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医師国保に看護師が加入するデメリットは?特徴や保険料を解説
a day ago
「医師国保に看護師が加入したときのデメリットがよく分からない」という方もいるでしょう。医師国保に看護師が加入するデメリットの一つは、勤務先で診療を受ける際の医療費は保険適用外となり、全額自費で負担する必要があることが挙げられます。この記事では、医師国保のメリット・デメリットについて紹介します。医師国保の保険料や補償内容についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
医師国保とは
「医師国保」とは、医師国民健康保険組合の略称で、医療従事者やその家族が加入できる保険制度のことです。厚生労働省「国民健康保険制度」によると、医療保険制度には、「国民健康保険制度」「被用者保険」「後期高齢者医療制度」の3つがあり、医師国保は国民健康保険制度の一つにあたります。
国民健康保険制度は、都道府県および市町村(特別区を含む)が保険者となる「市町村国保」と、業種ごとに組織される「国民健康保険組合」とに分かれています。医師国保は後者の国民健康保険組合にあたり、各都道府県にある医師国民健康保険組合によって運営されているのが特徴です。
また、東京都医師国民健康保険組合「健康保険適用除外について」によると、医師国保が適用される事業所は、常時雇用されている従業員が5人未満の個人事業所が主となります。法人事業所および常時5人以上の従業員を雇用する個人事業所は原則、社会保険(被用者保険)が適用されるため医師国保には加入できません。
医師国保の加入要件や保険料、保険給付の内容などは各都道府県の組合ごとに異なります。ここでは、「東京都医師国民健康保険組合」を例に挙げ、医師国保の概要を紹介します。
参考:厚生労働省「国民健康保険制度」
東京都医師国民健康保険組合「健康保険適用除外について」
加入要件
東京都医師国民健康保険組合「組合員の資格について」によると、東京都医師国民健康保険組合への加入要件は以下のとおりです。
第1種組合員 | - 東京都医師会会員の開業医や勤務医など - 75歳未満の方 - 医療・福祉の事業や業務に従事している方 - 規約に定められている住所地に住民票がある方 |
第2種組合員 | - 第1種・第3種組合員に雇用されている従業員 - 75歳未満の方 - 常勤または常勤に準ずる方 - 規約に定められている住所地に住民票がある方 |
第3種組合員 | - 東京都医師会会員の開業医や勤務医など - 75歳以上の方 - 医療・福祉の事業や業務に従事している方 - 規約に定められている住所地に住民票がある方 |
第4種組合員 | - 第1種・第3種組合員に雇用されている従業員 - 75歳以上の方 - 常勤または常勤に準ずる方 - 規約に定められている住所地に住民票がある方 |
組合員の家族 | - 組合員と住民票上同一の世帯に属する方 - 75歳未満の方 - ほかの健康保険に加入していない方 |
参考:東京都医師国民健康保険組合「組合員の資格について」
第2種組合員または第4種組合員の従業員は、看護師や医療事務など、医師以外の従業員のことです。看護師の場合、年齢によって第2種組合員になるか第4種組合員になるか異なります。
また、どの種別においても、規約に定められている住所地に住民票があることが要件の一つです。規約の地域外に引っ越す場合は、医師国保の資格喪失手続きが必要となるので注意しましょう。
なお、以下に該当する場合は加入要件を満たしていても、医師国保に加入できません。
- 健康保険や船員保険、医療保険を行う共済組合などに加入している方
- ほかの国保組合に加入している方
- 後期高齢者医療制度の被保険者の方(第3種・第4種組合員を除く)
- 生活保護法の適用を受けている方
医師国保は市町村国保と同様に世帯単位の加入が義務付けられており、世帯が同一である場合、医師国保と市町村国保との混在は認められていません。そのため、組合員と同一世帯で市町村国保に加入している75歳未満の方は、医師国保に加入することとなります。
参考:東京都医師国民健康保険組合「組合員の資格について」
保険料
東京都医師国民健康保険組合「保険料について」によると、東京都医師国民健康保険組合では組合員の種別および家族の年齢によって保険料が決められています。1か月あたりの保険料は以下のとおりです。
(40~64歳の方) |
(75歳以上の方) |
|||
---|---|---|---|---|
第1種組合員 | 3万4500円 | 5,000円 | 6,000円 | ― |
第2種組合員 | 1万3500円 | 5,000円 | 6,000円 | ― |
第3種組合員 | ― | ― | ― | 1,000円 |
第4種組合員 | ― | ― | ― | 1,000円 |
家族(中学生~74歳) | 7,500円 | 5,000円 | 6,000円 | ― |
家族(未就学児~小学生) | 4,500円 | 5,000円 | ― | ― |
参考:東京都医師国民健康保険組合「保険料について」
「後期高齢者支援金等保険料」とは、後期高齢者医療制度を支援するための保険料のことで、0歳~74歳の被保険者全員が徴収対象となっています。
