豆知識
介護職の離職率は何%?職種別・施設形態別の比率も紹介
a month ago
「介護職の離職率はどのくらい?」と疑問に思っている方もいるでしょう。公益社団法人介護労働安定センターによると、2023年現在、介護業界全体の離職率は13.1%となっています。この記事では、介護職の離職率について、職種別・施設形態別の比率や他職種との比較結果を紹介しています。離職率の高い職場か確かめる方法や、長く働ける施設を選ぶポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
介護業界の離職率はどのくらい?
公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、介護職員(訪問介護員含む)の離職率は、2023年度現在で13.1%でした。なお、同データの5年間の推移は以下のとおりです。
調査年度 | 訪問介護員と介護職員の離職率 |
---|---|
2019年度 | 15.4% |
2020年度 | 14.9% |
2021年度 | 14.3% |
2022年度 | 14.4% |
2023年度 | 13.1% |
参考:公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」
過去5年の推移を見ると、介護職の離職率は年々低下していることがわかります。
介護施設の形態別の離職率
介護職の離職率は、施設形態別にどのような違いがあるのでしょうか。公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、主な介護サービス別の介護職員(訪問介護員含む)の2023年度の離職率は、以下のとおりです。
介護施設の形態 | 訪問介護員と介護職員の離職率 |
---|---|
訪問介護 | 12.1% |
通所介護 | 13.4% |
地域密着型通所介護 | 13.5% |
特定施設入居者生活介護 | 17.8% |
認知症型同居介護施設 | 15.5% |
介護老人福祉施設 | 11.9% |
介護老人保健施設 | 11.8% |
全体 | 13.1% |
参考:公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」
介護施設別の離職率をみると、特定施設入居者生活介護や認知症型同居介護施設の離職率がやや高くなっています。
介護業界の職種別の離職率
介護施設では、介護職員以外にも介護支援専門員(ケアマネジャー)や看護職員など、さまざまな職種の職員が働いています。公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、介護施設における2023年度の職種別離職率は、以下のとおりです。
職種 | 離職率 |
---|---|
介護職員 | 13.6% |
訪問介護員 | 11.8% |
サービス提供責任者 | 7.1% |
生活相談員 | 8.1% |
看護職員 | 15.3% |
PT・OT・ST | 9.4% |
介護支援専門員 | 10.0% |
参考:公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」
介護施設で最も離職率が高いのは看護職員、ついで介護職員という結果になりました。看護職員は介護施設以外に病院・クリニックなど職場の選択肢が多いため、離職率が高いことが考えられます。
介護職員の年齢別離職率
公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、2023年度の介護職員(訪問介護員を含む)の年齢別離職率は、以下のとおりです。
介護職員の年齢層 | 離職率 |
---|---|
29歳以下 | 20.5% |
30~39歳 | 12.7% |
40~49歳 | 11.6% |
50~59歳 | 12.0% |
60~64歳 | 12.2% |
65歳以上 | 12.2% |
参考:公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」
離職率が最も高いのは29歳以下の年代となっており、それ以降の年代の離職率はほぼ変わりありません。転職したいと思った場合、年齢が若い方のほうがポテンシャル採用のチャンスがあり未経験分野にもチャレンジしやすいとされているため、若年層の離職率が高いと考えられるでしょう。
介護職と他職種の離職率の比較
厚生労働省「令和5年雇用動向調査結果の概要」によると、2023年現在、全産業平均の離職率は15.4%、医療、福祉分野の離職率は14.6%でした。
このデータは介護だけでなく、医療分野と福祉分野が含まれている数値となっていますが、参考として考えても、介護分野の離職率は全体の離職率よりやや低いと考えられます。
