職種・資格情報
保健師とは?仕事内容や年収、資格、看護師との違いを解説
4 months ago
「保健師とはどのような職業?」と疑問に思っている方もいるでしょう。保健師とは地域住民へ保健指導や公衆衛生対策を行う専門職のことです。この記事では、保健師の仕事内容やなるにはどうすればよいのか、国家資格について解説しています。保健師の職場と種類、向いている人の特徴、年収にも触れていますので、ぜひ参考にしてください。
保健師とは
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「保健師」によると、保健師とは保健・医療・福祉・介護などの分野で、乳幼児から高齢者までのすべての住民を対象に、必要な保健サービスを提供する職種です。保健師の多くは、主に自治体の施設(保健所・市区町村の役所など)に勤務しています。
保健師は、保健師助産師看護師法により定められている国家資格です。保健師助産師看護師法では、保健師は「保健指導に従事することを業とする者」と定義されています。
保健師と看護師の違いは?
保健師国家試験を受けるには、看護師国家資格を持っていなければなりません。そのためか、保健師と看護師は職種や仕事内容が混同されがちです。
保健師と看護師の違いを簡単に説明すると、看護師は病気やケガをした人に携わる職業、保健師は病気になる前の予防活動に携わる職業といえます。
看護師は医療機関や介護施設で働く方が多く、医師の診療補助や採血・点滴・消毒などの医療処置、療養上の世話などを行います。一方、保健師は保健所や市区町村の役場、学校などに勤務するのが一般的です。地域住民へ健康相談や保健指導、検診を行ったり、乳幼児健診や母親学級を開催したりするのが保健師の仕事です。
保健師になるには?国家資格について
保健師になるには、保健師国家試験に合格して国家資格を取得する必要があります。ここでは、保健師国家試験についてみていきましょう。
保健師国家試験の受験資格
厚生労働省 職業情報提供サイトjobtag「保健師」によると、前述のとおり、保健師国家試験を受験するには、看護師の国家試験に合格していることが前提です。
まず、保健師になるには高校卒業後、看護系大学・短大や専門学校で看護師になるための専門教育を受け、看護師国家試験を受験します。看護師国家試験合格後、看護系の大学院で2年間、もしくは保健師養成学校などで1年間専門教育を受けることで、保健師国家試験の受験資格が得られる流れです。
なお、看護系大学で保健師選択課程を選択した方は、看護師と保健師の国家試験をW受験できる資格を得られるため、両方の試験に合格すると同じ年に看護師と保健師の国家資格を得られます。ただし、看護師国家試験が不合格となった場合、保健師国家試験に合格していても保健師の資格は得られません。
また、看護系大学の保健師選択課程は人気が高く、そもそも入学・進級できないケースも見られます。大学によっては3年次進級時に保健師選択課程とカリキュラムが分かれる仕組みになっており、校内の進級試験に合格しなければ保健師選択課程に進めない学校もあるようです。
保健師国家試験の概要
厚生労働省「保健師国家試験の施行」によると、保健師国家試験は例年2月初旬に行われます。試験地は12都道府県で実施されており、2024年実施回は北海道・青森県・宮城県・東京都・新潟県・愛知県・石川県・大阪府・広島県・香川県・福岡県・沖縄県で行われました。
試験科目は公衆衛生看護学・疫学・保健統計学・保健医療福祉行政論で、合格には全体の60%以上の正答が必要です。
保健師国家試験の合格率
2022年~2024年実施分の保健師国家試験の合格率は、以下のとおりです。
実施回(実施年) | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
---|---|---|---|
第108回(2022年) | 7,948人 | 7,094人 | 89.3% |
第109回(2023年) | 8,085人 | 7,579人 | 93.7% |
第110回(2024年) | 7,795人 | 7,456人 | 95.7% |
参照:厚生労働省「第108回保健師国家試験、第105回助産師国家試験及び第111回看護師国家試験の合格発表」、厚生労働省「第109回保健師国家試験、第106回助産師国家試験及び第112回看護師国家試験の合格発表」、厚生労働省「第110回保健師国家試験、第107回助産師国家試験及び第113回看護師国家試験の合格発表」
保健師国家試験の合格率は、近年では9割前後で推移しています。合格率は比較的高い方といえるでしょう。
保健師の仕事内容
ここでは保健師の仕事内容について、詳しくみていきましょう。
健康相談
健康相談は、保健師の主な仕事の一つです。保健師は、地域住民や勤務先の学校の生徒・学生・保護者、勤務先の会社の従業員などから、健康に関する相談を受けます。健康診断の結果を受けて相談が行われる場合や、相談者やその家族からの希望で相談を受ける場合もあるようです。
