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特別養護老人ホーム(特養)とは?サービスの特徴を解説します!
a year ago
介護施設への転職を検討している方の中には、特別養護老人ホーム(特養)について詳しく知りたいという方もいるでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)は、介護を必要とする方を対象にサービスを提供する介護保険施設のことです。
この記事では、特別養護老人ホームの特徴を、同じ入居タイプの施設である介護老人保健施設や有料老人ホームなどと比較してご紹介します。
また、特別養護老人ホーム(特養)で提供するサービスの内容や部屋の特徴なども解説するので、ぜひご覧ください。
特別養護老人ホーム(特養)とは
特別養護老人ホーム(特養)とは、介護が必要な高齢者が入居する施設です。
原則として、要介護3以上に認定された方が入所できます。社会福祉法人・市町村などの地方自治体により公的に運営されており、対象者が比較的安い費用で終身利用できることが特徴。また、24時間体制で介護を提供しており、介護施設の中でも人気の高い施設です。
養護老人ホーム・介護老人保健施設・有料老人ホームとの違い
特別養護老人ホーム(特養)以外にも、入所タイプの介護保険施設には以下のような施設があります。
- 養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 有料老人ホーム
以下で各施設との違いを詳しく解説するので、見ていきましょう。
養護老人ホームとの違い
特別養護老人ホーム(特養)と養護老人ホームとの違いを以下の表にまとめました。
特別養護老人ホーム | 養護老人ホーム | |
---|---|---|
役割 | 介護が必要な高齢者の生活支援 | 在宅生活が難しい高齢者の養護と社会復帰の支援 |
入所条件 | 原則要介護3以上の高齢者 | 身体的に自立しているが環境的・経済的に困窮している高齢者 |
サービス内容 | 身体介護が中心 | 生活支援 |
長期利用 | 可能 | 不可能 |
特別養護老人ホーム(特養)は、介護の必要性が高い高齢者を支えるための施設です。特例的な入所を除き、原則として要介護3以上の高齢者しか利用できません。
一方で、養護老人ホームは環境的・経済的な要因によって、在宅での生活ができない高齢者が対象。施設の役割は入居者の養護と社会復帰のサポートが目的で、介護サービスは提供しません。そのため、基本的に利用者は介護が不要な方に限られます。介護職員の配置義務もないため、軽度の介護業務は支援員が担当する施設もあるようです。そのほか、生活相談員や栄養士、看護師、医師などが在籍しています。
介護老人保健施設との違い
特別養護老人ホーム(特養)と介護老人保健施設との違いは、以下の表の通りです。
特別養護老人ホーム | 介護老人保健施設 | |
---|---|---|
役割 | 介護が必要な高齢者の生活支援 | 介護が必要な高齢者の在宅復帰のサポート |
入所条件 | 原則要介護3以上の高齢者 | 要介護1以上の高齢者 |
サービス内容 | 身体介護が中心 | 医療的ケア・リハビリテーション |
長期利用 | 可能 | 不可能 |
どちらも要介護認定を受けた人が対象ですが、介護老人保健施設は要介護1や要介護2の方でも入所できます。同施設の役割は、利用者が在宅復帰できるように機能回復をサポートすることです。そのため、リハビリテーションを行うための設備が充実しており、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のいずれか1人が常駐。利用者1人ひとりに合わせたリハビリを行います。
入居者の入所期間に応じて、利用者と関わる期間は異なります。特別養護老人ホーム(特養)は長期に渡って入居者をサポートしたい人、介護老人保健施設は、短期間でさまざまな入居者と関わり、サポートをしたい方に向いています。
有料老人ホームとの違い
特別養護老人ホームと有料老人ホームとの違いを以下の表にまとめました。
特別養護老人ホーム | 有料老人ホーム | |
---|---|---|
役割 | 介護が必要な高齢者の生活支援 | 介護が必要・または在宅生活に不安を感じる高齢者の生活支援 |
入所条件 | 原則要介護3以上の高齢者 | 高齢者 (施設により条件あり) |
サービス内容 | 身体介護が中心 | 生活支援・レクリエーション |