また、満75歳を迎えると「後期高齢者医療制度」に加入することになり、医師国保の「被保険者」ではなくなります。ただし、「後期高齢者組合員保険料」を納付することで、第1種・第2種組合員の方は満75歳の誕生日を迎えた後も、第3種・第4種組合員として組合の保健事業の利用が可能です。
なお、前述のとおり、上記は東京都医師国民健康保険組合の保険料となります。都道府県ごとに保険料は異なる場合があるので、具体的な金額を知りたい方は加入する地域の医師国保へ問い合わせてみてください。
参考:東京都医師国民健康保険組合「保険料について」
保険給付の内容
東京都医師国民健康保険組合「保険給付」によると、東京都医師国保で受けられる保険給付には以下のようなものがあります。
- 保健医療機関で受診した場合の医療費の一部負担
- 入院時の食事・生活療養費の一部負担
- 高額療養費
- 葬祭費
- 海外療養費
- 医療費通知
厚生労働省「国民健康保険の給付について」のとおり、国民健康保険の保険給付の内容は、e-Gov法令検索「国民健康保険法」で定められています。そのため、医師国保の保険給付の内容は、市町村国保やほかの組合の医師国保の内容と大きく変わることはありません。ただし、給付が必須となっている項目以外の規定は、組合ごとに自由に決められるため、任意給付の有無は加入する地域の医師国保によって異なるでしょう。
参考:東京都医師国民健康保険組合「保険給付」
厚生労働省「国民健康保険の給付について」
e-Gov法令検索「国民健康保険法」
医師国保と社会保険・国民健康保険との違い
ここまで、東京都医師国民健康保険組合を例に医師国保の概要を説明してきましたが、医師国保と社会保険・国民健康保険(市町村国保)とではどのような点が大きく異なるのでしょうか。ここでは、医師国保と社会保険・国民健康保険との違いを4つ紹介します。
加入要件
医師国保と社会保険・国民健康保険とでは、加入要件が異なります。厚生労働省「従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」によると、社会保険の加入対象となる条件は以下の4項目です。
- 週の勤務時間が20時間以上である
- 給与が月額8万8000円以上である
- 2か月を超えて働く予定がある
- 学生ではない(休学中や定時制、通信制の方は加入対象)
社会保険が適用となっている事業所で勤務しており、上記の4項目を満たしている場合は社会保険に、条件を満たしていない場合は国民健康保険への加入が必要です。また、勤務先の医療機関が社会保険の適用の事業所でない場合は、医師国保もしくは国民健康保険へ加入することとなります。
医師国保の加入要件については、前述のとおり、加入する医師国保によって異なるため、該当地域の医師国保の加入要件を確認してみてください。
参考:厚生労働省「従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」
保険料
医師国保と社会保険・国民健康保険との大きな違いの一つが保険料の納付額についてです。社会保険や国民健康保険は被保険者の所得金額によって保険料が変わりますが、医師国保は組合員の種別や年齢によって保険料が定められており、所得によって保険料が変動することはありません。そのため、収入が高い方は医師国保に加入することで、保険料を安く抑えられるケースもあるでしょう。保険料率は、加入する社会保険や国民健康保険によっても異なります。医師国保と社会保険・国民健康保険とで保険料の差が大きくなる場合は、どの保険に加入するのが良いか検討するのがおすすめです。
年金について
医師国保と社会保険・国民健康保険とでは、加入する年金の種類が異なります。
医師国保や国民健康保険に加入している場合、国民年金の納付が必要です。一方で、厚生労働省「従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」によると、社会保険に加入している場合は、厚生年金を納付することとなります。
日本年金機構「厚生年金保険に加入していますが、国民年金の保険料はどのようになっていますか。」によると、厚生年金の保険料には国民年金の保険料も含まれているため、厚生年金を納付している方は、国民年金への加入・納付は不要です。社会保険から医師国保や国民健康保険に切り替える際は、国民年金への加入手続きが必要となるため注意しましょう。
参考:厚生労働省「従業員のみなさま 社会保険加入のメリットや手取りの額の変化について」
日本年金機構「厚生年金保険に加入していますが、国民年金の保険料はどのようになっていますか。」
自家診療時の保険適用
東京都医師国民健康保険組合「自家診療について」によると、「自家診療」とは被保険者が所属する医療機関にて、被保険者本人またはその家族が療養を受けることです。医師国保の場合、自家診療に対する医療保険の請求・給付ができない規定となっています。
一方で、社会保険や国民健康保険では、自家診療分であっても医療保険の請求ができる場合があるようです。本人もしくは家族が勤務先で受診する可能性が高い場合は、自家診療に対する医療保険の請求が可能な保険への加入を検討するのも良いでしょう。
