職種・資格情報
鍼灸師の資格を取るには?試験の概要や仕事内容を紹介
6 months ago
「鍼灸師の資格はどうしたら取れる?」と疑問に思う方もいるでしょう。鍼灸師の資格は、正式には「はり師・きゅう師資格」という国家資格です。そのため、鍼灸師の資格を取るには国家試験に合格する必要があります。この記事では鍼灸師資格の試験概要や合格率を解説。鍼灸師の仕事内容や勤務場所、年収についても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
鍼灸師とは?
鍼灸師とは、身体にあるツボに刺激を送る「はり」や「きゅう」を用いて、治療を行う専門職です。ツボを刺激する治療法は東洋医学に基づいたもので、患者の身体の不調や痛みに対応したツボを刺激することで、自然治癒力を高めるといわれています。はりときゅうではツボを刺激する方法が異なり、はりはツボにはりを刺して、きゅうはツボを温めて刺激する治療法です。
はり治療に使用するはりの太さは直径0.1~0.3mm程度で、刺しても痛みはほとんど感じないといわれています。はりを刺してすぐ抜いたり、刺したまま数十分放置したりするだけでなく、はりに電気を流す治療法などもあるようです。
きゅうは、ヨモギの葉でできている「もぐさ」を、ツボの上で温める治療用具を指します。ツボの上で直接もくざを燃やす方法や、肌の上にのせた土台の上でもぐさを燃やす方法などがあるようです。
鍼灸師の資格について
よく「鍼灸師」という言葉が使われますが、実は「鍼灸師」という資格はなく、「はり師資格」「きゅう師資格」という別々の資格になります。両方の免許を持って働いている方が多いため、まとめて「鍼灸師」と呼ばれるようになったようです。
ここでは、鍼灸師になるために必要なはり師・きゅう師の資格についてみていきましょう。
はり師・きゅう師試験の受験資格
はり師・きゅう師の試験を受けるには、受験資格を得ることが必要です。
厚生労働省「はり師国家試験の施行」、厚生労働省「きゅう師国家試験の施行」によると、はり師・きゅう師の受験資格を得るには、厚生労働省に認定された養成施設(専門学校や大学、短大)にて、はり・きゅうに関する手技や技術を3年以上学ぶ必要があります。
ツボは、患者の身体に触れれば探り当てられるので、はり師・きゅう師の資格は視覚障がいがある方の取得も多い資格です。視覚障がい者がはり師・きゅう師の資格を得るには、盲学校や視力障がいセンターなどで5年間の教育を受ければ受験資格が得られます。
はり師・きゅう師試験の概要
はり師・きゅう師の資格は、どちらも国家資格です。はり師・きゅう師の資格試験は、年に1回同じ日に実施されます。例年、2月下旬に試験があり、3月下旬に合格発表です。試験は四肢択一形式の筆記試験のみで、実技試験はありません。
厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第31回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第32回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」によると、2022~2024年実施分では、170点満点中、102点以上(6割)正答で合格となっています。
はり師・きゅう師試験は同時受験が可能となっており、同時受験の場合は共通科目の片方が免除される仕組みです。
はり師・きゅう師試験の合格率
厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第31回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第32回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」によると、2022~2024年実施分のはり師・きゅう師試験の合格率は以下のとおりです。
実施年 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|---|
はり師 | 2022年(第30回) | 3,982名 | 2,956名 | 74.2% |
2023年(第31回) | 4,084名 | 2,877名 | 70.4% | |
