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エンゼルケアで看護師が気を付けることは?手順や目的を紹介

正看護師13 days ago

「エンゼルケアで看護師は何をするの?」と思っている方もいるのではないでしょうか。エンゼルケアとは、医療機関や介護施設で死亡退院となった患者に対して行われる、清拭やメイクなどの一連のケアのことです。この記事ではエンゼルケアの目的や手順について解説しています。看護師がエンゼルケアを行う際に大切にしたい点についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。

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エンゼルケアとは

エンゼルケアとは、遺体に対して行われる死後の処置のことです。医療機関や介護施設で看護師として働いていると、患者や利用者を看取ることもあるでしょう。その際に遺体が腐敗したり体液が漏れ出したりするのを防ぐため、特別な処置を施します。そのあと、遺体の身体を拭いたり、メイクを施したりして見た目を整えるまでがケアの内容です。

医療機関で亡くなった方に対しては、葬儀社が遺体を引き取りに来るまでに、看護師がエンゼルケアを行うことが多いようです。
エンゼルケアは、清潔ケアのように生前に行っていたケアと変わらないものもありますが、エンゼルケア独特のケアも多くあり、正しい知識・技術が必要となります。

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エンゼルケアの目的

亡くなった方へのエンゼルケアの目的は、主に3つあります。

故人の尊厳を守るため

患者が亡くなる直前は、闘病や老化により、元気だったころのように身なりを整えたり、着替えたりできないこともあります。肌の色が悪くなり、点滴や人工呼吸器など管に繋がれて、痛々しい姿になってしまうことも珍しくありません。痛みや苦しみから解放された遺体に対し、その方らしい身なりに整えることで、故人の尊厳を守ることに繋がります。

遺族のグリーフケアになる

グリーフケアとは、死別の悲しみを抱える遺族に寄り添い、立ち直れるようサポートするケアのことです。患者が亡くなった直後、遺族は深い悲しみに襲われ、故人が亡くなったことを受け入れられないケースも少なくありません。

エンゼルケアの中には、着替えや清拭など遺族が看護師と一緒に行えるケアもあります。 遺族がエンゼルケアに参加することで、故人の死に向き合い、前を向くきっかけを作るという意味合いも含まれています。

体液や排泄物からの感染症を予防するため

遺体は、時間が経つにつれて硬直や腐敗が進んでいきます。ケアをしなければ、体液・排泄物が流出・滲出してくることも。体液や排泄物に触れた遺族やスタッフが、病原菌やウイルスに感染してしまうことを防ぐため、エンゼルケアによる適切な処置が必要です。

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エンゼルケアの手順と内容

施設により異なりますが、ケアに入るときはマスクとガウン、手袋を装着して標準予防策の装備で行います。
遺体を引き取りに来るまで時間がない場合は、医療機器の抜去や体液処置など最低限の処置を病院で行い、メイクや洗髪などは納棺師に任せることもあるようです。

エンゼルケアが完了したら、遺体はしばらく病室に安置するか、霊安室に移動して葬儀社が来るまで安置します。葬儀社が来たら遺体を引き渡し、お見送りを行う流れです。遺体を搬送するときの手順など、医療機関ごとにマニュアルが設けられていることが多いため、自分の職場のマニュアルも確認しておきましょう。

ここからは、エンゼルケアの手順と内容について詳しく解説します。なお、患者の状態や医療機関により、エンゼルケアの手順は変わることもあるようです。

説明と確認

エンゼルケアに入る前に、ケアの内容を遺族に説明します。また、着替える衣服やエンゼルケア完了後の遺体の姿勢のほか、清拭・着替えといった一部のケアに遺族も参加することなども忘れずに確認しておきましょう。

また、故人が使用していたメイク道具でエンゼルメイクをしてほしい、故人の好きなお酒で口を湿らせてあげたいなどといった遺族の希望も聞き出します。

医療器具を外して創傷部のケア

点滴や人工呼吸器といった、遺体の身体に装着されている医療器具を外します。褥瘡部や創部は体液が外へ流れないよう、テープやドレッシング材で保護が必要です。遺体の皮膚・粘膜は非常に傷つきやすいため、優しく取り外しましょう。

なお、中心静脈カテーテルなど身体に深く挿入されている一部の医療器具は、無理に完全抜去しないとしている医療機関もあります。初めて行う際は先輩職員に聞くなどして必ず確認してから行いましょう。

口腔ケア・口を閉じる

臭気が発生するのを予防するため、口腔ケアを行ったうえで口を閉じる処置をします。患者が入れ歯をしていた場合、口腔ケア時には一旦取り出しておきましょう。歯ブラシやガーゼ、スポンジブラシを使用し、歯を磨いたり、口蓋や舌の汚れを取り除いたりします。
 
口腔ケア後は入れ歯を装着し、顎を支えて口を閉じます。徐々に口が開いてこないように、顎の下にタオルを挟んで固定すると良いでしょう。死後硬直が始まると、開いた口を閉じるのが難しくなるため、口腔ケアと口を閉じる処置はエンゼルケアの最初の方で行うことが推奨されています。

眼・鼻のケア・瞼を閉じる

目ヤニや鼻腔からも臭気が発生するため、汚れをふき取るケアが必要です。目ヤニは綿棒やガーゼでふき取りましょう。水を流して眼内洗浄も行い、皮膚を傷つけないように優しく瞼を閉じます。

