |
---|---|---|
医療型児童発達支援 | 肢体不自由があり医学的管理下での支援が必要な障がい児 | 日常生活における基本的な動作の指導と治療 |
児童発達支援 | 0~5歳で障がいがある未就学 | 日常生活における基本的な動作の指導 |
放課後等デイサービス | 6~18歳で就学中の障がい児 | 授業の終了後や学校休業日に生活能力向上の訓練などの支援 |
居宅介護 | 障害支援区分1以上に相当する支援が必要な障がい児 | 居宅の入浴・食事・通院の介助・生活の相談など |
訪問看護 | 40歳未満の者、要介護者、要支援者以外(医療保険) | 訪問看護師によるケア、日常生活の支援 |
訪問診療 | かかりつけ医が定期的に診察 | |
往診 | かかりつけ医が急変時に診察 | |
短期入所 | 障害支援区分1以上に相当または医療的ケアが必要が障がい児 | 障害支援施設または病院などに短期間入所し日常生活を支援(レスパイトケア) |
参考:
こども家庭庁「医療的ケアが必要な子どもと家族が、安心して心地よく暮らすために」
これらの施設は、それぞれ異なる役割をもちながらも、医療的ケア児とその家族が安心して生活を送るための支援を行っています。住んでいる地域によって支援体制には違いがあるため、保護者や支援者は各自治体や支援センターなどと連携しながら適切な施設を選択する必要があるでしょう。
参考:厚生労働省「医療的ケア児支援センター等の状況について」
こども家庭庁「医療的ケアが必要な子どもと家族が、安心して心地よく暮らすために」
医療的ケア児支援法とは
前述のとおり、医療的ケア児は近年増加傾向にあるのが現状です。そのため、国や自治体を挙げて医療的ケア児とその家族を支援する動きとして、「医療的ケア児支援法」が制定されています。
厚生労働省「『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律』について」、厚生労働省「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)」によると、医療的ケア児支援法は、医療的ケア児やその家族が心身の状況に応じた適切な支援を受けられるように、2021年に施行されました。
医療的ケア児支援法が立法された背景には、医療的ケア児とその家族が地域で安心して暮らせるよう社会全体で支える体制の整備が目的としてあります。そのため、医療的ケア児支援の基本理念として「医療的ケア児の日常生活を社会全体で支えること」や「ほかの児童と一緒に教育を受けられるよう最大限に配慮すること」などが挙げられているのが特徴です。
また、医療的ケア児支援法では、国や地方自治体、医療・福祉・教育など関係機関が連携し、切れ目のない支援を提供することが責務として求められています。具体的には、都道府県ごとに「医療的ケア児支援センター」の設置が義務付けられ、相談支援や関係機関との連絡調整などが行われているようです。
このように医療的ケア児支援法は、医療的ケア児とその家族の生活を包括的に支える仕組みづくりを法律として位置づけ、全国どこに住んでいても適切な支援が受けられる社会の実現を目指しています。
参考:厚生労働省「『医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律』について」
厚生労働省「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律(令和3年法律第81号)」
医療的ケア児コーディネーターとは
厚生労働省「医療的ケア児等コーディネーター養成研修 実施の手引き」によると、医療的ケア児等コーディネーターは、医療的ケア児の支援を総合的に調整する役割を担う専門職です。
主に相談支援専門員や保健師、訪問看護師などが対象となり、医療的ケア児等に関する専門的な知識と経験を基にさまざまな職種と連携を図ります。そのため、医療的ケア児等コーディネーターは、専門的な知識や経験、多職種連携を実現する力などが求められるでしょう。
医療的ケア児コーディネーターになるには
医療的ケア児コーディネーターになるには、厚生労働省が定める「医療的ケア児等コーディネーター養成研修」を修了する必要があります。研修の対象者としては、相談支援専門員や保健師、訪問看護師などが想定されているようです。
医療的ケア児コーディネーターの資格を取得するには、まず、都道府県や指定機関が実施する研修への申し込みを行います。医療的ケア児支援に関する基礎知識や多職種との連携について学ぶ研修を受講すると修了証が発行され、医療的ケア児コーディネーターとして活動できる流れです。
医療的ケア児コーディネーターの主な仕事内容
医療的ケア児コーディネーターの主な仕事は、医療的ケア児とその家族のニーズを把握し、それに応じた個別支援計画を作成して関係機関と調整することです。
また、医師や看護師、福祉職、学校関係者など、多職種との連携を図り、情報共有や連絡調整を行う役割も担います。加えて、家族からの相談に対応し、日常生活での困りごとや不安を軽減するための助言や支援制度を紹介することもあるでしょう。
地域の医療機関や福祉サービス、学校などの資源を把握し、効果的に活用できるようネットワークを構築して地域全体で医療的ケア児を支える体制づくりに取り組んでいます。
参考:厚生労働省「医療的ケア児等コーディネーター養成研修 実施の手引き」
医療的ケア児とは医療的なケアが必要な子どものこと
- 医療的ケア児とは、日常生活において痰吸引や経管栄養などを必要とする子どものこと
- 医療的ケア児の数は年々増加傾向にあり、地域社会における支援体制の充実が求められる
- 医療的ケア児支援法とは、医療的ケア児とその家族の生活を支援する法律
- 医療的ケア児等コーディネーターは、医療的ケア児の支援を総合的に調整している