2024年(第32回) | 4,176名 | 2,892名 | 69.3% | |
きゅう師 | 2022年(第30回) | 3,982名 | 2,963名 | 76.1% |
2023年(第31回) | 4,010名 | 2,875名 | 71.7% | |
2024年(第32回) | 4,111名 | 2,887名 | 70.2% |
引用:厚生労働省「第30回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第31回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」、厚生労働省「第32回あん摩マッサージ指圧師、はり師及びきゅう師国家試験の合格発表について」
はり師ときゅう師は同時受験が可能のため、それぞれの受験者数にあまり差がありません。合格率も例年7割前後で推移しています。
鍼灸師とほかの資格との違い
はりやきゅうと同じ治療院で行われることが多い指圧や整復療法は、鍼灸師とは別の資格が必要です。中には、はり師・きゅう師と合わせて資格を持っている方もいます。ここでは、鍼灸師とほかの資格との違いについてみていきましょう。
あんまマッサージ指圧師
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「あんまマッサージ指圧師」によると、あんまマッサージ指圧師は、痛みやこりがある患部に押す・揉む・叩くといった指圧・マッサージを施す専門職です。指圧手技やマッサージは、コリをほぐして血行を良くしたり、体のゆがみを矯正したりする効果が期待でき、整骨院やリラクゼーションサロン、出張サービスなどで施術が行われています。
なお、あんまマッサージ指圧師も国家資格です。あんまマッサージ指圧師になるには、養成施設で3年以上の課程を修了し、国家試験に合格する必要があります。
柔道整復師
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「柔道整復師」によると、柔道整復師とは、スポーツや日常生活で生じた打撲・捻挫・脱臼・骨折に対し、骨の損傷や関節のずれを手技で正常な状態に戻す専門職です。ギプスやテーピングで患部を固定したり、手技療法や運動療法、温熱を用いた手技を行ったりします。
柔道整復師が働く職場は、整骨院や接骨院、スポーツジムなどが多いようです。柔道整復師も国家資格で、養成機関で3年以上の課程を修了した上で、国家試験への合格が必要となります。
鍼灸師の仕事内容
鍼灸師の仕事は、はりを刺す・きゅうを据えるだけではありません。ここでは、鍼灸師の仕事内容について紹介します。
カウンセリング・受付
鍼灸師は治療院に訪れた患者に対し、施術の前にカウンセリングを行って、どのような施術を行うべきかを決定していきます。特に初診患者の場合は、現病歴・既往や生活習慣、要望などの詳細なカウンセリングが行われるようです。
また、受付専任のスタッフがいない治療院であれば、予約管理や電話対応、問診票の記入の案内などの受付業務を行うこともあります。
鍼灸治療
鍼灸師の主な仕事は患者の身体の痛みやコリ、不調の改善のためにはり・きゅうを用いた施術を行うことです。はりを刺す・はりから電気を流す・きゅうでツボを温めるなど、患者の症状に応じた方法で適切なツボを刺激します。治療院によっては美容鍼灸や不妊鍼灸、スポーツ鍼灸といった専用メニューが用意されているケースもあり、鍼灸師はメニューにのっとって施術を行うこともあるようです。
そのほかの治療
鍼灸メニューのある治療院では、はりやきゅう以外の治療や施術を提供しているケースも珍しくありません。電気パッドからコリや張りのある筋肉に電気を流す治療や、テーピングやベルトなどを用いた固定療法、カイロプラクティックなどスタッフの保有資格によって、治療院ごとに異なる施術が提供されます。鍼灸師以外の資格を合わせ持っている方は、様々な施術を行っている治療院でもおおいに活躍できるでしょう。
鍼灸師の資格が活かせる場所
鍼灸師の職場といえば鍼灸院を思い浮かべる方も多いでしょう。しかし、鍼灸師が活躍できる職場は鍼灸院だけではなく、職場により求められる施術が異なる場合もあります。
鍼灸院・接骨院・整骨院
