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介護職は無資格で働けなくなる?認知症介護基礎研修について解説
2 days ago
「介護職は無資格で働けなくなるのか知りたい」という方もいるでしょう。2024年4月より介護業界で働く無資格の人は「認知症介護基礎研修」の受講が義務化され、介護職は無資格で働けなくなりました。この記事では、「認知症介護基礎研修」の詳しい内容について紹介します。介護職が取得すべき資格についても解説するので、ぜひ参考にしてください。
介護職は無資格で働けなくなる?
厚生労働省「介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について」によると、2021年度の介護報酬改定により、医療・福祉関係の資格を有していない介護職員に対して「認知症介護基礎研修」の受講が義務付けられました。よって、2024年4月1日以降、認知症介護基礎研修を受講していない場合、介護職は無資格で働けないことになっています。
2021年の制定当時は無資格で介護の仕事に携わっている方もいたため、2024年3月31日までの3年間は経過措置が設けられていました。その間「認知症介護基礎研修」の受講は努力義務でしたが、経過措置期間終了に伴い、2024年4月1日より完全義務化となっています。
認知症介護基礎研修の目的は、介護に関わるすべての職員の認知症対応力を向上させることです。研修の受講義務化の背景には、認知症高齢者の増加に伴い、認知症が身近な病気になった影響が考えられます。
厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」によると、2025年には認知症高齢者の数が約700万人に達すると予測されています。この数は、65歳以上の高齢者の約5人に1人の割合です。高齢者の介護サービスに対する需要の高まりが予測されるなかで、介護職で働く良質な人材を質・量ともに確保するための施策の一つが、「認知症介護基礎研修の受講の義務化」となっています。
介護職が無資格で行える業務
前述のとおり、認知症介護基礎研修が未受講の場合、介護職は無資格で働けなくなりましたが、新たに介護職として働き始める場合、入職後1年間は認知症介護基礎研修の受講猶予期間となります。介護職の業務のなかには無資格で行えるものもあるため、入職直後は無資格で行える業務に従事しながら研修受講が可能です。介護の現場において、無資格で行える業務には以下のものがあります。
- 身体介護(介護福祉士の指導がある場合に限る)
- 介護施設での生活援助
- 施設での事務作業
- 送迎業務
利用者の身の回りの手伝いや施設運営に関する事務作業、利用者の送迎など、利用者の身体に直接触れない業務が、無資格の介護職員が行える業務に該当します。身体介護の場合、施設内かつ介護福祉士の指導のもとであれば無資格で携われますが、介護に関する最低限の知識は求められるでしょう。
研修を修了するまでの間も行える業務があるため、資格の有無にかかわらず、誰でも介護職を目指せるのがポイントです。
認知症介護基礎研修とは?
認知症介護基礎研修は、介護に携わる職員のベースアップを目的とした新任の介護職員向けの研修として、2016年度から全国的に始まりました。厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」によると、それまでの認知症介護の分野では、以下の3つの研修が実施されていました。
認知症介護実践者研修 | 2年ほど | 認知症介護の理念、知識・技術習得 |
認知症介護実践リーダー研修 | 5年ほど | 事業所内での指導役となる |
認知症介護指導者養成研修 | 10年以上 | 研修の企画立案・講師役となる |
参考:厚生労働省「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)~認知症高齢者等にやさしい地域づくりに向けて~(概要)」
ファーストステップである認知症介護実践者研修は、実務経験が2年ほどの介護職員を対象としており、新任の介護職員向けの研修は実施されていませんでした。
そこで、介護職に就くすべての職員が、認知症介護に関する最低限の知識と技術をもって仕事に従事できるよう、新たに導入されたのが「認知症介護基礎研修」です。
ここからは認知症介護基礎研修の内容について、項目ごとに詳しくみていきましょう。
受講対象者
研修の受講対象者は、介護に携わる職員のうち、医療・介護・福祉の資格を有していない人となっています。新しく介護職に就く人だけでなく、研修受講が義務化される以前から無資格で従事している人も対象です。
受講が免除される人の条件
医療・福祉分野の特定の資格を保有している人は、認知症介護に関する基礎的な知識・技術をすでに習得しているものとして、認知症介護基礎研修の受講が免除される仕組みとなっています。厚生労働省「介護保険法施行規則第140条の63の6第1号に規定する厚生労働大臣が定める基準について」によると、認知症介護実施者研修の受講が免除となる資格は以下のとおりです。
