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ICFとは?分類構成や評価の方法を解説

介護職・ヘルパー正看護師4 months ago

「ICFとは?」と疑問に思っている方もいるでしょう。ICFとは、世界保健機関(WHO)が制定した健康状態を把握・評価する分類方式です。この記事では、ICFの分類構成や評価方法について解説しています。ICIDHとの違いやICFを看護・介護現場で活用する方法についても触れていますので、ぜひご覧ください。

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ICFとは

ICFとは、「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略で、 世界保健機関(WHO)により、2001年5月に採択された「国際生活機能分類」のことです。

厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」によると、ICFは人間の生活機能と障がいに関して、健康状況と健康関連状況を記述するための標準的な言語と枠組み、と定義されています。対象者の疾患や生活状況などについて、アルファベットと数字を組み合わせた方式で表記する、世界共通の分類方式です。

ICFが誕生し、利用されるようになった目的について、厚生労働省「第1回 社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会資料」では、「生きることの全体像を示す共通言語」であると記載されています。具体的な目的は以下のとおりです。

  • 健康に関する状況、健康に影響する因子を深く理解するため
  • 健康に関する共通言語の確立で、さまざまな関係者間のコミュニケーションを改善するため
  • 国、専門分野、サービス分野、立場、時期などの違いを越えたデータの比較を行うため

ICFでは、対象者自身や身の回りの人・モノ・環境について細かく分けて考え、それぞれが良好か重症かの情報も付与して表します。そのため、既往や現状を細かく分析することで、今行うべきケアや今後の目標をより明確にとらえることがICFを使用する目的です。
看護や介護の現場で活用できるのはもちろん、世界共通の分類であることを活かして、地域や国を越えた比較もできます。

ICFとICIDHの違い

2001年にICFが誕生する前、障がいに関する国際分類は、世界保健機関が1980年に「国際疾病分類(ICD)」の補助として発表した「国際障がい分類(ICIDH)」が使用されてきました。
厚生労働省「第1回 社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会資料」によると、ICIDHの分類は疾患・外傷に限られていたとあります。厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」では、これまでのICIDHは身体機能の障がいによる生活機能の障がい(社会的不利を分類する)という考え方が中心であった、という記載です。

ICIDHは、疾病や障がいがある人だけを対象とした構成になっており、「社会的不利」という文言からも、対象者のマイナス面だけに着目しているという声があがりました。疾病を抱えていることや、「できないこと」にのみ着目した分類となっていたのです。

そこで、「疾病や障がいに関わらず、すべての人に使用できる分類を作成しよう」と、ICIDHを改良して作られたのがICFでした。ICFでは妊娠・加齢・ストレス状態などの広い概念が追加され、「できる」機能や能力といったプラス要素も含まれています。

また、ICIDHにはなかった「背景因子」の概念も追加されました。対象者そのものの問題だけでなく、対象者の周りの人・モノ・環境や、利用できる公的制度、コミュニティへの参加状況などを評価することで、包括的に対象者の状況を理解するためです。

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ICFの構成要素

ICFは、健康状態と生活機能、背景因子の3要素から構成されています。それぞれの要素には相互関係が存在しており、相互作用は双方向性です。ここでは、厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」、厚生労働省「第1回 社会保障審議会統計分科会生活機能分類専門委員会資料」をもとに、ICFの構成要素について紹介します。

健康状態

健康状態は、疾病や身体の変調、ケガなどを指します。ストレスや先天異常、遺伝的素質も含まれる項目です。妊娠や加齢など病気や障がいとされない要因も含まれ、対象者の状況を広くとらえられる作りになっています。

生活機能

生活機能は、心身機能・身体機能と活動、参加の3つに分けられます。

心身機能・身体構造

心身機能は、身体の生理的機能・心理的機能を指します。手足の動きや精神の働き、内臓の動きなどのことです。疾病やケガに着目した要素であり、「左目に軽度白内障あり」のように表記されます。

