職種・資格情報
胚培養士とは?仕事内容や資格について紹介
2 months ago
「胚培養士とはどのような職業?」と疑問に思う方もいるでしょう。胚培養士とは、精子と卵子を取り出して受精させ培養する、といった体外受精の一連の作業を担当する専門職で、不妊治療の領域で活躍しています。この記事では、胚培養士の仕事内容や資格についてご紹介。胚培養士に向いている人の特徴にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
胚培養士とは
胚培養士とは、「胚」を取り扱う専門職で、不妊治療の分野で活躍しています。体外で精子と卵子を受精させ、母体に戻すまでの一連の業務が胚培養士の仕事です。産婦人科領域の知識や高い技術、不妊治療に関する高い倫理観が求められます。
胚培養とは
胚培養とは、胚(受精卵)を育てることです。妊娠を希望する女性が妊娠するために利用できる医療技術のことを、生殖補助医療(ART)と呼びます。ARTには複数の手法がありますが、精子と卵子を体外に取り出し、体外で受精させて育てて母体に戻す手法を取る場合は、胚培養が必要です。
胚培養士の仕事内容
胚培養士の仕事は前述のとおり、採取した卵子を受精させ、母体に戻すまでの一連の作業を担当します。具体的な仕事内容は以下のとおりです。
- 検卵
- 精液の検査・洗浄
- 精子・受精卵の凍結保存・融解
- 人工授精
- 体外受精
- 顕微授精
- 受精確認
- 医師の処置補助(採卵・胚移植)
- 患者への説明・ヒアリング
胚培養士は培養室で作業するだけではなく、患者に現在の胚の育成状況を説明することもあります。母体から卵子を採卵する処置と、受精した胚を母体に移植する胚移植は医師が行うことが定められていますが、処置の補助として胚培養士が付き添うこともあるようです。
胚培養士になるには?
胚培養士は、ARTを行っている医療機関に勤務し、胚培養業務に就くことでなれます。胚培養士は学会の認定資格のみが存在しており、2024年現在、国家資格はありません。そのため、資格がなくても胚培養士として働くことは可能です。認定資格の申請要件として臨床実務経験を問われるため、資格を取るまでは無資格の状態で実務経験を積むことになります。
しかし、実際には医療系の資格を持っていない人が胚培養士になるケースはあまりありません。産婦人科領域やARTに関する専門知識が必要であるため、医師や看護師、臨床検査技師が胚培養士として働くことが多いようです。
後述する生殖補助医療培養士の申請要件には、規程学部の大学の学士を取得していることが含まれています。規程学部には医療系の看護学部や薬学部、医療技術学部だけでなく、農学部や畜産学部、生物生産学部なども含まれており、動物の生殖について学んできた方も胚培養士を目指せるのが特徴です。胚培養士を目指す人に向けて専門学科を設けている養成機関もあり、胚培養士になるためのルート整備は年々進んできているといえるでしょう。
胚培養士の資格
前述のとおり、胚培養士には国家資格はなく、資格を持っていなくても業務はできますが、知識や技能を証明する民間資格があります。ここでは、胚培養士の民間資格を2つご紹介します。
生殖補助医療胚培養士
生殖補助医療胚培養士は、日本卵子学会が認定している胚培養士の資格です。胚培養士として多くの人が最初に取得を目指す資格になります。
以前は、日本臨床エンブリオロジスト学会が認定する「臨床エンブリオロジスト認定資格」という認定資格もありました。しかし、2023年度で臨床エンブリオロジスト認定資格は生殖補助医療胚培養士と統合されることになり、2024年度現在は生殖補助医療胚培養士が現存している状況です。
日本卵子学会「2024年度第23回生殖補助医療胚培養士資格認定制度 資格審査のお知らせ」によると、生殖補助医療胚培養士の資格申請要件は、以下の条件をすべて満たす者と規定されています。
- 日本卵子学会の会員で会費を全納していること
- 規程の学科・学部において生殖生物学関連の単位・科目を修得した修士・博士・学士もしくは専修学校で生殖生物学関連の科目を修得した臨床検査技師または正看護師の資格を有する者
- 生殖補助医療胚培養士資格認定講習会を受講していること
