職種・資格情報
診療放射線技師とは?仕事内容や国家試験、年収を解説
7 months ago
「放射線技師とはどのような職業?」と疑問に思う方もいるでしょう。診療放射線技師とは、放射線を使用する検査や治療を実施する医療系の専門職です。この記事では、診療放射線技師の仕事内容や勤務先、年収について解説しています。診療放射線技師の国家資格の合格率や、将来性についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
診療放射線技師とは?
診療放射線技師とは、医療機関で医師の指示に基づいて、人体に放射線を照射して検査・治療を行う専門職です。法律で定められている国家資格で、e-Gov法令検索「診療放射線技師法」によると以下のように定義されています。
- 「診療放射線技師」とは、厚生労働大臣の免許を受けて、医師又は歯科医師の指示の下に、放射線の人体に対する照射(撮影を含み、照射機器を人体内に挿入して行うものを除く。)をすることを業とする者
「放射線技師」「レントゲン技師」と呼ばれることもありますが、これらもすべて診療放射線技師のことです。英語で記載すると「Radiological technologist」であるため、「RT」と呼ばれることもあります。
被曝量が多いと人体に害をもたらすこともある放射線は、取り扱いに注意が必要です。そのため、医師と歯科医師、診療放射線技師だけが、人体に放射線を照射できることになっています。
一方、放射線を用いた検査や治療は、患者の身体を傷つけることなく患部の観察や加療ができるというメリットがあり、医療現場になくてはならない技術です。診療放射線技師は放射線を出す機器を安全に正しく取り扱うことで、適切な診断・治療に貢献しています。
診療放射線技師の仕事内容
診療放射線技師は、どのような仕事を行っているのでしょうか。
画像検査
診療放射線技師の仕事の多くを占めるのが、画像検査です。診療放射線技師は医師の指示を受けて、医療機器を操作し、患者の患部や全身を撮影します。画像検査といえば「レントゲン」を想像する方が多いかもしれませんが、レントゲンと呼ばれるX線撮影だけでなく、以下のような検査も施行しています。
- CT検査
- RI検査
- PET検査
- 超音波(エコー)検査
- 血管造影検査
- 消化管造影検査
- 骨密度検査
- 眼底検査
- 乳房X線撮影(マンモグラフィ)
診療放射線技師は放射線を出す検査だけを行うわけではなく、MRIや超音波検査の施行も業務範囲です。検査ごとに違う機器を使用するため、診療放射線技師はすべての機器の特性や操作を熟知する必要があります。
放射線治療のサポート
診療放射線技師は検査だけでなく、治療にも携われるのが特徴です。国立がん研究センターがん情報サービス「放射線治療」によると、放射線治療は、がんの部分に放射線をあてて治療します。
放射線治療を開始する際は、患者ごとに照射部位・照射量が医師から指示されます。診療放射線技師は医師の指示を受け、照射前のセットアップから治療までをサポートするのが仕事です。
検査・治療機器の管理
診療放射線技師はX線撮影やCT、MRIなど、日頃からさまざまな検査・治療機器を使用します。医療機器が安全に使用できるよう、点検・機器管理を行うのも診療放射線技師の重要な仕事です。
被曝管理
診療放射線技師は、患者が安全に検査・治療を受けられるよう、浴びる放射線量を管理・記録しています。
医療現場で被曝する放射線の量は極めて少なく、検査や治療を数回受けてもすぐに体に害が現れることはないとされています。しかし、日頃から診療放射線技師が被曝量の管理を行うことで、安全な検査・治療の実施に繋げています。
また、検査・治療の空間にいる医療従事者や診療放射線技師自身も、仕事のたびに少量ですが被曝しています。そのため、医療従事者の被曝量についても、診療放射線技師が管理しているようです。
診療放射線技師の勤務先
診療放射線技師の勤務先は、医療機関だけではありません。ここでは、病院をはじめとする診療放射線技師の勤務先について、みていきましょう。
病院
病院で働く診療放射線技師は、検査や治療まで幅広く経験できるのが特徴です。大きな病院であれば、実施しているすべての検査・治療において、一人前に担当できるよう数年かけて教育されることもあります。最新の機器や技術に触れられることもあるでしょう。なお、 急変や急患対応もあるため、月に数回、当直かオンコールがあることがほとんどです。
また、病院の中で治験部門に配属されることもあります。治験部門で働く診療放射線技師は、治験に携わる検査・研究のための撮影の実施や、撮影画像の解析などが主な仕事です。
クリニック
クリニックで働いている診療放射線技師は、X線撮影やCT、MRIの撮影が中心となります。婦人科であれば乳房X線撮影(マンモグラフィ)、整形外科は一般X線撮影など、診療科により行われる検査に偏りがあるようです。入院施設がなければ当直やオンコールがなく、週休2日制の施設も多いため、ワークライフバランスが取りやすいというメリットがあります。
検診センター
診療放射線技師が検診センターに勤務する場合は、胸部・乳房X線やCT、超音波検査の施行が中心となります。検診車で企業や学校を訪れ、出張検査を行うことも珍しくありません。夜勤がなく、残業も少ないうえ、多くの施設は土日休みのため、人気の職場となっているようです。
一般企業
診療放射線技師は、放射線に関する知識を活かして一般企業に勤めるケースもあります。たとえば医療機器メーカーで、「アプリケーションスペシャリスト」として働くケースです。主に機器の導入支援を行っており、機器導入の際に医療機関に行き、装置の説明や使用方法のレクチャー、メンテナンスを行います。
診療放射線技師の資格に加えて、第一種放射線取扱主任者という資格を持っている方は、原子力発電所・研究所に勤める方もいるようです。