- 看護師、准看護師
- 介護福祉士
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)
- 医師、歯科医師
- 薬剤師
- 理学療法士、作業療法士、言語聴覚士
- 精神保健福祉士、社会福祉士
- 管理栄養士、栄養士
- あん摩マッサージ師、はり師、きゅう師
介護福祉士実務者研修や介護福祉士などの介護に関する資格だけでなく、精神保健福祉士や薬剤師、管理栄養士など、介護に特化していない資格を有している場合も、受講が免除となることがあります。上記の資格は一例であり、学校や養成施設で認知症に関する科目を履修し卒業した場合など、受講が免除となるケースはほかにもあるようです。
介護に関する研修を修了している場合も、研修の受講は免除されます。受講免除の対象となる研修は以下のとおりです。
- 認知症介護実践者研修
- 認知症介護実践リーダー研修
- 認知症介護指導者養成研修
- 介護職員初任者研修
- 介護福祉士実務者研修
- 介護職員基礎研修
- 生活援助従事者研修
- 訪問介護員養成研修一級課程・二級課程
なお、民間資格である「認知症サポーター養成講座」や「認知症ケア指導管理士」など、認知症に関する資格であっても、受講免除の対象にならないものもあるので、事前に確認しておきましょう。
受講内容
認知症介護基礎研修の内容は、厚生労働省が定めるカリキュラムを基に決められています。
社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター「認知症介護基礎研修eラーニングの学習内容」の場合の構成内容は以下のとおりです。
- 序章:認知症を取り巻く現状
- 第1章:認知症ケアにおいて基礎となる理念や考え方
- 第2章:認知症の定義と原因疾患
- 第3章:認知症の中核症状と行動・心理症状の理解
- 第4章:認知症ケアの基礎技術
第1章~第4章の学習後には確認テストが用意されています。第4章学習後の確認テストに合格すると全課程修了となり、修了証書が発行される流れです。
なお、上記以外の運営団体で研修を受講する場合、具体的な学習内容は異なる可能性があります。ただし、ほかの運営団体が実施している研修も標準カリキュラムに基づいて作成されているため、学習内容や難易度に大きな違いはないと考えて良いでしょう。
受講方法・受講時間
受講方法はeラーニングが主流ですが、集合型の講義や対面式のオンライン講座でも受講できます。
eラーニングの場合、確認テストを含め、受講にかかる時間は合計で150~180分程度が一般的です。対面形式で演習がカリキュラムに含まれている場合は、eラーニングより受講時間が長く設けられていることもあります。
受講費用
社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター「eラーニングについてのQ&A」によると、認知症介護研究・研修仙台センターのeラーニングシステムで受講する場合、費用は3,000円となっています(2024年11月01日現在)。認知症介護研究・研修仙台センターに委託していない自治体に関しては金額が異なり、3,000~5,000円程度かかる場合もあるようです。
なかには、介護職員の人手不足や研修受講に対する介護職員の負担増加を考慮し、受講費用を代わりに負担する企業や自治体もみられます。受講の際は、自身が在籍する介護施設や自治体の要件を確認してみてください。
対象言語
介護の現場では、外国人の介護職員も増えていることから、認知症介護基礎研修は、「やさしい日本語」での受講も可能です。
出入国在留管理庁「在留支援のためのやさしい日本語ガイドラインの概要」によると、「やさしい日本語」とは、複雑な文法や難しい言葉、長い文章などを使わず、相手に配慮した分かりやすい日本語のことを指します。
社会福祉法人東北福祉会 認知症介護研究・研修仙台センター「ほかの言葉で受講する方法」によると、他言語での補助テキストや単語集も用意されていることから、母国語が日本語ではない方も理解しやすい配慮がされています。対象となっている言語は以下のとおりです。
- やさしい日本語(日本語能力試験:N4レベル)
- 英語
- ベトナム語
- インドネシア語
- 中国語
- ビルマ語
- タガログ語
- ネパール語
厚生労働省「外国人介護人材の受入れについて」によると、介護に携わる外国人を受け入れる仕組みとして、EPA(経済連携協定)・在留資格「介護」・技能実習・特定技能の4つの制度があります。そのうち、技能実習と特定技能として働く場合は、認知症介護基礎研修を受けなければなりません。そのため、認知症介護基礎研修の言語は、技能実習や特定技能として日本で介護職に就く割合が高い7つの国の言語から選択できるようになっています。
介護職におすすめの資格(研修)
介護に関する資格や研修は複数あり、どの資格や研修を取得・受講したら良いか分からないという方もいるでしょう。ここでは、介護職への知識を深めたい方におすすめの資格(研修)を紹介します。自分の状況や目的に合っている研修をみつけてみてください。