- 日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設において、1年以上の臨床実務経験(ヒト体外受精・胚移植のラボワークの全ての工程を30例以上実施している経験)を有していること
- 生殖補助医療に対して高い倫理観と品位を有していること
- 日本卵子学会学術集会あるいは日本卵子学会主催講習会、もしくは関連する学会大会に最近1年以内に2回以上参加していること
生殖補助医療胚培養士の申請要件に含まれる講習会は、ヒト生殖医学の基礎知識や受精卵・胚の取り扱いなどの基礎講習、最近のトピックスに関する解説が行われます。2024年はe-ラーニングにて実施されました。
資格申請を通過すると、試験を受験できます。試験は筆記試験と口述試験で構成されており、例年、筆記試験の翌日に口述試験が実施されています。筆記試験の出題範囲は、ヒト生殖医学の基礎知識・実技内容・倫理に関する内容です。口述試験は、3名の試験官から面接形式で15分程度、実地に関することを問われます。資格の取得後は5年ごとに申請を行い、資格更新が必要です。
生殖補助医療管理胚培養士
生殖補助医療管理胚培養士は、日本卵子学会と日本生殖医学会が共同で認定している資格です。生殖補助医療胚培養士の上位資格として位置づけられており、生殖補助医療胚培養士より資格取得のハードルが高くなっています。
日本卵子学会「生殖補助医療管理胚培養士資格認定審査規則」によると、資格申請要件は以下の条件をすべて満たす者と規定されています。
- 日本卵子学会と日本生殖医学会の会員であること
- 日本産科婦人科学会の体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設で、5年以上生殖補助医療胚培養士としての臨床経験があり、資格取得後も継続して生殖補助医療の業務に携わる者であること
- 博士の学位を取得した者で、最近5年以内に生殖に関わる学術論文を3編以上(うち2編以上は筆頭著者であること)学会誌等に発表していること、修士の学位を持つ者については生殖補助医療胚培養士認定委員会が博士号取得者と同等以上であると判断した者であること
- 生殖補助医療に関する高度な知識と能力(培養士の設計・維持及び管理・胚培養士の指導並びに臨床医師への適切な助言など)ならびに倫理観を有していること
- 日本卵子学会学術大会に最近5年間で2回以上参加していること
- 日本卵子学会学術大会あるいは関連する学会に最近5年以内に5回以上発表していること
- 生殖補助医療胚培養士認定後あるいは更新後に少なくとも1回は日本卵子学会主催の「倫理」に該当する講習を受講していること
資格取得にかかる審査は、書類審査と口述試験です。書類審査として提出する書類の中には、最近5年間に実施した200症例について記載する症例記録が含まれており、資格取得のハードルの高さが伺えます。口述試験は、30分から1時間弱程度行われるようです。
資格更新の仕組みは生殖補助医療胚培養士と同じで、5年ごとの更新が必要となります。
胚培養士に向いている人
胚培養士にはどのような人が向いているのでしょうか。
不妊治療の仕事に携わりたい人
不妊治療の仕事に携わりたい人は、胚培養士に向いています。胚培養士は、自分の仕事によって生命誕生を直接的に手助けできる職業です。患者と直接かかわる機会もあり、患者が無事妊娠できたときは、一緒に喜びを共有できます。一方、命を扱う仕事のため、精神的なプレッシャーを感じることもあるでしょう。その分、やりがいの大きい仕事といえそうです。
細かい作業が得意な人
胚培養士は、細かい作業が得意な人にも向いています。胚培養士は、顕微鏡を覗きながら シャーレやピペットを持ち、裸眼では見えない世界で作業を行うためです。集中して細かい作業を行うのが得意な人は、技術の習得も早いでしょう。
胚培養士とは体外受精などを行う不妊治療の専門職
- 胚培養士は不妊治療の専門職として受精卵の培養をサポートしている
- 胚培養士の仕事は、胚培養や人工授精、患者への説明など
- 胚培養士の国家資格はなく、学会の認定資格を取得することで技術の証明になる
- 胚培養士には不妊治療に携わりたい人、細かい作業が得意な人が向いている
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