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インシデントレポートとは?目的や書き方、注意点を知ろう!

仕事内容a year ago

医療現場で働いていてミスや問題を起こしてしまったとき、「インシデントレポートを出しておいて」と言われることがあります。インシデントレポートとは、医療施設で起きたインシデントの内容を記載した報告書のことです。この記事では、インシデントレポートの書き方や書く目的について解説しています。書くときに気を付けることや記載例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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インシデントレポートとは

インシデントレポートとは、医療現場で起きた医療ミスになる恐れのある行為や、誤った医療行為に繋がる事象を把握し、原因を分析するための報告書のことです。基本的にはインシデントを起こした当事者が記載することになっており、医師や看護師だけでなく、ほかの医療従事者や事務職員も記載することがあります。
記載されたインシデントレポートは院内の安全委員会などに提出され、原因や対策を分析し、今後のインシデント防止に役立てられています。

インシデントとアクシデントの違いとは

そもそも「インシデント」とは、医療ミスになる恐れや誤った医療行為に繋がる行為のうち、結果的に患者に被害がなかった事象のことです。医療事故になりそうでヒヤッとした、ハッとした、という意味から「ヒヤリハット」と呼ばれることもあります。
似ている言葉として挙げられる「アクシデント」は、誤った医療行為が実施された結果、患者に被害を与えた医療事故のことです。よって、インシデントはアクシデントの一歩手前の医療行為と言えます。

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インシデントレポートを書く目的は?

インシデントレポートは、どの医療施設においても書かなければならないことになっています。インシデントが起きたら、規則だからとただ書いて提出するのではなく、目的を理解して書くことが大切です。インシデントレポートを書く目的について詳しくみていきましょう。

インシデントの再発防止が最大の目的

インシデントレポートを記載しなければならない最大の目的は、インシデントの再発防止です。厚生労働省「職場のあんぜんサイト」によると、安全衛生の現場でよく語られるものとして「ハインリッヒの法則」という法則があります。これは1件の重大事故の背景には、29件の軽微な事故と、さらに300件のインシデントが隠れているというものです。
インシデントをなくすことは、その先の軽微な事故や重大事故の発生を抑止することにも繋がります。そのため、医療機関では、インシデントレポートの提出がさらなるインシデントやアクシデントの予防のために大切なのです。

インシデントに対する責任追及のためではない

インシデントレポートを書くことで、ミスを責められている気持ちになる方もいるでしょう。しかし、インシデントレポートの目的は、個人の責任を追及するためではありません。前述のとおり、あくまでも事実の把握・共有から分析を行い、インシデントの再発防止を図るためです。今後、同様のインシデントから、患者だけでなく自分たちを守るためにも、インシデントレポートの記載はしっかり行いましょう。

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インシデントレポートの書き方

インシデントレポートは白紙から文章を作成するのではなく、医療機関ごとに独自のテンプレートを用意されていることが一般的です。電子カルテへ記載を行う場合は、フォーム形式になっていることもあります。とはいえ、書いたことのない方が突然インシデントレポートを書かなくてはならなくなったとき、何を書けばよいのかわからないこともあるでしょう。ここでは、インシデントレポートには何を書けばよいのかについて紹介します。

6w1hの情報を書く

インシデントレポートに情報を記載するときは、6w1hを意識すると読みやすく、分析しやすいレポートになります。6w1hの詳細は以下のとおりです。

  • When(いつ)
  • Where(どこで)
  • Who(誰が)
  • Whom(誰に)
  • Why(なぜ)
  • What(何を)
  • How(どのように)

ほかのスタッフや患者の家族など、登場する人物が複数いる場合は、一つひとつの主語を明確に記載するようにしましょう。これらにプラスして、改善策も記載できると理想的です。

インシデントレベルを書く

インシデントレポートには、インシデントが与える影響に応じてインシデントレベルを記載しましょう。インシデントレベルは医療機関によりレベル分けが異なり、レベル3の中でレベル3a、b、c、というようにレベル内で細かく分かれていることもあります。
厚生労働省「インシデント・医療事故の定義について」にて掲載されているインシデントレベルは以下のとおりです。

                                                              
区分レベル内容
インシデントレベル0誤りがみられたが、患者に実施されなかった
レベル1誤って実施されたが、患者に実害はなかった
(何らかの影響を与えた可能性は否定できない)
レベル2誤った実施により、経過観察や検査を要した
アクシデント
(医療事故)
レベル3誤った実施により、処置や治療を要した
レベル4誤った実施により、患者に永続的な障害や後遺症が残った
レベル5誤った実施が原因で患者が死亡した

引用:厚生労働省「インシデント・医療事故の定義について」より一部加工して掲載

このように、インシデントレベルはレベル3以上になると医療事故と見なされる事象が対象になります。インシデントレポートとして取り扱うのは、レベル0~2までの事象です。

