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看護師の退職金はいくら?計算方法や勤務先・年数別の相場を紹介
9 days ago
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「看護師の退職金事情がよく分からない」という方もいるでしょう。看護師の退職金は、勤務先や勤続年数によって異なります。そのため、転職先の退職金制度について事前に調べておくのがポイントです。この記事では、看護師の退職金制度の種類や計算方法について紹介します。看護師の退職金に関する注意点についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
看護師の退職金制度とは
退職金制度とは、従業員が退職する際に、勤続年数や功績などに応じた金額の給付金が企業から支給される制度です。
看護師の退職金制度は、勤務先の規定に基づいて支給のタイミングや条件、計算方法などが定められています。退職金制度の導入に関しては法律上で義務化されておらず、退職金制度自体を設けていない職場もあるのが特徴です。
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、退職給付制度がある企業は全体の74.9%です。医療・福祉業界の場合、全体の75.5%の企業が退職給付制度を設けています。
退職金制度を設けていない企業では、退職金の支給をしない代わりに、基本給が高めに設定されていたり、評価に対する手当が充実していたりする場合もあるようです。
参考:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
看護師の退職金制度の種類
看護師の退職金制度では、導入されている種類によって、退職金が支給されるタイミングが異なるのが特徴です。ここでは「退職一時金制度」「企業年金制度」「退職金前払い制度」の特徴を紹介します。
退職一時金制度
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、退職一時金制度とは、退職時に一括で一時金が支給される制度のことです。一時金とは、退職給付手当や退職慰労金、退職功労報奨金などのことを指します。
同資料によると、退職一時金制度のみを導入している企業は全体の69.0%です。また、医療・福祉業界に限定した場合、退職一時金制度のみを設けている割合は86.9%となっています。よって、看護師の職場である医療機関や福祉施設などでは、退職一時金制度が設けられている場合が比較的多いといえるでしょう。
企業年金制度
企業年金制度は、退職年金制度と呼ばれることもあります。
厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」によると、退職年金制度とは、退職後に一定期間または生涯にわたって、一定の金額が年金として支給される制度のことです。
企業年金制度には、「確定給付企業年金」や「確定拠出年金(企業型)」などの種類があります。
確定給付企業年金とは、厚生年金保険の加入期間などに基づいて、あらかじめ給付額が定められている企業年金制度のことです。企業年金連合会「企業年金制度」によると、確定給付企業年金では、中途退職した際に加入期間が年金受給の要件に満たなくても、一時金(脱退一時金)が取得できます。
一方で、確定拠出型年金とは、拠出された掛金とその運用益との合計額をもとに給付額が決定される年金制度のことです。確定拠出型年金の場合、運用の結果によって受け取れる金額が増減する仕組みとなっています。確定拠出型年金では、一時金受給は原則として認められていませんが、転職する場合はほかの企業年金への移換制度が利用可能です。
退職金前払い制度
企業年金連合会「退職金前払い制度」によると、退職金前払い制度とは、退職金が給与や賞与に上乗せして前払いされる制度のことです。
基本的に退職金は退職所得とみなされ、課税に対する軽減措置がとられています。しかし、退職金前払い制度により支給される退職金は給与所得となり、軽減措置の対象にはなりません。そのため、従業員にとっては、税金や社会保険料などの負担が増えるデメリットがあります。
参考:厚生労働省「令和5年就労条件総合調査の概況」
企業年金連合会「企業年金制度」
企業年金連合会「退職金前払い制度」
看護師の退職金の計算方法
看護師の退職金の計算方法には、基本給に基づくものや勤続年数をベースにしたものなどさまざまです。ここでは、主な退職金の計算方法を紹介します。
基本給ベース
基本給ベースの計算方法は、退職時の基本給に勤続年数別の支給率をかけて算出するか、さらに退職事由係数もかけて算出する方法が多くみられます。勤続年数別の支給率は企業によって異なりますが、勤続年数が増えると支給率も比例して大きくなるのが一般的です。
