豆知識
療育とは?仕事内容や携わる職種、施設について紹介
6 months ago
「療育とは?」と疑問に思っている方もいるでしょう。療育とは、障がいのある子どもが自立できるよう発達を促す支援のことです。この記事では、療育施設で働く人の仕事内容や職種、具体的な支援内容について紹介しています。発達支援との違いについても触れていますので、障がい者福祉に興味がある方はぜひ参考にしてください。
療育とは
療育とは、障がい児が社会的に自立できるよう、障がいの種類や程度に応じて支援し、運動機能や知能の発達を促すことです。ここでは、療育と発達支援の違いや療育の対象者を確認しましょう。
療育と発達支援との違い
障がい児支援において「発達支援」という言葉が使われることもあります。療育と発達支援の違いを知るために、まずは厚生労働省と全国児童発達支援協議会が提示している発達支援の定義を見てみましょう。
まず、厚生労働省「児童発達支援ガイドライン」による定義は、以下のとおりです。
また、全国児童発達支援協議会「第3回障害児支援の在り方に関する検討会/『主な検討課題』への意見」による「発達支援」の定義は、以下のとおりです。
療育は、障がい児に対して自立を促す教育、という意味合いが強いとされていますが、発達支援は福祉分野や医療分野、地域支援に幅を広げた解釈であることが特徴です。そのため、発達支援の中に療育が含まれると考えてよいでしょう。
このことからも分かるように、障がい児本人や家族、それを取り巻く医療機関や福祉施設などを含めて、包括的にサポートすることを発達支援と呼びます。ただし、療養と同義として使用されることも多いようです。
療育に通う基準
療育の対象となる障がい児は、身体障がい・知的障がい・精神障がい(発達障がいを含む)のいずれかに当てはまる0~18歳の児童とされています。障がい者手帳の有無は問われません。児童相談所や保健センター、主治医により療育の必要性が認められれば、療育を受けられる仕組みです。なお、サービス利用には自治体から受給者証の交付を受ける必要があります。
療育とは何をするの?支援の内容と方法
療育とは、具体的にどのような内容や方法で実施されるのでしょうか。ここでは、療育プログラムの内容や、実施方法について解説します。
療育の内容
療育の内容は音楽療法や運動療法、作業療法などがありますが、ここでは代表的なプログラムを5種類紹介します。
認知行動療法
認知行動療法は、認知療法と行動療法を組み合わせたプログラムです。自己と外界の間にある「認知のゆがみ」を修正することで、気持ちや行動のコントロールをできるようにするのが目標です。
応用行動分析
応用行動分析は、強化・弱化・消去の3原則を基本とし、障がい児の問題行動の原因となる環境要素を排除する療育プログラムです。障がい児に応じて環境要因を強化・弱化・消去させることで、障がい児に成功体験を積み重ねさせ、行動改善を促します。
箱庭療法
箱庭療法は、砂の入った箱の中に人間や動物、建物などのミニチュアを自由に置いて、障がい児に自分の箱庭を作ってもらう療育プログラムです。特に、言葉で表現するのが苦手な児童に適しているとされています。障がい児は創作活動をとおして、自己表現の達成や安心感の獲得ができるうえ、深層心理を表面化することができます。
TEACCH
TEACCH(ティーチ)は、自閉症やグレーゾーンの方など、コミュニケーションに課題がある人のための心理療法です。障がい児の特性を受け入れて、社会への順応を促すため、包括的な支援を行います。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)
ソーシャルスキルトレーニングとは、認知行動療法を応用したトレーニングで、社会的ルールを学びます。指示を理解したり状況判断のロールプレイングをしたりする中で、コミュニケーションなどへの苦手意識を取り除く目的があります。
療育の方法
療育プログラムを実施する方法は、一般的に2種類あります。
個別療育
個別療育は、療育を受ける障がい児と職員が、1対1で療育を進めていく方法です。集団療育が苦手な児童や1人での療育が向いている児童に対して行われます。障がい児は自分のペースでプログラムを進められるため、療育を始めたばかりの障がい児にもよく適用されるようです。
集団療育
集団療育は、2~10人程度の障がい児が一緒に療育を受ける方法です。ゲームや遊びの中で、コミュニケーション能力や社会性の形成を促進します。前述したような療育プログラム以外にも、工作や外遊びなどが行われており、他社との距離感や関係性の作り方を学ぶようです。
療育を行っている施設