参考:東京都医師国民健康保険組合「自家診療について」
医師国保に看護師が加入するメリット
看護師が医師国保に加入する場合、保険料の納付額や助成金制度などが、医師国保加入のメリットになり得るでしょう。ここでは、医師国保に看護師が加入する3つのメリットを紹介します。
保険料が定額である
医師国保は保険料が定額であることがメリットの一つとして挙げられます。前述のとおり、医師国保は収入が増えても保険料が上がることはありません。そのため、収入の額によっては、保険料を安く抑えられる可能性があります。また、年によって保険料が増減することがないため、家計の管理がしやすいこともメリットでしょう。
助成金制度を受けられる組合もある
医師国保には組合ごとに独自の保健事業や助成金制度がある点も、看護師が医師国保に加入するメリットの一つです。東京都医師国民健康保険組合「保健事業」によると、東京都医師国保組合の場合は保健事業として、人間ドックなどの健康診断や乳房エコー検診、MRI・MRAなどの脳ドック検査の費用に対する助成金制度が設けられています。
また、東京都医師国民健康保険組合「出産育児一時金」によると、東京都医師国保に加入している場合、市町村国保と同額の出産育児一時金に加えて、独自の付加給付金が受け取れます。利用できそうな保健事業や助成金制度はないか、自身が加入する医師国保独自の保健事業内容は事前に調べておくのがおすすめです。
参考:東京都医師国民健康保険組合「保健事業」
東京都医師国民健康保険組合「出産育児一時金」
事業者の金銭的負担がない
医師国保は保険料の全額を被保険者が負担するため、事業者の金銭的負担がない点もメリットです。この点は、医師国保に加入している看護師にとっての直接的なメリットであるとは言い切れません。しかし、事業者負担が減ることで、従業員である看護師の賃金アップや勤務先の環境整備につながる可能性も大いに考えられます。医師国保に加入している職場への転職を考えている看護師は、勤務先の職場設備や給料などの待遇面についても確認してみると良いでしょう。
医師国保に看護師が加入するデメリット
医師国保に看護師が加入するメリットをみてきましたが、状況によってはデメリットになり得る点もいくつかあります。医師国保に看護師が加入するデメリットを3つみていきましょう。
自家診療時に医療保険の請求ができない
医師国保に看護師が加入するデメリットの一つは、自家診療時に医療保険の請求ができないことです。勤務中に体調が悪くなり、勤務先で診察や薬の処方をしてもらった場合、その際にかかった医療費を全額自費で払わなければなりません。また、休日に自分や家族が体調を崩した際、勤務先以外の医療機関で受診しないと医療保険の請求ができない点は、大きなデメリットとなるでしょう。
家の近くの医療機関で働いている看護師の場合は、あらかじめ勤務先以外で受診可能な医療機関をいくつかピックアップしておくことが大切です。
世帯人数によって保険料が変わる
医師国保は世帯人数によって保険料が変わることも、医師国保に加入する看護師のデメリットの一つです。医師国保には社会保険のような「扶養」の制度がなく、世帯人数分の保険料を支払う必要があります。
被保険者本人の保険料はほかの保険より安く抑えられる場合でも、扶養する家族が多いと家計全体の出費としては、医師国保のほうが高くなることもあるでしょう。医師国保への加入を考えている看護師は、自身の世帯人数を踏まえて、ほかの保険と比べてどのくらい差があるのか確認しておくことがおすすめです。
手当や給付金の種類が少ないこともある
医師国保は社会保険に比べて手当や給付金の種類が少ないことも、看護師にとってのデメリットです。東京都医師国民健康保険組合「保険給付」によると、東京都医師国民健康保険組合の保険給付の場合、社会保険に加入していると受給できる「出産手当金」や「傷病手当」などは含まれていません。
「出産手当金」を例に挙げると、全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」の場合、一日当たり「【支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額】÷30日×(2/3)」の金額を受け取れます。支給期間は「出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間」が対象です。
出産手当金の制度がない場合、出産に伴い出勤できない期間は収入がなくなってしまうため、金銭的負担が大きくなるでしょう。ただし、前述のとおり、医師国保には独自の保健事業や助成金制度を設けている場合があります。自身のライフイベントの予定と照らし合わせながら、どの保険制度に加入するとメリットが大きいのか検討してみるのもおすすめです。
参考:東京都医師国民健康保険組合「保険給付」
全国健康保険協会「出産で会社を休んだとき」
医師国保のデメリットは自家診療が保険適用外であること
- 医師国保は各都道府県にあり、保険料や保健事業の内容が異なる
- 医師国保の保険料は定額であり、収入金額によって変動しない
- 医師国保に加入する看護師は、保険料が世帯人数分がかかることがデメリットになり得る
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