身体構造は、器官・肢体とその構成部分などの身体の解剖学的部分のことです。手足などの身体の部分や心臓の弁などの状態を指し、「右手麻痺あり」のように表記します。

心身機能や身体機能に問題がある状態は、「機能障害」があると評価されます。機能障害とは、著しい変異や喪失などといった、心身機能または身体構造上の問題のことです。

活動

ICFにおける活動とは、個人による課題や行為の遂行を指します。
歩けることやADL(日常生活行為)が自立しているということだけでなく、調理や掃除などの家事をすることや仕事に行くこと、趣味やスポーツなどの余暇を楽しんでいることも「活動」の評価対象です。具体的には、自宅で自炊している、外出時は車いすを使用するなどといった情報になります。 また、活動はできる活動(能力)と、している活動(実行状況)に分けて考えるのが特徴です。

何らかの原因で活動が阻害されていたり、個人が活動を行うときに難しさが生じていたりする場合は、「活動制限」があると評価します。

参加

ICFにおける参加とは、生活・人生場面への関わりや、家庭や社会に関与し、そこで役割を果たすことです。社会参加や趣味の会への出席、文化的・政治的・宗教的な集まりに参加していることを指します。組織やコミュニティの中で役割が与えられている場合も参加として考えられ、主婦や親としての家庭内役割や職場での役割、地域組織内の役割も評価対象です。職場のOB会に月1回のペースで参加している、リウマチがひどくなってからは家にこもりがちになった、といった情報は「参加」に含まれます。

個人が何らかの生活・人生場面に関わるときに経験する難しさを感じている場合、もしくは実際に参加に至っていない場合は、「参加制約」がある状態だと評価されます。

背景因子

背景因子は、個人の人生と生活に関する背景全体を指す要素です。背景因子は、環境因子と個人因子に分かれます。

環境因子

環境因子は、人々が生活し、人生を送っている物的な環境や社会的環境を指します。一般的に「環境」と呼ばれる対象だけでなく、対象者本人や身の回りの人の態度も含まれているのが特徴です。環境因子はさらに個人的な因子と、社会的な因子に分かれます。
 
個人的な因子は、家庭や職場、学校などの場面を含む個人にとって身近な環境のことです。物的・物質的環境や他者との直接的な接触を含みます。家の中に段差が多い、妻と娘と同居しており日常的に支援が受けられる、といった要素です。

社会的な因子は、コミュニティや社会における構造やサービス、全般的なアプローチ・制度であり、個人に影響を与えるものとされています。建物や道路、自然環境も社会的な因子の一部です。週に3回デイサービスを利用している、家の前の歩道が狭い、といった要素を指します。

個人因子

個人因子は、個人の人生や生活の特別な背景であり、健康状態や性別・年齢などの健康状況以外の特徴からなります。「個性」に近い要素といえるでしょう。
ライフスタイルや趣味・嗜好、習慣といった項目や、社会的背景や過去および現在の経験、教育歴も含まれます。性格や個人の心理的資質といった要素も評価対象です。

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ICFの書き方

前述のとおり、ICFは「b167.3」のように、アルファベットと数字を組み合わせて記載できます。記載方法は「コード」と「評価点」を組み合わせた方式で、コードと評価点は必ずセットで記載しなければなりません。ここでは、ICFの記載方法について、コードと評価点に分けて紹介します。

コード

ICFの記載のうち、小数点より前の部分は「コード」と呼ばれます。コードの最初の1桁目は構成要素を示すローマ字、その後ろは数字3桁となっている作りです。構成要素に対応するローマ字と、コード例は以下のとおりとなっています。

一桁目
構成要素
コード例
b 心身機能 b410…心機能 b710…関節の可動性の機能
s 身体構造 s110…脳の構造 s430…呼吸器系の構造
d 活動・参加 d310…話し言葉の理解 d450…歩行
e 環境因子 e310…家族 e540…交通サービス・制度・政策

構成要素下に数字が振られており、さらに詳細な項目に分化していく仕組みです。

評価点

評価点は、コードで示した要素の性状や評価を表したもので、小数点の後ろの数字のことです。左側から第1評価点、第2評価点と数えます。
第1評価点は「共通評価点」と呼ばれ、どのコードでも共通して問題の重症度を表します。xxx.0は問題なし、xxx.1は軽度の問題、xxx.3は重度の問題というように、0から9までの10段階です。たとえば、心身機能において心機能(b410)に重度の問題がある場合は「b410.3」と表現します。

厚生労働省「ICFの概念図とコードの概念」によると、評価点は構成要素により長さが異なり、心身機能(b)と環境因子(e)は第1評価点のみ、身体構造(s)は第3評価点までです。活動・参加(d)は第2評価点までで、第3・4評価点は任意評価となっています。

