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特定行為看護師になるには?38項目の一覧やメリットを紹介
3 months ago
「特定行為看護師とは?」と思う方もいるでしょう。特定行為看護師とは、国が定めた特別な医療行為を行える看護師のことです。この記事では、特定行為の38項目の一覧や特定行為看護師になるメリット、特定行為看護師になるにはどうすればよいかを解説しています。認定看護師や専門看護師などほかの看護師との違いについても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
特定行為看護師とは
特定行為看護師とは、「特定行為研修」を受講し、受講した区分の特定行為であれば医師の指示を待たずに行える看護師のことです。 厚生労働省「特定行為研修を修了した看護師数(特定行為区分別)」によると、特定行為看護師は、2024年3月現在で9,135名います。
特定行為は21区分38行為に分かれており、区分ごとに研修があります。診療の補助を行える特定行為看護師を養成することで、医師の負担を軽減したり、患者へ迅速に適切な医療処置を施せたりといった効果が期待できるでしょう。また、特定行為が行えることで、特定の分野や診療科において活躍の場がさらに広がります。
特定行為とは
厚生労働省「特定行為とは」によると、特定行為とは診療の補助にあたる行為のことです。看護師が手順書により行う場合、実践的な理解力や思考力、判断力、高度かつ専門的な知識・技能が特に必要とされる行為で、以下の38種類があります。
特定行為区分の名称 | 特定行為 |
---|---|
呼吸器(気道確保に係るもの)関連 | 経口用気管チューブ又は経鼻用気管チューブの位置の調整 |
呼吸器(人工呼吸療法に係るもの)関連 | 侵襲的陽圧換気の設定の変更 |
非侵襲的陽圧換気の設定の変更 | |
人工呼吸管理がなされている者に対する鎮静薬の投与量の調整 | |
人工呼吸器からの離脱 | |
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
循環器関連 | 一時的ペースメーカの操作及び管理 |
一時的ペースメーカリードの抜去 | |
経皮的心肺補助装置の操作及び管理 | |
大動脈内バルーンパンピングからの離脱を行うときの補助の頻度の調整 | |
心嚢ドレーン管理関連 | 心嚢ドレーンの抜去 |
胸腔ドレーン管理関連 | 低圧胸腔内持続吸引器の吸引圧の設定及びその変更 |
胸腔ドレーンの抜去 | |
腹腔ドレーン管理関連 | 腹腔ドレーンの抜去(腹腔内に留置された穿刺針の抜針を含む) |
ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換 |
膀胱ろうカテーテルの交換 | |
栄養に係るカテーテル管理(中心静脈カテーテル管理)関連 | 中心静脈カテーテルの抜去 |
栄養に係るカテーテル管理(末梢留置型中心静脈注射用カテーテル管理)関連 | 末梢留置型中心静脈注射用カテーテルの挿入 |
創傷管理関連 | 褥瘡又は慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 |
創傷に対する陰圧閉鎖療法 | |
創部ドレーン管理関連 | 創部ドレーンの抜去 |
動脈血液ガス分析関連 | 直接動脈穿刺法による採血 |
橈骨動脈ラインの確保 | |
透析管理関連 | 急性血液浄化療法における血液透析器又は血液透析濾過器の操作及び管理 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整 |
脱水症状に対する輸液による補正 | |
感染に係る薬剤投与関連 | 感染徴候がある者に対する薬剤の臨時の投与 |
血糖コントロールに係る薬剤投与関連 | インスリンの投与量の調整 |
術後疼痛管理関連 | 硬膜外カテーテルによる鎮痛剤の投与及び投与量の調整 |
循環動態に係る薬剤投与関連 | 持続点滴中のカテコラミンの投与量の調整 |
持続点滴中のナトリウム、カリウム又はクロールの投与量の調整 | |
持続点滴中の降圧剤の投与量の調整 | |
持続点滴中の糖質輸液又は電解質輸液の投与量の調整 | |
持続点滴中の利尿剤の投与量の調整 | |
精神及び神経症状に係る薬剤投与関連 | 抗けいれん剤の臨時の投与 |
抗精神病薬の臨時の投与 | |
抗不安薬の臨時の投与 | |
皮膚損傷に係る薬剤投与関連 | 抗癌剤その他の薬剤が血管外に漏出したときのステロイド薬の局所注射及び投与量の調整 |
参考:厚生労働省「特定行為区分」
