豆知識
介護サービス相談員とは?仕事内容や似ている職種との違いを解説
a month ago

「介護サービス相談員の仕事がよく分からない」という方もいるでしょう。介護サービス相談員とは、介護サービス利用者がもつ疑問や不満を聞き、介護サービス事業者との問題を解決するための橋渡し役を担う職種です。この記事では、介護サービス相談員の仕事内容や類似しているほかの職種との違いについて紹介します。介護サービス相談員になる方法も解説するので、ぜひ参考にしてください。
介護サービス相談員とは
厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の概要」によると、介護サービス相談員とは、介護サービス利用者とサービス提供事業者間の問題を解決するための橋渡し役を務める相談員のことです。介護サービス相談員は、実際に介護サービス施設や事業所に出向き、利用者のサービスに対する疑問や不安などを聞く役割を担っています。
厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」によると、介護サービス相談員派遣等事業は「問題提起・提案解決型の事業」であるのが特徴です。介護サービス相談員派遣等事業では、苦情に至る事態を未然に防止することや、利用者の日常的な不平や不満、疑問に対応して改善の途を探ることを目的としています。
また、介護サービス相談・地域づくり連絡会「介護サービス相談員はどんな人?」によると、介護サービス相談員の派遣先は、介護保険法の施設や事業所・有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅と定められています。
ただし、厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」のとおり、訪問介護をはじめとする訪問系サービスを提供する事業所を派遣の対象とする場合、介護サービス相談員は必要に応じて、利用者の自宅を訪問することもあるようです。
参考:厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の概要」
厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」
介護サービス相談・地域づくり連絡会「介護サービス相談員はどんな人?」
介護サービス相談員の活動内容
介護サービス相談・地域づくり連絡会「介護サービス相談員はどんな人?」によると、介護サービス相談員の主な活動内容は以下のとおりです。
- サービス利用者の苦情や不安を聞き、相談に乗る
- 利用者からの相談内容に応じて、サービス提供事業者や関係機関への橋渡しを行う
- サービスの現状把握や観察を行い、サービス提供事業者にサービスの改善などの提案を行う
- サービス提供事業者と意見交換をし、サービスの改善や向上に努める
以上の業務だけでなく、利用者からの相談に対する対応が介護サービス相談員の守備範囲を超える場合は、市区町村事務局と連携を図ることもあります。
介護サービス相談員がやってはいけないこと
介護サービス相談・地域づくり連絡会「介護サービス相談員はどんな人?」によると、介護サービス相談員には禁止されている行為がいくつかあります。介護サービス相談員がやってはいけないことの一例は、以下のとおりです。
- 活動上知り得た情報を外部に漏らすこと
- 派遣先事業者の評価
- 車いすなどへの移乗や食事介助などの「介護」にあたる行為
- 利用者同士や家族間のトラブルの仲裁
介護サービス相談員の役割は、問題解決をすることではなく、利用者と各機関や担当者の間に入り橋渡しを行うことです。そのため、利用者から問題解決の依頼を受けた場合、解決するのはサービス提供事業者または本人・家族であることを明確に示すことが必要とされています。
参考:介護サービス相談・地域づくり連絡会「介護サービス相談員はどんな人?」
介護サービス相談員になるには資格が必要?
厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」によると、介護サービス相談員になるための条件は、事業活動の実施にふさわしい人格と熱意を有し、一定の水準以上の研修を修了することです。都道府県またはボランティアの養成に取り組む公益団体が実施する研修を修了すると、介護サービス相談員として市町村に登録され、活動が可能となります。
介護サービス相談員に関する研修には、「介護サービス相談員研修」と「介護サービス相談員補研修」の2種類があります。この2つの大きな違いは、研修内容と業務範囲です。
標準的な研修カリキュラムによると、介護サービス相談員研修の受講時間が40時間以上であるのに対し、介護サービス相談員補研修は12時間以上と設定されています。
そのため、介護サービス相談員研修の修了者(介護サービス相談員)は、活動実績の少ない介護サービス相談員の指導・管理が行えますが、介護サービス相談員補研修の修了者(介護サービス相談員補)の場合、それらの指導・管理は行えません。また、原則として介護サービス相談員補のみでは活動ができないため、介護サービス相談員補が活動を行う場合には、介護サービス相談員が同行することと定められています。
参考:厚生労働省「介護サービス相談員派遣等事業の実施について」
介護サービス相談員とほかの相談員との違い
介護・福祉サービス利用者の相談役を担う相談員は、介護サービス相談員のほかにも複数あります。介護サービス相談員と異なる3つの相談員について、それぞれどのような違いがあるのかみていきましょう。
介護支援専門員(ケアマネジャー)
厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」によると、介護支援専門員とは、要介護者・要支援者が介護サービスを受けられるよう、介護サービスの利用計画を立てたり、市町村やサービス事業者との調整を行ったりする職種のことです。
介護サービス相談員は利用者のサービス提供事業者に対する不満や悩みを聞くのに対して、介護支援専門員は、利用者の日常生活に関する悩みや心身の状況に関する相談を受け、実際に適切な介護サービスを提案します。
また、介護支援専門員になるには、保健医療福祉分野での5年以上の実務経験や、介護支援専門員実務研修の修了などが必要です。実務経験の有無は問われない介護サービス相談員に比べると、介護支援専門員になるハードルは非常に高いといえるでしょう。
参考:厚生労働省「介護支援専門員(ケアマネジャー)」
生活相談員
job tag(厚生労働省 職業情報提供サイト)「老人福祉施設生活相談員」によると、生活相談員とは、老人福祉施設の利用者が可能な範囲で自立的に日常生活を送れるよう、相談や援助、連絡調整などを行う職種です。老人福祉施設には、老人デイサービスセンターや特別養護老人ホーム、老人福祉センターなどが含まれます。
生活相談員になるためには、社会福祉士や精神保健福祉士、社会福祉主事任用資格などが必要となるのが一般的です。ただし、自治体によっては、介護福祉士や介護支援専門員の資格を有している人も対象となる場合があります。
介護サービスを行う事業所に派遣され、利用者の相談に乗る介護サービス相談員に対して、生活相談員は老人福祉施設に所属し、入所・通所者に対して相談支援を行うのが特徴です。
参考:job tag(厚生労働省 職業情報提供サイト)「老人福祉施設生活相談員」
相談支援専門員
厚生労働省「相談支援の現状と課題」によると、相談支援専門員とは、障がい者本人や障がい児の保護者を対象とし、障害福祉サービスの利用に関わる調整をはじめとした相談支援を行う職種です。相談支援専門員は、障がい者の心身の状況や日常生活の状況などを踏まえた「サービス等利用計画」の作成や、サービス事業所との連絡調整などを行っています。
介護サービス相談員との大きな違いの一つは、相談支援の対象者です。介護サービス相談員は、介護サービスの利用者が支援の対象となりますが、相談支援専門員は、障がい者を対象に相談支援を行います。
参考:厚生労働省「相談支援の現状と課題」
介護サービス相談員に必要なスキル
介護サービス相談員には、以下のようなスキルが必要であると考えられます。
- 観察力
- 傾聴力
- コミュニケーション能力
介護サービス相談員は、事業所や利用者の居宅を訪問し、サービス提供の様子を観察することで、サービス提供の現状把握を行います。そのため、介護サービス相談員には、鋭い観察力を基に問題点をみつけ、サービス改善の提案を行うことが求められるでしょう。
また、利用者のなかには、サービス提供事業所に対する不満や悩みを相談しづらいと感じる方もいると考えられます。そのため、介護サービス相談員は、利用者が事業所に対してもっている思いを打ち明けやすくなるような高い傾聴力をもつことが大切です。
そして、利用者の思いを的確にサービス提供事業者や関係機関に伝えるためのコミュニケーション能力も、介護サービス相談員に必要なスキルといえます。サービス提供事業者や自治体の事務局など、複数の関係機関と連携を図ることも介護サービス相談員の役目の一つです。介護サービス相談員には、各機関と利用者との間で認識の齟齬が発生しないよう、適切に情報連携を行えるコミュニケーション能力が求められるでしょう。
介護サービス相談員は利用者と事業者の橋渡し役を担う
- 介護サービス相談員は介護サービス施設や事業所に出向き、利用者の相談に乗る
- 介護サービス相談員は、介護にあたる行為やトラブルの仲裁を行ってはいけない
- 介護サービス相談員になるには、介護サービス相談員研修の修了が必要
- 介護サービス相談員には、観察力や傾聴力が求められる