長期利用 | 可能 | 可能 |
有料老人ホームは、主に介護付有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、健康型有料老人ホームの施設の3種類に分けられます。
入居条件は施設によって異なりますが、多くの場合、介護付では要介護認定を受けた方、住宅型は介護度に関わらず60~65歳以上の高齢者、健康型は自立している60歳以上の高齢者が対象です。
また、介護付有料老人ホームでは職員が介護を提供します。一方、住宅型や健康型の有料老人ホームでは、基本的に施設の職員による介護サービスの提供はありません。入居者は介護が必要になった際、外部の介護サービスと契約して利用します。
特別養護老人ホーム(特養)と比較すると、介護付有料老人ホームは、食事やレクリエーションなどの生活を楽しむためのサービスが充実しているのも特徴です。介護職員や看護師は、これらのサービスの運営に関わる機会も多いでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)で提供するサービス
特別養護老人ホーム(特養)では、主に以下のサービスを提供します。
- 食事介助
- 入浴介助
- 排泄介助
- 生活支援
- 健康管理
- リハビリテーション
- レクリエーション
- 看取り
以下で詳しく解説するので見ていきましょう。
食事介助
特別養護老人ホーム(特養)で提供する食事の回数は1日3回です。基本的には管理栄養士が栄養バランスを考慮した献立を考え、介護職員などが利用者の食事の介助を行います。
入浴介助
特別養護老人ホーム(特養)では、利用者に対して1週間に2回以上、入浴または清拭を行うという決まりがあります。職員は、利用者の体調や身体機能を踏まえたうえで、体を清潔に保てるようケアを行います。
入浴介助の方法はさまざまです。個室で一人ひとり介助を行う施設もあれば、大浴場で複数人の入浴介助を行う施設、寝たきりの方が横になったまま入浴できる機械浴槽を完備する施設もあります。
排泄介助
排泄の介助は利用者の身体能力に応じて行います。身体機能が低下しているものの、移動ができる方に対しては、トイレで排泄できるよう職員が側でサポートします。また、尿意や便意を感じにくい方も排泄できるように、定期的にトイレに誘導するのも職員の仕事の一つです。寝たきりの利用者に対しては、ベッド上でおむつの交換や清拭を行います。
生活支援
生活支援として、居室・共有スペースの清掃や衣類などの洗濯なども行います。多くの施設では、生活支援員や世話人、清掃員といった職種がこれらの業務を担当したり、委託業者に依頼したりします。
健康管理
特別養護老人ホーム(特養)では、主に医師や看護職員が利用者の健康管理を担当します。基本的に医師は非常勤で、不在のことが多いです。
利用者に異変があった際や夜間のオンコールには看護師が対応し、必要に応じて医師に相談して処置を行います。
リハビリテーション
機能訓練指導員による、リハビリテーションを実施します。主に食事や排泄など、日常生活で必要な機能を維持・向上させるのが目的です。
看護師が主体となってリハビリを行う施設もあれば、理学療法士や作業療法士といったリハビリに特化した職種が行う施設もあります。介護職員もサポートに加わるケースが多いでしょう。
レクリエーション・イベント
特別養護老人ホーム(特養)では、体操や脳トレクイズといったレクリエーションを実施します。利用者の誕生日やクリスマスには、イベントを開催する施設も多いでしょう。
レクリエーションやイベントは、利用者同士が交流する機会になります。また、体を動かしたり頭を使ったりして、認知症の予防につなげることも目的の一つです。職員は、企画や開催の準備、参加する利用者のサポートを担当します。
看取り
施設内で看取りを行う特別養護老人ホーム(特養)もあります。施設での看取りは、本人や家族に必要事項を説明し、同意を得た上で実施します。
特別養護老人ホーム(特養)の居室タイプ
特別養護老人ホーム(特養)の居室は、以下の4タイプに分類されます。
- ユニット型個室
- ユニット型個室的多床室
- 従来型個室
- 多床室
以下でそれぞれの特徴を解説します。
ユニット型個室
ユニット型個室の特別養護老人ホーム(特養)は、個室と共同生活室に分かれています。1ユニットは原則10人以下で、共同生活室を囲むようにして個室が配置されています。
