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民間救急とは?サービス内容や119番との違いを解説
17 hours ago
「民間救急とは何?」と疑問に思う人もいるでしょう。民間救急は119番で駆けつける消防救急とは異なり、緊急性が低い傷病者を搬送する民間のサービスです。この記事では、民間救急のサービス内容や消防救急との具体的な違いを紹介しています。介護タクシーなどほかの民間サービスとの違いにも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
民間救急とは
民間救急とは、緊急性が低い傷病者の搬送や、転院搬送を担当する民間サービスのことです。民間の搬送サービスの中でも、主に消防庁から「患者等搬送事業者」として認定されている業者が民間救急と呼ばれます。
消防庁救急企画室「患者等搬送事業者の調査結果について」によると、2023年4月1日現在、患者等搬送事業者は全国に1682ヶ所あり、2022年度の総搬送件数は135万7105件でした。民間救急は転院や通院だけでなく、一人での移動が難しい方の冠婚葬祭の出席や引っ越しなどでも広く利用されているようです。
民間救急が生まれた背景
そもそも、救急搬送のサービスには119番で要請できる消防救急がありますが、なぜ民間救急のサービスが誕生したのでしょうか。その理由の一つは、消防救急の負担を減らすためです。
総務省消防庁「令和5年版救急救助の現況 I 救急編」によると、消防救急において2022年中の傷病程度別の搬送人員は、軽症(外来診療)で搬送されている人が全体の47.3%と最も多く、294万106人でした。救急車の数や医療機関の対応可能な急患の人数が限られている中、軽症で消防救急を利用する人が多いと、中等症や重症の人に迅速に医療提供できないという問題が生じます。
また、転院に救急車が利用されることで、消防救急の負担が増大しているという事例もあるようです。厚生労働省「2 増加する救急需要への対策に関する検討」によると、2022年度の実績では、全国の救急救命センターでの転院搬送件数は1万7712件、2次・3次医療機関の転院搬送件数は5万4543件にのぼっています。さらに、全国の消防本部に対し、転院搬送が救急業務に与える影響について調査を行ったところ、転院搬送が「救急業務をひっ迫している」と回答した消防本部は45.7%でした。
転院搬送が消防救急の業務をひっ迫させている現状を改善するために、消防庁からも声明が出されています。総務省消防庁「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」では、「緊急性の乏しい転院搬送については、本来、消防機関が実施するものではないため、医療機関が所有するいわゆる病院救急車、消防機関が認定する患者等搬送事業者等を活用すること」といわれており、転院時は民間救急の使用が推進されているようです。
参考:消防庁救急企画室「患者等搬送事業者の調査結果について」
総務省消防庁「令和5年版救急救助の現況 I 救急編」
厚生労働省「2 増加する救急需要への対策に関する検討」
総務省消防庁「転院搬送における救急車の適正利用の推進について」
民間救急のサービス内容
民間救急の主なサービス内容は、以下のとおりです。
- 通院・入退院時の搬送
- 転院搬送
- その他利用者より要望があった行き先への搬送
- 搬送中の応急処置
総務省消防庁「患者等搬送事業指導基準等の一部改正について」によると、民間救急事業者は、患者等搬送乗務員適任証の交付を受けた乗務員が2名以上で業務を行うことが定められています。ただし、退院などを目的として運行する場合や、医師または看護師が同乗する場合は、乗務員は1名でも問題ありません。
また、民間救急の救急車には緩衝装置や換気・冷暖房装置、通信機器などの設備があるうえ、ストレッチャーや車いすを使用したまま固定できる構造になっています。ガーゼや包帯、噴霧消毒器などの衛生資材も搭載しており、搬送中の応急処置にも対応できるのが特徴です。
参考:総務省消防庁「患者等搬送事業指導基準等の一部改正について」
民間救急と消防救急の違い