介護職の離職率が高いといわれる理由
ここまで介護職の離職率のデータをみて、ほかの業種や職種と比べても、介護職の離職率が特別に高いわけではないことがわかりました。では、なぜ介護職は離職率が高いといわれてしまうのでしょうか。理由をまとめました。
勤務が不規則・休みが取りにくい
介護職は、勤務が不規則で休みも取りにくい一面があり、離職率が高いといわれる原因にもなっているようです。
特別養護老人ホームや介護老人保健施設など、入居型の介護施設では夜勤があります。介護職員は月に数回は夜勤に入ることになり、どうしても勤務が不規則になることも。そのうえ、施設内に常に利用者がいるため、週末やお盆・年末年始などの連休でも人手が必要です。そのため、休みが取りにくく、仕事とプライベートのバランスが取れないことを不満に感じて離職する介護職員もみられます。
なお、介護施設の中にはデイサービスや訪問介護など、日勤のみの施設形態もあります。勤務の不規則さに悩む介護職員は、日勤のみの施設を選ぶことで、悩みを解決して介護職を続けられるでしょう。
給与に対する不満がみられる
介護職員には、仕事内容と給与がみあわないと感じて離職する人も多くいます。
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、全職種の年収(きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額)の平均は、515万1,372円、同調査における介護職員(医療・福祉施設等)の平均年収は371万3,800円でした。介護職は専門職でありながら、全職種の平均より大幅に給与が低い現状になっています。
力仕事があるうえ、日々忙しく働いていても平均より給与が低い場合があり、「割に合わない」と感じて離職する人もいるようです。
仕事量・内容への不満がみられる
仕事量や仕事内容への不満があり、介護職員を辞めてしまう人もいます。
「毎日忙しくて疲弊している」「トイレ介助やおむつ替えが苦手」など、仕事自体に不満を持っていると、仕事を続けるほどに不満が溜まってしまうでしょう。
特に「忙しさ」に関しては、介護職は以前より人手不足が叫ばれています。新しい人を雇ってもすぐに人手不足が解消できず、忙しさに疲弊した人がさらに辞めていく、という悪循環が起きているケースもあるようです。
人間関係に悩んで辞める人もいる
職場の人間関係に悩み、離職してしまう介護職員もいるようです。
介護職は、施設内の職員が協力して利用者のケアを進めていく必要があり、職員間のチームワークや円滑なコミュニケーションが求められます。そのため、職員で合わない人がいると、仕事を進めるうえで大きなストレスとなり、退職してしまう人も珍しくありません。
また、同僚だけでなく、利用者やその家族への接し方に難しさを感じ、辞めてしまう人もいます。
施設の経営方針と考えが合わない
勤務している施設や法人の経営方針と自分の考えが合わず、仕事を続けるのが嫌になって離職する人もいるようです。
たとえば、じっくりと利用者一人ひとりとの交流を大切したいと思っていたとします。しかし、施設の方針が人員配置ぎりぎりまで利用者を受け入れる方針であれば、日々のケアをこなすのに精一杯で、自分の理想とする介護ケアが提供できないことに、不満やストレスを感じるでしょう。
介護の離職率が高い職場か知る方法・チェックポイント
公益社団法人介護労働安定センター「令和5年度介護労働実態調査結果」によると、介護職員(訪問介護員含む)の離職率を個別事業者ごとにみてみると、2023年現在、離職率が30%以上の事業所が全体で13.1%ありました。せっかく転職した職場が離職率が高い職場であれば、また離職してしまうことになるかもしれません。離職率の高い職場かどうかを知るには、どのような点に着目するのが良いでしょうか。
なお、介護施設ごとに個別に離職率を知りたい場合は、厚生労働省「介護事業所・生活関連情報検索」を利用すると良いでしょう。事業所を検索し、個別の詳細情報を見ると、前年度の退職者数が掲載されています。退職者数を職員数で割ることで、離職率を求められます。
応募時のチェックポイント
介護の求人を選ぶときに離職率が高い職場かどうか、応募時に知れるチェックポイントを紹介します。
求人が常に出ているか
常に求人を出している介護施設は、職員の入れ替わりが激しく、常に人手不足になっていて離職率が高い可能性があります。特に、人間関係や職場環境の悪さという要因が隠れている場合があるでしょう。
また、「新規施設オープンのため」「入居者棟増設のため」などの明確な理由が記載されていないのに、採用人数が多い求人も、上記と同様の要因が隠れている恐れがあります。元々の離職率が高いため、人が辞めることを見越して最初から定員以上の人数を採用するケースもあるため、注意が必要です。
提示されている給与が高過ぎないか
