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介護職員等処遇改善加算とは?対象職員や算定要件を紹介
2 days ago
「介護職員等処遇改善加算とは?」と疑問に思う人もいるでしょう。介護職員等処遇改善加算とは、介護職員の待遇改善や賃金向上を目的とした加算制度です。この記事では、介護職員等処遇改善加算の加算区分や算定要件、対象職員などを解説しています。介護職員等処遇改善加算で職員の給与はいくら上がるのかについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
介護職員等処遇改善加算とは
介護職員等処遇改善加算とは、介護報酬制度に設けられている加算のことで、介護職員の待遇改善や賃金向上を目的として制定されたものです。
介護事業所は、加算を受けるための算定要件をクリアすることで、加算が受けられます。加算で貰えた報酬は、介護職員の給与や手当に反映することと定められていますので、結果として介護職員の処遇改善につながる仕組みです。
厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」によると、今までは介護職員の処遇改善を目的とした加算として「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」の3種類がありました。
それぞれの加算は処遇改善対象の職種や加算率が異なっていたため、より利用者や事業者全体の負担を軽減させた制度に改定したうえで、さらなる処遇改善を実現すべきという方針になったのです。
その結果、2024年6月の介護報酬改定では、3種類の加算が「介護職員等処遇改善加算」に1本化され、従来より加算率も引き上がりました。
参考:厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
介護職員等処遇改善加算の対象職員は?
厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」によると、介護職員等処遇改善加算の加算報酬は、介護職員に支給されるのが基本です。最終的には職員の個々の業務や技能などを含めて、各事業者の采配で支給対象や金額を決めて良いことになっています。そのため、介護職員等処遇改善加算分の加算報酬は、正社員だけでなくパートや派遣社員も貰える可能性があるでしょう。
なお、事業所の勤続年数や介護職としての経験年数、利用者に直接関わる業務を多く行っているかなどによって、支給金額や支給の有無が決められる可能性もあります。よって、ケアマネジャーや事務員、調理師など、利用者と接する機会が少ない職種は、事業所によっては加算による恩恵が受けられないこともあるようです。
そのほか、勤続年数10年以上の介護福祉士など、特に経験・技能を有する介護職員には重点的に支給するよう配分しなければなりません。また、一部の職員や同法人内の一部の事業所に支給を集中させたり、職務の内容や実態に見合わない偏った配分は行わないことと規定されています。
参考:厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
介護職員等処遇改善加算の算定要件
介護職員等処遇改善加算を介護事業所が受け取るためには、いくつかの算定要件を満たす必要があります。厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」、厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」を参考に、各要件の詳細についてみていきましょう。
キャリアパス要件
キャリアパス要件は、内容ごとにIからVまでに分かれています。
キャリアパス要件I
キャリアパス要件Iは、任用要件・賃金体系に関する要件で、以下の項目をクリアする必要があります。
- 介護職員について、職位・職責・職務内容などに応じた任用などの要件を定め、それらに応じた賃金体系を整備する
- 上記の根拠規定を書面で整備し、すべての介護職員に周知する
なお、2024年度中は以前の形態の加算から移行するための経過措置期間になっています。キャリアパス要件Iがただちにクリアできなくても、年度内に対応するとの誓約を立て、2025年3月末までに仕組みの整備を行い、実績報告書においてその旨を報告すれば良いとされています。
キャリアパス要件II
キャリアパス要件IIは、研修の実施に関わる要件で、以下の項目をクリアする必要があります。
- 介護職員の資質向上の目標や、以下のa・bいずれかに関する具体的な計画を制定し、当該計画にかかる研修の実施または研修の機会を確保する
- a…研修機会の提供または技術指導などの実施、介護職員の能力評価
- b…資格取得のための支援(勤務シフトの調整・休暇の付与・費用の援助など)
- 上記の根拠規定を書面で整備し、すべての介護職員に周知する
キャリアパス要件IIも経過措置が適用されるため、2024年度中は年度内に対応するとの誓約を立て、2025年3月末までに仕組みの整備を行い、実績報告書においてその旨を報告するのみでも構いません。
キャリアパス要件III