特別行為研修は、上記の特別行為区分ごとに行われるのが基本です。厚生労働省「特定行為研修を修了した看護師数(特定行為区分別)」によると、特別行為区分のなかで「栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連」の研修を受講した人が最も多く、2024年3月現在で8,170人います。
特定行為看護師と認定看護師・専門看護師との違い
特定行為看護師と似ている名称に、認定看護師と専門看護師があります。ここでは、特定行為看護師と認定看護師、専門看護師との違いについてみていきましょう。
なお、特定行為看護師は「特定行為研修を修了した看護師」に対する通称で、「特定行為看護師」という資格は存在しません。特別行為研修を修了した看護師には資格付与ではなく、修了証が交付されるのみとなっており、資格ではないので更新の必要もありません。一方、認定看護師と専門看護師は資格の名称です。
認定看護師
日本看護協会「認定看護師」によると認定看護師とは、ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として認定を受けた看護師のことで、日本看護協会が主催している資格です。特定の分野の看護実践だけでなく、指導・教育も行える看護師として認定されます。
認定看護師になるには、看護師としての実務経験が5年以上、うち3年以上は認定を取得する予定の看護分野の実務経験が必要です。希望する分野の教育カリキュラムをすべて受け、認定審査となる筆記試験に合格すると資格付与となります。資格取得後は、5年ごとに更新申請が必要です。
認定看護師の認定分野には資格制度設立時から運用されているA課程と、教育カリキュラムのなかに特定行為研修を組み込んでいるB課程があります。
A課程は2026年度をもって教育終了予定ですが、B課程は2020年度から開始となった課程で、A課程が終了したあとは認定看護師の教育課程として継続される仕組みです。つまり、最終的には認定看護師の全カリキュラムの中に分野に対応した特定行為研修が含まれることになります。そのため、認定看護師は特定行為に加えて、分野全体の看護実践や教育が行える看護師だと考えて良いでしょう。
専門看護師
日本看護協会「専門看護師」によると専門看護師とは、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人・家族・集団に対して水準の高い看護ケアを効率よく提供するため、特定の専門看護分野の知識・技術を深めた看護師を指します。専門分野の看護実践や教育だけでなく、研究や倫理調整の役割も果たし、認定看護師よりも高い知識や技術を身に付けられるのが特徴です。
専門看護師になるには認定看護師と同様に、看護師としての実務経験が5年以上、うち3年以上は認定を取得する予定の看護分野の実務経験が必要です。さらに、看護系大学院修士課程修了者で、日本看護系大学協議会が定める専門看護師教育課程基準の所定の単位を取得しなければなりません。認定審査である書類審査と筆記試験に合格すると資格付与となり、5年ごとに更新が必要です。
特定行為看護師になるには
特定行為看護師になるには、特定行為研修を受講し、研修ごとの修了試験に合格する必要があります。ここでは、特定行為看護師になるための研修や研修費用についてみていきましょう。
特定行為研修の受講申し込みをする
特定行為研修を受講するためには、厚生労働省が定める指定研修機関で研修受講の申し込みをする必要があります。厚生労働省「特定行為研修を行う指定医療機関等の状況」によると、指定研修機関は大学病院や一般病院が指定を受けており、2024年2月現在で全国に412機関あります。
指定研修機関や研修によっては、受講にあたって書類審査や小論文、面接などの選考が行われることもあるようです。また、研修内容が3~5年程度の実務経験がある看護師の受講を想定した内容となっていることもあり、指定研修機関によっては、受講条件として実務経験が問われるケースもあります。
特定行為研修を受講する
厚生労働省「特定行為研修とは」によると、特定行為研修は、すべての特定行為区分に共通する「共通科目」250時間と、区分ごとに専門的な知識や技能を学ぶ「区分別科目」で構成されています。
区分別科目は、区分により5~34時間のカリキュラムで、共通科目も区分別科目も、一部科目で実習・演習が含まれています。すべてのカリキュラムを修了し、修了試験に合格すると特定行為看護師として活躍できます。
研修期間は研修の種類や指定研修機関によっても異なりますが、6ヶ月~2年ほどです。ほぼすべての科目をe-ラーニングで受講可能なケースもあり、働きながら受講しやすい環境づくりが広がってきています。
領域別パッケージ研修で受講する
