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理容師と美容師の違いとは?ダブルライセンスについても紹介
2 days ago

「理容師と美容師の違いがよく分からない」という方もいるでしょう。理容師と美容師は、業務の範囲や主な職場、必要な資格などが異なります。この記事では、理容師と美容師で違う点や理容師・美容師になる方法について紹介します。理容師と美容師に向いている人の特徴やダブルライセンスについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
理容師と美容師の違いとは
理容師と美容師はどちらも、ヘアカットやパーマなどの頭髪に関する施術を行う専門職です。しかし、理容師は理容師法、美容師は美容師法によって、定義されている内容が異なります。
e-Gov法令検索「理容師法 第1条の2」によると、理容師とは、頭髪の刈込や顔そりなどにより容姿を整える「理容」を業とする職種のことです。一方、e-Gov法令検索「美容師法 第2条」によると、美容師とは、パーマネントウエーブや結髪、化粧などより容姿を美しくする「美容」を業とする職種と定められています。
つまり、容姿を整えるのは理容師、容姿を美しくするのは美容師と法律で区別されているのがポイントです。
また、理容室と美容室の違いとして、理容室は男性、美容室は女性が利用する所というイメージをもっている人もいるでしょう。
厚生労働省「理容師・美容師制度の概要等について」によると、かつては、「理容師による女性へのパーマの施術」や、「美容師による男性へのパーマを伴わないカットの施術」は禁止されていました。
しかし、2015年にこれらの規制が廃止されたことにより、女性の理容室の利用や、男性の美容院の利用はより気軽にできるようになっています。
業務範囲の違い
理容師と美容師の大きな違いの一つに、業務範囲が挙げられます。
厚生労働省「理容師・美容師制度の概要等について」によると、ヘアセットやメイクなどは美容師が行う業務であり、理容師は行えません。
また、経済産業省「まつ毛エクステンション施術に係る美容師法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の『グレーゾーン解消制度』の活用~」によると、まつ毛エクステンションの施術は美容師法の「美容」に該当すると定められたことから、美容師のみが行える業務の一つとなっています。
一方、シェービングは、理容師のみが行える業務の一つです。軽度の「顔そり」は化粧の一部として扱えるため、美容師も行えます。しかし、広範囲のシェービングや髭そりなどは、美容師の業務範囲外となるのが特徴です。
職場の違い
業務を行う職場も、理容師と美容師で異なる点の一つです。
e-Gov法令検索「理容師法 第6条の2」によると、特別な事情がある場合を除き、理容師は理容所以外で理容の業を行ってはならないとされています。
美容師の場合も同様に、e-Gov法令検索「美容師法 第7条」によって、美容所以外の場所で美容の業を行ってはならないのが原則です。
ただし、厚生労働省「理容師法施行規則及び美容師法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(通知)」によると、省令改正に伴い、条件を満たした場合に限り、理容所および美容所を同一の場所で開設する「重複開設」が認められています。
重複開設された事業所においては、理容師免許と美容師免許の両方を保有する人のみ働くことが可能です。
保有資格や国家試験の内容の違い
理容師になるには理容師免許、美容師になるには美容師免許の取得が必要ですが、免許を取得するための国家試験の内容も、理容師と美容師とで一部異なります。
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回理容師国家試験受験案内」、公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回美容師国家試験受験案内」によると、2025年に実施された理容師国家試験と美容師国家試験の内容は以下のとおりです。
筆記試験 | - 関係法規・制度および運営管理 - 衛生管理 - 保健 - 香粧品化学 - 文化論および理容技術理論 |
- 関係法規・制度および運営管理 - 衛生管理 - 保健 - 香粧品化学 - 文化論および美容技術理論 |
実技試験 | - カッティング - シェービング - 顔面処置・整髪 - 衛生上の取扱い |
- カッティング - オールウェーブセッティング - 衛生上の取扱い |
参考:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回理容師国家試験受験案内」
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回美容師国家試験受験案内」
理容師国家試験と美容師国家試験では、筆記試験の技術理論に関する項目と、実技試験の一部項目が異なります。
国家試験では、実際の業務内容に沿った技術理論や技術そのものの修得が大切です。そのため、理容師と美容師で異なる業務範囲に合わせて、試験で問われる内容も一部項目を変えて設定されています。
参考:e-Gov法令検索「理容師法」
e-Gov法令検索「美容師法」
厚生労働省「理容師・美容師制度の概要等について」
経済産業省「まつ毛エクステンション施術に係る美容師法の取扱いが明確になりました~産業競争力強化法の『グレーゾーン解消制度』の活用~」