職員の人員配置は、入居者3人に対して介護職員または看護職員が1人です。さらに、ユニットごとに1人以上の介護職員あるいは看護職員が追加で配置されるので、入居者に対して細やかなケアを提供しやすいでしょう。
ユニット型個室的多床室
ユニット型個室的多床室では、入居者の部屋がパーテーションなどで仕切られた準個室と共同生活室に分かれています。10人程度を1ユニットとしており、同じユニットの入居者同士が交流しやすいのが特徴です。
職員は、ユニット型個室と同様に、利用者3人に対して1人の介護職員または看護職員が配置されます。さらに、ユニットごとに1人以上の介護職員あるいは看護職員が追加されるため、手厚いサポートを提供しやすい環境です。
従来型個室
従来型個室は、入居者1人につき1部屋が用意されます。職員は、利用者3人あたり1人以上の介護職員または看護職員が配置されます。
多床室
多床室の特別養護老人ホーム(特養)では、2~4人の入居者が1部屋で生活するのが特徴です。一般的な多床室は、人数分のベッドを配置して、カーテンで簡易的に仕切ります。職員の人員配置基準は、利用者3人に対して介護職員または看護職員が1人です。
特別養護老人ホーム(特養)の料金表
特別養護老人ホームに入居する利用者は、主に以下の費用を支払います。
- 施設サービス費
- 居住費
- 食費
- 日常生活費
ここでは、それぞれの費用について詳しく解説します。職員として働くことを検討している方は、ぜひチェックしておくと良いでしょう。
施設サービス費
施設サービス費とは、特別養護老人ホーム(特養)で提供する介護サービスの料金です。介護保険が適用されるので、原則として利用者は料金の1割を負担します。ただし、一定の所得を上回る人の負担額は、2割あるいは3割です。
施設サービス費は、要介護度と居室タイプによって料金が変動します。厚生労働省が公表する資料によると、1ヵ月(30日)あたりの施設サービス費用は、以下のとおりです(3桁以下は四捨五入。2023年2月20日現在)。
要介護度 |
ユニット型個室 ユニット型個室的多床室 |
従来型個室 多床室 |
---|---|---|
要介護3 | 約23,000円 | 約21,000円 |
要介護4 | 約25,000円 | 約23,000円 |
要介護5 | 約27,000円 | 約25,000円 |
引用:厚生労働省
また、特別養護老人ホーム(特養)のような居宅サービスを利用する場合は、以下のとおりに1ヶ月の支給限度額が設定されています。
要介護度 | 1ヶ月あたりの利用限度額 |
---|---|
要介護3 | 270,480円 |
要介護4 | 309,380円 |
要介護5 | 362,170円 |
引用:厚生労働省
上記の支給限度額を超えた場合、超過分は利用者の自己負担となります。
居住費
特別養護老人ホーム(特養)の利用者は、居住費として居室の料金と光熱水費を負担します。厚生労働省によると、入居者は所得によって第1〜4段階に分類され、第1〜3段階に該当する方は、負担軽減制度を利用できます。
第3段階のみ、さらに①と②に分類されていますが、両者の居住費は同じです。第4段階は負担軽減制度の対象外なので、基準費用を支払うことになります。
利用者の1ヶ月の負担限度額は、以下の表のとおりです(3桁以下は四捨五入。2023年2月20日現在)。
居室の種類 |
基準費用 |
負担限度額 | ||
---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階①② | ||
ユニット型個室 | 約60,000円 | 約25,000円 | 約25,000円 | 約39,000円 |
ユニット型個室的多床室 | 約50,000円 | 約15,000円 | 約15,000円 | 約39,000円 |
従来型個室 | 約35,000円 | 約10,000円 | 約13,000円 | 約25,000円 |
多床室 | 約26,000円 | 0円 | 約11,000円 | 約11,000円 |
引用:厚生労働省
第1~3段階に該当する場合は、負担限度額を超過した分の費用が介護保険から支給されます。
食費
特別養護老人ホームの食費には、食材料費と調理費が含まれています。厚生労働省によると、前述した第1〜3段階に該当する利用者は、負担軽減制度を利用可能です。第4段階に該当する方は負担軽減制度の対象外なので、基準費用を支払うことになります。
1ヶ月(30日)の負担限度額は、以下の表からご確認ください(3桁以下は四捨五入。2023年2月20日現在)。
基準費用 |