キャリアパス要件IIIは、昇給の仕組みに関する要件で、以下の項目をクリアする必要があります。
- 介護職員について、以下のa・b・cいずれかの仕組みを整備する
- a…経験に応じて昇給する仕組み
- b…資格などに応じて昇給する仕組み
- c…一定の基準に基づき定期に昇給を判定する仕組み
- 上記の根拠規定を書面で整備し、すべての介護職員に周知する
キャリアパス要件IIIも経過措置が適用されるため、2024年度中は年度内に対応するとの誓約を立て、2025年3月末までに仕組みの整備を行い、実績報告書においてその旨を報告するのみで構わないとされています。
キャリアパス要件IV
キャリアパス要件IVは、「経験・技能のある介護職員のうち1人以上は、賃金改善後の賃金額が年間440万円以上であること」という要件です。なお、小規模事業所などで加算額全体が少額である場合などは、適用免除となります。
また、キャリアパス要件IVも経過措置が適用されるため、2024年度中は月額平均8万円の改善でも問題ありません。
キャリアパス要件V
キャリアパス要件Vは、「サービス類型ごとに一定割合以上の介護福祉士などを配置すること」という要件です。具体的には、サービス類型ごとに「サービス提供体制強化加算」「特定事業所加算」「入居継続支援加算」「日常生活継続支援加算」の各区分の届け出を行っていることと定められています。
月額賃金改善要件
月額賃金改善要件は、IとIIの2種類に分かれています。
月額賃金改善要件I
月額賃金改善要件Iは、「介護職員等処遇改善加算IV相当の加算額の2分の1(7.2%)以上を、月給(基本給または決まって毎月支払われる手当)の改善に充てる」ことが要件です。
ただし、旧加算による賃金改善の多くを一時金で行っている場合は、一時金の一部を基本給・毎月の手当へ付け替える対応が必要になる場合があります。この場合、職員に支払う賃金総額を変える必要はありません。
なお、月額賃金改善要件Iの適用は2025年度からになります。
月額賃金改善要件II
月額賃金改善要件IIは、旧加算である介護職員等ベースアップ等支援加算を算定していなかった事業所に適用される加算です。
具体的な要件は、「2024年5月31日時点で旧ベースアップ等加算以外の旧処遇改善加算を算定している事業所が、前年度と比較して、旧加算の介護職員等ベースアップ等支援加算相当の加算額の3分の2以上の新たな基本給などの改善(月給の引上げ)を行う」となっています。
職場環境等要件
職場環境要件では、2025年度以降に以下6区分の処遇改善の取り組みを実施することと定められています。
- 入職促進に向けた取組
- 資質の向上やキャリアアップに向けた支援
- 両立支援・多様な働き方の推進
- 腰痛を含む心身の健康管理
- やりがい・働きがいの醸成
- 生産性向上(業務改善および働く環境改善)のための取組
以上の区分は、それぞれさらに4項目に分かれています。
介護職員等処遇改善加算IまたはIIを算定したい場合は、上記の6区分ごとにそれぞれ2項目以上(生産性向上は3項目以上、うち一部は必須)に取り組まなければなりません。さらに、情報公表システムなどで実施した取組の内容について、具体的な公表が必要です。
なお、2024年度中は経過措置として、「取組が区分ごとに1項目以上で良い」「取組内容の公表は不要」とされています。
介護職員等処遇改善加算IIIまたはIVを算定したい場合は、上記の6区分ごとにそれぞれ1項目以上(生産性向上は2項目以上)に取り組まなければなりません。なお、2024年度中は経過措置として、6区分全体で1項目以上の取組で良いとされています。
参考:厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
介護職員等処遇改善加算の加算区分
介護職員等処遇改善加算は、より多くの要件をクリアできると、加算率の高い加算を取得できる仕組みになっています。
厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」、厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」、厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」によると、介護職員等処遇改善加算の算定要件と加算区分の関係は、以下のとおりです。
算定要件 | 介護職員等処遇改善加算 加算区分 | ||||
---|---|---|---|---|---|
I | II | III | IV | ||
キャリアパス要件 | I | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
II | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
III | 〇 | 〇 | 〇 | - | |
IV | 〇 | 〇 | - | - | |
V | 〇 | - | - | - | |
月額賃金改善要件 | I | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 |
II | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 | |