介護職員初任者研修
無資格・未経験から介護職で働きたいと考えている方にまずおすすめの研修は、「介護職員初任者研修」です。
厚生労働省「介護員養成研修の取扱細則について(介護職員初任者研修・生活援助従事者研修関係)」によると、介護職員初任者研修は、介護職に従事するうえで必要な最低限の知識・技術を身に付け、業務で実践できることを目的としています。
演習を含めた講義は130時間と定められており、必要に応じて、施設の見学などの実習を行うこともあるようです。介護職での経験が浅い人向けの研修である点は、認知症介護基礎研修と共通していますが、介護職員初任者研修では、認知症に限らず幅広い介護の知識を身に付けられます。
認知症介護実践者研修
介護職で働き、ある程度知識や技術が身に付いてきた方には、「認知症介護実践者研修」の受講をおすすめします。認知症介護実践者研修は、認知症に特化した実践的な知識や技術を習得することが目的の研修です。「認知症介護基礎研修」の一段階上にあたる研修となっているので、研修を通して認知症に関する知識をさらに深められるでしょう。
厚生労働省「認知症介護実践者等養成事業の実施について」によると、研修の対象者は、介護施設に従事し一定の知識や技術、経験を有する人とされています。自治体によりますが、介護現場での実務経験が2年程度あることを受講の条件としている場合が多いようです。
介護福祉士実務者研修
介護の基礎から専門的な知識まで時間をかけて学びたい方におすすめの研修は、「介護福祉士実務者研修」です。介護福祉士実務者研修は、「介護職員初任者研修」の一つ上のレベルの研修で、幅広い利用者に対する介護スキルを身に付けることを目的としています。
厚生労働省「介護福祉士の資格取得方法の見直しの延期について」によると、介護福祉士実務者研修は全体の研修時間が450時間と介護職員初任者研修より長くなっています。ただし、過去に受講した研修内容と重複する部分を考慮して、一部内容の受講を免除する仕組みや通信教育の活用など、働きながらの受講もしやすい環境が整えられているようです。
また、厚生労働省「介護福祉士資格の取得方法について」のとおり、国家資格である「介護福祉士」の資格取得方法の一つとして、介護福祉士実務者研修の受講経験を活かせるルートがあります。介護福祉士への道につながる可能性もあり、介護職でキャリアアップしたい方にはぴったりの研修でしょう。
前述のとおり、介護福祉士実務者研修は「介護職員初任者研修」の一つ上のレベルの研修にあたりますが、介護職員初任者研修の内容も含まれていることから、介護職に初めて就く方も受講できます。早く介護福祉士の資格が欲しいという方は、介護職員初任者研修を受けずに最初に介護福祉士実務者研修を受講するのも良いでしょう。
介護職が資格を取得するメリット
「介護職では無資格で働けなくなるから、資格を取らないと…」と考えている方もいるでしょう。資格取得に対して前向きになれるよう、介護職が資格を取得するメリットについて紹介します。
介護職でのキャリアアップにつながる
介護の資格を取得するメリットの一つは、キャリアアップにつながることです。資格取得や研修の受講を通して、介護に関する一定の知識や技術を身に付けられます。習得した知識や技術を実際の業務に取り入れることで、介護職員としてのスキルが磨かれ、キャリアアップにつながると考えられるでしょう。
給与アップにつながる
資格の取得が給与アップにつながることも、介護職が資格を取得するメリットです。厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、保有資格別の平均給与額は以下のとおりです。
無資格 | 26万8680円 |
介護職員初任者研修 | 30万240円 |
介護福祉士実務者研修 | 30万2430円 |
介護福祉士 | 33万1080円 |
介護支援専門員 | 37万6770円 |
参考:厚生労働省「令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果」
無資格者と介護職員初任者研修修了者とでは、3万円ほど平均給与に差が出てくるようです。介護職員初任者研修は、介護職での経験が比較的浅い方向けの内容となっているため、「介護職員初任者研修の修了」を初めの目標として設定してみるのも良いのではないでしょうか。
また、保有資格のレベルが高いほど、平均給与額も高くなっています。実務経験の年数が受講・受験の条件となっている場合もありますが、給与をアップさせたい方は、積極的に上位資格の取得に挑戦するのも良いでしょう。
介護職は無資格で働けなくなるため資格の取得が必要
- 2024年4月より介護に関わる職員は、認知症介護基礎研修の受講が義務付けられている
- 医療・福祉の資格があると、認知症介護基礎研修の受講が免除されることもある
- 無資格者が介護職に就く場合は、認知症介護基礎研修の受講が1年間猶予される
- 介護全体に関する幅広い知識を身に付けたい方は、介護職員初任者研修もおすすめ
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