厚生労働省「理容師法施行規則及び美容師法施行規則の一部を改正する省令の施行等について(通知)」
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回理容師国家試験受験案内」
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「第51回美容師国家試験受験案内」
理容師と美容師の平均年収
政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査/令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」によると、「理容・美容師」の平均給与は以下のとおりです。
- きまって支給する現金給与額:30万9400円
- 年間賞与その他特別給与額:8万4600円
上記の金額から年収換算(きまって支給する現金給与額×12か月+年間賞与その他特別給与額)すると、理容・美容師の平均年収は約380万円となります。
ただし、職場によっては、固定給ではなく完全歩合制や一部歩合制を取り入れていることもあるようです。その場合、施術数や指名数などによっては、給料が平均額を超える可能性もあるでしょう。
参考:政府統計の総合窓口(e-Stat)「賃金構造基本統計調査/令和5年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種」
理容師・美容師になるには
厚生労働省「理容師・美容師免許の取得まで」によると、理容師や美容師になるには、それぞれの養成施設を卒業し、国家試験に合格する必要があります。
養成施設での修業期間は、昼間・夜間課程の場合は2年以上、通信課程の場合は3年以上が原則です。養成施設を卒業すると、国家試験の受験資格が得られます。
理容師と美容師の国家試験は1年に2回、春期と秋期に実施されるのが特徴です。例年、春期は1~3月ごろ、秋期は7~9月ごろに実施されます。
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」によると、過去4回の理容師国家試験・美容師国家試験の合格率は以下のとおりです。
実施回 (実施年度・時期) |
理容師国家試験 | 美容師国家試験 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
受験者数 | 合格者数 | 合格率 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
第47回 (2022年度・春期) |
1305人 | 1048人 | 80.3% | 1万9505人 | 1万7266人 | 88.5% |
第48回 (2023年度・秋期) |
883人 | 653人 | 74.0% | 4149人 | 2478人 | 59.7% |
第49回 (2023年度・春期) |
1303人 | 1067人 | 81.9% | 1万9523人 | 1万6888人 | 86.5% |
第50回 (2024年度・秋期) |
837人 | 593人 | 70.8% | 4763人 | 2622人 | 55.0% |
参考:公益財団法人理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」
過去4回の結果では、秋期より春期のほうが合格率が高い傾向にあるようです。受験者数も秋期より春期のほうが多い傾向にあることから、養成施設での学習との兼ね合いも影響していると考えられるでしょう。
参考:厚生労働省「理容師・美容師免許の取得まで」
公益財団法人理容師美容師試験研修センター「過去の試験実施状況」
理容師・美容師に必要なスキル
ここまで、理容師と美容師の違いをみてきましたが、理容師と美容師は共通する部分も多くあります。ここでは、理容師や美容師に共通して求められるスキルをみていきましょう。
コミュニケーションスキル
理容師や美容師に必要なスキルの一つに、コミュニケーションスキルが挙げられます。
理髪店や美容院に来る人は、ヘアスタイルにこだわりがある人から、自分に合ったスタイルが分からない人までさまざまです。そのなかで理容師や美容師は、顧客一人ひとりに合ったヘアスタイルを提案し、施術を行います。
そのため、理容師や美容師には、顧客との会話からニーズを汲み取ったり、より顧客に合った提案をしたりする高いコミュニケーションスキルが求められるでしょう。
向上心
理容師や美容師には、向上心も必要です。顧客のニーズに合わせた施術を行うためには、多くの知識や技術が求められます。そのため、理容師や美容師として活躍するには、向上心をもってスキルを磨き続けたり、流行に合わせた新しい技術を身に付けたりすることが大切です。
モチベーションを高く保つために、理容室や美容室の管理を行う「管理理容師・管理美容師」の資格や関連する民間資格を取得したり、講習会へ参加したりする人もいるようです。理容師や美容師には、スキルアップにつながる目標をたて、向上心をもって働く姿勢が求められます。
体力
理容師や美容師は、立ちっぱなしで業務を行うことが多いため、体力が必要不可欠です。また、理容室や美容室では日によって顧客の数や施術内容も変わることから、業務のルーティン化がしづらく、疲れを感じやすいという人もいるようです。
そのため、理容師や美容師として働くうえでは、体力があることも重要な要素といえるでしょう。
理容師と美容師のどっちが自分に向いている?