また、退職事由係数とは、退職事由ごとに定められている係数のことです。会社都合や定年による退職の係数を1とした場合に、自己都合による退職に対する係数を1未満に設定するなど、自己都合による退職を防ぐための条件が設定されていることもあります。
固定金ベース
固定金ベースの計算方法では、企業が定めた固定金額に勤務年数または勤務年数別の支給率を掛けて、退職金の金額が算出されます。企業によっては、ここに等級や役職別の係数が掛けられることもあるようです。固定金ベースの計算方法は、「別テーブル方式」と呼ばれることもあります。
固定金ベースで退職金が算出される場合、基本給は考慮されず、勤続年数や退職時の役職のみが退職金の金額に影響するのが特徴です。
勤続年数ベース
勤続年数ベースの計算方法とは、勤続年数ごとに定められた金額が支給される方法です。退職する従業員の状況によって金額が変動しないことから、「定額方式」と呼ばれることもあります。
勤続年数ベースで退職金が算出される場合、退職時の基本給や個人の成績などは考慮されないものの、あらかじめ退職金の金額が把握できる点はメリットといえるでしょう。
そのほかの計算方法
そのほかには、功績倍率や企業独自のポイントを用いた計算方法があります。
功績倍率とは、成績や企業への貢献度などに応じて設定された係数のことです。功績倍率を用いた計算方法では、前述の「基本給ベース」の計算に功績倍率が掛けられることで退職金が算出されます。
また、「ポイント制(ポイント方式)」とは、勤続年数や保有資格、個人の成績などに応じて付与されたポイント累計に、1ポイントあたりの単価を乗じて算出する計算方法です。ポイント制は基本給と切り離して退職金を設定できる点が、功績倍率ベースとは異なります。
功績倍率やポイント制を用いた計算方法の場合、在籍中の評価が退職金に反映されるため、従業員のモチベーションアップにつながる可能性が高いのが特徴です。
勤務年数別の看護師の退職金相場
前項で述べたとおり、退職金の支給額には、勤続年数が影響している場合が多いと考えられます。ここでは、看護師の退職金の相場を勤続年数別に紹介します。ただし、医療機関によって退職金の平均額は異なるため、参考程度にご覧ください。
3年
看護師3年目で退職する場合、退職金の相場は30万円程度といわれています。
勤続年数が短く、役職についていない場合も多いことから、退職金は給料の1ヶ月分程度が目安となるでしょう。
ただし、勤務先によっては退職金の支給対象となる最低勤続年数を3~5年としている場合も多く、看護師3年目では退職金が受け取れない場合もあります。
5年
看護師5年目で退職する場合、退職金は50~100万円程度が相場です。
看護師5年目の場合、後輩看護師の教育やリーダー業務に携わる人もいるでしょう。勤続年数が5年以上となると、職場への貢献度も高くなるため、勤続3年目で退職する場合より多くの退職金が受け取れると考えられます。
退職金制度を設けている職場においては、勤続年数が5年以上であれば退職金が受け取れるケースが多いでしょう。
10年
看護師10年目で退職する場合、退職金の相場は250~300万円程度です。
勤続年数が10年以上の場合、役職についていたり、昇給によって給料が上がっていたりすることも多いでしょう。また、勤続年数が10年になると、退職金の勤続年数に関する係数やポイントが上がることも多く、ある程度まとまった額の退職金が受け取れると考えられます。
看護師10年目になると、ステップアップを求めて新たな職場に転職したり、ライフステージの変化に伴い退職したりする人も増えるでしょう。ただし、前述のとおり、自己都合による退職の場合は支給金額が下がることもあるので、支給条件を事前に確認しておくのがおすすめです。
20年
看護師20年目で退職する場合、退職金の相場は450~600万円程度です。
勤続年数が20年を超えると、役職についていたり、重要な業務に携わっていたりする看護師も増えてくるでしょう。そのため、役職の有無や職場への貢献度が退職金に反映されるか否かで、支給される退職金の額は大きく変わると考えられます。
また、勤続20年を超える看護師は40~50代になる人も多く、家庭や老後のための資金となり得る退職金の有無は重要なポイントです。職場が退職金制度を設けていない場合や支給金額が著しく低いと感じる場合は、早めに転職を検討するのも一つの手でしょう。
30年
看護師30年目で退職する場合、退職金の相場は800~1000万程度といわれています。
勤続年数が30年を超えると、定年が近い人も多くなるでしょう。定年時の看護師の退職金は、職場によっては、1000~2000万円ほど受け取れることもあるようです。
定年での退職の場合、支給される金額が大きく上がることもあるので、退職金の給付条件を確認し、退職時期を検討すると良いでしょう。
勤務先別の看護師の退職金相場