診療放射線技師になるには?国家資格について
前述のとおり、診療放射線技師になるには国家資格の取得が必要です。資格試験を受けるための要件や試験の概要、合格率について紹介します。
診療放射線技師国家試験の受験資格
診療放射線技師の国家試験は誰でも受けられるわけではなく、受験資格が設けられています。
厚生労働省「職業情報提供サイトjobtag」によると、診療放射線技師の受験資格の要件は、高校卒業後、国が指定した診療放射線技師教育機関にて規定の時間数を習得することです。診療放射線技師教育機関には、4年制大学や3年制短大、専門学校(昼間3年制・夜間4年制)などがあります。
放射線を扱う診療放射線技師は、専門的な知識や高度な技術が必要なため、専門機関の修了が必須とされているようです。2024年4月現在、通信教育で受験資格を取得する方法はないため、注意しましょう。
診療放射線技師国家試験の概要
診療放射線技師は、例年2月中旬に試験が実施され、3月下旬が合格発表です。 厚生労働省「臨床放射線技師国家試験の施行」より、2023年度の実施状況をみると、試験は全国8か所で行われています。試験問題は200問出題され、1問1点です。合格基準は200点満点中120点以上かつ、0点の科目が1科目以下となっています。
診療放射線技師国家試験の合格率
診療放射線技師国家試験の、2021年度~2023年度の3年間の合格率は以下のとおりです。
第74回(2021年度) | 3,245人 | 2,793人 | 86.1% |
第75回(2022年度) | 3,224人 | 2,805人 | 87.0% |
第76回(2023年度) | 3,565人 | 2,834人 | 79.5% |
引用:厚生労働省「第76回診療放射線技師国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第75回診療放射線技師国家試験の合格発表について」
厚生労働省「第74回診療放射線技師国家試験の正答・合格発表の訂正とお詫び」
診療放射線技師の合格率は、8割前後で推移しており比較的高いといえるでしょう。専門機関で3~4年かけてしっかり専門知識を身に付けるため、合格率が高いようです。
診療放射線技師の年収は?
厚生労働省「 令和5年賃金構造基本統計調査」によると、全職種の平均年収と、医療系の職種の平均年収は以下のとおりです。
診療放射線技師 | 536万9,700円 |
医師 | 1,436万4,700円 |
看護師 | 508万1,700円 |
薬剤師 | 577万8,700円 |
臨床検査技師 | 508万4,900円 |
理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士 | 432万5,200円 |
賃金構造基本統計調査で調査している全職種の平均 | 515万1,372円 |
参照:厚生労働省「 令和5年賃金構造基本統計調査」より年収は「きまって支給する現金支給額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額」で算出
診療放射線技師の年収は全職種の平均と比べると高い方で、医療系の職種と比べても医師、薬剤師に次ぐ高さとなっています。
診療放射線技師の将来性は?
近年ではただ病気を治すのが医療の役目ではなく、病気を予防したり、早期発見・早期治療を行ったりすることが求められています。患者の身体を傷つけずに検査・治療を行う診療放射線技師の技術は、これからも必要とされるでしょう。医学の進歩とともに、新しい機器や新しい検査方法も続々と出てくるため、働き始めたあとも勉強が必要です。
また、診療放射線技師には、スキルアップのための認定資格が設けられています。以下は認定資格の一例です。
- 検診マンモグラフィ撮影認定診療放射線技師
- 胃がん検診専門技師
- 磁気共鳴(MR)専門技術者
- X線CT認定技師
- 血管撮影・インターベンション専門診療放射線技師
- 救急撮影認定技師
診療放射線技師としての専門性を高めることで、ほかの職員との差別化を図り、資格の付加価値を高められます。認定資格保有者限定の職に就けることもあるでしょう。また、認定資格に資格手当が適用され、給与アップに繋がることもあるようです。
診療放射線技師に向いている人の特徴
診療放射線技師に向いている人の特徴は、以下のとおりです。
- 機械を操作するのが好きな人
- 解剖学に興味がある人、解剖学が好きな人
- 医療現場で検査と治療の両方に携わりたい人
診療放射線技師の仕事では、日常的に医療機器を操作します。検査・治療の種類ごとに使用する機器が異なるため、それぞれの機器の特性や操作方法を覚えることが苦ではなく、操作を行うのが好きな人は、診療放射線技師に向いています。また、照射部位に関する正しい解剖学の知識も求められるため、人体の筋骨格や臓器の作りを理解するのが楽しい人は、仕事も楽しく取り組めるでしょう。
また、診療放射線技師の仕事の特徴は、検査と治療の両方に携われる点です。病気を発見する検査だけでなく、がん患者の放射線治療も実施します。病気を治す仕事は医師や看護師の仕事というイメージがありますが、診療放射線技師も知識や技術を用いて治療を行える職業です。医療現場で検査と治療の両方に携わりたいという方は、診療放射線技師を目指すのも良いかもしれません。
診療放射線技師は画像検査や放射線治療のサポートを行っている
- 診療放射線技師は放射線が出る機器を取り扱い画像検査や放射線治療を行う
- 診療放射線技師になるには専門機関を修了し、国家試験に合格する必要がある
- 診療放射線技師は医療機関だけでなく、一般企業にも活躍の場がある
- 診療放射線技師に向いている人は、医療現場で検査と治療に携わりたい人
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