職場環境等要件 | 区分ごとに2項目以上 (生産性向上は3項目以上、うち一部は必須) |
〇 | 〇 | - | - |
区分ごとに1項目以上 (生産性向上は2項目以上) |
- | - | 〇 | 〇 |
参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
介護職員等処遇改善加算の加算区分は、Iから順に加算率が高くなっています。その分、Iを算定するにはすべての算定要件を満たさなければなりません。
介護サービスごとの加算率
介護職員等処遇改善加算の加算率は加算区分により一律ではなく、事業所が提供する介護サービスごとに加算率が異なります。
厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」によると、介護サービスごとの加算率は以下のとおりです。
サービス区分 | 介護職員等処遇改善加算 加算区分 | |||
---|---|---|---|---|
I | II | III | IV | |
(夜間対応型)訪問介護、定期巡回 | 24.5% | 22.4% | 18.2% | 14.5% |
(予防)訪問入浴介護 | 10.0% | 9.4% | 7.9% | 6.3% |
(地密)通所介護 | 9.2% | 9.0% | 8.0% | 6.4% |
(予防)通所リハビリテーション | 8.6% | 8.3% | 6.6% | 5.3% |
(地密)(予防)特定施設入居者生活介護 | 12.8% | 12.2% | 11.0% | 8.8% |
(予防)認知症対応型通所介護 | 18.1% | 17.4% | 15.0% | 8.8% |
(看護)(予防)小規模多機能型居宅介護 | 14.9% | 14.6% | 13.4% | 10.6% |
(予防)認知症対応型共同生活介護 | 18.6% | 17.8% | 15.5% | 12.5% |
(地密)介護福祉施設、(予防)短期入所生活介護 | 14.0% | 13.6% | 11.3% | 9.0% |
介護保険施設、(予防)短期入所療養介護(老健) | 7.5% | 7.1% | 5.4% | 4.4% |
介護医療院、(予防)短期入所療養介護(老健以外) | 5.1% | 4.7% | 3.6% | 2.9% |
参考:厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
介護サービスの中では、夜間対応型訪問介護が最も加算率が高くなっています。なお、どのサービスも加算Iから高い順になるように加算率が設定されている点は共通しているようです。
参考:厚生労働省「介護職員の処遇改善:TOP・制度概要」
厚生労働省「処遇改善に係る加算全体のイメージ(令和4年度改定後)」
厚生労働省「『処遇改善加算』の制度が一本化(介護職員等処遇改善加算)され、加算率が引き上がります」
介護職員等処遇改善加算の計算方法
介護職員等処遇改善加算分の報酬がいくらになるのか、具体的な計算方法を確認しておきましょう。厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」、厚生労働省老健局「令和6年介護報酬改定における改定事項について」、厚生労働省「第224回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料【資料4】制度の安定性・持続可能性の確保」によると、介護職員等処遇改善加算で得られる報酬は、「1ヶ月の総単位数×加算率×地域区分単価」で求められます。
ここでの「1ヶ月の総単位数」は、事業所で行われたすべての介護サービスの単位数から、介護職員等処遇改善加算分の単位数を除き、介護報酬に加算減算を行った単位数のことです。地域区分は、事業所の所在地により異なります。なお、介護報酬の1単位は10円が基本のため、上記で求められた数値を10倍することで、具体的な金額が算出可能です。
また、前述のとおり、事業所に支給された報酬が職員へどのような割合で分配されるのかは、事業所により異なります。同じ介護サービスを提供している同規模の事業所同士でも、職員の数や職員個々の職種・経験年数・業務内容などにより、職員一人ひとりが貰える金額は異なるため、注意しましょう。
参考:厚生労働省老健局「介護職員等処遇改善加算等に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について」
厚生労働省老健局「令和6年介護報酬改定における改定事項について」
厚生労働省「第224回社会保障審議会介護給付費分科会(web会議)資料【資料4】制度の安定性・持続可能性の確保」
介護職員等処遇改善加算により給与アップが期待できる
- 介護職員等処遇改善加算とは介護事業所の職員の給与アップを狙った加算
- 介護職員等処遇改善加算は2024年6月の介護報酬改定から施行されている
- 介護職員等処遇改善加算を算定するにはキャリアパス要件などの条件を満たす必要がある
- 介護職員等処遇改善加算で職員が貰える報酬は、事業所により異なる
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