看護師の退職金を勤務年数別にみてきましたが、勤務先病院の種類によっても、退職金の相場は異なるようです。ここでは、看護師が定年で退職する場合の、国立病院・公立病院・私立病院の退職金相場を紹介します。前項と同様に、相場の一例としてご覧ください。
国立病院
国立病院で勤務する看護師の場合、定年時の退職金は1800~2000万円程度が相場です。
国立病院の看護師は、国立病院機構の退職手当規程に基づいた退職金が支給されます。独立行政法人国立病院機構「独立行政法人国立病院機構職員退職手当規程」によると、国立病院における退職金の計算方法は以下のとおりです。
退職金=基本給×退職事由・勤続年数に応じて定められた割合+調整額
役職や等級などに対する手当は、調整額として加算されます。ただし、勤続年数が9年以下で自己都合による退職をする場合は、調整額が加算されません。
また、国立病院の看護師は、勤務期間が6ヶ月未満の場合は退職金支給の対象外となるので、注意が必要です。
参考:独立行政法人国立病院機構「独立行政法人国立病院機構職員退職手当規程」
公立病院
公立病院で勤務する看護師が定年退職する場合の、退職金相場は1400~1900万円程度です。
公立病院の看護師は地方公務員にあたるため、各自治体の条例に基づいて退職金が支給されます。総務省「地方公務員の退職手当制度について」によると、地方公務員の退職金の基本算定構造は以下のとおりです。
退職金=基本額+調整額
※基本額=退職日給料月額×退職理由別・勤続年数別支給率
地方公務員の退職金制度は、国家公務員退職手当法に準じたものとなっていますが、自治体ごとに規定の詳細が異なるのが特徴です。
看護師の退職金は、都道府県立の病院では約1400万円、政令指定都市の病院では約1900万円、それ以外の都市の病院では約1800万円が相場といわれています。
参考:総務省「地方公務員の退職手当制度について」
私立病院
私立病院勤務の看護師の定年時の退職金相場は、800~2000万円程度といわれています。
私立病院の場合、施設規模や経営状況が病院によって大きく異なるため、支給される退職金にも差が出やすいのが特徴です。
また、私立病院のなかには退職金制度を設けていない病院もあります。私立病院で勤務する看護師は、退職金制度の有無や経営状況などを、事前に確認しておくと良いでしょう。
看護師の退職金に関する注意点
ここまで看護師の退職金事情を説明してきましたが、退職金受給に関して気を付けておくと良いことには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、看護師の退職金に関する注意点を3つ紹介します。
年次の区切りを確認して退職時期を決める
看護師がより多くの退職金を受給するためは、年次の区切りを確認して退職時期を決めることが大切です。
前述のとおり、退職金の計算には、勤続年数や勤続年数に基づく係数が用いられることが多い傾向にあります。勤続年数によって基本給や勤続年数に基づく係数が上がる場合、退職時期を年次が上がった後に合わせると、退職金の支給額が上がる可能性もあるでしょう。
また、勤務先の規定によって、1年に満たない月日に対する扱い方が異なる場合もあります。最低勤続年数が退職金の支給条件として定められている場合は、特に注意して社内規定を確認しておくと良いでしょう。
退職金の持ち運び制度を利用する
定年前に転職をする看護師は、退職金の持ち運び制度が利用できるか確認するのがおすすめです。
厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」によると、企業年金やiDeCo、中小企業退職金共済では、退職金として積み立てた退職金を転職先に引き継ぐ「年金資産の持ち運び制度」が利用できる場合があります。
ただし、勤務先と転職先の企業年金の種類によっては、引き継ぎができない場合もあるので注意が必要です。勤務先と転職先がどちらも企業年金制度を導入している場合は、企業年金の種類まで確認しておくと良いでしょう。
参考:厚生労働省「離職・転職時等の年金資産の持ち運び(ポータビリティ)」
転職先の退職金制度を確認する
転職を考えている看護師は、転職先の退職金制度を事前に確認しておくことが大切です。
前述のとおり、退職金制度の有無や制度の条件、金額などは職場によって異なります。退職金を多く受け取りたいと考えている方は、転職先がどのような退職金制度を導入しているのか詳しく調べておくのがポイントです。
看護師の退職金は勤務先や勤務年数によって異なる
- 看護師の退職金制度は、導入されている種類によって支給タイミングが異なる
- 看護師の退職金は、勤続年数に比例して金額が大きくなる傾向がある
- 看護師が転職をする場合は、転職先の退職金制度を事前に確認しておくことが大切
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