療育を行っている施設は、対象年齢や療育以外の支援内容などによって種類が分かれています。ここでは、通所・訪問型施設と入所施設に分けて療育を行っている施設を紹介します。
通所・訪問型施設
通所・訪問型施設は療育施設の中でも数の多い施設形態です。一般的には訪問型も含めて「通所施設」と区分されています。厚生労働省「障害児支援施策の概要」によると、施設の詳細は以下のとおりです。
種別 | 施設形態 |
利用対象 |
支援内容・詳細 |
---|---|---|---|
通所 |
児童発達支援事業 |
0~6歳まで(未就学)の障がい児 |
- トイレや着替えなど生活動作の指導・支援 - 集団生活への適応を促す支援 - 社会的自立に向けた訓練 |
放課後等デイサービス |
6~18歳(小・中・高校生)の障がい児 |
- 放課後や土日・長期休暇などの休校日に開所している - 生活能力を向上させるための訓練 - 創作活動 - 地域交流 |
|
医療型児童発達支援 |
0~18歳の身体障がい児 |
- 身体障がいがあり、理学療法や医学的管理が必要な障がい児が通所している - 日常生活の基本動作の機能訓練・リハビリ - 集団生活への適応訓練 |
|
訪問 |
保育所等訪問支援 |
0~18歳の障がい児 |
- 児童指導員などが利用者の通う保育園や幼稚園、小学校などに訪問して支援する - 集団生活に適応するための支援 - 訪問先の施設職員への指導・助言 |
居宅訪問型児童発達支援 |
0~18歳で医療的ケアが必要な障がい児 |
- 児童指導員や看護師などが利用者の自宅に訪問して療育プログラムや医療的ケアを行う - 生活能力向上のための訓練 - 身体介護 - 呼吸器管理や喀痰吸引などの医療的ケア |
入所施設
厚生労働省「児童福祉法の一部改正の概要について」によると、入所施設は「児童発達支援センター」の中で福祉型と医療型に分かれます。どちらも0~18歳の障がい児が利用対象です。
厚生労働省「障害児支援施策の概要」によると、福祉型障がい児入所施設は、家庭で養育が難しい障がい児が入所する施設です。食事や排泄などの身体介護や日常生活の基本的な動作の訓練などが行われています。障がい児の社会性を育むために、地域住民や同世代の子どもたちと交流の機会を作っている施設もあるようです。
また、同資料によると、医療型障がい児入所施設には、医療的なケアが必要なため、家庭での療育が難しい障がい児が入所しています。医師や看護師が在籍しているのが特徴で、福祉型の機能に加えて人工呼吸器での呼吸補助や喀痰吸引などのケアが受けられる施設です。自閉症の児童や重度心身障がい児、肢体不自由児が入所しています。
療育施設で働く人の仕事内容
上記の療育施設で働く職員は、どのような仕事をしているのでしょうか。
個別支援計画書の作成
療育施設では、障がい児一人ひとりに合わせた療育を行うために、児童発達支援管理責任者が個別支援計画書を作成しています。障がい児個別の療育指針となり、作成には施設のほかの職員も加えて検討が行われるようです。障がい児がサービスを利用開始したあとも、半年に1回以上、個別支援計画の見直しを行っています。
療育支援
療育施設では、前述のような療育プログラムを、障がい児に合わせて実施しています。保育士や児童指導員が療育を実施することもありますが、専門分野に特化したプログラムであれば、言語聴覚士や作業療法士などの専門職が実施することが一般的です。
日常生活や基本動作の支援
療育以外にも、着替えや食事、排泄などの日常生活の動作ができるよう、障がい児を支援します。動作を身に付けてもらうために、障がい児の特性を理解して、実践しやすいよう工夫して教えるのも職員の重要な仕事です。
医療的ケア
重度の障がいがある児童が施設を利用する場合は、医師や看護師が医療的ケアを行います。
障がいの種類や程度に合わせて、人工呼吸器の管理や経管栄養の投与、喀痰吸引など、適切な医療的ケアを提供するのも療育施設の役目です。
保護者への支援
障がい児を持つ保護者への支援も、療育施設の役割です。職員は保護者から教育に関する悩みを聞いて解決方法を助言したり、解決方法を一緒に考えたりしています。ほかに利用できる社会福祉サービスへの橋渡しを行うこともあるようです。
また、未就学児への療育を行うときは、親子で療育プログラムに参加し、子どもへの接し方や特性を保護者に知ってもらう機会を設けることもあります。
関係機関との連携
通所施設で療育を受ける障がい児は、日中は幼稚園や保育園、学校に通っていることが一般的です。障がい児へ必要な支援を包括的に行うために、施設職員は障がい児の通うほかの関係機関と連携して、適切な療育の実施に繋げています。
療育に携わる職種は?