相場よりも給与が高過ぎる求人は、一見、高収入が見込めて良い求人にも思えますが、離職率が高い職場であることが疑われます。
高給与に設定している理由として、すぐに人材を補充したいため、条件を良くしているケースがあるようです。時間外労働が多く、みなし残業代を給与に含めて金額を高く表示している求人もあります。
待遇の詳細が記載されているか
求人に具体的な情報が記載されているかも、チェックしておきましょう。給与や休暇だけでなく、勤務時間や残業の状況、各種手当なども記載があるかを見ておきます。
項目の多くが「要相談」や記載されていない場合は、応募の前に電話やメールで施設に確認するのがおすすめです。詳細の記載がない求人に応募すると、採用されてから「自分の希望する条件と違った」と後悔してしまうことも珍しくありません。
面接の質問や所要時間は適切か
面接の質問内容や面接の所要時間で、離職率の高い職場かチェックできる場合もあります。離職率の高い職場は人手不足なので、「とにかく今すぐ採用したい」という思いがあり、志望動機や簡単な質問のみですぐに面接が終わるケースがみられます。中には、面接の最後に「明日から来てください」と言われることも。
「内定をもらった!」とその場で合意するのではなく、本当に自分の能力や経験を評価してもらった結果の内定なのかを見極めて、内定を受けるか考えるようにしましょう。
また、人間関係の悪い職場では、圧迫面接のようにきつい態度で質問をしてきたり、勤務に直接関係のないことを聞いてきたりすることもあります。面接官は入職後に自分の上司になることがほとんどですので、面接官の態度に違和感を覚えた場合も、そこで働けるか今一度考えてみましょう。
施設見学時のチェックポイント
介護施設に転職するときには、施設見学ができることもあるでしょう。実際の施設を見て、離職率の高い職場なのかチェックできるポイントを紹介します。
施設は清潔に保たれているか
施設見学のときは、施設の清潔感やにおいを確認しましょう。掃除が行き届いていない施設は衛生管理が低いか、掃除をする時間が取れないほどの人手不足の可能性があります。不快なにおいがしている施設は、汚物処理や管理に問題があることも。職場が汚れているとストレスになるだけでなく、感染症にかかる恐れもでてきます。
職員は明るく働いているか
施設見学のときは、職員の雰囲気をみるチャンスです。職員の表情や利用者に対する態度、声掛けなどを見てみましょう。忙しい職場でも雰囲気の良い職場では、職員が笑顔で明るく働いている光景がみられます。利用者に接するときも笑顔がない職員が多く、雰囲気が暗い場合は、過重労働や人間関係が良くない職場であることが考えられます。
職員は親切に接してくれるか
施設職員が見学に来ている自分に対してどのような態度で接してくるかも、重要なチェックポイントです。利用者には明るく接していても、自分に対して冷たい態度をとる職員がいたら、一緒に働くことになったときに良い人間関係は築けないかもしれません。見学を率いている職員ではなく、可能であれば勤務中の職員に質問してみるのも良いでしょう。
離職を防ぐ!介護施設を選ぶポイント
離職率の高い職場かどうかチェックするポイントに加えて、介護施設を選ぶポイントも解説します。
自分が希望する条件に優先順位をつける
介護施設を選ぶときには、自分が希望する条件に優先順位をつけると、求人を絞りやすくなります。
働き方や給与など、働くうえで何を一番の条件にするかは人によって異なるでしょう。あれもこれも叶えたいと思いながら求人を見ていては、希望の求人が絞れないことも。
まず、自分が最も優先したい条件を1~2つ決めて、その条件だけで求人を絞り込むようにしましょう。自分が最も優先したいと思う条件に当てはまる職場であれば、ほかの条件が希望通りにいかなかったとしても、職場に対する満足度が高いため、長く勤められる可能性が高まります。
職場の情報を集める
離職を防ぐには、就職前に職場の情報を集めることも重要です。求人情報だけを鵜呑みにするのではなく、Webサイトを見たり施設見学をしたりして、職場に関する情報を集めましょう。しっかりとリサーチしてから職場に入ることで、入職前とのギャップが生じることを防げます。
施設見学に行ける場合は、ただ案内された場所を見るだけでなく、自分から質問をするのがおすすめです。質問をすることで情報収集になるだけでなく、意欲も見せられます。
介護職員の離職率は2023年度で13.3%と低下傾向
- 介護職員の離職率は2019年度から2023年度にかけて低下している
- 介護職員は他職種と比べて離職率が特段高いわけではない
- 介護職員は勤務の不規則さや仕事量・内容の不満から離職率が高いといわれる
- 介護の離職を防ぐには、希望条件を絞り施設の情報を集めることが大切
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