理容師と美容師の違いをみてきましたが、「理容師と美容師のどっちが自分に向いているか分からない」という方もいるでしょう。
ここでは、理容師に向いている人と美容師に向いている人の特徴をそれぞれ紹介します。自分に当てはまる項目が多いのはどちらの職種か、チェックしてみてください。
理容師に向いている人の特徴
理容師に向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 技術を磨きたい人
- 提案力のある人
- シェービングの施術を行いたい人
厚生労働省「今日から実践!収益力の向上に向けた取組みのヒント 理容業編」によると、理容室は固定客が多く、理容師の技術が顧客の満足度や再来店率に直結する重要な要素となっています。そのため、理容師には技術を磨きたい人や、顧客に合ったヘアスタイルの提案スキルがある人が向いているでしょう。
また、前述のとおり、シェービングは理容師にしかできない施術です。広範囲の顔そりや髭そりなどの施術を行いたい人は、理容師に向いています。
参考:厚生労働省「今日から実践!収益力の向上に向けた取組みのヒント 理容業編」
美容師に向いている人の特徴
一方、美容師に向いている人の特徴は以下のとおりです。
- 流行に敏感な人
- ヘアスタイルに関する知識が豊富な人
- 美容分野全般に興味がある人
美容室では、流行を取り入れたヘアスタイルやヘアカラーなどを提案する機会が多いと考えられます。そのため、流行に敏感でトレンドを素早くキャッチできる人は、美容師に向いているでしょう。
また、美容師は、メイクやまつ毛エクステなど、頭髪以外に関する施術を行う機会があるのも特徴です。よって、美容分野全般に興味があり、日頃から美容に関する情報を取り入れている人も美容師に向いています。
理容師と美容師のダブルライセンスとは
「理容師と美容師のどちらの免許を取るべきか分からない」という人は、理容師と美容師のダブルライセンスを取るという選択肢もあります。
理容師と美容師のダブルライセンスとは、理容師免許と美容師免許の両方を保有している状態のことです。理容師または美容師の免許を保有している人がもう一方の免許を取得する場合、養成施設でのカリキュラムや国家試験が一部免除される制度も設けられています。
ダブルライセンスを取るメリット
理容師と美容師のダブルライセンスを取るメリットには、以下のようなものがあります。
- 知識や技術の幅が広がる
- 活躍できる場所が増える
- 転職時に有利になることもある
理容師と美容師には、それぞれその職種しかできない業務があります。ダブルライセンスを取るとどちらの業務も行えるため、活躍の場は増えるでしょう。また、知識や技術の幅も広がるため、美容の専門職として信頼感が高まり、顧客増加につながることもあると考えられます。
ダブルライセンスは、対応できる業務が多いことの証明になるため、転職の際にも有利になるでしょう。
ダブルライセンスを取るデメリット
理容師と美容師のダブルライセンスの取得には、以下のようなデメリットもあります。
- 就職のタイミングが遅くなる
- 2つの資格を同時に活かせる職場が少ない
前述のとおり、養成施設ではダブルライセンスを取る人のための「修得者課程」が設けられており、2つ目の資格取得を目指す際は通常より短期間で卒業できます。また、国家試験においても、技術理論を除く筆記試験は免除されるのが特徴です。
しかし、ダブルライセンスを取る場合、理容師・美容師免許のどちらかを取得したあと修得者課程を修了する必要があるため、片方だけ取得する場合に比べて就職のタイミングが遅くなる点はデメリットといえるでしょう。
また、理容師と美容師の資格を同時に活かせる職場が少ないこともデメリットの一つです。
前述のとおり、法律によって理容は理容所(理髪店)、美容は美容所(美容院)での提供が原則と定められており、両方とも提供可能な店は多くないと考えられます。よって、ダブルライセンスを保有している場合も、どちらかの職種として従事することが一般的でしょう。
理容師と美容師の違いを理解してキャリアを形成しよう
- 理容師は容姿を整える理容を、美容師は容姿を美しくする美容を業とした職種である
- 理容師と美容師の違いには、業務の範囲や職場などが挙げられる
- 理容師と美容師の違いに注目して、どちらの職種を目指すか決めるのがおすすめ