特定行為研修は、特定行為区分ごとに研修を受けるのが基本ですが、実施頻度が高い特定行為を領域ごとにまとめて受講できる「領域別パッケージ研修」もあります。厚生労働省「特定行為研修の一部を免除した研修(領域別パッケージ研修)」によると、領域は以下の6種類です。
- 在宅・慢性期領域
- 外科術後病棟管理領域
- 術中麻酔管理領域
- 救急領域
- 外科系基本領域
- 集中治療領域
例として、在宅・慢性期領域でまとめて研修を受けられる特定行為をみてみましょう。
呼吸器(長期呼吸療法に係るもの)関連 | 気管カニューレの交換 |
ろう孔管理関連 | 胃ろうカテーテルもしくは腸ろうカテーテルまたは胃ろうボタンの交換 |
創傷管理関連 | 褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去 |
栄養及び水分管理に係る薬剤投与関連 | 脱水症状に対する補液による補正 |
参考:厚生労働省「特定行為研修とは」
領域別パッケージ研修では複数区分の特定行為について学びますが、共通科目の受講はまとめて1回で済むため、効率的に必要な特定行為の技術を取得できます。勤務している医療機関や部署、より自分が極めたい領域に合わせて、パッケージで研修受講するのもおすすめです。
特定行為研修の費用と支援制度について
特定行為研修の受講には、高額な研修費用がかかります。 厚生労働省「これからの医療を支える『看護師の特定行為研修』」によると、特定行為研修の費用は指定研修期間や区分別科目にもよりますが、およそ30万~250万とされています。そのため、費用の問題で受講を諦める方を減らそうと、厚生労働省や都道府県では以下のような費用の支援制度が設けられています。
- 教育訓練給付(要件を満たした受講者が費用の4割・上限20万円を受給できる)
- 人材開発支援助成金(所属医療機関に国が費用の一部や受講期間中の賃金の一部を助成する)
- 地域医療介護総合確保基金(所属医療機関に都道府県が費用の支援を行う)
加えて、職場独自で費用助成制度を設けている医療機関もありますので、受講希望の際は職場に相談してみることをおすすめします。
特定行為看護師になるメリット
特定行為看護師になるメリットについて紹介します。
必要な医療処置を迅速に行える
特定行為看護師の最大のメリットは、特定行為が必要な事態になったときに、迅速に処置が行えることです。
特定行為自体は、特定行為看護師でなくても行えますが、特定行為看護師ではない看護師が特定行為を行う場合は、必ずその都度医師に確認して指示を貰わなければなりません。
手順書を用いた特定行為看護師による特定行為施行の仕組みを用いることで、医師は都度指示を出さずに済み、看護師は医師の指示を待たずに処置ができます。患者にとっても、処置が必要な状態になったときに迅速に処置を受けられるため、特定行為看護師がいることで、三者がメリットを得られるといえるでしょう。
特定行為看護師と手順書について
特定行為看護師が、医師の指示を待たずに特定行為を行うには、患者を特定したうえで特定行為を実施するよう、医師が看護師へ事前に手順書を作成して、指示をしておく必要があります。医師の手順書が用意されていなければ、特定行為看護師であっても医師の指示を待たずに特定行為の施行はできません。
厚生労働省「手順書とは」によると、手順書とは、医師または歯科医師が看護師に診療の補助を行わせるために、その指示として作成する文章のことです。「看護師に診療の補助を行わせる患者の病状の範囲」や「診療の補助の内容」などが定められています。
患者の病状が特定行為が必要な状態になったら、特定行為看護師は手順書を確認し、看護師のみで対応できる病状か判断します。手順書に記された範囲内の病状であった場合は、特定行為看護師は医師の指示を待たずに特定行為ができる仕組みです。実施後は看護師が医師へ結果報告まで行います。
給与アップにつなげられる
特定行為看護師になることで、給与アップにもつながるでしょう。医療機関のなかには、特定行為研修修了が資格手当の対象に含まれていることもあります。
キャリアアップにもつながる
特定行為看護師になることで、できる業務の幅が広がってキャリアアップにもつながります。研修を受けた区分に関する知識やスキルが向上するため、よりスキルが活かせる部署で活躍できるでしょう。転職時にも大きな強みとなります。
特定行為看護師は国が定めた特別な医療行為を実施できる
- 特定行為看護師は医師の指示を待たず手順書をもとに迅速に医療処置を行える
- 特定行為看護師は資格制度ではなく、特定行為研修修了者の名称
- 特定行為看護師になるには指定研修機関で特定行為研修を受ける必要がある
- 特定行為研修になると給与アップやキャリアアップにつながるメリットもある
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