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ICFの看護・介護現場での活用方法

ICFの実用的な活用について、厚生労働省「『国際生活機能分類-国際障害分類改訂版-』(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について」には以下のように記載されています。

  • ICFの活用により、障がいや疾病の状態についての共通理解を持てる(臨床ツールとしての活用)
  • 障がい者に向けたサービスを提供する施設や機関などで行われるサービスの計画や評価、記録などのために実際的な手段を提供できる(社会政策ツール、教育ツールとしての活用)
  • 障がい者に関するさまざまな調査や統計について比較検討する標準的な枠組みを提供できる(統計ツール、研究ツールとしての活用)

ICFは、国や都道府県、市町村では統計ツールや社会政策ツールとして、看護・介護の現場では臨床ツールや教育ツールとしての使用が想定されています。

看護・介護の現場では、コードと評価点の表記を使用すると一目で情報が読み取れないため、ICFの構成要素のみを利用し、対象者のアナムネ作成やアセスメントに使用しているケースがあるようです。

実際に病院に入院する際や介護施設の利用を開始する際に用いられる、ICFを活用した基本情報の記載例は以下のとおりです。

健康状態
- 現病歴:アルツハイマー型認知症
- 既往歴:2型糖尿病、高血圧、2年前左大腿骨骨折に対し人工股関節置換術を実施
- 全体像:人工股関節施行後だが痛みがなく、自力で杖歩行できている。認知症の進行は比較的緩やかで、短期的な記憶障害や物忘れは見られるものの、妻のサポートもあり日常生活に大きな支障はないもよう。糖尿病と高血圧は内服管理で著変なし。
心身機能・身体構造
活動
参加
- 認知機能:短期的な記憶障害や物忘れがみられる、夜間の不穏やせん妄はなし
- 精神状態:物忘れを指摘された際に苛立ちや怒りを見せることがときどきあるが、ほとんどは穏やかに過ごしている
- 身体機能:上半身問題なし、手術をした左足は20cm以上は上がらないが、杖があれば歩行可能、総入れ歯でせんべいなどの固いものは食べられない
- 食事:箸を利用して自立、せんべいなどの固いものは食べられない
- 更衣:ズボンを履くときは妻の介助が必要
- 入浴:手すりのある浴室であれば自立
- 排泄:手すりのあるトイレであれば自立
- 移動:杖があれば自立、階段は手すりが必要
- 料理・洗濯:非実施
- 週に2回、コミュニティセンターでの集まりに参加して近所の人と会話を楽しんでいる
- 町内会の役員に就任しており、町内の清掃活動やイベントにはできる限り参加している
- 家庭では盆栽の管理と文鳥の世話を楽しんでいる
- 用事のない日は1日中テレビの前に座っていることもある
環境因子 個人因子
- 介護保険(要介護1)
- 自宅玄関前に手すりのない階段があり、家の中にも段差が多い
- 妻と同居しており、普段は妻のサポートが得られる、娘家族が近隣に住んでいるが未就学児がいるため援助を受けるのは難しい、息子は遠方に居住
- 町内会やコミュニティセンターに集まる人と友好的な関係を築けている
- 80歳男性
- 76歳の妻と2人暮らし
- 163cm/68kg
- 大卒後、営業職・管理職として40年勤務し定年
- 社交的な性格で、用事やイベントがあれば積極的に参加する
- 人に頼るのがやや苦手な傾向があり、妻のサポートを得ずに自分で解決しようとして失敗することもある

ICFに基づいて対象者を詳細に分析することで、的確な状態把握ができます。構成要素の間には相互関係があるため、それぞれの要素の評価できる点や今後の課題を整理することで、問題解消の糸口をみつけられることもあるでしょう。

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ICFとは健康状態を把握・評価するための分類方式

  • ICFとは世界保健機関が制定した国際生活機能分類で健康状態や障がいの程度を表す
  • ICFはICIDHに健康状態や背景因子を追加した分類で、できることも評価する
  • ICFは健康状態と生活機能、背景因子で構成され、それぞれ相互関係にある
  • ICFは看護・介護現場ではアナムネ作成やアセスメントを行うときに使用されている

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