児童発達支援施設で療育に携わる職種は、どのような職種があるのでしょうか。
保育士
保育士は日常生活の基本動作を指導したり、集団生活に適応できるような訓練を実施したりしています。一般的な保育園や幼稚園で行っている保育に加えて、障がいの種類・程度や発達状態を考慮して、障がい児一人ひとりにあった療育を行うのが保育士の役割です。
児童指導員
児童指導員は、学習面の指導や日常生活のサポート、進学・就職支援などを行っています。なお、児童指導員として働くには任用資格が必要です。厚生労働省「児童指導員及び指導員の資格要件等」によると、社会福祉士・精神保健福祉士・教員免許のいずれかを保有している、大学で所定の専門課程を修了している、児童福祉施設での実務経験2年以上といった条件のいずれかに該当すると、児童指導員任用資格とみなされます。
児童発達支援管理責任者
児童発達支援管理責任者は、個別支援計画の作成や施設の管理責任者としての業務を行っており、「児発管」と呼ばれることもあります。 厚生労働省「障害児支援(通所・入所共通)に係る報酬・基準について」によると、児発管は障がい児通所支援事業所ごとに常勤で1人以上の配置が必要です。
児発管になるには、児童発達支援施設で指定の実務経験を積んだのち、基礎研修とOJT2年以上、実践研修を受講することが必要です。療育の現場で働いている方で、キャリアアップを考えている方は資格取得を目指してみても良いでしょう。
看護師
看護師は、主に医療的ケアが必要な障がい児に対し、健康管理や衛生管理、精神的なケアを行っています。保育士や児童指導員とともに、療育プログラムに参加することもあるようです。
言語聴覚士・作業療法士・理学療法士
専門分野に特化した療育を行うため、施設には言語聴覚士や作業療法士、理学療法士が在籍していることもあります。
言語聴覚士は、言語能力や発声に障がいがある障がい児に対して、発声訓練や遊びの中でコミュニケーション能力を向上させるプログラムを実施するのが役目です。自分の意思を伝えるのが難しい障がい児に対しても、カードやジェスチャーを使って意思を表出する訓練を行います。ほかにも、文字の学習に携わることもあるようです。
作業療法士は、遊びを支援する中で、物をつかむ・触るなどといった日常生活の基本動作の訓練を行います。創作活動や細かい作業を手助けすることで、障がい児に指先の感覚を養ってもらうのが目的です。
理学療法士は、立つ・座るなどの基本的な運動動作の訓練を行っています。道具も使いながら運動やリハビリを行い、障がい児の運動機能向上をサポートするのが理学療法士の仕事です。
公認心理士・臨床心理士
公認心理士・臨床心理士は、心理学の知識を持つ専門家です。主に、精神障がい児の機能訓練や精神的ケア、指導を行っています。
療育とは障がいのある子どもへの発達支援を指す
- 療育とは障がい児が社会的に自立できるよう支援し運動機能や知能の発達を促すこと
- 療育は障がい児の特性に合わせて、個別または集団で実施されている
- 療育施設で働く職員は、保護者への支援や関係機関との連携も行っている
- 療育に携わる職種には保育士や児童指導員、児童発達支援管理責任者などがいる
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