鼻腔内の汚れも、綿棒やガーゼでふき取ります。以前は鼻に脱脂綿などを詰めていましたが、綿を詰めても漏液は完全に防げないことが近年になり分かりました。また、鼻に詰め物がされている姿を遺族が見ると、故人が苦しそうに見えるという観点もあり、近年では鼻に詰め物をしない医療機関が増えています。

洗髪・整髪

洗面器を用意し、シャンプーで髪を洗ってタオルやドライヤーで髪を乾かし、整えます。水を使わないシャンプーで、髪の汚れをふき取るケアを行う場合もあるようです。

全身清拭・着替え

濡らしたタオルや蒸しタオルを用意し、遺体の全身を優しく拭きます。拭いたあとは乾燥防止のために、クリームや乳液で保湿も行い、遺族の希望を聞いて着替えを行います。清拭や着替えはタオルで拭いたり、ボタンを留めたりというように遺族が一緒に行えるケアですので、看護師から声をかけて参加してもらうと良いでしょう。

遺体の背中やベッドには、故人のぬくもりがまだ残っていることがあります。清拭や着替えの際に、遺族に触ってもらうことでグリーフケアにも繋がるでしょう。

体制を整えて冷却

着替えのタイミングで遺体の体制を整え、遺体の腐敗を防ぐために冷却処置をします。「冷たくてかわいそう」と感じる遺族もいらっしゃるので、遺族には処置直前にも説明と声掛けを行うと良いでしょう。

冷却は臓器が集まっている胸部や腹部、背中を中心に、大きい筋肉がある臀部や太ももの裏も行います。アルミシートや冷却材を遺体の上に置いたり下に敷いたりすることで遺体を冷やしていきます。指を組んで合掌させるか、顔に白い布をかぶせるかは宗教や地域の風習によっても異なりますので、遺族に確認して行いましょう。

エンゼルメイク

故人の顔は時間が経つにつれて血色が失われていくため、乾燥防止の処置とともにメイクを施します。この一連の処置は「エンゼルメイク」と呼ばれるケアです。顔に血色を少し補うことで、遺族のショックを和らげる効果もあります。

エンゼルメイクには、専用のエンゼルメイクキットを使うこともありますが、病棟によっては市販の化粧品がエンゼルメイク用として備えられていることもあるようです。もちろん、遺族に確認して故人が使っていた化粧品を使用しても問題ありません。男性も顔色を良くするために軽くメイクを施し、ひげを剃るといった処置を行います。

エンゼルメイクは、最初からメイクアップを施すのではなく、遺体の乾燥防止のためにスキンケアを先に行います。クレンジングクリームを顔・首・耳に馴染ませて、ガーゼやティッシュで汚れを優しくふき取っていきます。蒸しタオルで優しく汚れをふき取ったあとは、乳液で保湿が必要です。産毛やひげ、眉は乳液を多めに塗ってから剃るようにしましょう。

スキンケアが終わったあとは、下地の後にクリームファンデーション、フェイスパウダーでベースメイクを行います。チークやリップ、アイブローなどのポイントメイクは、落ち着いた色味を使用し、派手にならないように注意しましょう。乾燥で唇の色が悪くなるため、リップカラーを付けない場合でも、最後にリップクリームは必ず塗るようにします。

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エンゼルケアを行う看護師が心がけたいことは?

看護師がエンゼルケアを行う際は、正しい知識や充分な技術が必要ですが、ほかにも心がけたいことがあります。ここでは、エンゼルケアを行う看護師が心がけたいことについてみていきましょう。

時間を気にして慌ただしく行わない

患者が亡くなったら、遺族との時間を少し作ったあと、エンゼルケアに入ります。ケアを進める際は、「葬儀社のお迎えが来るまでに間に合わせなければ」「死後硬直が始まる前に完了しなければ」と考え、急ぎたくなることもあるでしょう。

しかし、エンゼルケアは遺族が気持ちを整理させる意味でも、大切な時間です。看護師が慌ただしくエンゼルケアを行うと、遺族に作業的な印象を与えてしまうこともあります。時間を気にしながら処置を進めることも大切ですが、少しゆったりしたペースで処置を進めていくのが良いでしょう。

遺族の要望を丁寧に確認しながら行う

エンゼルケアを行うときは、遺族の要望を都度確認しながら行いましょう。遺族が故人へ最期にしてあげたいことや、宗教上の理由・地域の慣習による希望のケアがあるかを確認します。

死後処置を行うという意味合いだけでなく、その人らしい旅立ちのお手伝いができるよう、看護師は遺族に寄り添った対応が必要です。可能であれば、生前に本人やご家族からエンゼルケアに関する希望について聞いておくのも良いでしょう。

患者には普段どおり声掛けを行う

患者には今までどおり「お身体を拭きますね」「お着替えをしましょうね」などと声掛けを行いながらケアを進めましょう。看護師が普段どおり患者に接する姿を見ると、遺族は「最期まで大切にケアしてもらえている」と思えるものです。遺族と一緒にエンゼルケアを行う際は、患者とのエピソードなどを話し、故人のことを思っているという姿勢を遺族に示すことで、グリーフケアにも繋がるでしょう。

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エンゼルケアは看護師が患者へ最後に施せる大切なケア

  • エンゼルケアとは遺体の腐敗や体液漏出を防ぐとともに最期に身なりを整えるケア
  • エンゼルケアは遺族へのグリーフケアを行う目的も含まれている
  • 看護師がエンゼルケアを行うときは故人に声をかけながら遺族の要望を取り入れて行う

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