治療が必要な状態と判断された場合は、保健師から病院を紹介することもあります。幅広い世代からのあらゆる相談内容に対応する知識やスキルが必要です。
乳幼児健診・母親学級
自治体の保健所や保健センターなどで、乳幼児と両親に対して乳幼児健診を行ったり、母親学級を開催したりするのも保健師の仕事です。母親学級では、妊婦と父親へ出産に向けての準備や育児に関するアドバイスを行ったり、沐浴やだっこ、おむつ交換の方法などを指導したりします。
乳幼児健診では乳幼児の身体測定や視力・聴力のテストなどを行い、両親から育児に関する相談に乗ることもあるようです。
健康・病気に関する広報活動
保健師は、感染症や生活習慣病、依存症などに関する啓蒙活動を行います。講演会や講座を企画して講師を呼ぶほか、自ら登壇することもあるようです。住民の健康な生活を支えるため、運動教室やイベントを催すこともあります。
家庭訪問
保健師は住民宅に訪問して健康相談に対応することもあります。地域の高齢者宅には、順に訪問することになっている自治体も多いようです。虐待の疑いがある家庭にも定期的に訪問し、ソーシャルワーカーやケアマネジャーなどと連携して病気や虐待の予防・早期発見に努めています。
保健師の種類と職場
保健師は、働く職場によって呼び名や仕事内容が異なります。ここでは、保健師の種類と職場、職場に特化した仕事内容についてみていきましょう。
行政保健師
保健師として一般的な働き方が行政保健師です。行政保健師は保健所や保健センター、地域包括支援センターなど、自治体が運営している施設に勤めている保健師のことで、公務員となります。そのため行政保健師になるには、選考と別に公務員試験に合格することが必要です。
行政保健師は、地域住民の健康維持を目指した活動や保健指導が主な仕事となっています。難病支援や障がい者支援、災害時対策なども行政保健師の仕事です。
産業保健師
産業保健師は、一般企業に就職して従業員の健康管理を行う保健師のことです。健康診断後に従業員と面談して健康相談を受けたり、健康指導を行ったりします。従業員が心身ともに健康に働けるよう、職場環境の改善を行うこともあります。身体の健康を支えるだけでなく、メンタルヘルスに関する相談やケアも求められる職種です。
病院保健師
病院保健師は、健康診断を行っている病院で健診受診者へ保健指導を行う保健師を指します。地域連携室に在籍して退院支援を行うこともあれば、看護師の仕事と兼務するケースもあるようです。
学校保健師
学校保健師は、大学や専門学校、私立の小中高校など学校に勤める保健師です。健康診断の補助や、健康・衛生に関する広報活動を行います。養護教諭の免許を持っている保健師は、ケガや急病の手当をする場合もあるようです。生徒や学生、保護者からの健康相談にも応じるほか、学校で働く教職員の健康管理も任されます。
保健師に向いている人の特徴とは
ここまで、保健師の種類や仕事内容をみてきました。では、保健師に向いている人の特徴にはどのようなものがあるのでしょうか。
予防医学に携わりたい人
保健師には、予防医学に携わりたい人が向いています。
保健師の特徴は、ケガや病気の患者だけでなく、現在健康な人に対してもアプローチできることです。病気が流行するのを防いだり、健康指導や助言を行ったりという仕事は成果が実感しにくいものですが、住民が健康で安心して暮らせる状況を支えられるというやりがいが得られるでしょう。
コミュニケーション能力や柔軟性がある人
保健師は、コミュニケーション能力や柔軟性がある人が向いているでしょう。
保健師は乳幼児から高齢者まで幅広い人と関わる職業であり、健康相談を受けたり保健指導をしたりと住民と対話する機会も多い仕事です。関わる人は年齢や職業、周りを取り巻く環境などが人それぞれのため、誰に対しても同じようなマニュアルどおりの対応では適切な対応はできません。よく話を聞き、対応する人に寄り添い、一人ひとりにあった声掛けや対応が求められるでしょう。
保健師の年収
厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、保健師の平均給与(きまって支給する現金給与額)は31万2,900円となっており、年収(きまって支給する現金給与額×12ヶ月+年間賞与その他特別給与額)を算出すると451万500円でした。
医療系職種の中では年収は高い方ではありませんが、行政保健師であれば公務員となるため、安定して収入が得られるでしょう。
保健師とは地域住民の保健指導や健康相談を行う職種
- 保健師とは保健所などに勤務し、住民が健康な生活を送れるようサポートする職種
- 保健師は病気の予防を行う職種で、看護師は病気やケガになった人の治療に携わる職種
- 保健師になるには看護師と保健師両方の国家試験に合格しなければならない
- 保健師には予防医学に携わりたい人やコミュニケーション能力のある人が向いている
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