民間救急は緊急度の低い傷病者を運び、消防救急は緊急性の高い場合に要請されるのが両者の主な違いです。それぞれ役割が異なるため、救急車への装備やできることなどが以下のように異なっています。
違い | 民間救急 | 消防救急 |
---|---|---|
赤色警告灯やサイレンの装備 | × | 〇 |
緊急走行 | × | 〇 |
搬送依頼者の料金支払の有無 | 有 | 無 |
医療行為の可否 | △ (原則として応急処置のみ可) |
〇 |
利用時の予約 | 要予約 | 個人での予約不可 |
消防救急の利用は基本的に無料ですが、民間救急の利用は料金がかかり、予約が必要なことがほとんどです。医療保険・介護保険の対象にもなっていません。料金設定は事業所によりますが、利用時間や距離によって定められるのが一般的です。
救急車については、総務省消防庁「患者等搬送事業指導基準等の一部改正について」によると、民間救急の救急車には赤色警告灯やサイレンの装備が許されておらず、緊急走行もできない決まりになっています。民間救急は通常の乗用車と同様に、信号や走行レーンを守って走行しなければなりません。
また、民間救急では簡単な止血や消毒といった応急処置以外の医療行為は原則としてできないことになっています。搬送中に利用者の容体が急変した場合は救急車を要請し、利用者を乗せかえて医療機関に搬送してもらう必要があるでしょう。酸素投与やモニター監視など、あらかじめ医療処置が必要だとわかっている人を搬送するときは、看護師または転院元の医師などが同乗します。
参考:総務省消防庁「患者等搬送事業指導基準等の一部改正について」
民間救急とほかの民間サービスの違い
民間救急以外にも、民間の搬送サービスはさまざまな種類があります。ここでは民間救急とほかの民間サービスとの違いを紹介します。
民間救急と介護タクシーの違い
job tag(厚生労働省 職業情報提供サイト)「介護タクシー運転手」によると、介護タクシーは、介護や介助が必要な高齢者や身体障がい者を利用対象者とするタクシーです。介護タクシーには、車いすやストレッチャーで乗車できるような車両が使用されます。運転手が介護関連の資格を取得しており、運転と乗降のサポートなどを一人で行う例が多いようです。
介護タクシーには介護保険を使った介護保険タクシーと、介護保険を利用しない全額自己負担の介護タクシーがあります。介護保険タクシーは利用条件や目的に制限がありますが、病院への通院や1時間未満の買い物などに利用できるようです。
また、民間救急の利用対象者は基本的に傷病者ですが、介護保険タクシーの利用対象者は、要介護認定を受けている高齢者です。介護保険を利用しない介護タクシーは、傷病者でなくても介護が必要な方であれば利用できます。なお、介護タクシーには、民間救急で規定されている包帯や噴霧消毒器などは積載されていないことが一般的です。
民間救急と福祉タクシーの違い
job tag(厚生労働省 職業情報提供サイト)「介護タクシー運転手」によると、福祉タクシーは、主に身体障がいのある方の外出を支援するタクシーのことです。市区町村によっては、身体障がい者手帳を持っていて車いすを常用している方などを対象に料金の一部を補助しています。介護タクシーと車両や運行目的が似ており、日常的に利用する点は同じですが、利用対象者が主に身体障がいのある方に限定されているのが特徴です。
民間救急と寝台タクシーの違い
寝台タクシーは、ストレッチャーに乗り、横になったまま移動できる介護タクシーのことです。介護タクシーのうち、ストレッチャーを搬送できる介護タクシーは、車いすや独歩の利用者を搬送する車両と区別する意味合いで「寝台タクシー」と呼ばれる場合があります。
また、寝台タクシーも介護タクシーと同様に、介護保険が利用できる場合とできない場合があります。
参考:job tag(厚生労働省 職業情報提供サイト)「介護タクシー運転手」
民間救急は緊急性の低い搬送を担う民間サービス
- 民間救急は緊急性の低い傷病者の搬送や転院搬送を行っている
- 民間救急は消防救急の負担軽減のために普及した背景がある
- 民間救急の利用は予約が必要で、緊急走行やサイレンの装備は行えない
- 民間救急と違い介護タクシーでは介護が必要な高齢者の移動をサポートする
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