負担限度額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
第1段階 | 第2段階 | 第3段階① | 第3段階② | ||
食費 | 約43,000円 | 約9,000円 | 約12,000円 | 約20,000円 | 約41,000円 |
引用:厚生労働省
第1~3段階に該当する場合は、負担限度額を超過した分の費用が介護保険から支給されます。
日常生活費
日常生活費とは、以下のようなサービスにかかる費用です。
- 医療
- 理美容
- 被服の購入
- 日用品の購入
- 嗜好品の購入
ただし、おむつ代やクリーニング不要の一般的な洗濯代は、施設が負担します。日常生活費は施設によって異なります。
特別養護老人ホーム(特養)の設備・人員基準
特別養護老人ホームは、設備や人員の基準を満たした上で運営されています。ここでは、それぞれの基準について解説します。
設備基準
厚生労働省によると、特別養護老人ホーム(特養)の設備基準は、以下のとおりです(2023年2月20日現在)。
居室 | 原則定員1人で利用者1人あたりの床面積10.65㎡以上 |
医務室 | 医療法に基づいた診療所を設置 |
食堂・機能訓練室 | 床面積が入所定員×3㎡以上 |
廊下幅 | 原則1.8m以上 |
浴室 | 身体の不自由な人が入浴するのに適したものを設置 |
引用:厚生労働省
また、ユニット型の施設は、共同生活室の設置基準も満たす必要があります。
人員基準
厚生労働省によると、特別養護老人ホームの人員基準は、以下の表のとおりです(2023年2月20日現在)。
施設長(管理者) | 常勤1人 |
医師 | 利用者に対して健康管理および病養上の指導を行うために必要な数 |
介護職員または看護職員 | 利用者3人に対して常勤1人以上 |
生活相談員 | 利用者100人に対して常勤1人以上 |
機能訓練指導員 | 1人以上 |
介護支援専門員 | 常勤1人以上 |
栄養士 | 1人以上 |
ユニットリーダー | ユニットごとに常勤1人(ユニット型のみ) |
引用:厚生労働省
特別養護老人ホームには、施設長(管理者)が1人配置されます。原則専従ですが、管理上支障がなければ従業者などの職務の兼務が許されています。介護職員や看護職員などいくつかの職種は、利用者数に応じて必要な人数が変動します。
また、医師は常勤の義務がありません。基本的に特別養護老人ホームでは、医師は不在の場合が多いでしょう。
特別養護老人ホーム(特養)の3つの種類
特別養護老人ホームは、以下の3種類に分類できます。
- 広域型
- 地域密着型
- 地域サポート型
施設の種類によって対象者は異なります。
広域型
広域型は、最も一般的な特別養護老人ホーム(特養)の形態です。定員が30人以上で、居住地に関わらず、対象者は入所を申し込めます。施設と自宅の距離が離れている利用者も入居できるのが特徴です。
地域密着型
地域密着型は定員が29人以下と、規模が小さいのが特徴です。原則として、施設と同じ自治体に住民票がある方しか利用できません。
地域密着型特別養護老人ホームは、さらにサテライト型と単独型に分類されます。サテライト型は、広域型特別養護老人ホームや病院などの本体施設と連携して運営するため、設備や人員配置の基準が、通常の特別養護老人ホーム(特養)よりも緩和されるのが特徴です。
単独型では、1つの施設で広域型特別養護老人ホームと同等の設備やサービスを提供します。定員が29人以下で、ほかの施設との連携はありません。そのため、アットホームな雰囲気が特徴です。
地域サポート型
地域サポート型特別養護老人ホームは、高齢者の見守り・サポートを行います。対象は、施設と同じ地域に住んでいて、在宅介護を受けている高齢者です。主に、独居の方や高齢者夫婦世帯が利用します。
特別養護老人ホーム(特養)は高齢者を支援する介護施設
特別養護老人ホーム(特養)は、介護が必要で在宅生活が困難な高齢者が入居する介護保険施設です。基本的に、要介護3以上に認定された高齢者が入所でき、24時間体制で介護サービスを提供します。在籍する職種は、介護職員や看護師、介護支援専門員、栄養士などです。国の定める基準に基づいて、必要な人数が配置されています。
特別養護老人ホーム(特養)では基本的に利用者は終身利用できるため、長期的に入居者と関わってサポートしたい方に向いている職場です。
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