なぜなぜ分析から原因と対策を考えて書く

なぜなぜ分析とは、「なぜその問題が起こったのか」を5回程度繰り返し、原因の根本を探る分析方法です。例として、厚生労働省「重要事例集計結果」に掲載されている事例から、なぜなぜ分析を行ってみます。

                                                     
インシデント
レポート内容
同室者よりナースコールがあり、訪室すると本人がベッドサイドで前かがみになっていた。排尿しようと立位になろうとしたら足に力が入らず立てずに床頭台に前頭部をぶつけてしまった。その後、ポータブルトイレで排尿を済ませ、ベッドに臥床させた。
なぜ?1(インシデントが起きた直接的な理由)患者は眠剤を内服していた患者が看護師を呼ばなかった
なぜ?2(なぜ?1の理由)患者はその日の夜、初めて眠剤が処方された夜、トイレに起きるのに看護師を呼ばなければいけないことを患者は知らなかった
なぜ?3(なぜ?2の理由)患者より、慣れない入院で夜寝られないとの訴えがあり、医師が処方した看護師が、眠剤を飲んだ状態でトイレに起きるときはナースコールをするよう患者に伝えていなかった
なぜ?4(なぜ?3の理由)-看護師が夜の薬の確認をする際に、今日から眠剤が追加になったことは把握していたが、ほかに注意すべきことについて確認していなかった
なぜ?5(なぜ?4の理由)-日勤の看護師が申し送りの際、患者の眠剤が追加になったことは伝えたが、ほかに注意すべきことについて言及しなかった
改善策・薬が変更・追加になった際は、その理由や伴って発生する注意点について確認する
・申し送りの際に薬の追加・変更について言及するときは、その理由や伴って発生する注意点も互いに確認する
・眠剤を飲んでいる患者に対しては、夜間のトイレは一人で行こうとせず、ナースコールを押すよう伝える

引用:厚生労働省「重要事例集計結果」より一部加工して掲載

このように「なぜ?」という理由を繰り返し問いかけることで、隠れていた問題の原因を探れます。そこから得られた対策もあわせて書くようにしましょう。

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インシデントレポートの記載例

ここからは、厚生労働省「重要事例集計結果」に掲載されているインシデントレポートの事象内容を記載例として紹介します。

記載例1:点滴の取り違え

◯月◯日15時ごろ、看護師Aは、どちらも当日受け持ちである患者Bと患者Dに対し、点滴投与するよう主治医から指示を受けた。15時15分ごろ患者Bに点滴を施行した。訪室時、看護師Aは同じトレイに患者Bの点滴と患者Dの点滴を乗せていた。
16時ごろに看護師Cが訪室した際、患者Bの点滴バッグに、患者Dの名前が記載してあることに気づき、すぐに抜針。看護師Aに報告した。
患者Bは体調不良の訴えなし。16時15分時点で体温36.5℃、 BP120/72 P72 SpO299%。看護師Aが主治医に報告し、経過観察となる。

引用:厚生労働省「重要事例集計結果」より一部加工して掲載

記載例2:患者の所在確認不足

〇月〇日午前2時、巡視中に当日転科予定の躁状態で精神状態がおちつかないA階西病棟の患者Bが不在だったため、院内を探したがみつからなかった。午前2時30分ごろ、患者BがA階東病棟のリネン庫にいるところをA階東病棟の看護師に発見された。

引用:厚生労働省「重要事例集計結果」より一部加工して掲載

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インシデントレポートを書くときに気を付けること

インシデントレポートを書くときに、気を付けるべきことについてもまとめています。今後、インシデントレポートを書くことがあるかもしれない方は、ぜひ参考にしてください。

主観を入れず事実のみを書く

インシデントレポートを書く際は、自分のミスについて記載しなければならないときなどにおいて、反省や言い訳を書きたくなることもあるでしょう。あくまでインシデントレポートは始末書ではないので、主観を入れずに全ての事実のみを簡潔に書くようにしましょう。理由を書く必要がある場合は報告の欄ではなく、分析の欄があればそこに書くのがベターです。

時刻や数値などをできる限り明確に書く

前述の記載例にもあったとおり、日時や薬の量、患者のバイタルなど数値化できるものはできる限り明確に書くようにしましょう。時間は分単位で書くのが理想的です。数値として明確に記載がなされていると、誰が読んでも状況が明確にわかるようになります。

推測の情報を書かない

インシデントレポートを書くときは、みたままの事実を書くことが大切です。自分が目にしていない事象は、事実として記載しないようにしましょう。例えば、患者がベッドの横に倒れているのを発見したことを「転倒した」と記載することは、推測での記載になります。

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インシデントレポートを正しく作成し再発を防止しよう

  • インシデントレポートはインシデント発生時に報告と再発防止のために記載される
  • インシデントレポートを書くのは個人の責任追及のためではない
  • インシデントレポートを書くときは、6w1hを意識しなぜなぜ分析を行うとよい
  • インシデントレポートには主観や推測は入れず、事実のみを正確に書くとよい

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