鍼灸院とは、鍼灸をメインで扱う治療院のことです。鍼灸以外の施術を行う機会が少ないため、鍼灸師としてのスキルを存分に発揮できるでしょう。また、肩こりや骨折などの治療を行う接骨院や整骨院に、鍼灸メニューがあるケースもあります。接骨院や整骨院に勤める鍼灸師は、あんまマッサージ指圧師や柔道整復師の資格を持っているとより活躍できるでしょう。
訪問治療院
訪問治療院とは、高齢者・障がい者の自宅や入居中の施設に訪問し、施術を行う治療院のことを指します。一人もしくは少人数で訪問するため、鍼灸師以外の資格も持っていると、優遇されやすいようです。また、移動のために運転免許証が必須要件となる場合もあります。
医療機関
病院や診療所などの医療機関にも、鍼灸師の活躍の場があります。整形外科やリハビリテーション科に勤務し、身体に痛みがある患者や筋肉・関節がうまく動かない患者へ施術を行って、改善をはかるのが鍼灸師の役目です。
美容鍼灸サロン
はりやきゅうには、美容効果やリラクゼーション効果も期待されているため、美容サロンで働く鍼灸師もいます。美容サロンでは、肌質改善や小顔効果、シワ改善を狙った施術を行うことが多いようです。また、上記で紹介してきた治療院に比べて、接客によりホスピタリティを求められることが多いでしょう。
鍼灸師の年収
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「はり師・きゅう師」によると、2022年のはり師・きゅう師の年収は443.3万円となっています。実際のはり師・きゅう師の年収は職場やスキルなどによって異なりますが、同資料では年齢が上がるにつれて年収も上がる傾向があるため、経験を積むことで給与アップを図れる可能性があるでしょう。
はり師・きゅう師は、経験を積めば独立開業も可能のため、開業することでより収入を上げることも可能です。
鍼灸師のやりがいや魅力は?
鍼灸師の仕事には、どのようなやりがいや魅力があるのでしょうか。
患者の体調が良くなる姿を間近に見られる
鍼灸師の何よりのやりがいは、自分の手で施術した患者の体調が良くなる姿を間近で見られることでしょう。患者の中には慢性的な症状に悩まされていたが、施術後すぐに効果が現れて症状が改善したという方もいるようです。患者から感謝の言葉をかけてもらうこともあり、日々の仕事のモチベーションにも繋がります。
全身の症状に対応できる
医療機関では整形外科や神経内科、循環器内科など、部位や症状により診療科が分かれていますが、鍼灸師は1人で全身の症状に対応可能です。全身にあるツボは、あらゆる臓器や症状の改善に繋がっています。鍼灸師であれば、膝の痛みと末端冷え性のように、医療機関では診療科が分かれてしまうような症状にも、1人で対応できるのが魅力です。
年を重ねても仕事が続けやすい
鍼灸師の仕事は、年を重ねても続けやすい仕事といえるでしょう。鍼灸師は仕事中に走ったり、強い力が必要になったりということがほぼありません。1日中施術を行うという点では体力が必要になるかもしれませんが、ツボを探り当てるスキルと、はりを刺す・きゅうを据えるといった手技で仕事ができます。経験を重ねることで身に付いたスキルを、より長く仕事に活かせるでしょう。
ほかの施術との融合性が高い
前述のとおり、鍼灸メニューを取り入れている接骨院・整骨院があるなど、はり・きゅうはほかの施術との融合性が高いという魅力もあります。中にはエステやアロマテラピーの施術とはり・きゅうの施術を融合した店舗もあるようです。仕事をしながらはり・きゅう以外のスキルも磨くことができ、仕事の幅を広げられるでしょう。
独立開業の道もある
鍼灸師は経験を積んでスキルを高めることで、独立開業することもできます。開業にはリスクもありますが、自分が理想とする治療を提供する治療院を作ることが可能です。うまくいけば年収アップも叶うでしょう。
鍼灸師の資格ははり師・きゅう師資格という国家資格
- 鍼灸師の資格ははり師資格・きゅう師資格という別々の資格になっている
- 鍼灸師になるには養成機関で3年以上の課程を修了後、国家試験の合格が必要
- 鍼灸師は鍼灸院だけでなく、接骨院・整骨院や医療機関、美容サロンでも働いている
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